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神■ノ■変性■獣ノ55話「テン使ヲゼつ滅さセるトちカッた日」
しおりを挟むアジサイは顔をしかめた。
ダンプトエルに到着したのはいいが、ウィズアウトのピーシーがダンプトエルに向かう最中、当初の予定を変え、進路にあるジュエルムートで遊びほうけている。その結果アジサイはピーシーより先にダンプトエルに到着した。
アジサイは当初の予定を変更し待ち伏せによる奇襲を画策する。そのためにピーシーの滞在場所の下見に来ていた。
場所はダンプトエル領主ロシエル・ルザエリテの館、広さはさほどの大きさもない。せいぜい小学校くらいの面積だった。
アジサイはそれがかえって気になった。普通に考えても領主の住まいが小さすぎるのである。もっと正確に言えばダンプトエルが王城に収める税収に対して領主の館が小さすぎるのである。
念のためアジサイは館へ侵入を試みる。警備は少なく、魔獣避けもない、アンラの力を使えば容易に侵入できる。
「アンラ、ちょっと内部に潜入したい」
「わかった透過する」
アンラは透過を発動しアジサイの身体を纏う。アジサイは義装を発動させ、周囲の情報をキャッチアップする。
『さて、行こうか』
アジサイは思念で会話できる術式を発動し、アンラと会話を行う。
『こちらも周囲を警戒する』
『了解』
「さて、そらまめ、お前は宿に戻ってな、ここまでの道案内ありがとう」
「ワンワン!」
そらまめは吠えて返事をすると宿に戻って行った。
アジサイは領主の館の正門の前に立つと、足音消しながら、内部に侵入する。周囲は魔獣避けの術式が無いか確認する。
『あの魔術はないようだな』
『いいね、楽が出来る』
『貴様、魔獣避けが無いと言うことは魔獣を放っている可能性があると言う事だ、臭いまでは消せぬぞ』
『そうだね』
『気を引き締めろ』
『ああ、わかっている』
アジサイはレンガ造りの中世風の館の前にある庭に立つ。
校庭程の庭には、それなりの樹木が並び、季節ごとに花を咲かせるように植物が配置されている。
長閑というのが言い得て妙であった、周りを見回すにこの広さの庭を管理するなら警備は正門にいる衛兵が交代して庭の警護もできる。樹木も体を隠せるほどの高さはなく、開けている。アジサイが透過していなければ館の窓からも正門からも姿を捉えることは簡単であった。
アジサイはレンガ造りの道をノックする。音の反響を装具に反映し床下の状態を確認する。
『ビンゴ! 地下があるな、しかもかなり大きい』
『ほほう、地下とな』
周囲を警戒しながら地面をノックし、より鮮明に地下の様子を探る。
庭の隅々まで探索すると、アジサイは次に館の外壁に向かう。
『さっきの地下だけど、たぶんあれば牢屋だな』
『領主の家に牢屋か、奇怪であるな』
『ああ、まさかとは思うが、領主の趣味か?』
『人間の性分に興味はない』
『今回ばかりは盗賊狩りのノウハウが生かせてよかった』
アジサイは外壁をノックし、館の中の状態を調べる。
『館の中はメイドにメイドにメイド……おお、若い女の人ばかりだな』
『そんなこともわかるのか』
『ああ、わずかに聞こえる話し声とかからだけど……妙だな』
『どうした?』
『男がいない』
『それの何が問題だ?』
『領主が不在って言う事さ』
『先に言っておった地下はどうだ?』
『可能性はあるよ、地下はちょっと音が届かなくて、内部構造がぼんやりわかるくらいだし』
『では地下に行くか?』
『賛成、さてじゃあお邪魔しようか』
アジサイは猫のように飛び上がると、テラスの手すりに手を掛ける。それを起点にテラスの内側へ侵入し、鍵を掛けられていない扉を開けて内部へ侵入する。
テラスから侵入する人間はこの世界では稀有な存在で、鍵をあまりかけないのである。
魔術で空を飛ぶことも出来なくはないがそれが出来るレベルの魔術師ならそもそも夜盗に成り下がらないし、領主の命を狙うのならわざわざ当人の家ではなく外出先を狙う。
