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嵐の夜、山小屋で
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酷い雨だった。
窓の向こうの暗闇には、風に踊る木々の影がうっすら見えるのみ。
そのざわめきと雨音だけが小さな山小屋の中に響いていた。
ジジッ、と短い羽音のような音と共に緋色の灯が木造の室内を照らし出す。
小屋の中は実に簡素で、入り口から向かいの壁に
寝台や腰を下ろすための場所として使うのだろう小上がりとおそらく物置らしき扉が一つ、
それ以外は左右の壁についたはめ殺しの窓だけのガランとした空間だった。
先ほどつけたカンテラを小屋の中央付近、
天井から下りてきているフックにつるすと、奥の扉を開く。
それはやはり物置で、中には毛布が何枚も折り重なって詰め込まれていた。
一応、鼻を近づけてみる。
流石に洗剤の匂いとはいかないが、かび臭さや嫌な臭いはしない。
定期的に管理されているのだろう。
ほっと息をついたところで、入り口付近においてきた小さな影が大きなくしゃみをした。
「ふぁっくしゅん!」
「大丈夫か? ジンタ」
「ん。大丈夫。ちょっと冷えただけ」
「すぐに濡れた服を脱いでこれにくるまったほうがいい」
「わかった。ギヴも早く体拭いた方がいいよ」
先に小屋に入った大きな影は、物置から毛布を一枚取り出すと
濡れて肌に張り付く服をやっとの思いで脱ぎ捨てた小さな影をそっと包む。
と、そのとき自分の持っていた毛布が濡れているのと
毛布に包まれた少年――ジンタの苦笑の表情で初めて自分の状況に気が付いたように
慌てて毛布から手を離して、
「少し、外でふるい落としてくる」
「ん」
ジンタにそう告げると、背負っていた革袋を下ろして一度外へと出て行った。
閉じた扉の向こうからたくさんの水滴がばらばらと扉を打ち付ける音が数回して、
大きな影が再び戻ってくる。
下ろされた荷物の中から幸いにも濡れていないタオルを発掘していたジンタは、
帰ってきた毛むくじゃらの影に渡した。
「はい」
「ありがとう」
ジンタからタオルを受け取ると、じっとりと水気を含んだ全身の毛並みをふき取る。
しかしそれはあっという間に水を吸って重くなり、
また何度も小屋の外に出てはタオルを絞り、戻ってきては体を拭きを繰り返すこととなった。
「獣人は大変だね」
「ああ。本格的に降り出す前で本当に良かった」
「あ、オレのは自分でやるよ」
「ついでだ気にするな。それより、人間は体毛が無いんだ。ちゃんと温まっておけ」
「過保護だって。でも、その言葉には甘えさせてもらおうかな」
そう言ったジンタは毛布にくるまりながらブルッと全身を震わせる。
何が大丈夫なものか、と、黒い毛並みの犬のような姿をした獣人は
自分の背丈の半分ほどしかない小さな生き物に心の中で諭しながら、
タオルを絞るついでにジンタの服や、自分が着ていた服なども
外に持ち出しては水気を絞って戻ってくる。
(火でも起こせれば良いんだが……)
おおよその水気は外に追い出せたものの、湿ったままでいるのは心地が悪い。
しかしあいにくと、室内には暖を取るための設備は置かれていなかった。
せいぜいが、カンテラや衣類等を吊るすためのフックが何本か、壁にあるくらいだろうか。
改めて小屋の内部を確認すると小さくため息をついて荷物の中からロープを一本取り出す。
絞っただけで湿り気の残る衣類をそれに通すと、
いくつかの壁のフックを経由させてカンテラの回りに吊るした。
熱源としては心もとないが、ないよりはましだろう。
遮蔽物が出来てしまって小屋の中はいささか暗くなる。
その灯りの中心で、ジンタは毛布の中で縮こまりながら獣人を待っていた。
やるべき作業を終えた獣人が、ジンタを背後から包み込む。
「お疲れ、ギヴ」
「ああ。少し気持ち悪いが、朝には乾くだろう」
「そうだね。夏が近くてよかった」
ジンタが言うように、小屋の中は湿気でいくらかジメジメとしていたが、
服を脱いでいても肌寒さは感じない。
毛布一枚あれば裸で夜を越しても問題ないだろう。
もっとも、夏が近いからこその通り雨でもあったが。
「? ギヴは毛布使わないのか?」
「ああ。濡れたまま被ると痒くなるからな。こうしてるほうがいい」
そう言って獣人――ギヴは毛布越しにジンタの体をぎゅっと抱きしめる。
そういうものなのか、とジンタも納得し、自分を包む大きなフサフサに体重を預けた。
外の雨はいよいよ激しさを増しており、カンテラの油が燃える微かな音も掻き消されていく。
変わることのない音が逆に静けさにも感じられそうなころ、
