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おもてなし後編
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「初めて見るけど、匂いからして肉なのは間違い無さそうね」
「リック様が作った料理です。美味しいに決まってます」
まずはエミリアとサーシャがナイフとフォークを使って肉を切る。
「えっ! 柔らかいわ」
「ナイフがスーっと入っていきます」
この肉は子供でも簡単に食べられる物だからな。
だからお子様ランチにもほぼ必ず入っているものだ。
「柔らかくても肝心の味が悪ければ⋯⋯う、旨い!」
「この得体の知れない肉が美味しいだなんて、イシュバル⋯⋯貴方の舌がおかしく⋯⋯美味しい」
とうとうイシュバル公爵とフェルト公爵は、俺の料理を旨いと口にしたのだ。
だが俺のターンはまだまだ終わらない。
「次はこのソースかけて下さい。イシュバル公爵とフェルト公爵はこちらを。女性陣はこちらを」
「何故男性と女性を分けるんですか? まさかこちらには毒が入っている⋯⋯なんてことはありませんよね」
「それなら俺が先に毒味をしましょうか?」
まあ例え毒が入っていても、毒耐性スキルを持っているからダメージはないけどね、
「いや、けっこう。さすがにそんなことはしないでしょう」
闇討ちしようとした人のセリフとは思えないな。
殺されそうになったことを俺が恨んでいるとは思わないのか。
「あなた! リックくんに失礼よ。それならあなたの料理は私とサーシャで頂くわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれソフィア。今のは失言だった」
「でしたら黙って食べて下さい」
「は、はい」
フェルト公爵は妻と娘に叱責されて、しょんぼりしてしまった。
だが正直フェルト公爵には酷い目に合わされたので、少し良い気味だと思っている。
「そ、それじゃあ食べようか」
フェルト公爵はこの空気を変えたかったのか、肉にソースをかけ、口に運ぶ。
「こ、これは! ソースをかけることによって、さらに肉の旨味が口に広がった!」
「この匂いはガーリックか!」
これは男性に好まれる味なので、二人の口に合うと思った。
その証拠に二人は一心不乱に肉を食べている。
「ガーリック⋯⋯ね」
「私も好きですが匂いが残るのはちょっと⋯⋯」
エミリアとサーシャは、ガーリックの強烈な匂いが気になるようだ。
思春期の女の子だ。口臭が気になるのは無理もない。
だがそれは想定内だ。
「女性陣には別のソースを用意しています」
俺はメイドに指示して、女性陣の肉にソースをかける。
「これは何のソースかしら? 少し粘性があるような」
「二十年生きてきて初めて見るわ」
アンジェリカさんが滅茶苦茶年齢をサバ読んでいるが、誰もつっこまない。どうやら公爵家一家では日常茶飯事なことのようだ。
まあアンジェリカさんもソフィアさんも若くて美しいから、俺も異論はないけど。
「良い香りね」
「それでは頂きましょう」
まずはアンジェリカさんとソフィアさんが肉を口に運ぶ。
すると恍惚な表情へと変わっていく。
「甘味があってお肉がさらに美味しく感じるわ!」
「甘味だけではなく、程よい酸味もあってお肉に合っていますね」
よし! 二人の口に合ったようだ。
他の女性陣もフォークが進んでいるから、今出した肉は大成功と言えるだろう。
「それにしてもこのお肉とソースは何なの? リックくん教えてくれない?」
「これは牛肉と豚肉を細かく挽いて合わせた物です。名前はハンバーグと言います」
「ハンバーグ? 聞いたことないわ」
「それとソースですが、イシュバル公爵とフェルト公爵にお出しした物はガーリック醤油、女性陣に出した物はデミグラスソースです」
「それも聞いたことないです」
公爵夫人達が知らないということはやはり、この世界にはハンバーグやガーリック醤油、デミグラスソースはないようだ。
「もう一つあるのが嬉しいですね」
「ふ、ふん。気が利くじゃない」
ふふ⋯⋯だがまだ俺のターンは終わってないぞ。
「何だこれは!」
「中に何か入ってるぞ!」
公爵達が二つ目のハンバーグにナイフを入れると、トロッとした白っぽい何かが出てきていた。
「だがきっと旨い物であるのは間違いないだろう」
「そうですね。頂きましょう」
どうやら料理に関しては信頼を得たようだ。悪態をついていた公爵達はもうどこにもいない。
「旨い! ハンバーグの旨さが一段上がったぞ!」
「これはチーズですね。まさかチーズと肉がこんなに相性がいいとは思いませんでした」
「お兄ちゃんすごく美味しいよ。ノノ、チーズが入ったやつ好き」
「うま⋯⋯うま⋯⋯うま⋯⋯」
良かった。どうやら大好評のようだ。
「ふふ⋯⋯ノノちゃん、お口にソースがついているから拭いてあげますね」
「ありがとう。え~と⋯⋯」
「ソフィアお姉ちゃんって呼んでくれていいのよ」
「うん。ありがとうソフィアお姉ちゃん」
「はうっ! 何て素直で良い娘なの。昔のサーシャを思い出すわ」