中は中身通り中世ヨーロッパのあの感じである。アジサイは地面をかかとで二回叩き内部の構造を把握する。
把握した内部構造を頼りにアジサイは足音を殺しながら部屋を進む。
着いた先は領主の私室と思われる部屋であった。本棚には小難しい本がずらりと並べられ、ベッドがあり、机がある。机の上にはいくつか手帳が並べられている。
アジサイは周囲を警戒しながら手帳を読む。
『何が書いてある?』
『おっと、これは……』
アジサイは軽口で話をするが、表情は硬かった。
『だから何が書いてあるのだ?』
『奴隷の仕入れさ、これは酷い、廃棄日も書いてあるところから人間で遊ぶサイコ野郎ってことだな、しかも人妻人妻人妻っと死んだ方がいいクソ野郎だな』
『人妻?』
『結婚した女に性的嗜好を持つってことさ』
アジサイは手記に書かれている内容メモしながらアンラと会話をする。
『ふむ、生殖と言う面では頷けるが、書物を読む限り、それは人間としてはダメであろう。しかし、妬むのが人間であるのなら至極人間らしい』
『一夫一妻の国に生まれた俺からしたらなんともだな、正直、先輩の奥さん二人もなぁ……』
『人の家族事情にかまけている場合か?』
『うっ……そうだね、さて、ここの領主がクソっていうことがわかったし、次に行こうか』
アジサイは足をトントンと石造りの床に叩き、音を反響させる。
『やっぱりベッドの下か』
『やっぱり?』
『男はね、大事なものはベッドに下に隠す物さ』
『ふむ、たしかに貴様のへそくりはベッドに下にあったな』
『お、スピカには内緒ね』
『帰ったら確認すると言い、空になっているぞ』
『まじか……スピカめ……』
『隠す貴様にも問題があるだろう?』
『返す言葉もございません』
アジサイはベッドの足回りを確認すると、引きずられた形跡に気づく。その方向にベッドを押すと地下へ続く梯子を見つける。
『ビンゴぉ!』
『やるな貴様』
『と言ってもここ以外にも地下へ通じる道はあるだろうけどね』
『奴隷の搬入か』
『御名答、さて降りるか』
アジサイは梯子を伝って地下に降りる。ベッドは元に戻し自分がいた形跡を出来るだけ隠す。
地下は薄暗く、論装が無ければ歩くこともままならないだろう。空気の流れを感じることから空気孔や通路があるのは明白であった。
赤外線モードを新たに設定しアジサイは周囲の状態を確認する。
「助けて……」
女性の声がするのが分かった。アジサイは声の方へ進むと牢屋が刑務所のようにずらりと並べられている通路に行きついた。
アジサイは苦虫を噛み潰したような表情をするが、その牢屋を無視して先へ進む。
『助けなくて良いのか?』
『脱出できる場所を探さないと、足を切られているかもしれない』
アキレス腱を切ることで自由を奪う。よく慰み者の女性に使われる手段である。アジサイも何度か目にしたことがあるが痛々しく、虫唾が走るモノだった。
アジサイはまっすぐな通路を進むと部屋に辿り着く。一歩通行ということもあって迷うことはなかった。
警戒しながら部屋のドアを開ける。
次に目に写った光景はアジサイの逆鱗に触れることとなった。
場所はまさしく拷問部屋でそこには想像すら苦痛と感じるほど凄惨な光景だった。
嬲り殺しに寸前の女性たちが何人も磔にされていたり、水の中に沈められていたり、手や足の甲に指程の太さの杭を打ち込み壁に吊るしていたり、体の半分以上を焼かれてショックを起こし死んでいる者もいた。
嗅ぎ慣れない血の臭いに女性たちの嗚咽と嬌声、そしてこれらの人物が全て誰かの妻で会ったことを理解した瞬間、激情と憎悪に駆り立てられる。
感装のおかげで精神は一定に保たれているため、理性は正常だった。アジサイは部屋一帯をくまなく捜索する。
女性たちを詳しく診るがどれも助かりそうにない、医者の元へ連れて行っても助けられるか分からないレベルの酷い怪我を負っていた。アジサイ一人では運び出すのは無理なのはすぐにわかった。
