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返り討ち
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俺の後を尾行してきた。
狙いは俺か⋯⋯それともノノちゃんとリリが領主館に入ったため、追跡不可能と考えて、一緒にいる俺への尾行に切り替えたか。
どちらにせよ俺の跡をつけてくるなら好都合だ。
誰もいない場所へと連れて行き、返り討ちにしてやる。
俺は追跡者を気にしつつ、東門から街の外へと向かう。
追跡者はただ俺の動向を探りたいのか、それとも俺の命を奪いたいのか。もし後者なら今は辺りに人気はなく、周囲は林や大きな岩に囲まれており、襲撃の絶好のチャンスだ。
「死ね!」
俺はより周囲を警戒していると、突如追跡者が背後から襲ってきた。
武器は細身の剣。狙いは心臓。間違いなく俺を抹殺するための攻撃だ。
俺はカゼナギの剣を使って攻撃を弾く。
「お、重い⋯⋯細身の剣なのになんて威力と鋭さだ!」
これなら武器が折れてしまうのでは?
いや、今気にするのはそんなことじゃない。
わかってしまったのだ。
今の一撃で力もスピードも剣の鋭さも、全てエミリアより上だということが。
「クラス2旋風創聖魔法とクラス2烈火創聖魔法」
俺は瞬時に力とスピードの強化魔法を自身にかけ、動体視力強化と反射神経強化スキルを使い、自分の能力を全開にする。
まずいまずい! 誘きだしたつもりだったが、逆に誘きだされたか!
まさかエミリア以上の手練れが現れるなんて、想定していなかった。
しかも最悪なことはこれだけじゃない。
「ちっ! 仕留めそこなったか!」
「どこの誰だか知らないけど物騒じゃないですか」
「殺すつもりだったから問題ない」
問題大有りだ!
だが今は会話をして、その内に相手の能力を確認する。
「こちらとしては恨まれる覚えはないけど、あなたは誰なんですか?」
俺は話ながら目の前の相手に鑑定を使った。
ん? 何も出てこない。
もう一度俺は鑑定のスキルを使う。
しかし結果は同じで、目の前の相手の能力を見ることが出来なかった。
どういうことだ? 鑑定のスキルをちゃんと使えてないのか?
「どうした? 能力が見れなくて困っているといった所か?」
「えっ?」
「ある人物からお前は⋯⋯貴様は⋯⋯いや、クズ野郎は人の能力が見れるんじゃないかと指摘があってな」
「へえ、俺はそんな凄い能力が使えると思われているのか」
俺は鑑定が通じないことに衝撃を受けるが、動揺していることを見破られないため、ポーカーフェイスに徹する。
何故この男はそのことを⋯⋯俺の能力に関しては限られた人物しかしらないはず。
そしてこの男は凄く俺に恨みを抱いているようだ。尾行の狙いが二人じゃないことに安心したけどクズ野郎とまで言われるとは。
どうして俺のことを憎んでいるのか気になるが、今はそのことより目の前と後ろのピンチを何とかしなければ。
突然背後から何かが飛んで来たので、俺は反射的に避ける。
「ほう⋯⋯今のタイミングをかわすとは」
どうやらもう一人の追跡者は俺の後頭部目掛けて、水の矢を放ったようだ。
そう⋯⋯追跡者は初めから二人いたのだ。
「お前が絶対に上手く行くっていうから協力してやったのに、失敗したじゃねえか」
「どうやら我々が思っているより簡単に行かなそうですね。ちなみにどうして私の存在に気づいたのか聞いてもいいかい」
「ええ。そちらの剣を持っている大柄の男性の尾行が、あまりにもわかりやすかったので」
俺は応えながら後ろ歩きでこの場を離れる。
さすがに前後挟まれた状態で、この二人と戦うことは得策じゃない。
先程の矢は、おそらく水矢魔法。一本しかなかったが威力が凝縮されていて食らったら最後、俺は死んでいただろう。この人も相当の手練れだということがわかる。
「たぶんこれは囮で他にもいるだろうなと思っていました」
俺は背後から現れた人物に鑑定を使う。
だけど先程と同じ様に能力を見ることが出来なかった。
くそっ! 何故鑑定が効かないんだ。
しかしわかったこともある。
二人とも隠すつもりはないのか、声が低く中年くらいの男性だということだ。
「ふむふむ。だから私の攻撃が来ることを読んでいたというわけか。中々やるじゃないか」
「褒めてどうするだ! どうせこいつはこの後死ぬ。強かろうと弱かろうと関係ない」
「俺が二人を倒すかもしれませんよ」
「へえ⋯⋯言うじゃねえか」
「ではそれが口先だけかどうか試させてもらいますよ」
そして剣を持った男が、意気揚々とこちらに迫ってくるのであった。
狙いは俺か⋯⋯それともノノちゃんとリリが領主館に入ったため、追跡不可能と考えて、一緒にいる俺への尾行に切り替えたか。
どちらにせよ俺の跡をつけてくるなら好都合だ。
誰もいない場所へと連れて行き、返り討ちにしてやる。
俺は追跡者を気にしつつ、東門から街の外へと向かう。
追跡者はただ俺の動向を探りたいのか、それとも俺の命を奪いたいのか。もし後者なら今は辺りに人気はなく、周囲は林や大きな岩に囲まれており、襲撃の絶好のチャンスだ。
「死ね!」
俺はより周囲を警戒していると、突如追跡者が背後から襲ってきた。
武器は細身の剣。狙いは心臓。間違いなく俺を抹殺するための攻撃だ。
俺はカゼナギの剣を使って攻撃を弾く。
「お、重い⋯⋯細身の剣なのになんて威力と鋭さだ!」
これなら武器が折れてしまうのでは?
