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とんでもない血筋

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「もしかしてフィアナさんは⋯⋯皇帝陛下の娘だったりして」
「「えっ!」」

 俺は想像していたことを口にすると、エミリアとサーシャが驚きの声を上げる。
 だけどそうとしか考えられない。
 皇帝陛下は話づらそうにして、わざわざ調査と護衛をしなければならない。それにエルフよりとんでもない血筋と考えれば皇帝陛下の娘としか思えない。
 俺は答え合わせを聞くために三人を真っ直ぐに見据える。
 すると皇帝陛下が口を開いた。

「その通りだ。フィアナは余の娘だ」

 やはりそうか。
 まさか皇帝陛下に隠し子がいたなんて驚きだ。

「十五年程前⋯⋯バルツナイト王国に暴竜と呼ばれる巨大な竜がいると聞いて、余はイシュバルとフェルトを連れて討伐に向かった。だが暴竜は想像以上に手強かった⋯⋯何とか倒すことは出来たが、余は生死を彷徨う程の怪我を負ってしまってな」

 この三人を追い詰めるなんて、どれだけ暴竜は強いんだ? 絶対に戦いたくない相手だな。

「その時余を救ってくれてたのがフィアナの母親だ」

 何だかありがちなパターンになってきたぞ。
 そして命を救われた皇帝陛下はフィアナの母親に惚れたという訳か。

「そ、それでどうなったのですか」
「気になるわね。全部答えてもらうわよ」

 サーシャとエミリアが前のめりになって皇帝陛下を問い詰める。
 どうやら皇帝陛下の恋愛事情に興味津々のようだ。
 女の子が色恋が好きなのはどこの世界も同じらしい。
 だけど恋愛事情を語る皇帝陛下を見てみたい気もする。

「二人とも下がりなさい。ここからは私が説明します」
「そんなお母様!」
「陛下が語るから面白いんじゃない」
「二人はその後、愛を育み、フィアナが産まれたのだけど⋯⋯そのまま幸せな未来は訪れなかった」

 ソフィアさんはサーシャとエミリアを無視して話を続ける。
 二人は不満を露にするが、話は聞きたいのかおとなしく従う。

「フィアナの母親⋯⋯ニナはエルフだけどバルツナイト王国の住民。当時バルツナイト王国とグランドダイン帝国は敵国でした。だから二人は許されぬ恋だったの」
「「キャーッ!」」

 サーシャとエミリアは手を取り合い喜んでいる。
 君達仲が悪いんじゃないの? 
 どうやら色恋については別らしい。

「フィアナの存在が世に出ると、政治的にあまり良くないことが起きる可能性があったの」
「バルツナイト王国に知られればフィアナさんは人質にされ、ニナさんも裏切り者扱いされる。グランドダイン帝国では後継者争いに巻き込まれるかもしれないから?」

 当時皇帝陛下には息子二人、娘一人がいたからそこまで考えなくても大丈夫だったかもしれないけど、今はハインツとフェニシアがいない。もし皇帝陛下の長男がいなくなれば、フィアナは継承権第一位になってしまう。何も知らないフィアナを操り、傀儡政治をしようとする奴が現れてもおかしくはない。

「それに敵国の人間、しかもエルフを皇后に迎えることを国民が許すかどうか⋯⋯」

 皇帝陛下を相手に反乱は起こさないとは思うけど、帝国に不穏な空気が流れるのは間違いないだろう。そしてその火種が残ったままではいつフィアナさんに危険が及ぶかわからない。

「皇帝陛下は一度帝国に戻って、再びニナさんの元へと向かったら、既にニナさんの姿はなかったの。だから皇帝陛下も先日初めてフィアナの存在を知ったのよ」
「それならどうやってニナさんやフィアナさんのことがわかったのですか?」
「亡くなったニナさんから皇帝陛下宛に手紙が来たの。娘をよろしくお願いしますと」

 あまり考えたくはないけど、それだけ会っていないならもしかしたらフィアナさんは皇帝陛下の娘じゃない可能性もある。
 だから皇帝陛下の依頼に、フィアナの身辺調査があるのか。

「そして調べている内に、今年からブレイヴ学園に通うことがわかったの。それとフィアナ本人は、皇帝陛下が父親だってことは知らないと手紙に書いてあったわ」

 これは確かに放って置けない案件だな。俺達に話がくるのも頷ける。
 それにもしかしたら俺のスキルを使えばフィアナさんが皇帝陛下の娘かどうかわかるかもしれないな。
 厄介事には巻き込まれたくないけど、これは仕方ない。

「三人には迷惑をかける。悪いがよろしく頼む」

 あの狷介孤高けんかいここうな皇帝陛下が俺達に頭を下げてきた。それだけフィアナさんのことがとても大切だということが伝わる。
 俺はサーシャとエミリアに視線を合わせると、二人とも頷いた。
 どうやら二人も俺と同じ気持ちらしい。
 それなら答えは決まってる。

「わかりました。皇帝陛下から勅命は俺達が承りました」

 こうして皇帝陛下からの任務を授かった俺達は、翌日の早朝にブレイヴ学園へと旅立つのであった。
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