それ以上に拷問部屋の目の前には堂々と扉がある。鍵も付いていないことにアジサイは不信感を抱いた。
恐る恐る扉を開けると通路が続いている。先ほどよりも強い風が吹いているところから、この先が奴隷の搬入口であると察しがついた。
アジサイはそのまま進むと通路はかなりの距離があることがわかった。コンクリートのようなもので囲われた広い通路は一キロほど続いており、出口は領主が所有する館近くの森に出た。ここなら安全に誰にも見つからずに奴隷を搬入できる。
『ここがゴールみたいだな……』
アジサイは声音を低くして、苛立ちを言葉に含ませる。
『不味いぞ』
『魔獣か……』
『戦うか?』
『確認して逃げる。数を減らしたら警戒される』
アジサイは季装『春夏秋冬』を起動して、空気を操り魔獣の届かない位置まで上昇する。見下ろすと四足歩行の狼を模した魔獣がアジサイの臭いを辿りながら五、六匹が右往左往している。
『おい、貴様』
『どうした?』
『あの魔獣、人間の臭いがする』
『人間……キメラか……クソ野郎が!』
『騒ぐな』
『ここは腐ってやがる』
『五月蠅い!』
『……すまない』
アジサイは冷静さを取り戻すと、空中を移動し街の近くまで移動する。
宿に戻ると、アジサイは宿に備え付けられている机に腰を掛け、ため息を付いた。
装具を解除して、バックパックからショットシェルを取り出す。スラッグ弾仕様の弾薬を腰のポーチに詰め込み始める。牢屋の女性たちを見過ごせるほどアジサイは冷徹にはなれなかった。
「貴様」
アジサイは牢屋の女たちを救出する算段を立てる。
「貴様っ!」
「どうしたアンラ?」
「あれを見よ!」
アンラは窓から外を指差して驚いた表情をしている。
「んー、なんだなんだ――ッ!」
アジサイが見たのは領主の馬車だった。どうやら領土に戻って来たらしく、華々しく大通りを闊歩している。
その後ろは戦利品を乗せた荷馬車がいくつか目に入った。その中に、獣を搬入するときに使う、檻が備え付けられた荷馬車から見えたのは女だった。
白髪に蒼い瞳、大きな胸にくびれた腹のライン、その感触すら鮮明に思い出せるほどアジサイの近くに居た人物。
スピカ・クェーサー、アジサイの婚約者である。
アジサイはそれを目にした瞬間ショットシェルが詰まったポーチを手にする。
「どこへ行くのだ?」
「決まってんだろ!」
「あの近くにはピーシーがいる、下手に近づけばお前に何かあるかもしれぬ、それによく見てみよ」
「何をだよ」
「住人の顔だ」
アジサイは、自分を落ち着かせるように深呼吸をしてからもう一度窓辺に立つ。
街の住人はスピカを指差しながら楽しそうに噂を立てている。アジサイは義装を展開し、話し声を拾い、音から意味を調べる。
住人は嘲笑っていた。それは盗賊を彷彿させる。とりわけ奴隷狩りを行う最も卑劣で最も度し難い者たちを思い出させる。そして何より気持ち悪いのが町の住人が全て、老若男女問わず全ての住人が嘲笑っていたのである。
「どういうことだ……ピーシーの能力か……?」
「可能性は高い、ここの住人はおかし過ぎる……」
「アンラ、この街は明らかにどうかしている。そらまめを連れて先に王城へ帰還して欲しい」
「貴様はどうする?」
「俺はスピカを救う。今回ピーシーの暗殺は失敗するかもしれないが、彼女を……見殺しにできない」
アジサイは冷静を装うが、はらわたが煮えくり返る思いだった。
「……それではお前が」
「暗殺に失敗したら、俺は王城から追い出される。それならスピカと一緒に冒険者稼業に勤しめばいい」
「良いのだな?」
「書状を一筆したためるよ」
「……わかった」
「アンラ」
「どうした?」
「もしも行くところが無かったらジークを頼れ」
「縁起でもない」
「それもそうだね」
アジサイは机に座り羊皮紙に今回の一件を全て記載する。
三十分ほどを殴り書きの文書をアンラに渡し、そらまめと共にダンプトエルを旅立たせる。
