上 下
12 / 31

強い人と戦うのはワクワクする

しおりを挟む
「ルルさん!」
「私はユウト様が勝つ方に賭けます」

 まさかのルルさんの言葉に俺は思わず驚きの声を上げてしまう。

「ククク⋯⋯今まで生きていて1番笑える冗談だな!」
「Fランクのユウトがエライソ様に勝つ?」
「世界がひっくり返ってもありえないことだ」

 エライソやスリエ、トンゴは嘲笑しながら蔑んだ目で俺を見てくる。
 エライソが負けるなんて三人とも微塵も思っていないだろうからな。何故なら俺は1年の頃からエライソとは何度も決闘をしているからだ。

 成績は0勝23敗。

 俺は今までに1度もエライソに勝ったことはない。そのことも踏まえてエライソは自分の勝利を確信しているのだろう。

「ちょうど明日実技の授業があるだろ? そこで決闘をすることでいいな?」
「かまいません」
「えっ! ちょっと待って」
「明日に備えて無駄な努力でもするんだな」

 そしてエライソ達は俺の話を聞かずこの場から立ち去ってしまう。
 いやいや、人の話を聞いてくれよ。だがエライソに取ってはこの条件での決闘は俺をボコボコにできるしルルさんを手に入れられるし願ったり叶ったりだから聞く必要はないか。
 それよりも今は⋯⋯。

「ルルさん、何であんな約束を⋯⋯」
「ユウト様は姉さんに勝った実力者ですから。あの方に勝利すると信じています」
「でも自分を賭けるなんて」
「勝手なことをしてしまい申し訳ありません」

 俺の言葉を聞いてルルさんはシュンとなって俯いてしまう。
 しかしルルさんの行動は褒められたものではないけどこれからずっとエライソに言い寄られる学園生活なんて味わいたくないだろう。
 それにエライソの態度にはいい加減俺も腹が立っていたからちょうどいい機会かもしれない。

「今後自分を賭けるなんてことはやったらダメだぞ」
「はい⋯⋯」
「それなら今回はエライソを倒してこれ以上ルルさんにつきまとわないようにしてみせるよ」
「ありがとございます!」

 先程まで泣きそうな顔をしていたルルさんが一瞬で笑顔になった。もしかして嵌められたのか? 
 いや、例えそうだとしても俺はエライソを倒し、ここからスルンさんを越えるスレイヤーになるんだ。
 こうして俺は明日の実技授業でエライソと決闘することになり、その勝敗によってルルさんの運命が決まるのであった。


「そうだ。ルルさんはこの後時間あるかな?」
「夕食の準備がありますけど少しなら大丈夫です」
「それならちょっと付き合ってもらってもいい?」

 俺はルルさんを連れて校舎裏まで向かいそして使っていない木刀を渡す。

「1度手合わせしてもらってもいいかな?」

 先程エライソ達から逃れるために見せた動きはただ者じゃなかった。1人のスレイヤーとして是非剣を合わせてみたい。

「私でよろしければ。実は私もユウトさんと手合わせをしたいと思っていました」

 どうやらルルさんも俺と同じ気持ちのようだ。
 そしてルルさんは剣を中段で構えるがその所作が美しく、全く隙が見当たらない。
 やはりルルさんは日頃から剣の鍛錬をしているのだろう。

 俺とルルさんは互いに目で合図をして試合を開始する。
 俺はルルさんがどれ程の腕を持つか楽しみでまずは上段からルルさんの左肩を目掛けて剣を振り下ろす。

 今まで幾度となく決闘をしてきたが俺の攻撃をかわせた者はスルンさんとララさんだけだ。
 さて、ルルさんはどんな行動を見せてくれるのか。

 俺の木刀がルルさんに当たる瞬間、ルルさんは自分の木刀で防いだ。

 やるな。

 だが相手は女性、力は俺の方が上だ。
 俺はそのまま力技でルルさんさんの木刀ごと押し込もうとするが、この時予想外のことが起きる。
 気を抜いた訳ではないが突然俺の木刀がルルさんの木刀に絡め取られ、木刀が上空に舞いそうになって思わず手を離しそうになる。
 そしてルルさんの攻撃はまだ終わらない。俺は木刀を離さずにいたため腹部ががら空きになってしまい、ルルさんがその隙を逃さず木刀をなぎ払ってきた。

「くっ!」

 俺は木刀で防ぐのは不可能だと考え、後方へバックステップでかわすことを選択した。
 すると服を掠めたが何とかルルさんの木刀を避けることができた。

「初めて葉桜崩しを破られました。並の相手なら木刀を手放すはずですがさすがユウトさんです」
「危うく木刀を飛ばされる所だったよ」

 ルルさんは間違いなく剣の達人だ。おそらく俺と同じ様にランクが低いため剣の技術や身体能力の鍛錬を欠かさず行っていたのだろう。
 油断をしたつもりはないけどここからは本気を出す。

 俺は右に左にと先程の力技とは違い手数で攻める。

「は、速い」

 ルルさんは顔をしかめながらも俺の攻撃を木刀で防いでいる。

 ルルさんの腕は想像以上だな。このままだとルルさんの守りを崩すのは難しそうだ。

 それなら1つ試して見るか。

 俺は木刀による攻撃をやめ1度下がる。

「今度は私の番です」

 ルルさんは俺が下がったことを好機と捉えたのか攻撃を仕掛けてくる。
 女子なのでおそらく力技タイプではないはず。

 俺の予想通りルルさんは高速の剣技を繰り出してきてこちらは防御一辺倒になってしまう。

 速い! そして一撃一撃が重い。女子だからと舐めていたら木刀が簡単に吹っ飛ばされることになるぞ。
 俺はルルさんの木刀を何とか凌ぎながらある攻撃が来るのを待つ。

「これで!」

 俺の防御にしびれを切らしたのかルルさんは上段から頭を目掛けて木刀を振り下ろす。

 ここだ!

 俺は待っていた攻撃が来たのでルルさんの木刀を自分の木刀で絡めとり、そして上空へと巻き上げる。
 ルルさんの木刀を宙に舞い上げることに成功したことで俺は自分の手に持った木刀をルルさんの頭部に寸止めで打ち込み、そして手合わせは終了するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...