ふと、ジンタは違和感を感じて頭の上に視線を向けた。
彼の毛並みと同じように乾ききっていない自分の頭に頬擦りしている黒い犬の顔。
その感触はずっと変わらないが、どうも、鼻息が荒くなっているような気がする。
「ジンタは、本当にいい匂いがするな……」
どこか恍惚としているような声で、ギヴが囁く。
その声音にギクリとして、ジンタは自分の尻の下、
毛布越しにあるだろう"それ"に手を伸ばして確認した。
予想通り、そこには厚い布一枚隔てても熱を感じられそうなほどはっきりとした膨らみが
グイグイと押し付けられていた。
「ちょっ、ギヴ! サカってんの!?」
思わず声を上げた瞬間、窓の外が一瞬カッと明るくなる。
「仕方ないだろ。こんな状況じゃ」
「こんな状況でサカる方がおかし……」
言い終わる前に、稲光から遅れてやってきた轟音が小屋の空気を揺らす。
思わず首がすくみ、言いかけた言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。
その間に、ギヴの求愛は徐々にエスカレートして、
頬擦りに留まらず緩んだ口元から零れ出した熱で愛しい者の耳裏を撫でる。
ねっとりと耳たぶから耳裏を舐め上げられ、耳の先、内側までも丹念に嘗め回し、
柔らかい熱に混じって硬い牙が触れるとピクリと小さな体が震えた。
その反応を楽しむように、今度は何度も軽い力で牙が押し当てられる。
荒い吐息と共に熱を持った場所を何度も甘噛みされ、
その熱が伝染するのは時間の問題だった。
長引く遠雷の音が静まり、再び小屋の中に雨音だけが満ちるころ、
そこには荒々しい獣の吐息と小さな喘ぎ声が混ざっていた。
「やっ、ギヴ、オレ、耳はよわい、って、んっ、くすぐっ、てぇ」
耳から伝わる熱に堪えられないように、
ギヴの腕の中でもぞもぞと毛布の塊が身をよじらせる。
もう少し焦らしたほうがいいか、いや、もう頃合か。
我慢できずに振り返ったその唇が何かを言う前に、獣の口が食らいつく様に塞いだ。
「ふむっ!? んっ、んんっ」
いきなりのことに驚いたのだろう。
いつもしていることのはずなのに抵抗するようにジンタの口が引き結ばれる。
しかし少し強引に舌を押し当て、いつもより乱暴に唇をなぞり上げれば、
あっさりと綻ばせてギヴを受け入れていた。
「んぅっ、んっ、ぅん……」
最初は乱暴な侵入者を追い出す様に差し出してきた小さな舌を絡めとり、
擦り合わせながら吸い上げる。
溢れ出す唾液を小さな口腔に注ぎ込み、掻き回す様に口内を味わった後、
混ざり合った二人分の体液を啜り上げる。
また窓の外に閃光が走り、数秒後に轟音が響き渡った。
しかしもうその音すら聞こえないように、
小さな体は獣から与えられる刺激に細かく震え続けるだけであった。
しばらくそうしていると、すっかり獲物となってしまった小さな体はくったりとして、
全体重を獣に預けてくる。
力の抜けた両手は毛布を押さえる事も出来ずに、はらりと日に焼けた肢体が露わになった。
(おっと)
視界の端でそれを見たギヴははだけた毛布の端を掴み、小さな体を包み直す。
一度口を離すと、二人を繋ぐ銀糸が名残惜しそうに伸び、ジンタの頬に落ちて行った。
このまま床に押し倒し、欲望のままに貪りたくなる衝動を抑えながら、
今しがた二人を繋いでいた粘液の付いた頬を拭ってやる。
毛並みに隠れていない柔らかな肉の感触がギヴの指に伝わり、
ゴツゴツとした大きな指で乱暴に顔を拭われたジンタはビクリと体を震わせた。
何か、文句の言葉を言おうとしていたはずなのだがもう思い出せない。
ジンタはぼうっとする頭で、ただ自分の愛するその人の顔を見つめていた。
うっとりとした瞳で自分を見つめる愛らしい小動物を、ギヴは抱え直す。
肩と膝の下に腕を入れて、お姫様か、
あるいは赤子を連れて行くようにひょいと持ち上げてしまう。
そうして、寝台に運ぶまでの間にもう一度深く深く接吻を交わした。
ゆっくりとした足取りで、慎重に、そしてじっくりと味わいながら。
ちゅぷっ……くちゅっ……
二人の間から漏れ出す湿った音しか、もうジンタの耳には届いていない。
三度目の雷光と轟音が、小さな山小屋を震わせた。
そっと、ギヴは小上がりの上にジンタの体を下ろすと
その身を包んでいた毛布を寝台に広げる。
いよいよ露わになった愛しい人の体は、
残念ながら夜の闇に包まれて輪郭しかわからない。
しかし、何度となく目にしてきたその健康的に色づいた肌の色や質感は、
見えずとも感じらる。
何よりも、毛布の中に閉じ込められていた湿った汗の匂い、
そして、精の先走りの匂いが、何よりも生々しく目の前に横たわっていた。
(もう我慢できん……!)