「では、行ってくる、あの女を助けるのだぞ」
「わかってるよ」
アンラはそれを聞くとそらまめと共に書状を届けに王城へ向かった。
アジサイはアンラを見送ると、街の郊外で弾薬と今着ている服以外の物を全て焼き払うと季装を展開し、ショットガンM870を取り出す。ローディングゲートから弾薬を七発装填したあとフォアエンドを引いてまた戻す。弾薬を薬室に装填すると、もう一発弾薬を装填し合計で八発装填された状態となる。
ワンポイントスリングをポケットから取り出しショットガンM870のストックにある金具に装着する。
ベルト引っ掛けられているマガジンを確認する。MP5用の9 mmパラベム弾が詰まったマガジンを目視で確認し、アジサイは呼吸を整える。
「こんなことになるならライフル弾も持ってくりゃよかったな」
毒づきながらアジサイはダンプトエルのど真ん中上空に立つ。それからエレインから教わった氷の上位魔術を行使し上空を広範囲に冷やす。冷やされた空気の作用によって雲が集まり、雨を降らせる。魔力も充分に消費し、昼間に訪れた森へ足踏み入れる。偵察を行っているためおおよその地理は記憶している。
アジサイは森に降り立つと口笛を吹く。音を聞きつけて魔獣たちがぞろぞろと集まり始める。
「はぁ、結構いるな」
アジサイは装具の力で雷撃を操り、周囲の一帯にいる魔獣の脳髄を焼き切る。ほんの数秒で大方の魔獣を殺戮すると、淡々と前へ進む。
途中で現れた魔獣たちは全て同じ方法で殺害し通路に降りる。警戒を緩めることなく、前に進む。
コンクリート造りの内壁の様相が少し違和感を覚えた。足元を季装が生み出した炎で確認すると、術式が刻まれているのがわかった。術式の内容は一般的な警報術式で、この術式を踏み抜くと警報が鳴り響くというものである。アジサイは術式を慎重に解除を行う。
「描かれたものと逆順で処理、術式作成の基本は内部から外部を、外部の最後に書かれた場所は魔力の供給、ここを断てば術式は停止する」
アジサイは魔術の基礎を反芻しながら術式を慎重に解除していく。
一時間ほどかけて術式を解除するとアジサイは他にも術式がないか確認を行いながら慎重に一歩一歩体を前に進める。
通路側面、天井、地面全てを確認しながら一キロの道のりを踏破すると、拷問部屋の扉を開ける。
様子は変わりなく、女たちの顔ぶれは変わっているが基本は同じである。幸いにもスピカの姿はない。アジサイはひとまず安心すると牢屋がある通路に進む。
明かりとして使っていた炎を消し、アジサイは目が慣れるまで息を潜める。牢屋はろうそくの火が僅かに廊下を照らしている。
呼吸を整え闇に眼が慣れるとアジサイは前に進む。スピカのいる牢屋を探すと、すぐにスピカを見つけることができた。
粗悪で不衛生なベッドに腰かけて顔色が悪いが、ひとまず無事な姿を見てアジサイは安堵の息を漏らす。
その吐息をスピカは察知してアジサイの方を見る。
「よぉ、遅かったじゃねえか」
「ごめんよ」
「まぁいい、しかし、ピーシーに怪しい魔術で眠らされて気が付いたらこの様、お前、鍵はあるのか?」
アジサイは鉄格子を右手で掴むと熱気を操り鉄格子を溶かす。
「鍵はない」
「出れりゃいい、私はここにいるから他の奴らを助けてやれ」
「あいよ」
アジサイはスピカの頼み通り次々と鉄格子を溶かし、囚われた女性たちを解放していく。解放された女性たちは自分の足で拷問室へ向かっていく。どこに行けば地上に出れるかを把握できていた。
「スピカ、全員助けた」
「そうか……」
「帰ろう」
「そうだな」
「立って」
「これ、見ろよ」
スピカは両足をアジサイに見せる。アキレス腱の辺りがガーゼで覆われている。
「……お前、足が」
「そうだ、だから……私を置いていけ……私は歩けないんだ……」
アジサイはスピカ手を引っ張ると空気を操りスピカを空中に浮かせる。
「血反吐が出ても持ち帰る」
