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予想外の使者
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「ほう⋯⋯余を警戒して一度下がったという訳か。魔法で強化している所を見ると、再戦する気があるということだな」
「ないです! 先程は失礼しました⋯⋯皇帝陛下」
そう。部屋の中で待っていたのは皇帝陛下だった。
帝都を抜け出して、この人は何をやってるんだ。
ますます嫌な予感しかしないぞ。
「まあいい。今日は重要な用件があってな。まずは座れ」
「は、はい」
俺とサーシャは応接室に入り、皇帝陛下の対面に座る。
何だかこの領主館の主は皇帝陛下に思えてきたぞ。
ただそこにいるだけ周囲の空気が重くなっているな。
トントン
逃げたい気持ちを抑えていると、応接室のドアがノックされた。
皇帝陛下に呼ばわれたのは俺以外にもいるということか。
「この私を呼びつけるなんて良い度胸ね。どんな顔か見て⋯⋯げっ!」
公爵令嬢らしからぬ声を上げて部屋に入ってきたのはエミリアだった。
まあその気持ちはわかる。俺も思わずドアを閉めちゃったからな。
「ま、まさかリベンジに来たの? 冗談じゃないわ」
考えることは同じだな。だけどそれ以外に皇帝陛下がわざわざ訪ねてくる理由がわからない。
「エミリア⋯⋯座れ」
「は、はい」
さすがに皇帝陛下が相手では、エミリアもおとなしく従うしかない。
エミリアは俺の隣に腰を掛ける。
本当に皇帝陛下は何のためにドルドランドに来たんだ?
少なくとも俺だけに話がある訳じゃなさそうだな。
「どういうことなの? 何で皇帝陛下がドルドランドの来てるのよ」
エミリアが小声で話しかけてくる。
「知らないよ。俺が聞きたいくらいだ」
「わかったわ。領主代行は一人で十分だから、いらない方を連れ戻しに来たのよ」
「それはエミリアのことですか?」
「違うわよ。サーシャに決まってるじゃない」
恒例の如く、二人の言い争いが始まってしまう。
とりあえず俺を挟んでやるのはやめてほしい。
だが皇帝陛下がこちらに鋭い視線を送ってきたことで、二人の争いが終わりを遂げる。
何だか関係ない俺まで二人の同類として怒られているような気がするが、気のせいか? 気のせいと思いたい。
「ブレイヴ学園を知っているな」
もちろん知っている。つい最近ルナさんが行くことで、話題になったからな。
だけど何故皇帝陛下からブレイヴ学園についての話が出るのか、その意図がわからない。
「もちろん知っているわ。私が首席で卒業した学園ですから」
「私達がですよね。自分だけが首席のような言い方をしないで下さい」
確か昔聞いた話だと筆記試験はサーシャがトップで、実技試験はエミリアがトップだったと言っていたな。
だけど二人同時の首席で良かったと思う。もしどちらかだけが首席になってしまうと、そのことをネタにして一生争ってそうだからな。
「それでブレイヴ学園が俺達に何か関係があるのでしょうか」
俺の問いに皇帝陛下は黙ってしまう。
ん? いつもの皇帝陛下とどこか違うような。
何か頼み事があるなら、問答無用で命令してきそうな感じがするけど。
「⋯⋯三人には臨時講師としてブレイヴ学園に行ってもらいたい」
「「「えっ?」」」
皇帝陛下の思わぬ言葉に、俺達は驚きの声を上げてしまう。
ど、どういうことだ? 何故俺達がブレイヴ学園に?
