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天ノ29話「プレゼント企画」
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事は六月も終わりを迎えそうな夏の日に起きた。
ミオリア達はある知らせを受けて、王城に緊急招集がかけられた、
なぜなら、アクバ王の暗殺未遂事件が起きたからだ。
ミオリア達は、三か月の間、、警備のインフラが整うまで、アクバ王の身辺警護を行う緊急任務を全うしていた。
そして今日を以ってその任務が解かれるのであった。
「刹那のミオリア、此処に――」
「厄災のネフィリ、此処に――」
「雪華のエレイン、此処に――」
「忠誠のレオニクス、此処に――」
「狂乱のグーラント、此処に――」
「神罰のアンタレス、此処に――」
「灰燼のりゅーしゃー、きょきょに……」
懐刀たちはルーサーが噛んだ瞬間に爆笑した。
「何で自分の名前を噛むんだよ!」
ミオリアがツッコミを入れるとルーサーが不機嫌そうに涙で目を潤わせていた。
「うるせえ!」
金髪に燃え盛るような赤い瞳に端正な顔つきの男がミオリアにそう吐き捨てた。
この男が灰燼のルーサーであり、類稀なる炎の使い手である。
「いやいや、流石ルーサー殿でありますな」
全身に分厚い漆黒の鎧を纏っている男、レオニクスが陽気な声で笑う。
「ヒィー、今のはマジでねえぞ!」
特徴的な笑い声に、耳にいくつも付いたピアスが特徴の青い髪の男、グーラントが笑いを堪えられず玉座の前で腹を抱えていた。
老婆姿のアンタレスはローブで顔を覆っているが体を小刻みにしているのが遠目からでもわかった。
「そのあたりにしておけ――」
「はっ!」
一同が同調するかのように返事をすると、今までの朗らかな空気が一瞬で張り詰めた。
「さて、この三か月、寝ずに余の警護をしてくれたこと感謝する。部屋に報酬を届けさせておく」
「ありがたく頂戴させていただきます」
全員が返事をするとアクバ王はため息を付きながら、背もたれに体を預けた。
「して、本題に入るが、余の暗殺を企んでいる者が分かった。イライザ・エアルトル、大きな声で言いたくはないが、余の妾だったのだが、どうやら本性はピーシーと言って、ウィズアウトの構成員だった。まんまとしてやられた、暗殺など仕掛けられるのが久々過ぎて気が緩んでおった」
アクバ王は苦笑いをしながら長く伸びた白い顎髭を撫でていた。
「此度の一件、タンドレッサが独自に動き、ピーシーの二度目の暗殺はタンドレッサが食い止めたが、聞くに、これはアジサイの差し金だったと聞いている。ミオリアの部下が早速手柄を立てたようだな。実行したタンドレッサには昇級を約束したが、アジサイには何を与えれば良いのやら、ミオリア、アジサイの欲しい物はなにかないか?」
ミオリアは暫時口を塞いだままであった。
元々、アジサイという男は割合無欲で権力や金に貪欲でもなく、女にも目がないということはない。技巧派で色々な物を作るのは好きだが、それは作る過程を楽しんでいる。
「いやぁ、あいつだけは欲しい物わからないですね」
アクバ王は静かにミオリアの言葉を頷くと懐刀の顔を見回す。
「意見がある者は提案してほしい、誰でも構わぬ」
「肉とか美味い物を食わせるのはどうでしょう?」
ルーサーが当たり障りのない意見を提言する。
「食事か」
「アジサイ殿の好みは把握していますか?」
レオニクスが冷静に突っ込む。
「ボクは知らないよ」
「言われてみれば私も知らないな」
エレインとネフィリも揃って降参する。
「肉か魚だろ、どっちかなら誰だって好きに決まってるだろ!」
グーラントは安直な意見を考え無しに述べる。
「ハンドレットバードの卵はおいしそうに食べておりましたな、しかし、あれは今、時期が離れておりますからね、手に入れるのは難しいかと」
老婆姿のアンタレスがローブ越しに微笑んでいる。
「あいつの好きな物かぁ……何かな……」
ここのメンバーで一番、アジサイに詳しいミオリアですら頭を悩ませる事態であった。