隆々と股の間で己の雄を盛らせながら、ギヴは他の場所を愛撫するのも忘れて、
迷わずジンタの股の間に顔を埋め、
そこに鎮座している熱く、硬く、可愛らしい突起にむしゃぶりついた。
「ひぁっ、ぎ、ギヴっ」
それは戸惑いの声だったのか、抗議の声だったのか。
どちらだったとしてももう獣の衝動を抑えるのは無理だった。
舌で全体をこねくり回し、たっぷりと唾液を含んだ口内で竿を遊ばせる。
そうして先端からじんわりと滲み出した愛液を味わいながら全体を吸い上げる。
口で前を弄りながら、その手はしっかりと肉の付いた、
しかしギヴからすれば華奢な腰を押さえ、ゆっくりと降下を始めていた。
腰の裏の双丘を辿り、その谷間にある秘部に指先が触れる。
「あぁんっ、んっ、やっ、ちょっ、はげしっ、ギヴぅっ」
入り口を撫でてやると、それに答えるように口の中の塩味が増す。
それが嬉しくて、そのままググっと奥まで侵入を試みた。
「んぎっ……!」
とたん、それまでの艶めいたのとは違ううめき声が上がる。
少し残念な気持ちになりながら、ギヴはその場所から指を離し、ゆっくりと顔を上げた。
「ぎ、ギヴぅ……もっと、ゆっくり……んぅっ」
太腿を掴んで開かせ、少し腰を浮かせるように持ち上げるとその場所を探しやすくなる。
今しがたまで口の中で遊ばせていた肉棒の根元にふんふんと鼻を押し当て、
少しだけひんやりとしたふぐりの感触を舌と口元全体で堪能しながら、
一度袋全体を食べるように口の中に入れて転がす。
すっぽりと口の中に納まってしまう小さな玉袋と
その中にある二つの柔らかい感触がまた何とも可愛らしく、愛おしかった。
ほんの少しだけそこで遊んでから、ふぐりの裏側を辿り、その場所にまで舌を這わせる。
皺を一本一本引き伸ばす様に穴の入り口を絆していくと、
指の時とは違い、するりとその内側に入り込むことができた。
グチュッ……ヌジュッ……
入り口を湿らす唾液と、内側から漏れ出す粘液が、キスとは違う濁った音を立てる。
グイッと奥まで舌を入れると、内部は収縮と弛緩を繰り返し、
しかしそれは何かを追い出そうとする動きと言うよりも、
まるでその中へ中へと侵入者を求めているようだった。
「ひぅあっ……!あっ、あぁ……」
再び、ジンタの喉から漏れる声が艶を増していく。
じゅぽんっ、と、音を立てて舌を引き抜くと、
軽く口元を拭いながらギヴは体を上げた。
「ジンタは本当にココ舐められるの好きだよな?
コレを挿れてもらうのと、どっちがいい?」
「ぅう……」
ギヴの逞しい肉幹がぺちぺちと、ジンタの股間から下腹部を叩く。
ニヤニヤとしたギヴの笑みも、真っ赤になって押し黙るジンタの顔も、
お互いこの闇の中では見えていないだろう。
しかし不思議と、どちらも相手がどんな顔をしているのかわかっていた。
言葉に詰まっているジンタに、クックッと喉の奥で笑いを堪えながら
ギヴは先ほどまで丁寧に解した入り口に指を滑り込ませる。
絆され、じっとりと粘液にぬらされた秘部はさっきとは違い、
すんなりと太い指を飲み込んでしまった。
「ぃうっ……!」
「ん。奥がキュウキュウ締まって気持ちいいぜ。もう少し解してやるから我慢しろよな」
言いながら、穴を広げる指の数は増えていく。
二本、三本……四本。
「っはぁっ、あぁっ、ぐっ……んんっ……」
流石に拳まですっぽりとはいかないが、もう十分だろう。
ずぬんっ、と、またも雑に指を引き抜くと、
散々待たされて先走りを垂らし続けていた太く逞しい雄の象徴を入り口にあてがうと、
ゆっくりと腰を前に押し出していく。
体格的にジンタにとっては巨大すぎるとも見えるギヴの肉幹を、
しかし幾度となく慣らされ、今も十分に解され、濡らされたジンタの秘部は
さしたる抵抗も無く飲み込んでいった。
「ぐぅっ……んっ、んんっ……ああっ!」
ずるん、と、その一番太い場所、熱く充血し大きく開いた傘を飲み込んだ時、
今までで一番大きな悲鳴が上がる。
「あぁ……あっ、はぁ……んっ、ぐぅ……ぅんんっ」
だがそれもすぐに甘い吐息となって、ズブズブと、ついには全部飲みこんでしまった。
グッと腰を密着させたまま、ギブは確かめるように数回、ジンタの最奥部をノックする。
そのたびに小さく、甘い悲鳴が上がった。
「よしよし。わかるか? 今日も全部入ったぞ。
もうすっかり雌の穴になったな、ジンタ?」
「……」
押し倒され、頭を撫でられながら、それは褒め言葉なのか、
いや、彼にとっては褒め言葉なのだろうが、それを嬉しいと受け取っていいのか、