アジサイは覚悟を決めてスピカを運ぶ。
ショットガンを握る手は冷や汗が滲み出る。拷問室の扉を進むと、先ほど解放された女性たちがたむろっていた。
「助けてくださりありがとうございます」
女性の一人が駆け寄ってくる。
「いえいえ――」
アジサイはことの重大さに気づくがワンテンポ遅れ、ショットガンM870の銃口が敵に向くのが追いつかなかった。
鋭く光る物がアジサイの手首に入り込んできた。直後に鈍い痛みがじわじわと広がっていく。
「チッ!」
アジサイはショットガンを構え歩み寄った女性の胸を狙って発砲する。
右肘でフォアエンドを挟み、排莢と給弾を行う。斜に構えた状態で残りの七人を撃ち殺す。
「大丈夫か!」
「問題ない……と言いたかった、クソいてえ」
右手首を確認するとナイフが深々と刺さっており、腱まで切れてしまっていた。
拷問部屋を後にして、通路を走る。
対向から魔獣たちが駆け寄ってくる音が聞こえた。ショットガンの残弾はゼロである。アジサイは炎を展開し、それを直線に伸ばし魔獣を目で捉えると伸びた炎が魔獣に絡みつかせ焼き殺す。
アジサイは口から血を吐き出す。神性が限界を迎える兆候が見え始めた。
「おい、大丈夫か!」
「回復魔術を使う」
アジサイはナイフを一思いに引き抜くと回復魔術を行使する。二十分ほど時間裂いて右手を回復させる。神性も適度に減ったおかげで体が少し楽になるのがわかった。
右手の駆動に問題ないことを確認する。
「大丈夫だな」
「スピカの足も直そうか?」
「いや、いい、呪術のだろう、三日前から回復の気配がない。専門家が必要だ」
「んじゃ、早いところ解呪しないとな」
アジサイはスピカの手を取り、空気を操りアジサイ自身も体を浮かせる。風を押し上げて、通路を一気に進む。ものの数分で出口が目視で確認できた。
「スピカ、こっちへ」
アジサイは出口付近に付くと、スピカを座わらせる。ショットガンに弾薬を八発装填したあと地上に出る。
周囲はすっかり夜になっており月が顔を出していた。人気がないか周囲を確認し問題ないことを確認する。出口に戻ろうとした瞬間、アジサイの後頭部に衝撃が走る。
地面に視線が落ちるところでアジサイの意識が途絶えた。
焦点が定まらない目で、何とか這いつくばりながら搬入行へ戻ろうとするが、脳みそが衝撃でうまく機能しなかった。
男たちは透過術式を解除すると次々と姿を現した。
自分の常套手段を相手に使われ、アジサイは狼狽する。
「健気に這い蹲ってるー惨めー」
女の声が聞こえた。アジサイは混乱したまま辺りを確認する。そこには暗殺対象であったピーシーの姿があった。
「クソッ」
ピーシーは端正な顔立ちに長い髪、白を基調としたドレスコーデのような姿でアジサイに立ちはだかる。
「こわーい、でもー、武装解除をしてもらおっかなー?」
アジサイは我に返り状況を確認する。
「断ると言ったら?」
「アジサイちゃんの大事大事な婚約者の子が死んじゃうかもねー」
ピーシーの側近の一人がスピカの髪の毛を乱雑に掴み無理やり引きずり出す。ピーシーは合図ひとつでいつでも殺せると言わんばかりにアジサイを威圧する。アジサイは顔をしかめながらワンポイントスリングを外し、その場にショットガンM870を地面に放り投げる。
「武装解除した」
「違う、全然ダメ、その怪しげな装具だっけ、それも全て外して、二種類の宝珠の状態でね」
話が全然違うじゃねえかとアジサイは毒づく。厄介なことにピーシーもスピカも衛兵も周りを囲んでいる男たちはしっかりと距離を取っており、装具の射程から外れている。
現在手持ちにあるMP5ではピーシーを殺した上にスピカを救えるだけの対応力はない。もちろんスピカだけを救出するにしてもリスクが伴う。アジサイは下手にピーシーを刺激しないようにチャンスを伺う。
「装具を解除したらスピカを寄越してほしい」
「んー……どうしよっかな、まぁ、でもいいわよ、スピカを返してあげる」