ソフィアさんがノノちゃんの可愛さにやられて、悶えている。
「私は今でも素直な良い娘ですよ」
「そんなことないわ。だってリックくんの前だと素直に――」
「お、お母様!」
サーシャが突然慌て始める。
「ん? 俺の前だと何かあるのか?」
「い、いえ! 何でもありません! それよりデザートが運ばれて来ましたね! リック様! 説明をお願い致します!」
「あ、うん。これはシャインアップルを凍らせて削ったシャーベットになります」
サーシャが一気にシャーベットを口にした。
「冷たくて甘くてとても美味しいですね! イタッ! 頭がキーンとなって痛いです」
冷たい物を急いで食べるからだ。
それだけシャインアップルのシャーベットが食べたかったのだろうか。
「この娘は良い娘に育ったけど、たまにドジなことをするのよね。まあそこが可愛い所でもあるけど」
「サーシャ、あんた何やってるのよ。それよりパパ、どう? リックの料理は」
エミリアが胸を張って、公爵達に問いかける。
「くっ! それは⋯⋯」
「だけどそれを認める訳には⋯⋯」
二人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
どれだけ俺のことを認めたくないんだ。
二人の負けず嫌いには困ったものだな。
「とっても美味しかったわ!」
「こんなに美味しいものを食べたのは初めてよ!」
公爵達とは違って夫人達は俺の料理を褒めてくれた。
そして二人はこちらへと寄って来て俺の両腕を組んで来た。
「こんなに美味しい料理が作れるなんて、エミリアは大きい魚を逃がしたわね。これも誰かさんのせいだけど」
「これはやっぱりサーシャのお婿さんになってもらわないと。それとも融通が利かない人とは別れて、私がリックくんにアタックするのもいいわね」
「それはありだわ。リックくんと結婚すれば、毎日美味しい食事が食べられるものね」
そんなことを言ったら⋯⋯
「こ、このクソガキが。やはりあの時始末してれば⋯⋯」
「月のない夜は気をつけた方がいいですよ」
やはり公爵達の恨みを買ったか。
アンジェリカさんもソフィアさんも、旦那を挑発する行為はやめてほしいぞ。
だがこの時、公爵達以上の殺気を放っている者がいた。
「リックぅぅ⋯⋯あんた何ママ達に色目を使っているのよ!」
「お母様、アンジェリカ様。リック様を誘惑するのはやめて下さい。これ以上お痛をするようですと⋯⋯ふふ」
エミリアの殺気とサーシャの笑みが怖い。これは二人の美女の温もりに現を抜かしている場合じゃないな。
俺はゆっくりと二人の腕を外すことによって、何とかエミリアとサーシャの怒りを回避することに成功するのであった。
「リック様が作った料理です。美味しいに決まってます」
まずはエミリアとサーシャがナイフとフォークを使って肉を切る。
「えっ! 柔らかいわ」
「ナイフがスーっと入っていきます」
この肉は子供でも簡単に食べられる物だからな。
だからお子様ランチにもほぼ必ず入っているものだ。
「柔らかくても肝心の味が悪ければ⋯⋯う、旨い!」
「この得体の知れない肉が美味しいだなんて、イシュバル⋯⋯貴方の舌がおかしく⋯⋯美味しい」
とうとうイシュバル公爵とフェルト公爵は、俺の料理を旨いと口にしたのだ。
だが俺のターンはまだまだ終わらない。
「次はこのソースかけて下さい。イシュバル公爵とフェルト公爵はこちらを。女性陣はこちらを」
「何故男性と女性を分けるんですか? まさかこちらには毒が入っている⋯⋯なんてことはありませんよね」
「それなら俺が先に毒味をしましょうか?」
まあ例え毒が入っていても、毒耐性スキルを持っているからダメージはないけどね、
「いや、けっこう。さすがにそんなことはしないでしょう」
闇討ちしようとした人のセリフとは思えないな。
殺されそうになったことを俺が恨んでいるとは思わないのか。
「あなた! リックくんに失礼よ。それならあなたの料理は私とサーシャで頂くわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれソフィア。今のは失言だった」
「でしたら黙って食べて下さい」
「は、はい」
フェルト公爵は妻と娘に叱責されて、しょんぼりしてしまった。
だが正直フェルト公爵には酷い目に合わされたので、少し良い気味だと思っている。
「そ、それじゃあ食べようか」
フェルト公爵はこの空気を変えたかったのか、肉にソースをかけ、口に運ぶ。
「こ、これは! ソースをかけることによって、さらに肉の旨味が口に広がった!」
「この匂いはガーリックか!」
これは男性に好まれる味なので、二人の口に合うと思った。
その証拠に二人は一心不乱に肉を食べている。
「ガーリック⋯⋯ね」
「私も好きですが匂いが残るのはちょっと⋯⋯」
エミリアとサーシャは、ガーリックの強烈な匂いが気になるようだ。
思春期の女の子だ。口臭が気になるのは無理もない。
だがそれは想定内だ。
「女性陣には別のソースを用意しています」
俺はメイドに指示して、女性陣の肉にソースをかける。