「食材はやめて服とか、アクセリーとかどうだろうか?」
ネフィリが提案するが、懐刀の男性陣は首を傾げた。
「いやいや女じゃねえんだから」
半笑いでグーラントは指摘するとネフィリはふくれっ面になった。
「武器とかいいんじゃないですか? 盾とかシールドとか鎧とか、ロマンがありますし、戦いが多い我々ならいくつあってもいいのではないでしょうか?」
レオニクスが頭を捻りながら言ってみるものの、アジサイは武器を自作しているため、道具へのこだわりと言う面からレオニクス自身ですぐに言葉を撤回した。
「アジサイという男は難儀な人物のようだな」
「真面目で良い奴なんですけどねぇ、自己完結している男なんすよ」
ミオリアも困り果てていた。
「そう言えばアンタレスはあの者と今、行動しておったな、どういう者か申してみろ」
「はい、仕事面の話からまず、今はギルドの内部調査も兼ねて、アジサイ様と共に新米冒険者という設定で内部を探らせております。元々強いのもありますが、慎重な気質のためかダブルピーから受けた傷よりも深手を負っているところは見ておりません。仕事ぶりは、ストイックなところがあり、ちょっと気がかりといったところでしょうか。人間性の面では、そうですね、温和で人当たりも良く、のんびりした性格ですね。仕事になると人格が変わったように鋭い目つきになり、表情ががらりと変わるのが見ていて面白いかと、あと、アジサイ様の持つ、装具と呼ばれる武具、あれについてですが、中々興味深い武具ですね」
興味を持ったのかアクバ王は顔を前に出し、アンタレスの方を見つめた。
「話には聞いている。たしか風を操る武具だとか」
「ええ、それもありますが、あの装具、いくつか種類がございまして、風を操る装具起装『雪解』、黒い禍々しい何かを操る悪装『津罪』、物理現象と呼ばれる物を観測する論装『怜青』の三つですがこれ以外にもあると本人が言っておりました」
「ほう、余は風を操る装具しか聞いていなかったが、そんなものまで、悪装『津罪』は見たことがないがこれはどれほどの強さを持っているのだろうか、知っておる者はいるか?」
「それならジークが詳しいので今度聞いてみるのは如何でしょうか?」
「なるほど、エレインの言葉に従って楽しみにしておこう」
「はっ! 有り難きお言葉!」
エレインは深々と頭を垂れた。
「アジサイへの褒美は直接本人に聞くことする。次はジークになるが、竜狩りジークにも褒美を与えねばならぬな、豊穣を与えるアルスマグナの魂をもう一つまとめ上げ、力を回復させることでイシュバルデの豊穣をよる永遠の物にする。そのために竜を狩らねばならない、本来であれば懐刀全員で一頭ずつ狩る相手をたった一人で倒すあの剛力には驚嘆の声しか上げられぬ」
アクバ王はジークを褒め称える、
「ジークにも褒美を与えたいが、何をしたものか……」
「あー、あいつそう言えば、家が欲しいと言ってましたね。城下町からちょっと離れた静かな場所でひっそりと暮らしたいとか言ってましたね」
「家か……わかりやすくて良い、すぐに郊外に家を建てさせよう」
「それで良いかと」
ミオリアの提案がすぐに採用された。
「それ以外に何を与えようか、食事、宝物……」
「それ以外なら、旅行などが良いかなと、アルスマグナもいることですし、二人でのんびり慰安なども良いかと」
エレインが提案するとすぐにそれも認められた。
「ジークは欲しい物が決まっておって非常にわかりやすくて助かる」
アクバ王は気を楽にした。
それからアクバ王は一息つき、天啓が降りたかのように不意に妙なことを口に出す。
「アジサイとジーク、懐刀とどちらが強いか……」
この一言が、懐刀のプライドに火をつけた――
「成し得たことは認めますが、それでも、我々には及びますまい」
レオニクスが笑いながら、アクバ王に言い返した。
「ほう……秋の王座決定戦を楽しみにしておるぞ」
アクバ王は楽しそうに言っているが、懐刀たちは笑い事ではなかった。