アジサイは一安心したところで装具を解除し宝珠の状態にする。それから季装『春夏秋冬』と義装『忠節』を地面に放り投げる。
「はーい、じゃあ、返してあげる」
側近の兵士はスピカの髪の毛掴み彼女を引きずる。ある程度の距離になったらスピカを乱暴に放り投げる。
アジサイはロクに周りを確認せずスピカの元へ駆け寄り、彼女を抱きかかえる。
それから初めて周囲を確認する。
そこでアジサイは初めて気付く――
何百人の兵士、傭兵、冒険者に囲われていると言うことを――
正確にはアジサイの見える範囲でそれだけの数がいるが、耳に入る話声を聞く限りもっと多いのは明白である。
「アジ……サイ」
スピカの身体が自分にもたれ掛かりそのまま地面に倒れ込んだ。
はっとしたアジサイは地面に目を落とすと、スピカの背中には深々と矢が刺さっていた。
矢は左背部から斜めに入り、右胸部まで貫通していた。心臓を貫いていた。
「スピカ、おい!」
アジサイはぬかるんだ地面に膝を落としスピカを抱き上げる。
「やられた……致命傷だな」
「すぐに治療する、今回復魔術を」
「アジサイ、私は持ってもあと三分くらいだ」
口から血を吐き、徐々に消えていく彼女の体温が指先から伝わる。
「おい、そんな、何とか……装具!」
アジサイは先ほど地面に放り投げた装具に目を置く。
「残念だったな」
側近の一人が隙を見て装具を既に回収していた。側近は拾った装具を軽く投げてはキャッチして遊んでいた。
「アジサイ!」
スピカは残りの体力を振り絞ってアジサイを呼ぶ。
「スピカ……」
「アジサイ、この一年、楽しかった……本当に楽しかった。だけどな、もう終わりなんだ。たぶんこれ以上幸せになることは神様が許しちゃくれないんだな」
「……そうだな」
アジサイは頭ではわかっていた事実を感情で拒みながら冷静を装い、話をする。
これがスピカと話が出来る最後なのだから――
「アジサイ、覚えているか……初めて会った時の事、盗賊を何人か殺しただけでピーピー泣いていた奴が、今じゃ立派な冒険者になってさ、まぁ私から言わせりゃ、まだまだ三流もいいところだけどな……もっと強くなったところを見たかったな」
「君のおかげさ」
「だろ……な……そしてさ、その……アジサイ、選んでくれてありがとう」
「それは逆のセリフだよ」
「お互い様だな」
「そうだね」
地面が赤く染まるのがわかった。スピカの身体は冷え切っている顔色もどんどん蒼白になり死神が近づいている。
「アジサイ、なぁ、アジサイ……」
「どうしたスピカ」
「最後にさ、お前の本当の名前を……」
アジサイはスピカの耳元で自分の本名を囁く。
「へぇ……変な名前」
「おいおい、そりゃあ……ない」
「なぁ……最後に一つだけ……一つだけ言ってもいいか?」
「何個でも言えばいい」
スピカは微笑する。それから浅い呼吸をなんどかした後、アジサイの頬を左手で撫でる。
「子供、産んでやれなくてごめんな……次の女に産んでもらえ……それと――」
スピカの左手で最後の力を絞って、アジサイの顔を寄せる。そして唇を重ねる。ほんの数秒だけスピカの体温を感じた後、アジサイの口の中は鉄生臭い血の匂いが広がる・
「死にたく……ないな」
そう言い残して、彼女の目から光が消え、手は力なくだらりと崩れ落ちていった。
アジサイの頭は真っ白になった。
なぜ、こうなった、どうしてこなった、なんで俺ばかりこんな目に合わなくちゃいけない、理不尽だあんまりだ、返してくれ彼女を、スピカを、私の妻を、俺の女を返してくれ。
家族を返してくれ――
全てを呪うようにアジサイは何度も何度も何度も心の中で反芻する。
「今の見た? すっごい悲劇、思わず涙が出ちゃう、面白いわよね哀れ哀れ、可哀そう、みんな、アジサイと恋人スピカに拍手拍手!」
そう言いながらピーシーは囲んでいる男たちとアジサイを小馬鹿にするように笑いこける。
甲高い笑い声が森に響き、アジサイの癪に障る。