ジンタはわからずにただ、彼に与えられるモノを受け入れるしかできない。
何も答えられずにいるジンタの口に、また柔らかく湿ったものが当てられた。
半開きになっていた口を閉じることなく、静かに目を閉じて受け入れる。
と、一筋の滴が目じりからこぼれ落ちていくのが感触でわかった。
どうして湧いた涙なのか、ジンタ自身にもよくわからない涙だった。
「ジンタ……?」
見えていないだろうに、涙のにおいでも感じたのだろうか。
ギヴが顔を離し、心配そうな声で聞いてくる。
「痛かったか?」
「……」
上ずった息を漏らしながら、ジンタは首を振る。
本当に、痛くはないのだ。もう。
最初の頃は切れたり、苦しかったりもしたけれど。今は本当に。
ただ、己の内側から圧迫してくる巨大な熱とその硬さに、少しだけ怖さを感じる。
他のあらゆることでどうだったとしても今この瞬間だけは、
間違いなく彼は自分よりはるかに"強い雄"で、自分はそれを受け入れるしかない。
それは嬉しい事なのに、求めてもらえることを嬉しいと感じているのに、
少しだけ、怖い。
そんな涙だったのかもしれない。
自分を貫いたままじっと包んでくれている温もりの中で、ジンタはそう思った。
「ギ、ヴぅ……」
心の整理がついてくると、呼吸もいくらか落ち着いてくる。
甘えるように彼の名を呟いて、手を伸ばし、
柔らかい体毛に包まれた大きな背中にすがりついた。
「やさしく、して……?」
「……っ!」
掠れた呟き声は熱っぽくて、今までで一番甘ったるい響きとなってギヴの耳に届いた。
弾かれたように、腰の抽送運動が始まる。
最初の数回こそゆっくりだったが、濡らした粘液が、
今も内側で溢れ出している粘液が竿全体にぬめりを与えると
それはジンタの許容範囲をはるかに超えた早さで加速していった。
プチュッ…グチュッ、ヌチュッ、グチュッ
「やっ、あぁっ、ぎ、ギヴっ、も、んぅっ、もっと、やさっ、しくっ、んむぅっ」
激しく突き上げられ、制止の声を上げる口を乱暴に自身の口で塞いで、
なおもギヴの突き上げは激しさを増していく。
「……っ、……っ、ぷはっ、はぁあっ、ああぁぁっ!」
喘ぎ声さえ食らうかのような、
喉の奥の唸りを啜り上げるような乱暴なキスから解放された後は、
ただ腹の内で暴れ回る熱に押し出された空気が喉を震わせるだけだった。
突き上げられる腹の奥からじんわりとした痺れが全身に広がって行く。
まだ始まったばかりだというのに抑えようと思ってもどうにもできず、
激しく内側をこすり上げていく熱の塊は、到底その手を休めてくれそうにはない。
せめてもの抗議にと必死にその身体にしがみつくも、
相手を押さえつけるどころか、むしろ突き上げる勢いがさらに上がっていく。
「ひぐっ、イっ、ちゃう! あっ、イっ、イクぅうぅぅぅっ!!」
「うおっ、オオオオォォォオオォッッ!!」
抑えきれない熱がはじけて、快楽が痺れになってジンタの全身を襲う。
ギュウっと自分の中にある熱を絞り上げてしまうのを感じて激しく首を振るも、
次の瞬間にはより熱い奔流が下腹に放たれるのを感じて、
逃し切れない熱がジンタの体をビクビクと何度も震わせた。
「はぁっ……ひぅっ……あぁっ、あっ……んひぃっ……」
フー、フー、と、荒い息をしながら、
ギヴは腕の中で痙攣を続ける小さな体を抱きしめる。
強く、強く、でも、壊さないように。
二人の間に広がる熱いぬめりと栗の花の匂いが、ギヴの充足感を満たしていった。
数回の強い痙攣が収まった後で、また小さく震え続ける背中をゆっくりとさすり、
その顔を余すことなく嘗め回す。
愛しい、可愛い、いい匂い。
もっともっと喜ばせたい。
もっともっと気持ちよくしてやりたい。
そんな単純な欲望が、次から次へと湧いてくるのを感じながら。
「ギヴぅ……」
「すまんすまん。あんまりにも可愛くねだられちまったんでつい、な?」
乱暴に抱いてしまった少年が、上気しながらも不機嫌そうな声で訴える。
明るくからかうような、いつも通りの口調で獣はそれに答えた。
「……いちおーだけど、これで終わりってことには?」
「そりゃあ、なぁ?」
わかるだろ、とばかりにギヴは軽く腰を突き上げる。
感触として、人間が一回に出すそれよりもはるかに多い量を腹の中に感じながら、
ジンタは未だ衰えない巨大な熱の塊にグイグイと最奥をつつかれるのを感じていた。
「んっ、やぁっ、ちょ、ちょっと休憩っ!」
「だーめ。まだまだ、たぁっぷりと注いでやるからな」
「やっ、ちょっ、やだっ、てっ、あぅっ、やぁあっ」
「相変わらず上の口よりも下の口のほうが素直だなぁ?
