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国家機密
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「ある人物の身辺調査を行って、必要であれば護衛もお願いしたいの」
アンジェリカさんの言葉でようやく話が進んでいく。
けど何故皇帝陛下が言いにくそうにしていたのか理解できない。
もしかしてそのある人物が皇帝陛下にとって、特別な人なのか?
「そのある人物とはブレイヴ学園の生徒でしょうか」
「サーシャの言う通り、今年入学する十四歳の女の子よ。ブレイヴ学園で働けるように手配するので、よろしくね」
いや、よろしく言われてもドルドランドはどうするんだ? 領主も領主代行もいないなんておかしくないか?
「ママ、ドルドランドはどうするの? 私達の代わりがいるってこと?」
エミリアも俺と同じ疑問に至ったようだ。そもそも領主や領主代行をやれって言ったのは帝国なのに、それを突然反故にするなんてどういうつもりだ。
「三人がいない間は私とソフィアが務めます。そのためにドルドランドに来たのよ」
なるほど。最初から二人は皇帝陛下の頼み事を知っていたと言う訳か。
だけど公爵夫人と令嬢を駆り出してまで調査する人物とは何者なんだ?
重要な人物であることは間違いないだろう。
「三人共どこか納得出来ないと言った所ね」
ソフィアさんの言葉に頷きはしなかったが、その通りだ。出されている情報が少なすぎる。ドルドランドの仕事を他の人に任せて行く価値があるのだろうか。
「皇帝陛下⋯⋯よろしいですね?」
「任せる」
アンジェリカさんが皇帝陛下に念を押す。
どうやら隠された情報を開示してくれるようだ。
「これから話すことは国家機密になるわ。もし他言したら死罪になることを覚悟しなさい」
し、死罪! それって超重要な案件ってことか!
正直それなら聞きたくないけど、そんなこと言えない空気だ。
俺は改めて座り直して背筋を伸ばし、アンジェリカさんの言葉を待つ。
「あなた達の調査対象は⋯⋯特別な血筋を持って生まれた子なのよ」
「特別な血筋ですか?」
「ええ⋯⋯」
どういうことだ? この世界で特別な血筋といえば何になるんだ? 俺は脳をフル回転させるが思いつくものがない。
「実はその子⋯⋯フィアナはエルフなのよ」
エ、エルフ⋯⋯だと⋯⋯
エルフと言えば森に住む種族で、耳が人属より少し長いのが特徴だ。そして寿命は人間の十倍程あり、容姿に優れている者が多い。
ただこの世界では数が少なく、滅多に会うことは出来ないと言われている。
そのエルフがブレイヴ学園に入学するというのか。
「そういうことですか。エルフは見目麗しい方が多くいると聞きます。国家間で奴隷にすることは禁じられていますが、法を破る方が多くいるのが現状です。そのため私達が良からぬことを考えている者達から、フィアナさんを守れということでしょうか」
どうやって皇帝陛下達がそのフィアナというエルフのことを知ったのかわからないが、おそらくサーシャの言うとおりだろう。
だけど学園に通っている間、ずっと護衛しなくちゃならないのか? それはかなりの長期間になってしまうな。
「さすがサーシャね。半分正解よ」
「半分⋯⋯ですか」
満点の解答だと思ったけどどうやら違うようだ。それならもう半分はいったい何なんだ?
この時俺は、まだ少し楽観的に考えていた。
だけどこの後アンジェリカさんから発せられる言葉に、この世界に来て一番驚くことになる。
「エルフの血も問題だけど⋯⋯もう半分の血がね」
ハッキリと物を言うアンジェリカさんが、躊躇いを見せる。
それだけフィアナさんの親の血が厄介なものなのだろうか。
エルフの血を引くということでとても驚いたけど、それ以上となると⋯⋯まさか!
俺はフィアナさんのもう半分の血に気づいてしまうのだった。
アンジェリカさんの言葉でようやく話が進んでいく。
けど何故皇帝陛下が言いにくそうにしていたのか理解できない。
もしかしてそのある人物が皇帝陛下にとって、特別な人なのか?
「そのある人物とはブレイヴ学園の生徒でしょうか」
「サーシャの言う通り、今年入学する十四歳の女の子よ。ブレイヴ学園で働けるように手配するので、よろしくね」
いや、よろしく言われてもドルドランドはどうするんだ? 領主も領主代行もいないなんておかしくないか?
「ママ、ドルドランドはどうするの? 私達の代わりがいるってこと?」
エミリアも俺と同じ疑問に至ったようだ。そもそも領主や領主代行をやれって言ったのは帝国なのに、それを突然反故にするなんてどういうつもりだ。
「三人がいない間は私とソフィアが務めます。そのためにドルドランドに来たのよ」
なるほど。最初から二人は皇帝陛下の頼み事を知っていたと言う訳か。
だけど公爵夫人と令嬢を駆り出してまで調査する人物とは何者なんだ?
重要な人物であることは間違いないだろう。
「三人共どこか納得出来ないと言った所ね」
ソフィアさんの言葉に頷きはしなかったが、その通りだ。出されている情報が少なすぎる。ドルドランドの仕事を他の人に任せて行く価値があるのだろうか。
「皇帝陛下⋯⋯よろしいですね?」
「任せる」
アンジェリカさんが皇帝陛下に念を押す。
どうやら隠された情報を開示してくれるようだ。
「これから話すことは国家機密になるわ。もし他言したら死罪になることを覚悟しなさい」
し、死罪! それって超重要な案件ってことか!
正直それなら聞きたくないけど、そんなこと言えない空気だ。
俺は改めて座り直して背筋を伸ばし、アンジェリカさんの言葉を待つ。
「あなた達の調査対象は⋯⋯特別な血筋を持って生まれた子なのよ」
「特別な血筋ですか?」
「ええ⋯⋯」
どういうことだ? この世界で特別な血筋といえば何になるんだ? 俺は脳をフル回転させるが思いつくものがない。
「実はその子⋯⋯フィアナはエルフなのよ」
エ、エルフ⋯⋯だと⋯⋯
エルフと言えば森に住む種族で、耳が人属より少し長いのが特徴だ。そして寿命は人間の十倍程あり、容姿に優れている者が多い。
ただこの世界では数が少なく、滅多に会うことは出来ないと言われている。
そのエルフがブレイヴ学園に入学するというのか。
「そういうことですか。エルフは見目麗しい方が多くいると聞きます。国家間で奴隷にすることは禁じられていますが、法を破る方が多くいるのが現状です。そのため私達が良からぬことを考えている者達から、フィアナさんを守れということでしょうか」
どうやって皇帝陛下達がそのフィアナというエルフのことを知ったのかわからないが、おそらくサーシャの言うとおりだろう。
だけど学園に通っている間、ずっと護衛しなくちゃならないのか? それはかなりの長期間になってしまうな。
「さすがサーシャね。半分正解よ」
「半分⋯⋯ですか」
満点の解答だと思ったけどどうやら違うようだ。それならもう半分はいったい何なんだ?
この時俺は、まだ少し楽観的に考えていた。
だけどこの後アンジェリカさんから発せられる言葉に、この世界に来て一番驚くことになる。
「エルフの血も問題だけど⋯⋯もう半分の血がね」
ハッキリと物を言うアンジェリカさんが、躊躇いを見せる。
それだけフィアナさんの親の血が厄介なものなのだろうか。
エルフの血を引くということでとても驚いたけど、それ以上となると⋯⋯まさか!
俺はフィアナさんのもう半分の血に気づいてしまうのだった。
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