「これは何のソースかしら? 少し粘性があるような」
「二十年生きてきて初めて見るわ」
アンジェリカさんが滅茶苦茶年齢をサバ読んでいるが、誰もつっこまない。どうやら公爵家一家では日常茶飯事なことのようだ。
まあアンジェリカさんもソフィアさんも若くて美しいから、俺も異論はないけど。
「良い香りね」
「それでは頂きましょう」
まずはアンジェリカさんとソフィアさんが肉を口に運ぶ。
すると恍惚な表情へと変わっていく。
「甘味があってお肉がさらに美味しく感じるわ!」
「甘味だけではなく、程よい酸味もあってお肉に合っていますね」
よし! 二人の口に合ったようだ。
他の女性陣もフォークが進んでいるから、今出した肉は大成功と言えるだろう。
「それにしてもこのお肉とソースは何なの? リックくん教えてくれない?」
「これは牛肉と豚肉を細かく挽いて合わせた物です。名前はハンバーグと言います」
「ハンバーグ? 聞いたことないわ」
「それとソースですが、イシュバル公爵とフェルト公爵にお出しした物はガーリック醤油、女性陣に出した物はデミグラスソースです」
「それも聞いたことないです」
公爵夫人達が知らないということはやはり、この世界にはハンバーグやガーリック醤油、デミグラスソースはないようだ。
「もう一つあるのが嬉しいですね」
「ふ、ふん。気が利くじゃない」
ふふ⋯⋯だがまだ俺のターンは終わってないぞ。
「何だこれは!」
「中に何か入ってるぞ!」
公爵達が二つ目のハンバーグにナイフを入れると、トロッとした白っぽい何かが出てきていた。
「だがきっと旨い物であるのは間違いないだろう」
「そうですね。頂きましょう」
どうやら料理に関しては信頼を得たようだ。悪態をついていた公爵達はもうどこにもいない。
「旨い! ハンバーグの旨さが一段上がったぞ!」
「これはチーズですね。まさかチーズと肉がこんなに相性がいいとは思いませんでした」
「お兄ちゃんすごく美味しいよ。ノノ、チーズが入ったやつ好き」
「うま⋯⋯うま⋯⋯うま⋯⋯」
良かった。どうやら大好評のようだ。
「ふふ⋯⋯ノノちゃん、お口にソースがついているから拭いてあげますね」
「ありがとう。え~と⋯⋯」
「ソフィアお姉ちゃんって呼んでくれていいのよ」
「うん。ありがとうソフィアお姉ちゃん」
「はうっ! 何て素直で良い娘なの。昔のサーシャを思い出すわ」
ソフィアさんがノノちゃんの可愛さにやられて、悶えている。
「私は今でも素直な良い娘ですよ」
「そんなことないわ。だってリックくんの前だと素直に――」
「お、お母様!」
サーシャが突然慌て始める。
「ん? 俺の前だと何かあるのか?」
「い、いえ! 何でもありません! それよりデザートが運ばれて来ましたね! リック様! 説明をお願い致します!」
「あ、うん。これはシャインアップルを凍らせて削ったシャーベットになります」
サーシャが一気にシャーベットを口にした。
「冷たくて甘くてとても美味しいですね! イタッ! 頭がキーンとなって痛いです」
冷たい物を急いで食べるからだ。
それだけシャインアップルのシャーベットが食べたかったのだろうか。
「この娘は良い娘に育ったけど、たまにドジなことをするのよね。まあそこが可愛い所でもあるけど」
「サーシャ、あんた何やってるのよ。それよりパパ、どう? リックの料理は」
エミリアが胸を張って、公爵達に問いかける。
「くっ! それは⋯⋯」
「だけどそれを認める訳には⋯⋯」
二人は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
どれだけ俺のことを認めたくないんだ。
二人の負けず嫌いには困ったものだな。
「とっても美味しかったわ!」
「こんなに美味しいものを食べたのは初めてよ!」
公爵達とは違って夫人達は俺の料理を褒めてくれた。
そして二人はこちらへと寄って来て俺の両腕を組んで来た。
「こんなに美味しい料理が作れるなんて、エミリアは大きい魚を逃がしたわね。これも誰かさんのせいだけど」
「これはやっぱりサーシャのお婿さんになってもらわないと。それとも融通が利かない人とは別れて、私がリックくんにアタックするのもいいわね」
「それはありだわ。リックくんと結婚すれば、毎日美味しい食事が食べられるものね」
そんなことを言ったら⋯⋯
「こ、このクソガキが。やはりあの時始末してれば⋯⋯」
「月のない夜は気をつけた方がいいですよ」
やはり公爵達の恨みを買ったか。
アンジェリカさんもソフィアさんも、旦那を挑発する行為はやめてほしいぞ。
だがこの時、公爵達以上の殺気を放っている者がいた。
「リックぅぅ⋯⋯あんた何ママ達に色目を使っているのよ!」
「お母様、アンジェリカ様。リック様を誘惑するのはやめて下さい。これ以上お痛をするようですと⋯⋯ふふ」
エミリアの殺気とサーシャの笑みが怖い。これは二人の美女の温もりに現を抜かしている場合じゃないな。
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