へへ、あーあーこんなにがっついて。零さないようにしっかり力入れとけよ……!」
幾度目かになる遠雷の音が遠く尾を引いて消えていく。
降りしきる雨音もいよいよもって激しさを増していたが、
もはや二人の耳にはお互いが生み出す湿った水音しか聞こえていなかった。
その身体を濡らしていたのは雨なのか、汗なのか、それとも互いの愛液か。
それすらもわからなくなるまで。
窓の向こうの暗闇には、風に踊る木々の影がうっすら見えるのみ。
そのざわめきと雨音だけが小さな山小屋の中に響いていた。
ジジッ、と短い羽音のような音と共に緋色の灯が木造の室内を照らし出す。
小屋の中は実に簡素で、入り口から向かいの壁に
寝台や腰を下ろすための場所として使うのだろう小上がりとおそらく物置らしき扉が一つ、
それ以外は左右の壁についたはめ殺しの窓だけのガランとした空間だった。
先ほどつけたカンテラを小屋の中央付近、
天井から下りてきているフックにつるすと、奥の扉を開く。
それはやはり物置で、中には毛布が何枚も折り重なって詰め込まれていた。
一応、鼻を近づけてみる。
流石に洗剤の匂いとはいかないが、かび臭さや嫌な臭いはしない。
定期的に管理されているのだろう。
ほっと息をついたところで、入り口付近においてきた小さな影が大きなくしゃみをした。
「ふぁっくしゅん!」
「大丈夫か? ジンタ」
「ん。大丈夫。ちょっと冷えただけ」
「すぐに濡れた服を脱いでこれにくるまったほうがいい」
「わかった。ギヴも早く体拭いた方がいいよ」
先に小屋に入った大きな影は、物置から毛布を一枚取り出すと
濡れて肌に張り付く服をやっとの思いで脱ぎ捨てた小さな影をそっと包む。
と、そのとき自分の持っていた毛布が濡れているのと
毛布に包まれた少年――ジンタの苦笑の表情で初めて自分の状況に気が付いたように
慌てて毛布から手を離して、
「少し、外でふるい落としてくる」
「ん」
ジンタにそう告げると、背負っていた革袋を下ろして一度外へと出て行った。
閉じた扉の向こうからたくさんの水滴がばらばらと扉を打ち付ける音が数回して、
大きな影が再び戻ってくる。
下ろされた荷物の中から幸いにも濡れていないタオルを発掘していたジンタは、
帰ってきた毛むくじゃらの影に渡した。
「はい」
「ありがとう」
ジンタからタオルを受け取ると、じっとりと水気を含んだ全身の毛並みをふき取る。
しかしそれはあっという間に水を吸って重くなり、
また何度も小屋の外に出てはタオルを絞り、戻ってきては体を拭きを繰り返すこととなった。
「獣人は大変だね」
「ああ。本格的に降り出す前で本当に良かった」
「あ、オレのは自分でやるよ」
「ついでだ気にするな。それより、人間は体毛が無いんだ。ちゃんと温まっておけ」
「過保護だって。でも、その言葉には甘えさせてもらおうかな」
そう言ったジンタは毛布にくるまりながらブルッと全身を震わせる。
何が大丈夫なものか、と、黒い毛並みの犬のような姿をした獣人は
自分の背丈の半分ほどしかない小さな生き物に心の中で諭しながら、
タオルを絞るついでにジンタの服や、自分が着ていた服なども
外に持ち出しては水気を絞って戻ってくる。
(火でも起こせれば良いんだが……)
おおよその水気は外に追い出せたものの、湿ったままでいるのは心地が悪い。
しかしあいにくと、室内には暖を取るための設備は置かれていなかった。
せいぜいが、カンテラや衣類等を吊るすためのフックが何本か、壁にあるくらいだろうか。
改めて小屋の内部を確認すると小さくため息をついて荷物の中からロープを一本取り出す。
絞っただけで湿り気の残る衣類をそれに通すと、
いくつかの壁のフックを経由させてカンテラの回りに吊るした。
熱源としては心もとないが、ないよりはましだろう。
遮蔽物が出来てしまって小屋の中はいささか暗くなる。
その灯りの中心で、ジンタは毛布の中で縮こまりながら獣人を待っていた。
やるべき作業を終えた獣人が、ジンタを背後から包み込む。
「お疲れ、ギヴ」
「ああ。少し気持ち悪いが、朝には乾くだろう」
「そうだね。夏が近くてよかった」
ジンタが言うように、小屋の中は湿気でいくらかジメジメとしていたが、
服を脱いでいても肌寒さは感じない。
毛布一枚あれば裸で夜を越しても問題ないだろう。
もっとも、夏が近いからこその通り雨でもあったが。
「? ギヴは毛布使わないのか?」
「ああ。濡れたまま被ると痒くなるからな。こうしてるほうがいい」
そう言って獣人――ギヴは毛布越しにジンタの体をぎゅっと抱きしめる。
そういうものなのか、とジンタも納得し、自分を包む大きなフサフサに体重を預けた。
外の雨はいよいよ激しさを増しており、カンテラの油が燃える微かな音も掻き消されていく。
