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#5
まさかの純潔
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「……ところで」
ハリムが落ち着くのを待ってから、オレは改めて、きちんと決めておかなくてはならない大切な話を切り出す。
「"契り"は、どうする?」
正式に"運命の番"となるには、αとΩはセックスする必要があると聞く。
そうして"縁"が結ばれた番は同じ場所に同じ模様の痣、毛並みの模様が表れるという。
首を噛むという方法もあるが前時代的すぎるというか、血が出るまで噛みつくというのはちょっと、加減ができるか心配だし不安も大きい。
二人分となればハリムの怪我も二倍になるということだし。
となると、"契り"の方法は一択になる。
そうすると、次は場所とか幾つかの問題が出てくるわけで。
オレが聞くと、二人はそろって顔をそらした。
そっちはもう二人で話がついてんのか?
「お前らは寮でパコパコやりゃあ良いだろうけど、抜け駆けされんのは気分悪いぞ」
「……ここで、する?」
カシャン
偶然か、聞こえていたのか。
保険医がいるカーテンの向こうから、ペンか何か、細くて硬い物を落とす音が聞こえた。
予想外に大胆なハリムの提案に、オレは戸惑う。
「い、いや、ここでは、ちょっとなぁ」
「でも、カーテンで見えないし。ちょっと恥ずかしいけど」
無垢な双眸には、冗談の色など微塵もない。
(ほ、本気か?)
さっきの話を聞いて、てっきりハリムはこういうことに抵抗があるかと思ったんだが……むしろ逆なのか?
自虐も含まれてるだろうけど、自分のことを『色狂い』なんて言うくらいだし、実は意外と性欲が強いのかもしれない。
(まあ、それはそれで……)
素肌をはだけさせ、ベッドの上からうっとりした目でオレを誘うハリムを想像して、思わず鼻の下が伸びる。
っとと、そうじゃない。
一瞬だけ、この状況でおっぱじめることを本気で考えてしまったが、なんとか理性が勝利する。
「いやいや、問題あるって」
「ちょっといいか?」
「ん? なんだ?」
「ふと思ったんだが、男同士での『やり方』を、ラキは知っているか?」
……こっちはそうきたか。
けどまあ、それは興味が無ければ知らないのも無理はない。
αやΩならともかく、ストレートのβには縁遠い行為だし。
クライヴと返答に困るオレを見比べて、ハリムは不思議そうに首をひねっている。
「どうして男同士だとできないの?」
「いやー、まあ、ハリムは知ってるかもしれないけど」
「セックスって、口に舌を入れるんでしょ?」
……。
え?
聞き間違いか?
ダークオレンジのまっすぐな瞳に見つめられたオレは、マジでしばらく固まった。
「冗談、だよな?」
「え?」
意識が戻ったオレがハリムに聞き返すと、本気で首を傾げている。
まさかまさかと、確認のために聞いた。
「ハリム、その、『先生』には、どこまでされたんだ?」
「セックスまで?」
聞き方が悪かった。
「だから、ええと……先生にされたセックスって、どんなだった?」
「え、えっと」
ハリムは少し頬を染めながらモジモジとして、
「裸で、体中触られたり」
「うん」
「耳とか、おっぱいとか……あそことか、舐められたり」
「うん」
「体中にキスされて」
「うん」
「最後に口の中に舌を入れられた」
「うん……?」
最後?
続きを待ったが、ほんのり頬を染めながら、澄んだ目でオレを見ている。
本当にそこで終わりらしい。
「本っ当にそれだけか?」
「え、う、うん」
「ハリム、セックスのことは知ってるんだよな?」
「え、えっと、キスのときに舌を入れて、舌と舌を絡めて相手に魔力をなじませると、子供が出来るんだよね? 僕小っちゃかったからすぐにイっちゃって、いつも上手にできなかったんだ。そのおかげで、最悪の事態にはならなかったんだけど」
ガシャアア
カーテンの向こうから、今度は崩れたファイルか何かを床に落とす音が聞こえた。
嘘だろハリム……
それじゃあお前、散々自分のことを『色狂い』とか言っておいてまさか……まだ?
「そうだったのか」
待てやクライヴ。
なんでお前まで納得してんだ?
『男同士の』とか前置きしてたけど、まさかこいつ男女のも知らねぇんじゃ?
「せ、セックスって、違うの?」
「……ケツに何かされなかったか?」
「えっ?」
ハリムは目を丸くした。
「……お、お尻にも、キスされた、かも……」
「……」
「……せ、セックスってお尻にキスすることなの?」
いまさら顔を真っ赤にして未だに見当違いなことを聞くハリムと、犬のように従順な目でオレを見ているクライヴ。
まさかのピュア二人組に、オレは頭を抱えた。
「……お前ら」
頭の中で、日程表を思い出す。
たしか次の休みは明後日だ。
「週末、二人まとめてオレの部屋に来い。防音結界借りておくから。そこでみっちり教えてやる」
その時、オレはどんな顔をしていただろう。
ハリムだけでなくクライヴまでもが固唾を飲み、オレの言葉に頷いた。
そして週末、オレたちは本当の"運命の番"となった。
ハリムが落ち着くのを待ってから、オレは改めて、きちんと決めておかなくてはならない大切な話を切り出す。
「"契り"は、どうする?」
正式に"運命の番"となるには、αとΩはセックスする必要があると聞く。
そうして"縁"が結ばれた番は同じ場所に同じ模様の痣、毛並みの模様が表れるという。
首を噛むという方法もあるが前時代的すぎるというか、血が出るまで噛みつくというのはちょっと、加減ができるか心配だし不安も大きい。
二人分となればハリムの怪我も二倍になるということだし。
となると、"契り"の方法は一択になる。
そうすると、次は場所とか幾つかの問題が出てくるわけで。
オレが聞くと、二人はそろって顔をそらした。
そっちはもう二人で話がついてんのか?