なにせ懐刀はイシュバルデ王国最強と謳われる猛者たちである。それがここ数か月でポンと出た男二人に敗北するようなことがあれば、国の威信に関わるのである。冗談でも全員が敗北とあれば国防面において国民の信用が失墜するというのと同義である。
したがって、ジークとアジサイだけには負けるわけにはいかないのである。
だが、ジークは竜を狩った実績、アジサイは毒を一服盛られた状態でタンドレッサを圧倒している。タンドレッサの実力は魔導騎士団の中でも上位だが、懐刀には及ばないが実力は隠しているだろうという予想は容易にできた。
エレインとミオリアはアジサイの持つ、装具と魔術の技量が伸びていた時、どのようなことが起きるか簡単に想像していた。予想が間違っていなければ、懐刀を脅かす脅威となっている。エレインはこの時、アジサイの魔術へのセンスの無さに安堵する自分を恥じた。
「実際戦うとなった時、アジサイが持つ風を操る装具への対策を練らないといけませんね、私は白兵戦しかできないので、ジークを引きつけている間にエレイン殿が魔術で対処するのが妥当かと思います」
レオニクスはまじまじと二人と対峙した想定を始める。
「まず俺、ミオリア、レオニクス、ネフィリでジークの足止め、エレイン、ルーサー、アンタレスでアジサイを迎撃が無難だろうな、アジサイを片付け次第、総出で撃破すれば何とかなるな」
七人は意見を出し合い議論に花が咲き始めた。
しばらくの間、議論と続けていると、その日の会議は終わりとなった。
ミオリアたちは部屋に戻らず、すぐに王城を後にして、ウィズアウト討伐に向かった。
「んじゃ、そろそろ行きますか」
「はーい」
「九月二十七日、旅立ち。記録完了」
エレインは報告書用の冊子に日付と出来事を書き込むとぱたんと冊子を閉じて懐にしまった。
「次はサイエストかぁ……長旅になりそうだな」
「まぁ、気楽に行くとしよう、エスエッチ……どんな力の持ち主か……」
好奇心を強く、エレインは言う。
「サイエストはなんかキモチワルイから行きたくない……」
ネフィリが駄々をこねながら、嫌そうな顔をした。
「まぁ、そう言うな、これも仕事なんだからさ」
「はーい、ガンバリマーズ」
酷く棒読みの声がミオリアの耳に入った。
ミオリア達はある知らせを受けて、王城に緊急招集がかけられた、
なぜなら、アクバ王の暗殺未遂事件が起きたからだ。
ミオリア達は、三か月の間、、警備のインフラが整うまで、アクバ王の身辺警護を行う緊急任務を全うしていた。
そして今日を以ってその任務が解かれるのであった。
「刹那のミオリア、此処に――」
「厄災のネフィリ、此処に――」
「雪華のエレイン、此処に――」
「忠誠のレオニクス、此処に――」
「狂乱のグーラント、此処に――」
「神罰のアンタレス、此処に――」
「灰燼のりゅーしゃー、きょきょに……」
懐刀たちはルーサーが噛んだ瞬間に爆笑した。
「何で自分の名前を噛むんだよ!」
ミオリアがツッコミを入れるとルーサーが不機嫌そうに涙で目を潤わせていた。
「うるせえ!」
金髪に燃え盛るような赤い瞳に端正な顔つきの男がミオリアにそう吐き捨てた。
この男が灰燼のルーサーであり、類稀なる炎の使い手である。
「いやいや、流石ルーサー殿でありますな」
全身に分厚い漆黒の鎧を纏っている男、レオニクスが陽気な声で笑う。
「ヒィー、今のはマジでねえぞ!」
特徴的な笑い声に、耳にいくつも付いたピアスが特徴の青い髪の男、グーラントが笑いを堪えられず玉座の前で腹を抱えていた。
老婆姿のアンタレスはローブで顔を覆っているが体を小刻みにしているのが遠目からでもわかった。
「そのあたりにしておけ――」
「はっ!」
一同が同調するかのように返事をすると、今までの朗らかな空気が一瞬で張り詰めた。
「さて、この三か月、寝ずに余の警護をしてくれたこと感謝する。部屋に報酬を届けさせておく」
「ありがたく頂戴させていただきます」
全員が返事をするとアクバ王はため息を付きながら、背もたれに体を預けた。
「して、本題に入るが、余の暗殺を企んでいる者が分かった。イライザ・エアルトル、大きな声で言いたくはないが、余の妾だったのだが、どうやら本性はピーシーと言って、ウィズアウトの構成員だった。まんまとしてやられた、暗殺など仕掛けられるのが久々過ぎて気が緩んでおった」
