恋のおまじない ~好奇心で自分に淫紋つけたら合法ショタになってた~

なきいち

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続・五章 救出、そして

5 衝動

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とんでもない母親が何かを叫びながら連れていかれる一方で、もう一人、とんでもないことになっている者がいた。
「はあ……はあ……」
「ルー?」
腕の中の少年が頬を赤らめ、苦しそうに息を荒くしている。
そのことに気がついて、ウォルは彼に声をかけた。
ルーは、掠れた声で囁くように言う。
「ウォル……たすけて」
「ど、どうした?」
「ぬれそう……」
(……?)
ウォルは言葉の意味を少し考えて、その赤らんだ顔と、立ち昇る、甘酸っぱい香りにピンと来た。
そっと、ローブの襟を持ち上げて内側を覗き見る。
(うへっ!?)
中を見たウォルは思わず出そうになった声をとっさに飲み込んだ。
このときまで確認する暇がなかったが、ローブの下は何も身に着けていない。
ルーは素っ裸の上に薄布を一枚羽織っているだけだった。
「あいつらに、全部盗られたみたい。服も、財布も、魔除けも……」
「ちょちょちょ、まって!」
意図せず恋人の裸を見てしまった狼狽もあって、声を抑えながらもウォルは焦った。
以前より落ち着いているとはいえ、ルーの淫紋は魔除けのパンツを外したままでいると、何かの拍子で急に活性化してしまう。
ちらっと見たが、ローブの下ではすでに淫紋が文様を作り始めていた。
ルーは必死に押さえ込もうとしているが、魔除けがなければ淫紋が完全に開いてしまうのは時間の問題だ。
一度発散させればまたしばらく落ち着きもするが、だからと言ってこんな所でわけにはいかない。
奴等がどこにルーの所持品を隠したかもわからないし……となれば、急いで家に帰って着替えのパンツを取りに行くしかない。
ウォルは店内を見回し、朝、ポーションを納品した時に顔を合わせた白い犬獣人の女性ギルド職員の姿を探した。
実行犯の男共が伸びている地下倉庫に向かう人員を指揮している彼女を急いで捕まえる。
「ああああのっ、ちょっといいか?」
「なにかしら?」
「うちの店長が、具合悪いみたいなんだ。すぐに帰ってポーション飲ませたいんだけど、どうにかならないか?」
彼女はハッとして、ウォルに抱きかかえられているルーを見やる。
人間族は毛並みがない分、体調の変化が肌に見えてわかりやすい。
赤らんだ顔。荒い呼吸。
そっと肉球で額に触れてみると、見た目通りに熱がある。
「これは、いけないわね。本当は事情聴取もしたかったのだけど……わかりました。許可しましょう。
詳しいことは後日、ギルドにてお聞きします」
「助かる!」
言うや否や、虎は少年を抱えて大急ぎで店を飛び出していった。
街並みを駆け抜け、一目散に彼らの暮らす一件の錬金術店へ。
流石に十分近く、子供の体一つを抱きかかえての全速力は息が上がる。
店の前で舌を出して呼吸しながら、ウォルは鍵のかかった扉をしばらく押したり引いたりしていた。
脳が酸欠を起こして、無意味な行動を続けているのに気が付くのが遅くなる。
流石に少し、呼吸を整えた。
何とか深呼吸を繰り返すと、ようやくポケットの中の合鍵のことに頭が回る。
鍵を取り出し扉を開けると、扉につけられた来客を知らせる鐘がカランカランと鳴った。
店内を横切りそのまま住居スペースに上がろうとして、三歩ほど店内を進んだところで気がついて、一度出入口まで戻ってしっかり施錠する。
改めて店舗のカウンターを抜けた奥の扉から階段を上り、普段彼らが生活している場所までやって来た。
自分の部屋を通り過ぎ、ルーの私室の前までくる。
そのドアを開けようとして、ウォルは躊躇してしまった。
ここは、彼が初めてルーと結ばれた場所だ。
そして、最初で最後に小さな少年を無理矢理乱暴した場所だ。
だからあれ以来、ルーに呼ばれて、必要な時でなければ、近寄ることも躊躇っていた。
もしまた愛する人を傷つけてしまったら……
あの匂いに当てられて、湧き上がる衝動を抑えられなくなることが怖かった。
「うぉる……」
腕の中のルーが、しっかりと自分にしがみついて、助けを求めるか細い声を出している。
ハッと我に返って、気を強く持つ。
何をモタモタしているのか。
今は、その彼が苦しんでいるのではないか。
大丈夫だ。
魔除けのパンツを探して彼に穿かせるまでの、たったそれだけの時間、衝動に負けなければいい。
意を決して、ウォルはドアノブを掴む手に力を込めた。
「うぉる……おれ、したい」
その一言で、ドアノブを掴んだままウォルは固まってしまう。
「え?」
「したいよぉ。このままじゃ、おさまらない。おねがい……」
ぎゅっと両手でしがみついて、頭をこすりつけるように、甘えてくる。
淫紋が開いているとはいえ、発情ヒートでもないのにルーがこのように甘えてくるのは珍しい。
思わず腰を振って喜ぶ本能を抑えつけて、冷静な部分で考える。
(何か、あったのか?)
「ルー。あいつらに、何かされたのか?」
ルーはしばし、荒い呼吸をした後、
「……かお、なめられた。あし、さわられた」
とだけ、言った。
ウォルは危うく頭の血管が切れるところだった。
浮かれた気分が一転して、あの地下倉庫の光景を見た時と同じ怒りが吹き上がる。
何よりも大切な宝物に泥をつけた獅子の姿が、脳裏に浮かんだ。
(あのクソライオン、次に会ったら八つ裂きにしてやる……!)
「それ以外は? 変なところまで何かされた?」
「だいじょうぶ……うぉるが、すぐきてくれたから」
フー、フー、と、熱にうなされた荒い息をしながら、ルーはウォルを見上げてニコッと微笑んだ。
「かっこよかった」
「っ!!!」
上気した、あどけなく緩むその顔に、今度は怒りのほうがどこかに吹っ飛んだ。
一度落ち着けたはずの体が、また早鐘を打ち鳴らす。
鼻息が荒く、体温が上がっていく。
感情の乱高下に、虎の頭はもうパンク寸前だ。
「ね、うぉる、しよ……? おねがい」
あんなことがあった直後だというのに。
誘われるままに、ウォルはフラフラと風呂場のほうへと歩き出していた。
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