変わることのない音が逆に静けさにも感じられそうなころ、
ふと、ジンタは違和感を感じて頭の上に視線を向けた。
彼の毛並みと同じように乾ききっていない自分の頭に頬擦りしている黒い犬の顔。
その感触はずっと変わらないが、どうも、鼻息が荒くなっているような気がする。
「ジンタは、本当にいい匂いがするな……」
どこか恍惚としているような声で、ギヴが囁く。
その声音にギクリとして、ジンタは自分の尻の下、
毛布越しにあるだろう"それ"に手を伸ばして確認した。
予想通り、そこには厚い布一枚隔てても熱を感じられそうなほどはっきりとした膨らみが
グイグイと押し付けられていた。
「ちょっ、ギヴ! サカってんの!?」
思わず声を上げた瞬間、窓の外が一瞬カッと明るくなる。
「仕方ないだろ。こんな状況じゃ」
「こんな状況でサカる方がおかし……」
言い終わる前に、稲光から遅れてやってきた轟音が小屋の空気を揺らす。
思わず首がすくみ、言いかけた言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。
その間に、ギヴの求愛は徐々にエスカレートして、
頬擦りに留まらず緩んだ口元から零れ出した熱で愛しい者の耳裏を撫でる。
ねっとりと耳たぶから耳裏を舐め上げられ、耳の先、内側までも丹念に嘗め回し、
柔らかい熱に混じって硬い牙が触れるとピクリと小さな体が震えた。
その反応を楽しむように、今度は何度も軽い力で牙が押し当てられる。
荒い吐息と共に熱を持った場所を何度も甘噛みされ、
その熱が伝染するのは時間の問題だった。
長引く遠雷の音が静まり、再び小屋の中に雨音だけが満ちるころ、
そこには荒々しい獣の吐息と小さな喘ぎ声が混ざっていた。
「やっ、ギヴ、オレ、耳はよわい、って、んっ、くすぐっ、てぇ」
耳から伝わる熱に堪えられないように、
ギヴの腕の中でもぞもぞと毛布の塊が身をよじらせる。
もう少し焦らしたほうがいいか、いや、もう頃合か。
我慢できずに振り返ったその唇が何かを言う前に、獣の口が食らいつく様に塞いだ。
「ふむっ!? んっ、んんっ」
いきなりのことに驚いたのだろう。
いつもしていることのはずなのに抵抗するようにジンタの口が引き結ばれる。
しかし少し強引に舌を押し当て、いつもより乱暴に唇をなぞり上げれば、
あっさりと綻ばせてギヴを受け入れていた。
「んぅっ、んっ、ぅん……」
最初は乱暴な侵入者を追い出す様に差し出してきた小さな舌を絡めとり、
擦り合わせながら吸い上げる。
溢れ出す唾液を小さな口腔に注ぎ込み、掻き回す様に口内を味わった後、
混ざり合った二人分の体液を啜り上げる。
また窓の外に閃光が走り、数秒後に轟音が響き渡った。
しかしもうその音すら聞こえないように、
小さな体は獣から与えられる刺激に細かく震え続けるだけであった。
しばらくそうしていると、すっかり獲物となってしまった小さな体はくったりとして、
全体重を獣に預けてくる。
力の抜けた両手は毛布を押さえる事も出来ずに、はらりと日に焼けた肢体が露わになった。
(おっと)
視界の端でそれを見たギヴははだけた毛布の端を掴み、小さな体を包み直す。
一度口を離すと、二人を繋ぐ銀糸が名残惜しそうに伸び、ジンタの頬に落ちて行った。
このまま床に押し倒し、欲望のままに貪りたくなる衝動を抑えながら、
今しがた二人を繋いでいた粘液の付いた頬を拭ってやる。
毛並みに隠れていない柔らかな肉の感触がギヴの指に伝わり、
ゴツゴツとした大きな指で乱暴に顔を拭われたジンタはビクリと体を震わせた。
何か、文句の言葉を言おうとしていたはずなのだがもう思い出せない。
ジンタはぼうっとする頭で、ただ自分の愛するその人の顔を見つめていた。
うっとりとした瞳で自分を見つめる愛らしい小動物を、ギヴは抱え直す。
肩と膝の下に腕を入れて、お姫様か、
あるいは赤子を連れて行くようにひょいと持ち上げてしまう。
そうして、寝台に運ぶまでの間にもう一度深く深く接吻を交わした。
ゆっくりとした足取りで、慎重に、そしてじっくりと味わいながら。
ちゅぷっ……くちゅっ……
二人の間から漏れ出す湿った音しか、もうジンタの耳には届いていない。
三度目の雷光と轟音が、小さな山小屋を震わせた。
そっと、ギヴは小上がりの上にジンタの体を下ろすと
その身を包んでいた毛布を寝台に広げる。
いよいよ露わになった愛しい人の体は、
残念ながら夜の闇に包まれて輪郭しかわからない。
しかし、何度となく目にしてきたその健康的に色づいた肌の色や質感は、
見えずとも感じらる。
何よりも、毛布の中に閉じ込められていた湿った汗の匂い、
そして、精の先走りの匂いが、何よりも生々しく目の前に横たわっていた。
(もう我慢できん……!)