アクバ王は苦笑いをしながら長く伸びた白い顎髭を撫でていた。
「此度の一件、タンドレッサが独自に動き、ピーシーの二度目の暗殺はタンドレッサが食い止めたが、聞くに、これはアジサイの差し金だったと聞いている。ミオリアの部下が早速手柄を立てたようだな。実行したタンドレッサには昇級を約束したが、アジサイには何を与えれば良いのやら、ミオリア、アジサイの欲しい物はなにかないか?」
ミオリアは暫時口を塞いだままであった。
元々、アジサイという男は割合無欲で権力や金に貪欲でもなく、女にも目がないということはない。技巧派で色々な物を作るのは好きだが、それは作る過程を楽しんでいる。
「いやぁ、あいつだけは欲しい物わからないですね」
アクバ王は静かにミオリアの言葉を頷くと懐刀の顔を見回す。
「意見がある者は提案してほしい、誰でも構わぬ」
「肉とか美味い物を食わせるのはどうでしょう?」
ルーサーが当たり障りのない意見を提言する。
「食事か」
「アジサイ殿の好みは把握していますか?」
レオニクスが冷静に突っ込む。
「ボクは知らないよ」
「言われてみれば私も知らないな」
エレインとネフィリも揃って降参する。
「肉か魚だろ、どっちかなら誰だって好きに決まってるだろ!」
グーラントは安直な意見を考え無しに述べる。
「ハンドレットバードの卵はおいしそうに食べておりましたな、しかし、あれは今、時期が離れておりますからね、手に入れるのは難しいかと」
老婆姿のアンタレスがローブ越しに微笑んでいる。
「あいつの好きな物かぁ……何かな……」
ここのメンバーで一番、アジサイに詳しいミオリアですら頭を悩ませる事態であった。
「食材はやめて服とか、アクセリーとかどうだろうか?」
ネフィリが提案するが、懐刀の男性陣は首を傾げた。
「いやいや女じゃねえんだから」
半笑いでグーラントは指摘するとネフィリはふくれっ面になった。
「武器とかいいんじゃないですか? 盾とかシールドとか鎧とか、ロマンがありますし、戦いが多い我々ならいくつあってもいいのではないでしょうか?」
レオニクスが頭を捻りながら言ってみるものの、アジサイは武器を自作しているため、道具へのこだわりと言う面からレオニクス自身ですぐに言葉を撤回した。
「アジサイという男は難儀な人物のようだな」
「真面目で良い奴なんですけどねぇ、自己完結している男なんすよ」
ミオリアも困り果てていた。
「そう言えばアンタレスはあの者と今、行動しておったな、どういう者か申してみろ」
「はい、仕事面の話からまず、今はギルドの内部調査も兼ねて、アジサイ様と共に新米冒険者という設定で内部を探らせております。元々強いのもありますが、慎重な気質のためかダブルピーから受けた傷よりも深手を負っているところは見ておりません。仕事ぶりは、ストイックなところがあり、ちょっと気がかりといったところでしょうか。人間性の面では、そうですね、温和で人当たりも良く、のんびりした性格ですね。仕事になると人格が変わったように鋭い目つきになり、表情ががらりと変わるのが見ていて面白いかと、あと、アジサイ様の持つ、装具と呼ばれる武具、あれについてですが、中々興味深い武具ですね」
興味を持ったのかアクバ王は顔を前に出し、アンタレスの方を見つめた。
「話には聞いている。たしか風を操る武具だとか」
「ええ、それもありますが、あの装具、いくつか種類がございまして、風を操る装具起装『雪解』、黒い禍々しい何かを操る悪装『津罪』、物理現象と呼ばれる物を観測する論装『怜青』の三つですがこれ以外にもあると本人が言っておりました」
「ほう、余は風を操る装具しか聞いていなかったが、そんなものまで、悪装『津罪』は見たことがないがこれはどれほどの強さを持っているのだろうか、知っておる者はいるか?」
「それならジークが詳しいので今度聞いてみるのは如何でしょうか?」
「なるほど、エレインの言葉に従って楽しみにしておこう」
