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カニカマ学園編

第32話「何がしたい?」

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 授業が始まる前の教室でローチが対抗戦の概要を見て小首を捻る。
 
「うーーむ、アドルフィネ殿、少しいいでござるか?」
「何かしら?」
「連隊戦のルールはもっと細かくならなかったでござるか?」
「一応運営に曖昧そうなところを聞いておいたわ」
「それを含めた上でもう一度教えて頂けないだろうか?」
「いいわよ」
「かたじけのうござる」
 
「まず連隊戦は個人戦四種からなる八対八のクラス代表が出場。八人全員がノックダウンするか敵陣営に設置してあるスフィアの破壊、どちらかが勝利条件よ」
「スフィアって何でござるか?」
「魔力で出来た球みたいなものね、光って目立つから土属性魔法とかで建物を作って隠すのがセオリーね」
「なるほど、続きを頼むでござる」
 
「連隊戦のフィールドについて、縦2キロ、横10キロの四角いフィールドで森を挟んだ形で草原が広がっている作りになっているわ」
「中々広いでござるな。拠点はどこに作っても良いのでござるか?」
「ルール上は特に指定はないわ。ただ戦略的には両端に拠点を構える方がいいわ」
「森の中の方が見つけるのは難しいのでは?」
「昔それをやったけど結局、火属性魔法で森ごと焼かれたのよ」
「確かにそのリスクもあるでござるな」
「過去には敵陣の隣に陣を構えて開幕と同時に殴り合いをしたクラスもあったけどハイリスク過ぎてやってられないわ」
「猪武者過ぎるでござるな」
「と言うわけでセオリーは敵陣営の森を挟む形で陣を構えるの」
「納得でござる」
 
「大まかなルールは以上かしら」
「では質問、拠点以外に罠の設置などは反則にござるか?」
「禁止事項には無いわ。運営も言っていたけど禁止事項にないことは基本オッケーよ」
「それは良いことを聞いたでござる」
 
「期待してるわよ狩人の血族……」
「小生は名誉貴族みたいなもので、しかも三男でござる。過度な期待は持たないでほしいでござる」
 
 ローチは大げさに肩を竦める。
 
「よく言うわ」
「事実でござる。初等部中等部の成績もご存じでござろう?」
「知ってるわ。それがなんの物差しになると言うの?」
「成績を推し量るには十分でござろう?」
「どうだか、答えのある問題に明確に定義された審査点、それだけで人間の力量を測れると思っているの? せいぜい忠実な犬かどうかくらいよ?」
「小生もまた一匹の犬でござる」
「犬は犬でも猟犬よ。しかも牙の隠すのが滅法上手なね」
 
「ずいぶん小生を買うでござるな」
「……あとのメンバーが頼りないのよ」
「あー……」
 
 
「おおん! 聞こえてんぞー!」
「あらベーゼ、鼓膜が機能していたのね」
「バリバリ駆動中だバカヤロウ!」
「聞いての通りよ。多少は頭を使いなさい」
 
 アドルフィネはこめかみを指差してベーゼを煽る。
 
「おま……この前の小テスト俺より点数低いくせに」
「何よ! たったの1点差じゃない!」
「1点でも差が付いてんだろ」
「99点でしかもスペルミスじゃない! ほとんど正解みたいなもんじゃない!」
「微分したら0点だろ!」
「そんなの言ったら実数微分した時点でどんな数字つけても0点じゃない! x付けなさいよ!」
「たしかに!」
「このバカ!」
 
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
 
 ケルブスは呆れた様子で二人を止める。
 
「しかしお三方は随分と仲がいいでござるな」
「かれこれ十年の付き合いよ」
「十年もですか……いいでござるな。心の底から腹を割って話をできるなんて」
 
「なーに言ってんだよ。俺らからしたらローチだってそうだろ」
「そうだよ。僕らに年数なんて関係ないよ」
「いや普通に付き合いの長さは信頼よ。ローチ、あなたがどうしたいかよ」
 
「小生がどうしたいか……」
 
「そうよ。みんなに合わせてばかりじゃつまらないわよ!」
「それもそうでござるな」
 
 
 
 
「おはようございます! それでは朝礼を始めますよー!」
 
 
 コーニコリスが教室に入って元気よく挨拶する。
 
 今日もFクラスは活気に溢れている。
 
 
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