アジサイはスピカの矢を引き抜くと、回復魔術を行使して体を治癒させる。無論死んだ人間がこれで蘇ることはない。
そのまま両手でスピカを抱えるとアジサイはゆっくりと立ち上がる。
「ピーシー、死ぬ前にひとつだけ聞きたい」
「何かしら?」
勝ち誇った表情でピーシーは返事をする。
「どうしてスピカだったんだ? どうして彼女を狙ったんだ?」
「んー、それはね、幸せそうだったから。私って、自分以外の奴が幸せそうにしているの見ているとイライラしちゃうの」
「そうか」
これならまだアジサイを意識して人質として捕らえたと言う方がマシである。
「もしかして怒っちゃった? ねえねえ、怒ったの?」
アジサイの怒りを煽る様にピーシーはにこやかに笑う。
「よくもまぁ、こんなクソ天使に付き従うな、お前ら頭おかしいんじゃねえの?」
アジサイはピーシーを取り巻いている男どもに毒を吐き捨てる。
「何を言っても無駄、私の能力は人間に快楽を与える、一度与えたら最後、死ぬまで私に従ってくれるの。この街の人間は全て私の思うまま言いなり」
ピーシーは楽し気にいう。
「例えば――」
ピーシーは取り巻きの男を指差す。
「死んで」
そう言った直後に、指差された男は持っている短剣で首筋を切り裂いて血飛沫を上げならその場に倒れる。それを見た他の男たちは笑いこけている。
「ふーん、もういいや」
アジサイは呆れていた。
「あっそ、じゃあさっき言った通りおとなしく死んで……ああ、そうだ、私の下に付いてくれるのなら殺さないけど?」
アジサイは気怠そうに、月を見上げる。
「何を勘違いしているか分からねえが、死ぬ前って言うのは俺のことじゃねえ――」
アジサイは悪装『津罪』を展開する。悪装は宝珠が割れたような形状だったが、今は漆黒の球体となっており、完全にな姿となっていた。
装具を展開すると、黒いボロボロのローブのようなものが展開される。足元から黒い不定形のスライムのようなものがあふれ出る。
その光景を目の当たりにした瞬間、ピーシーは矢をけしかける。アジサイは全身から魔力を放出させ、弓矢を無理やり弾き飛ばす。元々は肉弾戦で打撃を強化するための技だがこのように飛び道具を無効化することもできる。ただしものすごく燃費が悪く、魔力のロスも多い技であるが、今のアジサイには好都合だった。エレインとジーク、そしてスピカ・クェーサーから学んだ戦い方である。
黒い何かは、四方八方に凄まじい勢いで槍のように男たちの胸を貫いた。貫通した不定形は次の獲物を求めるように男たちの心臓の音を聞きつけて突き刺さる。蜘蛛の巣のよう広がり殺戮を行う。
「何よこれ、こんな装具……記録にない」
「だろうなッ」
アジサイは黒い不定形でピーシーの四肢を捉える。その後不定形はピーシーの目に張り付く。
それから黒い不定形はピーシーの瞼を引きちぎる。激痛で悲鳴を上げる。千切れた瞼を黒い不定形が吐き捨てる。
アジサイはスピカを抱きかかえたまま、街へゆっくりと歩みを進める。黒い不定形がアジサイのポケットに入り込むと二つの宝珠を収める。
ものの数分で森に居た男たちは串刺しになる。ピーシーは四肢の骨を折り、生きたまま街へと運ぶ。
暗夜の世界で、白い髪の男は血のように紅い瞳を狂わせながら、街へ向かう。何百人の死体を運びながら――
道中、現れた敵も魔獣も動くもの全てを黒い不定形は見境なく襲い掛かり、全てを尽く滅ぼしていく。虫の一匹さえ例外なく全てに襲い掛かった。
街へ着くと、悪装は自立して街に居る住人を見境なく襲い掛かる。住人たちは何が起こったのか理解できないまま悪装の力によって四肢を折り、心臓を貫き、頭をグチャグチャに潰し。ころした遺体はコレクションのようにアジサイの元へ集められる。
アジサイは適当な広場に着くと死体を放り棄てる。街中の死体が一か所に集められ、山のように積み上げられる。
アジサイは死体が積まれていくのをぼんやり眺めながら魔力を放出し続ける。
「死ぬ前に聞いてもいいか?」
「な、なに……」