「はっ! 有り難きお言葉!」
エレインは深々と頭を垂れた。
「アジサイへの褒美は直接本人に聞くことする。次はジークになるが、竜狩りジークにも褒美を与えねばならぬな、豊穣を与えるアルスマグナの魂をもう一つまとめ上げ、力を回復させることでイシュバルデの豊穣をよる永遠の物にする。そのために竜を狩らねばならない、本来であれば懐刀全員で一頭ずつ狩る相手をたった一人で倒すあの剛力には驚嘆の声しか上げられぬ」
アクバ王はジークを褒め称える、
「ジークにも褒美を与えたいが、何をしたものか……」
「あー、あいつそう言えば、家が欲しいと言ってましたね。城下町からちょっと離れた静かな場所でひっそりと暮らしたいとか言ってましたね」
「家か……わかりやすくて良い、すぐに郊外に家を建てさせよう」
「それで良いかと」
ミオリアの提案がすぐに採用された。
「それ以外に何を与えようか、食事、宝物……」
「それ以外なら、旅行などが良いかなと、アルスマグナもいることですし、二人でのんびり慰安なども良いかと」
エレインが提案するとすぐにそれも認められた。
「ジークは欲しい物が決まっておって非常にわかりやすくて助かる」
アクバ王は気を楽にした。
それからアクバ王は一息つき、天啓が降りたかのように不意に妙なことを口に出す。
「アジサイとジーク、懐刀とどちらが強いか……」
この一言が、懐刀のプライドに火をつけた――
「成し得たことは認めますが、それでも、我々には及びますまい」
レオニクスが笑いながら、アクバ王に言い返した。
「ほう……秋の王座決定戦を楽しみにしておるぞ」
アクバ王は楽しそうに言っているが、懐刀たちは笑い事ではなかった。
なにせ懐刀はイシュバルデ王国最強と謳われる猛者たちである。それがここ数か月でポンと出た男二人に敗北するようなことがあれば、国の威信に関わるのである。冗談でも全員が敗北とあれば国防面において国民の信用が失墜するというのと同義である。
したがって、ジークとアジサイだけには負けるわけにはいかないのである。
だが、ジークは竜を狩った実績、アジサイは毒を一服盛られた状態でタンドレッサを圧倒している。タンドレッサの実力は魔導騎士団の中でも上位だが、懐刀には及ばないが実力は隠しているだろうという予想は容易にできた。
エレインとミオリアはアジサイの持つ、装具と魔術の技量が伸びていた時、どのようなことが起きるか簡単に想像していた。予想が間違っていなければ、懐刀を脅かす脅威となっている。エレインはこの時、アジサイの魔術へのセンスの無さに安堵する自分を恥じた。
「実際戦うとなった時、アジサイが持つ風を操る装具への対策を練らないといけませんね、私は白兵戦しかできないので、ジークを引きつけている間にエレイン殿が魔術で対処するのが妥当かと思います」
レオニクスはまじまじと二人と対峙した想定を始める。
「まず俺、ミオリア、レオニクス、ネフィリでジークの足止め、エレイン、ルーサー、アンタレスでアジサイを迎撃が無難だろうな、アジサイを片付け次第、総出で撃破すれば何とかなるな」
七人は意見を出し合い議論に花が咲き始めた。
しばらくの間、議論と続けていると、その日の会議は終わりとなった。
ミオリアたちは部屋に戻らず、すぐに王城を後にして、ウィズアウト討伐に向かった。
「んじゃ、そろそろ行きますか」
「はーい」
「九月二十七日、旅立ち。記録完了」
エレインは報告書用の冊子に日付と出来事を書き込むとぱたんと冊子を閉じて懐にしまった。
「次はサイエストかぁ……長旅になりそうだな」
「まぁ、気楽に行くとしよう、エスエッチ……どんな力の持ち主か……」
好奇心を強く、エレインは言う。
「サイエストはなんかキモチワルイから行きたくない……」
ネフィリが駄々をこねながら、嫌そうな顔をした。
「まぁ、そう言うな、これも仕事なんだからさ」
「はーい、ガンバリマーズ」
酷く棒読みの声がミオリアの耳に入った。
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