「お前らは寮でパコパコやりゃあ良いだろうけど、抜け駆けされんのは気分悪いぞ」
「……ここで、する?」
カシャン
偶然か、聞こえていたのか。
保険医がいるカーテンの向こうから、ペンか何か、細くて硬い物を落とす音が聞こえた。
予想外に大胆なハリムの提案に、オレは戸惑う。
「い、いや、ここでは、ちょっとなぁ」
「でも、カーテンで見えないし。ちょっと恥ずかしいけど」
無垢な双眸には、冗談の色など微塵もない。
(ほ、本気か?)
さっきの話を聞いて、てっきりハリムはこういうことに抵抗があるかと思ったんだが……むしろ逆なのか?
自虐も含まれてるだろうけど、自分のことを『色狂い』なんて言うくらいだし、実は意外と性欲が強いのかもしれない。
(まあ、それはそれで……)
素肌をはだけさせ、ベッドの上からうっとりした目でオレを誘うハリムを想像して、思わず鼻の下が伸びる。
っとと、そうじゃない。
一瞬だけ、この状況でおっぱじめることを本気で考えてしまったが、なんとか理性が勝利する。
「いやいや、問題あるって」
「ちょっといいか?」
「ん? なんだ?」
「ふと思ったんだが、男同士での『やり方』を、ラキは知っているか?」
……こっちはそうきたか。
けどまあ、それは興味が無ければ知らないのも無理はない。
αやΩならともかく、ストレートのβには縁遠い行為だし。
クライヴと返答に困るオレを見比べて、ハリムは不思議そうに首をひねっている。
「どうして男同士だとできないの?」
「いやー、まあ、ハリムは知ってるかもしれないけど」
「セックスって、口に舌を入れるんでしょ?」
……。
え?
聞き間違いか?
ダークオレンジのまっすぐな瞳に見つめられたオレは、マジでしばらく固まった。
「冗談、だよな?」
「え?」
意識が戻ったオレがハリムに聞き返すと、本気で首を傾げている。
まさかまさかと、確認のために聞いた。
「ハリム、その、『先生』には、どこまでされたんだ?」
「セックスまで?」
聞き方が悪かった。
「だから、ええと……先生にされたセックスって、どんなだった?」
「え、えっと」
ハリムは少し頬を染めながらモジモジとして、
「裸で、体中触られたり」
「うん」
「耳とか、おっぱいとか……あそことか、舐められたり」
「うん」
「体中にキスされて」
「うん」
「最後に口の中に舌を入れられた」
「うん……?」
最後?
続きを待ったが、ほんのり頬を染めながら、澄んだ目でオレを見ている。
本当にそこで終わりらしい。
「本っ当にそれだけか?」
「え、う、うん」
「ハリム、セックスのことは知ってるんだよな?」
「え、えっと、キスのときに舌を入れて、舌と舌を絡めて相手に魔力をなじませると、子供が出来るんだよね? 僕小っちゃかったからすぐにイっちゃって、いつも上手にできなかったんだ。そのおかげで、最悪の事態にはならなかったんだけど」
ガシャアア
カーテンの向こうから、今度は崩れたファイルか何かを床に落とす音が聞こえた。
嘘だろハリム……
それじゃあお前、散々自分のことを『色狂い』とか言っておいてまさか……まだ?
「そうだったのか」
待てやクライヴ。
なんでお前まで納得してんだ?
『男同士の』とか前置きしてたけど、まさかこいつ男女のも知らねぇんじゃ?
「せ、セックスって、違うの?」
「……ケツに何かされなかったか?」
「えっ?」
ハリムは目を丸くした。
「……お、お尻にも、キスされた、かも……」
「……」
「……せ、セックスってお尻にキスすることなの?」
いまさら顔を真っ赤にして未だに見当違いなことを聞くハリムと、犬のように従順な目でオレを見ているクライヴ。
まさかのピュア二人組に、オレは頭を抱えた。
「……お前ら」
頭の中で、日程表を思い出す。
たしか次の休みは明後日だ。
「週末、二人まとめてオレの部屋に来い。防音結界借りておくから。そこでみっちり教えてやる」
その時、オレはどんな顔をしていただろう。
ハリムだけでなくクライヴまでもが固唾を飲み、オレの言葉に頷いた。
そして週末、オレたちは本当の"運命の番"となった。
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