上 下
132 / 147
連載

ダンジョンコア

しおりを挟む
「サーシャお姉ちゃんカッコいい!」
「先程はカッコ悪い所を見られてしまいましたから。少しは名誉挽回出来ましたか?」
「確かに普段のおしとやかで可愛らしいサーシャとは違って、魔法を使っている姿は凛々しくカッコ良かった。特に最後の稲妻魔法ライトニングボルトを放った姿は痺れたな」
「そそそ、そんなことないですよ! 私なんてまだまだです!」

 サーシャは顔を赤くし、慌てふためいている。
 さっきまでの凛々しくカッコいい姿が、どこかへ行ってしまったようだ。

「そ、それより先に進みましょう! この先にコアが⋯⋯ふぎゃ!」
「サーシャお姉ちゃん大丈夫!」

 サーシャが何もない所で顔から転んでしまった。
 本当にさっきのカッコいい姿が台無しだ。

「クラス5・完全回復パーフェクトヒール創聖魔法ジェネシス

 俺はサーシャに向かって回復魔法かける。

「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。回復魔法をかけて頂きありがとうございます」

 サーシャは汚れを手で払いながら、バツが悪そうに立ち上がる。
 そして恥ずかしさが込み上げてきたのか、顔が真っ赤になっていた。
 ここはなかったことにしてあげた方が良さそうだな。

「それじゃあ行こうか」
「は、はい」
「うん」

 そして俺達はこの空間の一番奥へと到着した。

「あれ? 行き止まりだよ。他に道があるのかな?」
「いや、ここでいいはずだ」
「どういこと?」

 さっきの巨大トカゲがこのダンジョンのボスであるなら⋯⋯
 突然辺りが揺れ、ダンジョン内に地響きが鳴り渡る。

「えっ? 地震?」
「違うよ。ほら見てみて」

 俺はノノちゃんに前方を見るように促す。するとそこには先程までなかった台座が現れた。

「これって⋯⋯綺麗だね」

 台座には銀色の水晶が光輝いていた。

「シルバーですか。予想通りですね」
「シルバー? どういう意味なの?」
「ダンジョンの格付けですね。上からダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズに分かれています。格が上程強力な魔物がいます」
「そしてこれがダンジョンのコアと言われていて破壊すると⋯⋯」

 俺はサーシャに視線を送る。
 サーシャは頷き、コアを軽く叩く。
 するとコアは簡単に砕け散り、周囲が白く輝くと景色が一瞬で変わる。

「あれ? あれれ? 外に出ちゃったよ」
「これで大丈夫です。コアが破壊されたため、ダンジョンが消滅したのです」

 サーシャはノノちゃんに説明しながら、地面に落ちた銀色に輝く欠片を拾う。

「そしてこのコアの欠片が、ダンジョンを攻略した証となるのです」

 コアの欠片を冒険者ギルドに提出することによって報酬をもらい、そして勇者パーティーに任命されるのだ。
 しかしシルバークラスでは勇者パーティーにはなれない。
 ゴールドクラス以上の欠片を数個、もしくはプラチナクラスの欠片を提出することで、国と冒険者ギルドが勇者パーティーに相応しいか協議する。
 そこで認められて、初めて勇者パーティーになることができるのだ。
 ちなみにハインツの時は、ゴールドクラスのダンジョンをいくつかクリアして勇者パーティーになった。
 正直な話、クラスが一つ違うだけで、魔物の強さも格段に違う。少なくともあの頃の俺達では、プラチナクラスのダンジョンは攻略出来なかっただろう。

「これで少しは強くなれたのでしょうか」

 サーシャは不安気な表情で、ポツリと呟く。
 自分の強さを確認する方法は少ない。
 ある程度大きな街へ行けば、教会で確認することが出来るけどお布施として、金貨一枚納めなければならない。
 サーシャは公爵家で金持ちだが、本人は倹約家なので、そう何度も能力を確認出来る真実の石は使わないだろう。
 それにしても金貨一枚って高すぎるよな。教会を管理している神聖教団は、金を払わないと回復魔法の治療もしてくれないような所が多いから、俺はあまり好きじゃない。

「もしサーシャが良かったらだけど、俺がスキルで確認しようか?」
「本当ですか!」
「うん。サーシャがオッケーなら」
「ぜひお願いします!」
「わかった」

 サーシャの許可も得たので、俺は鑑定スキルを使って能力を確認する。

 こ、これは⋯⋯

 するととんでもない物が見えてきて、俺は思わず絶句するしかなかった。 
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・

マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。