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襲撃は突然に

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 エライソとの決闘を終えた日の深夜。外に人の気配がない中突然けたたましい警報音が鳴り俺は慌てて飛び起きる。

「襲撃ですね」

 そして何故か俺の隣で寝ていたルルさんもこの警報音で目が覚めたのか、この状況を説明してくれた。
 クワトリアでは魔物が攻めてくるとブウー! ブウー! という警報音が鳴り、危険を知らせてくれるシステムになっている。

「22区画で魔物の襲撃がありました。スレイヤーは直ちに出動し、一般市民の方達は避難をお願いします。繰り返します。22区画で魔物の襲撃がありました。スレイヤーの方達は直ちに出動し、一般市民の方達は避難をお願いします」

 そして都市内放送が流れ、襲撃区画を伝えてくれる。

「22区画はこことは逆方向ですね」
「そうだね。とりあえずここは安全な可能性が高いな」

 ルルさんが言うように22区画は都市の北側にあり、俺達がいる10区画は中央のやや東側にあるため、襲撃された場所とは離れているのですぐに魔物が攻めてくることはないだろう。だがそれはあくまで希望的観測であり、人類などあっという間に滅ぼすような敵がいた場合にはその言葉は当てはまらなくなる。

「街を護ることができるのでしょうか」
「わからない。

 クワトリアでは過去に学生達が勇み足で魔物に立ち向かい、多くの犠牲を出した経緯があるため、不測の事態を除いて学生は魔物を進んで狩りに行くことは禁じられている。
 そのため俺達にできることは現役のスレイヤー達が魔物を倒してくれるのを願うだけしかない。

「人型の魔物が来ていないといいのですが⋯⋯」

 俺はルルさんの言葉に心が激しくざわつく。人型の魔物⋯⋯それは魔人と呼ばれており、通常の魔物達と比べると高い魔力を持ち、現在認識されている4体の魔人はいずれもAランク以上の力を持つと言われている。
 そしてこの4体のうちの1体は忘れもしない⋯⋯俺の眼を奪いそしてスルンさんがスレイヤーをやめる原因となった魔人ヘカテスの名を。
 スルンさんの代わりに世界を護るスレイヤーになると心に決めた時、必ず始末しなければならないと誓ったのがヘカテスだ。
 サウザンドブレードのファーストアギトで勝つ算段もついた。もし奴がいるのなら例え規律を破ってでも俺はヘカテスの元へと向かう。

「とにかく何か動きがあるまで2時間交代で起きてようか」
「ではまずは私から」
「お願いしてもいいかな。でもくれぐれも1人で寝ずの番をやろうとしないでくれよ」
「⋯⋯承知しました」

 今一瞬間があったのが気になるけど時間が来たら起きればいいだけだ。
 だがそれにしても⋯⋯。
 俺はチラリと隣のベッドに目を向けるとララさんが何事もなかったかのように寝ていた。

「申し訳ありません。姉さんは1度寝ると朝までお手洗い以外で起きることはないので」
「そ、そうなんだ。あの警報音の中で寝れるなんてすごいね」

 深い眠りについた方が身体の疲れも取れるし良いとは思うけどこれって逆に何をされても起きないということになるよな?
 もし俺が寝ているララさんに向かって如何わしいことをしても気づかないということだ。
 一瞬邪な考えが頭を過るけど部屋にはルルさんもいるからそんなチャンス⋯⋯じゃなかったそんなことは起こらないだろう。
 とりあえずララさんの手が掛け布団からはみ出していたので俺はその手を取る。すると何かが身体の中に流れ込み、そして俺はララさんの手を布団の中へと戻した。

「それではユウト様お休み下さい」
「それじゃあ2時間お願いします」

 いざという時に疲労で動けないなんてことになったら洒落にならないので俺は目を閉じて22区画の無事を祈るのであった。

 そして4時間後、日の光が窓に射し込む頃、再び都市内放送が入ったがそれは22区画が魔物に滅ぼされたとの報告だった。


「まさか私が寝ている間にそんなことが⋯⋯」

 俺とルルさん、ララさんは本日の深夜にあった魔物襲撃について話ながら学園へと向かっていた。

「しかも4時間で滅ぼされたってことはもしかして⋯⋯」
「人型の魔物がいた可能性がある」

 くそっ! もしかしたらそこにヘカテスがいたかもしれない。こんなことなら規律を護らず22区画に向かうべきだったか。

「皆さん表情が暗いですね」
「24の区画の内の1つが失くなったんだ。仕方ないよ」

 1つの区画が無くなり、いつ自分が住んでいる区画も同じようになるかの不安。そして事が起きたのが深夜という事で皆疲れが見えている。

「もしかしてクラスメートの方も⋯⋯」

 俺はルルさんの問いに答えることは出来ない。クラスメートが22区画に住んでいてもおかしくはないため、登校したら誰かがいないということもあり得ることだ。

 その後俺達は無言のまま教室へと向かうと突然怒号のような声が聞こえた。

「何? これって私達の教室から!?」

 ララさんの言うとおりこの声は俺達の教室からだ。しかもこの声は⋯⋯。

 俺達は急ぎ足で教室に向かうとそこには普段からは考えられない程怒りの形相をしたスリエがいた。

「何でトンゴを守ってくれなかったのよ!」

 ここまで感情を露にしたスリエは初めて見た。だけどそれ以上に驚いたのはスリエが怒号を浴びせている相手がエライソだったことだ。
 いったい何が起きているのか。俺は2人の様子を確認するためにエライソとスリエの元へと向かうのであった。
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