上 下
10 / 31

容姿が良いのも大変です

しおりを挟む
 教室に入ってきたのは予想通りララさんとルルさんだった。

「2人ともそっくりだ」
「双子?」
「滅茶苦茶可愛くないか!」

 どうやら転校初日の掴みはオッケーのようだけどこの後起きることを考えると少し憂鬱になる。

「2人とも自己紹介をしろ」
「ドレストから来たララよ。よろしく」
「姉さんの妹のルルです。よろしくお願いします」

 ララさんは少しぶっきらぼうに、ルルさんは丁寧に挨拶をするとクラスメート達がざわめき始める。

「ララってまさかAランクの魔力でSランクの神器を持つことで有名な?」
「すげえ奴がクワトリアに来たな」
「でも妹さんは確か⋯⋯」

 ララさん程の魔力や神器を持つ人は数えるくらいしかいないので別の都市の人でも噂で聞いたことがあるらしい。そして⋯⋯。

「Eランクの出来損ない」
「ドレスト領主家の恥」
「姉にスレイヤーとしての才能を全て吸い取られた妹」

 だがララさんが有名なことでその対比の存在となるルルさんのこともクラスメートは知っているようで聞くに堪えない言葉が放たれる。
 もちろんその言葉はルルさんにも聞こえているようで気まずそうに俯いていた。

 こいつらは本当に魔力や神器の面しか見ていなくて腹が立つ。それが当たり前なのかもしれないけど俺は看過することは出来ない。
 俺は席を立ち上がりクラスメート達に注意しようとするが⋯⋯。

「早く座りたいから席に案内してくれる」
「ルルはユウトの隣、ララは1番前の列の窓側に座れ」

 ララさんが一声かけるとクラスメート達は黙り、2人は指定された席へと座る。
 今のはララさんがルルさんを助けたのかな? だけど普段ララさんはルルさんに厳しいから本当に早く座りたかっただけなのか判断がつかない。

「ホームルームは以上だ」

 そしてソニア先生転入生である2人を紹介するとさっさと教室から出ていってしまった。
 ソニア先生はあまり余計ことは喋らないタイプなのかな? こちらとしてはホームルームで無駄に長い話を聞かずに終わってありがたい。

 そしてソニア先生が教室からいなくなるとクラスメート達は一斉にララさんの元へと向かう。

「私はマリカ、よろしくね」
「ララさんはSランクの神器を持っていてすごいな」
「今度一緒に訓練しませんか?」

 さすがに有名人だけあって人気が凄い。ララさんは一瞬でクラスメートに囲まれてしまった。
 しかしそんなララさんとは違いルルさんの所には誰も話しかける者はいなかった。
 同じ日に産まれた姉妹なのに神の采配でこんなに扱いが違うなんて⋯⋯。
 不憫に思うが不平等なこの世界では当たり前のことだ。だからせめてルルさんの気持ちがわかる俺だけでも彼女の味方でありたいと思う。

「ルルさんと同じクラスで良かったよ」
「私も新しい学園で少し不安がありましたけどユウトさんと同じクラスで安心しました」
「これからよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」

 学園だけではなく自宅でも世話になるので改めて俺は挨拶をする。

「おいおい、ユウトはそのEランクと仲が良いのか?」

 俺がルルさんと話をしていると突如割って入ってきたのはエライソと取り巻きのスリエとトンゴだ。

「クラスメートとして俺も話させてくれよ」

 ルルさんをEランクと呼ぶことから絶対に転校初日の子と仲良くなりといった類いではないことがわかる。

「俺はエライソ、Bランクの魔力と神器を持つものだ」
「私はスリエ」
「トンゴだぞ」
「ルルです。よろしくお願いします」

 そう、エライソが偉そうにしている理由はBランクの魔力と神器を持っていることだ。学園にBランク以上の者は数少ないのでエライソの自尊心を保つ1つなのだろう。

「ほう⋯⋯見た目は悪くない」

 エライソは舐めるような視線をルルさんに浴びせる。

「子を成すのは勘弁だが遊び相手としてはちょうど良さそうだ。お前、俺と付き合え」

 こいつは初対面の人相手になんてことを言うんだ!

「失礼だろ」
「失礼⋯⋯だと⋯⋯。魔力や神器の弱い奴に役割を与えてやろうと言っているんだ。これ以上名誉なことはないだろう」
「エライソ様に目をつけられるなんて光栄なことですよ。魔物に襲われた時に助けて頂けますから」
「そうだそうだ」

 取り巻きのスリエとトンゴまでエライソの言葉を肯定してきた。こいつらバカなのか? エライソに一目惚れでもしない限りその話を受けるなんて愚かな真似は絶対にしないだろう。

「申し訳ありませんがお断りします」

 そしてルルさんは愚かな人物じゃなかったためエライソの提案を拒む。

「貴様!」

 エライソはルルさんに拒絶されたことを許せなかったのか掴みかかろうと手を伸ばした。

「やめろ」

 だが俺はエライソの手がルルさんに届く前に2人の間に入り、そして伸ばされた腕を掴む。
 自分の誘いに乗らなかったからといって襲いかかるなんて最低な奴だな。その行動を俺の前で許す訳にはいかない。
 それにしても妹が悪漢に絡まれているのにララさんは助ける素振りがないんだな。俺が思っている以上に2人の確執はあるということか。

「下賤な者が俺に触るな!」

 エライソは俺の手を払いのけ、これ以上ルルさんに近づけないと悟ったのか1歩下がる。
 そして殺意を持った目で俺を睨み付けてきたため、この場に一触即発の空気が流れる。
 エライソの気性からしてこのまま引き下がるとは思えない。この場を収めるためには一悶着は避けられないか。

 ガラガラ

「授業を始めるぞ! 席に座れ!」

 だかこの空気の中、教師が1時間目の授業を始めるために教室のドアを開けて教壇へと向かう。

「ちっ! タイミングが悪い。覚えてろよユウト」

 エライソは吐き捨てるようなセリフを残し自分の席へと向かう。
 こちらとしてはタイミングが良かったので助かったな。

「ユウトさんありがとうございます」
「この学園には変な奴がいるから気をつけて」
「わかりました」
「それより授業が始まるから座ろ」
「はい」

 こうして双子の転入初日は、ララさんは皆から尊敬な眼差しを受け、ルルさんは差別的な視線や言葉を受けることになり、さらにはルルさんはエライソという傍若無人な奴に目をつけられることになってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...