隆々と股の間で己の雄を盛らせながら、ギヴは他の場所を愛撫するのも忘れて、
迷わずジンタの股の間に顔を埋め、
そこに鎮座している熱く、硬く、可愛らしい突起にむしゃぶりついた。
「ひぁっ、ぎ、ギヴっ」
それは戸惑いの声だったのか、抗議の声だったのか。
どちらだったとしてももう獣の衝動を抑えるのは無理だった。
舌で全体をこねくり回し、たっぷりと唾液を含んだ口内で竿を遊ばせる。
そうして先端からじんわりと滲み出した愛液を味わいながら全体を吸い上げる。
口で前を弄りながら、その手はしっかりと肉の付いた、
しかしギヴからすれば華奢な腰を押さえ、ゆっくりと降下を始めていた。
腰の裏の双丘を辿り、その谷間にある秘部に指先が触れる。
「あぁんっ、んっ、やっ、ちょっ、はげしっ、ギヴぅっ」
入り口を撫でてやると、それに答えるように口の中の塩味が増す。
それが嬉しくて、そのままググっと奥まで侵入を試みた。
「んぎっ……!」
とたん、それまでの艶めいたのとは違ううめき声が上がる。
少し残念な気持ちになりながら、ギヴはその場所から指を離し、ゆっくりと顔を上げた。
「ぎ、ギヴぅ……もっと、ゆっくり……んぅっ」
太腿を掴んで開かせ、少し腰を浮かせるように持ち上げるとその場所を探しやすくなる。
今しがたまで口の中で遊ばせていた肉棒の根元にふんふんと鼻を押し当て、
少しだけひんやりとしたふぐりの感触を舌と口元全体で堪能しながら、
一度袋全体を食べるように口の中に入れて転がす。
すっぽりと口の中に納まってしまう小さな玉袋と
その中にある二つの柔らかい感触がまた何とも可愛らしく、愛おしかった。
ほんの少しだけそこで遊んでから、ふぐりの裏側を辿り、その場所にまで舌を這わせる。
皺を一本一本引き伸ばす様に穴の入り口を絆していくと、
指の時とは違い、するりとその内側に入り込むことができた。
グチュッ……ヌジュッ……
入り口を湿らす唾液と、内側から漏れ出す粘液が、キスとは違う濁った音を立てる。
グイッと奥まで舌を入れると、内部は収縮と弛緩を繰り返し、
しかしそれは何かを追い出そうとする動きと言うよりも、
まるでその中へ中へと侵入者を求めているようだった。
「ひぅあっ……!あっ、あぁ……」
再び、ジンタの喉から漏れる声が艶を増していく。
じゅぽんっ、と、音を立てて舌を引き抜くと、
軽く口元を拭いながらギヴは体を上げた。
「ジンタは本当にココ舐められるの好きだよな?
コレを挿れてもらうのと、どっちがいい?」
「ぅう……」
ギヴの逞しい肉幹がぺちぺちと、ジンタの股間から下腹部を叩く。
ニヤニヤとしたギヴの笑みも、真っ赤になって押し黙るジンタの顔も、
お互いこの闇の中では見えていないだろう。
しかし不思議と、どちらも相手がどんな顔をしているのかわかっていた。
言葉に詰まっているジンタに、クックッと喉の奥で笑いを堪えながら
ギヴは先ほどまで丁寧に解した入り口に指を滑り込ませる。
絆され、じっとりと粘液にぬらされた秘部はさっきとは違い、
すんなりと太い指を飲み込んでしまった。
「ぃうっ……!」
「ん。奥がキュウキュウ締まって気持ちいいぜ。もう少し解してやるから我慢しろよな」
言いながら、穴を広げる指の数は増えていく。
二本、三本……四本。
「っはぁっ、あぁっ、ぐっ……んんっ……」
流石に拳まですっぽりとはいかないが、もう十分だろう。
ずぬんっ、と、またも雑に指を引き抜くと、
散々待たされて先走りを垂らし続けていた太く逞しい雄の象徴を入り口にあてがうと、
ゆっくりと腰を前に押し出していく。
体格的にジンタにとっては巨大すぎるとも見えるギヴの肉幹を、
しかし幾度となく慣らされ、今も十分に解され、濡らされたジンタの秘部は
さしたる抵抗も無く飲み込んでいった。
「ぐぅっ……んっ、んんっ……ああっ!」
ずるん、と、その一番太い場所、熱く充血し大きく開いた傘を飲み込んだ時、
今までで一番大きな悲鳴が上がる。
「あぁ……あっ、はぁ……んっ、ぐぅ……ぅんんっ」
だがそれもすぐに甘い吐息となって、ズブズブと、ついには全部飲みこんでしまった。
グッと腰を密着させたまま、ギブは確かめるように数回、ジンタの最奥部をノックする。
そのたびに小さく、甘い悲鳴が上がった。
「よしよし。わかるか? 今日も全部入ったぞ。
もうすっかり雌の穴になったな、ジンタ?」
「……」
押し倒され、頭を撫でられながら、それは褒め言葉なのか、
いや、彼にとっては褒め言葉なのだろうが、それを嬉しいと受け取っていいのか、
ジンタはわからずにただ、彼に与えられるモノを受け入れるしかできない。
何も答えられずにいるジンタの口に、また柔らかく湿ったものが当てられた。
半開きになっていた口を閉じることなく、静かに目を閉じて受け入れる。
と、一筋の滴が目じりからこぼれ落ちていくのが感触でわかった。