先ほどまでの威勢はなく、ただ怯えた野良犬のようにピーシーは返事をする。
「ここダンプトエルの領民って人数どのぐらいだ?」
「や、約、じゅ、十万……人」
「そうか、ということはここには十万の人間が積まれているのか」
アジサイは死体の山を見上げながら答える。
「まさか街の人間を――」
「お前の能力の毒牙を掛けられた人間だ、何をするかわかったもんじゃない。だから殺した」
アジサイは悪装を解除する。義装に切り替える。黒いグローブに黒いピアス、黒いカラーコンタクトと黒一色に統一されている。そんなカラーリングだったか今のアジサイには思いだせない。
スピカの亡骸をそっと近くにあるベンチに寝かせる。
それからアジサイは指をパキパキと鳴らす。
ピーシーの元へ歩み寄ると頭を掴み外壁に顔面を叩きつける。そのまま適当な建物の外壁に顔をこすりつけて、肉をおろし金の要領で削っていく。それに飽きたらもう一度外壁に叩きつける。顔の肉は削ぎ落とされ、歯と頬骨、頭蓋骨が露わになる。
「だスケてイノちは――」
「ああ? バカじゃねえの?」
アジサイは何度も何度もピーシーの頭を壁に殴りつける。額の骨は砕けて脳漿があふれ出ているアジサイは手を放しその場に倒れるピーシーの腹を蹴り上げる。
「お前ら天使族のせいでッ!」
蹴り上げると外壁にぶつかり、その衝撃に耐えられず外壁が崩れ落ちる。アジサイは崩れた外壁の破片を踏みつぶしながら建物に入る。這いつくばって何とか逃げようとするピーシーを見下ろして折れている腕を左足で踏みつぶす。小気味悪い骨の砕けると音が建物に木霊する。アジサイは右足でピーシーの腹を蹴り上げる。
「スピカはッ!」
腹を蹴り上げる。
「死ぬことッ!」
腹の肉片が飛び散り臓物が溢れる。
「無かったんだッ!」
ピーシーの胸部を踏みつぶし心臓も肋骨も全てを破壊し、もはやその肉の塊がウィズアウトのピーシーで在ったこともわからない状態まで追いやる。
「しゃーぼーんだーまーとんだーやーねーまでーとんだー……このあと続きってなんだっけ? まぁ、どうでもいいかクソがッ! 死ね、クソがッ!」
アジサイの怒りはそれでも収まることなく、肉塊をさらに踏みつぶしひき肉にする。何度も何度も何度も踏みつける。一回一回全ての怒りをぶつけ何度も肉をグチャグチャする。
「クソが、死ね! ふざけやがって! どいつもこいつ! なんでだよ、なんで俺だけこんな目に合わなくちゃいけないんだ! どこ行っても、何やっても、どう頑張っても友人も家族も恋人も誰一人救えはしない! どうしてだよ……なんでだよ……俺がなにしたって言うんだよ……せめて俺からスピカを奪わないでくれよ!」
「ああ、そうだ、やねまで飛んで、壊れて消えただ、いや違うな、シャボン玉消えた飛ばずに消えた、生まれてすぐに壊れて消えただ」
もはや赤黒い何かに成り下がるまでそれを続けるとアジサイはため息を付いてベンチに戻った。
「かーぜーかーぜーふーくなーしゃーぼんだーまーとばーそー」
季装を展開するとどす黒い羽織がアジサイの身体を包む。
それから妻のとなるはずった女性の亡骸を抱きかかえると、ゆっくりとダンプトエルを後にした。眩しいくらいの朝日が夜を終わらせるが、太陽が移したのは十万と一の死体と涙を流している男だけだった。
神が男に強いた運命は、静かでささやかな幸せすら奪い去るものだった。
白髪の男が持ち合わせていた神を信じる心は闇へ消えていた。
ただそこにいるのは一匹の獣、最早、人であることは、懐かしき日々も思い出と共に心の奥底、泥の奥底誰も届かない場所へ封殺する。
一匹の獣、ただ天使を殺す一匹の獣は、慟哭のままに、復讐心のままに世界を呪った。
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
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