サーシャとエミリアは学園で優秀な成績を修めていたから、臨時講師に呼ばれるのはまだわかる。
だけど俺は全然関係ないぞ。
「それは俺も⋯⋯ですか?」
「そうだ」
疑問に思っていたことを問いかけたら、速攻で返答が返ってきた。
「その理由を教えて頂いてもよろしいですか?」
そしてその真相を問いかけるが、皇帝陛下は口を開いてくれない。
何故理由を教えてくれないのか意味がわからない。そんな状態で臨時講師と言われてもこちらが困る。
皇帝陛下は何も言ってくれない。だがこの時、俺達の疑問を晴らす人物が応接室に訪ねてきた。
トントン
「失礼しますわ」
「失礼します」
部屋に入ってきたのはアンジェリカさんとソフィアさんだった。
「陛下のことですから上手く説明が出来ないと思って」
「アンと私が代わりに説明しますわ」
そして皇帝陛下に代わってアンジェリカさんとソフィアさんが、どうして俺達がブレイヴ学園の臨時講師をするのか、説明するのであった。
「ないです! 先程は失礼しました⋯⋯皇帝陛下」
そう。部屋の中で待っていたのは皇帝陛下だった。
帝都を抜け出して、この人は何をやってるんだ。
ますます嫌な予感しかしないぞ。
「まあいい。今日は重要な用件があってな。まずは座れ」
「は、はい」
俺とサーシャは応接室に入り、皇帝陛下の対面に座る。
何だかこの領主館の主は皇帝陛下に思えてきたぞ。
ただそこにいるだけ周囲の空気が重くなっているな。
トントン
逃げたい気持ちを抑えていると、応接室のドアがノックされた。
皇帝陛下に呼ばわれたのは俺以外にもいるということか。
「この私を呼びつけるなんて良い度胸ね。どんな顔か見て⋯⋯げっ!」
公爵令嬢らしからぬ声を上げて部屋に入ってきたのはエミリアだった。
まあその気持ちはわかる。俺も思わずドアを閉めちゃったからな。
「ま、まさかリベンジに来たの? 冗談じゃないわ」
考えることは同じだな。だけどそれ以外に皇帝陛下がわざわざ訪ねてくる理由がわからない。
「エミリア⋯⋯座れ」
「は、はい」
さすがに皇帝陛下が相手では、エミリアもおとなしく従うしかない。
エミリアは俺の隣に腰を掛ける。
本当に皇帝陛下は何のためにドルドランドに来たんだ?
少なくとも俺だけに話がある訳じゃなさそうだな。
「どういうことなの? 何で皇帝陛下がドルドランドの来てるのよ」
エミリアが小声で話しかけてくる。
「知らないよ。俺が聞きたいくらいだ」
「わかったわ。領主代行は一人で十分だから、いらない方を連れ戻しに来たのよ」
「それはエミリアのことですか?」
「違うわよ。サーシャに決まってるじゃない」
恒例の如く、二人の言い争いが始まってしまう。
とりあえず俺を挟んでやるのはやめてほしい。
だが皇帝陛下がこちらに鋭い視線を送ってきたことで、二人の争いが終わりを遂げる。
何だか関係ない俺まで二人の同類として怒られているような気がするが、気のせいか? 気のせいと思いたい。
「ブレイヴ学園を知っているな」
もちろん知っている。つい最近ルナさんが行くことで、話題になったからな。
だけど何故皇帝陛下からブレイヴ学園についての話が出るのか、その意図がわからない。
「もちろん知っているわ。私が首席で卒業した学園ですから」
「私達がですよね。自分だけが首席のような言い方をしないで下さい」
確か昔聞いた話だと筆記試験はサーシャがトップで、実技試験はエミリアがトップだったと言っていたな。
だけど二人同時の首席で良かったと思う。もしどちらかだけが首席になってしまうと、そのことをネタにして一生争ってそうだからな。
「それでブレイヴ学園が俺達に何か関係があるのでしょうか」
俺の問いに皇帝陛下は黙ってしまう。
ん? いつもの皇帝陛下とどこか違うような。
何か頼み事があるなら、問答無用で命令してきそうな感じがするけど。
「⋯⋯三人には臨時講師としてブレイヴ学園に行ってもらいたい」
「「「えっ?」」」
皇帝陛下の思わぬ言葉に、俺達は驚きの声を上げてしまう。
ど、どういうことだ? 何故俺達がブレイヴ学園に?
サーシャとエミリアは学園で優秀な成績を修めていたから、臨時講師に呼ばれるのはまだわかる。
だけど俺は全然関係ないぞ。
「それは俺も⋯⋯ですか?」
「そうだ」
疑問に思っていたことを問いかけたら、速攻で返答が返ってきた。
「その理由を教えて頂いてもよろしいですか?」
そしてその真相を問いかけるが、皇帝陛下は口を開いてくれない。
何故理由を教えてくれないのか意味がわからない。そんな状態で臨時講師と言われてもこちらが困る。
皇帝陛下は何も言ってくれない。だがこの時、俺達の疑問を晴らす人物が応接室に訪ねてきた。
トントン
「失礼しますわ」
「失礼します」
部屋に入ってきたのはアンジェリカさんとソフィアさんだった。
「陛下のことですから上手く説明が出来ないと思って」
「アンと私が代わりに説明しますわ」
そして皇帝陛下に代わってアンジェリカさんとソフィアさんが、どうして俺達がブレイヴ学園の臨時講師をするのか、説明するのであった。
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