どうして湧いた涙なのか、ジンタ自身にもよくわからない涙だった。
「ジンタ……?」
見えていないだろうに、涙のにおいでも感じたのだろうか。
ギヴが顔を離し、心配そうな声で聞いてくる。
「痛かったか?」
「……」
上ずった息を漏らしながら、ジンタは首を振る。
本当に、痛くはないのだ。もう。
最初の頃は切れたり、苦しかったりもしたけれど。今は本当に。
ただ、己の内側から圧迫してくる巨大な熱とその硬さに、少しだけ怖さを感じる。
他のあらゆることでどうだったとしても今この瞬間だけは、
間違いなく彼は自分よりはるかに"強い雄"で、自分はそれを受け入れるしかない。
それは嬉しい事なのに、求めてもらえることを嬉しいと感じているのに、
少しだけ、怖い。
そんな涙だったのかもしれない。
自分を貫いたままじっと包んでくれている温もりの中で、ジンタはそう思った。
「ギ、ヴぅ……」
心の整理がついてくると、呼吸もいくらか落ち着いてくる。
甘えるように彼の名を呟いて、手を伸ばし、
柔らかい体毛に包まれた大きな背中にすがりついた。
「やさしく、して……?」
「……っ!」
掠れた呟き声は熱っぽくて、今までで一番甘ったるい響きとなってギヴの耳に届いた。
弾かれたように、腰の抽送運動が始まる。
最初の数回こそゆっくりだったが、濡らした粘液が、
今も内側で溢れ出している粘液が竿全体にぬめりを与えると
それはジンタの許容範囲をはるかに超えた早さで加速していった。
プチュッ…グチュッ、ヌチュッ、グチュッ
「やっ、あぁっ、ぎ、ギヴっ、も、んぅっ、もっと、やさっ、しくっ、んむぅっ」
激しく突き上げられ、制止の声を上げる口を乱暴に自身の口で塞いで、
なおもギヴの突き上げは激しさを増していく。
「……っ、……っ、ぷはっ、はぁあっ、ああぁぁっ!」
喘ぎ声さえ食らうかのような、
喉の奥の唸りを啜り上げるような乱暴なキスから解放された後は、
ただ腹の内で暴れ回る熱に押し出された空気が喉を震わせるだけだった。
突き上げられる腹の奥からじんわりとした痺れが全身に広がって行く。
まだ始まったばかりだというのに抑えようと思ってもどうにもできず、
激しく内側をこすり上げていく熱の塊は、到底その手を休めてくれそうにはない。
せめてもの抗議にと必死にその身体にしがみつくも、
相手を押さえつけるどころか、むしろ突き上げる勢いがさらに上がっていく。
「ひぐっ、イっ、ちゃう! あっ、イっ、イクぅうぅぅぅっ!!」
「うおっ、オオオオォォォオオォッッ!!」
抑えきれない熱がはじけて、快楽が痺れになってジンタの全身を襲う。
ギュウっと自分の中にある熱を絞り上げてしまうのを感じて激しく首を振るも、
次の瞬間にはより熱い奔流が下腹に放たれるのを感じて、
逃し切れない熱がジンタの体をビクビクと何度も震わせた。
「はぁっ……ひぅっ……あぁっ、あっ……んひぃっ……」
フー、フー、と、荒い息をしながら、
ギヴは腕の中で痙攣を続ける小さな体を抱きしめる。
強く、強く、でも、壊さないように。
二人の間に広がる熱いぬめりと栗の花の匂いが、ギヴの充足感を満たしていった。
数回の強い痙攣が収まった後で、また小さく震え続ける背中をゆっくりとさすり、
その顔を余すことなく嘗め回す。
愛しい、可愛い、いい匂い。
もっともっと喜ばせたい。
もっともっと気持ちよくしてやりたい。
そんな単純な欲望が、次から次へと湧いてくるのを感じながら。
「ギヴぅ……」
「すまんすまん。あんまりにも可愛くねだられちまったんでつい、な?」
乱暴に抱いてしまった少年が、上気しながらも不機嫌そうな声で訴える。
明るくからかうような、いつも通りの口調で獣はそれに答えた。
「……いちおーだけど、これで終わりってことには?」
「そりゃあ、なぁ?」
わかるだろ、とばかりにギヴは軽く腰を突き上げる。
感触として、人間が一回に出すそれよりもはるかに多い量を腹の中に感じながら、
ジンタは未だ衰えない巨大な熱の塊にグイグイと最奥をつつかれるのを感じていた。
「んっ、やぁっ、ちょ、ちょっと休憩っ!」
「だーめ。まだまだ、たぁっぷりと注いでやるからな」
「やっ、ちょっ、やだっ、てっ、あぅっ、やぁあっ」
「相変わらず上の口よりも下の口のほうが素直だなぁ?
へへ、あーあーこんなにがっついて。零さないようにしっかり力入れとけよ……!」
幾度目かになる遠雷の音が遠く尾を引いて消えていく。
降りしきる雨音もいよいよもって激しさを増していたが、
もはや二人の耳にはお互いが生み出す湿った水音しか聞こえていなかった。
その身体を濡らしていたのは雨なのか、汗なのか、それとも互いの愛液か。
それすらもわからなくなるまで。
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