いや、今気にするのはそんなことじゃない。
わかってしまったのだ。
今の一撃で力もスピードも剣の鋭さも、全てエミリアより上だということが。
「クラス2旋風創聖魔法とクラス2烈火創聖魔法」
俺は瞬時に力とスピードの強化魔法を自身にかけ、動体視力強化と反射神経強化スキルを使い、自分の能力を全開にする。
まずいまずい! 誘きだしたつもりだったが、逆に誘きだされたか!
まさかエミリア以上の手練れが現れるなんて、想定していなかった。
しかも最悪なことはこれだけじゃない。
「ちっ! 仕留めそこなったか!」
「どこの誰だか知らないけど物騒じゃないですか」
「殺すつもりだったから問題ない」
問題大有りだ!
だが今は会話をして、その内に相手の能力を確認する。
「こちらとしては恨まれる覚えはないけど、あなたは誰なんですか?」
俺は話ながら目の前の相手に鑑定を使った。
ん? 何も出てこない。
もう一度俺は鑑定のスキルを使う。
しかし結果は同じで、目の前の相手の能力を見ることが出来なかった。
どういうことだ? 鑑定のスキルをちゃんと使えてないのか?
「どうした? 能力が見れなくて困っているといった所か?」
「えっ?」
「ある人物からお前は⋯⋯貴様は⋯⋯いや、クズ野郎は人の能力が見れるんじゃないかと指摘があってな」
「へえ、俺はそんな凄い能力が使えると思われているのか」
俺は鑑定が通じないことに衝撃を受けるが、動揺していることを見破られないため、ポーカーフェイスに徹する。
何故この男はそのことを⋯⋯俺の能力に関しては限られた人物しかしらないはず。
そしてこの男は凄く俺に恨みを抱いているようだ。尾行の狙いが二人じゃないことに安心したけどクズ野郎とまで言われるとは。
どうして俺のことを憎んでいるのか気になるが、今はそのことより目の前と後ろのピンチを何とかしなければ。
突然背後から何かが飛んで来たので、俺は反射的に避ける。
「ほう⋯⋯今のタイミングをかわすとは」
どうやらもう一人の追跡者は俺の後頭部目掛けて、水の矢を放ったようだ。
そう⋯⋯追跡者は初めから二人いたのだ。
「お前が絶対に上手く行くっていうから協力してやったのに、失敗したじゃねえか」
「どうやら我々が思っているより簡単に行かなそうですね。ちなみにどうして私の存在に気づいたのか聞いてもいいかい」
「ええ。そちらの剣を持っている大柄の男性の尾行が、あまりにもわかりやすかったので」
俺は応えながら後ろ歩きでこの場を離れる。
さすがに前後挟まれた状態で、この二人と戦うことは得策じゃない。
先程の矢は、おそらく水矢魔法。一本しかなかったが威力が凝縮されていて食らったら最後、俺は死んでいただろう。この人も相当の手練れだということがわかる。
「たぶんこれは囮で他にもいるだろうなと思っていました」
俺は背後から現れた人物に鑑定を使う。
だけど先程と同じ様に能力を見ることが出来なかった。
くそっ! 何故鑑定が効かないんだ。
しかしわかったこともある。
二人とも隠すつもりはないのか、声が低く中年くらいの男性だということだ。
「ふむふむ。だから私の攻撃が来ることを読んでいたというわけか。中々やるじゃないか」
「褒めてどうするだ! どうせこいつはこの後死ぬ。強かろうと弱かろうと関係ない」
「俺が二人を倒すかもしれませんよ」
「へえ⋯⋯言うじゃねえか」
「ではそれが口先だけかどうか試させてもらいますよ」
そして剣を持った男が、意気揚々とこちらに迫ってくるのであった。
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