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不名誉な称号

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 名前:サーシャ・フォン・ガーデンブルク
 性別:女
 種族:人間
 レベル:28/200
 称号:公爵家の令嬢・ドルドランド領主代行・淑女・ドジっ娘(限定的)・ヤンデレの卵
 好感度:S
 力:82
 素早さ:182
 耐久力:82
 魔力:3231
 HP:201
 MP:891
 スキル:魔力強化B・簿記・料理・掃除・護身術・短剣技A
 魔法:精霊魔法クラス6

 あっれぇぇぇ⋯⋯おっかしいぞぅ⋯⋯
 魔力が高い⋯⋯これはいい。フェルト公爵の娘ならあり得ることだ。
 称号のドジっ娘⋯⋯これも以前からたまに何もない所で転んだりしていたので、納得できる。ただ限定的というのが気になるが。
 しかしその後の称号⋯⋯ヤンデレの卵って⋯⋯
 酔っ払った時にヤンデレモードになったことがあるけど、初めから素養があったという訳か。
 だけど今はまだ卵だから覚醒させなければ大丈夫なのか?
 好感度もSで初めてみるし、もしヤンデレにレベルアップしたら、恐ろしいことになる可能性がある。
 もしこの好感度Sが異性として好きというものだったら、他の女性に少しでも目を奪われた瞬間に、サーシャのスカートの下に隠されたナイフで、切り裂かれるかもしれない。
 なんてったって短剣技はAだからな。
 まさかヤンデレだから短剣のスキルが高いのか?
 とにかく恐ろしいことにはかわりない。

「どうでしょうか? 私の能力は⋯⋯」

 サーシャが少し不安気に、上目遣いで問いかけてくる。

「えっ? いや、え~と⋯⋯」
「言い淀むということは、私の能力は口に出すことができない程、よくないということですね」

 俺が言いづらそうにしていると、サーシャが自分で結論付けてしまう。
 確かにある意味よくないと言えばよくない。
 と、とにかく余計なことは話せなければいいよな。
 俺は称号以外のことを伝えることにする。

「そんなことない。レベルは28で上限値が200まであるよ」
「じょ、上限値! 真実の石ではそこまで能力はわからないはずですが」
「俺の鑑定スキルではわかるみたいだ」
「さすがはリック様です」
「後魔力がとても高いと思う」

 3231は、今まで鑑定で視た人の中では断トツに高い。

「サーシャは精霊魔法の才能があるね」
「リック様にそう言って頂けると嬉しいです」
「とりあえずまだまだレベルを上げることが出来るから、サーシャはきっと強くなれるよ」
「リック様⋯⋯ありがとうございます」

 強くなりたいサーシャにとって、レベルの上限値が高いことは、本人のやる気に繋がるだろう。

「それじゃあダンジョンも攻略したし、ズーリエへ向かおうか」

 俺は街道へと戻ろうとするが⋯⋯

「お待ち下さい」

 突然サーシャに腕を捕まれる。

「どうしたんだ?」
「リック様⋯⋯私の能力で、他に気になることはありませんでしたか?」
「な、なんのことだろう。もしかしてスキルのことかな」
「いえ、称号のことです。誰にも知られたくなかった称号を、リック様は視ましたよね?」

 よくよく考えて見ると、サーシャは真実の石で自分の称号を確認しているはず。ヤンデレのことを知らないはずがない。

「た、確かに少しユニークな称号があったけど⋯⋯」
「このことは秘密でお願いします」
「あ、うん。勿論誰にも言わないよ」
「もしこのことを他の人に知られたら⋯⋯私、何をするかわかりません」

 そ、それはナイフで切り刻むということですか! 

「わかった。ここだけの秘密だ」 
「良かったです。少し不名誉な称号ですから」

 サーシャは笑顔で安堵している。
 あれ? 思っていたよりサーシャはヤンデレのことを気にしていないのか? だけどこの後のサーシャのセリフで、俺は勘違いしていることに気づいてしまう。
 サーシャは俺の顔の側まで来て、小さな声で囁く。

「この年になって【ドジっ娘】の称号なんて恥ずかしいですよね」
「えっ? そ、そうそう! そのことね!」

 ヤンデレのことじゃなかったのか!
 もしかしてサーシャはヤンデレのことを知らないのか!?

「リック様? その反応は、何か他に気になることがあったのですか?」
「いや、そんなことないよ! 完璧なサーシャにその称号があるのは、ギャップがあって可愛らしいと思うよ!」
「そ、そうですか」
「そうだよ! それより早く街に行かないと! 日が落ちて野宿することになるかもしれないから、急いでズーリエに向かおう!」

 俺は称号の話題から反らすために、捲し立てるように言葉を口にする。

「そうですね。暗くなる前にズーリエへと向かいましょう」
「しゅっぱ~つ」

 そして俺は何とかヤンデレのことは誤魔化し、目的地であるズーリエへと向かうのであった。
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