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「あ、危なかった」
ミーティアレインに耐えることが出来なかったのか、エミリアの剣が砕けた。
そういえば元々エミリアの剣はボロボロになっていたな。
もしあの時新しい武器を買っていたら⋯⋯考えたくもない。
「運が良かったわね。もしここで見たことを誰かに話したらどうなるか⋯⋯わかってるわね」
俺は激しく首を縦に振る。
エミリアの可愛い姿を見れたが、それは触れてはいけない秘密だったようだ。
「良い心がけね。少しでも迷った素振りを見せたら、何をするかわからなかったわ」
こわっ!
とても昨日のドMだったエミリアと同じ人物だとは思えないぞ。
そうだ。エミリアは昨日のことは覚えてないのか?
見た限りだといつもと変わらない様子だけど⋯⋯
「一つだけ聞いてもいいかな」
「何よ。猫のことは喋らないわよ」
「いや、昨日の宴会のことだけど」
「宴会のこと? 何かあったの? 残念だけどお酒を飲んだ後から記憶がないのよね」
「そ、そうなんだ」
出たよ。サーシャと同じ覚えていないパターンだ。
酒を飲むと記憶がなくなるなら、飲まないでくれと言いたい所だけど、今の殺気立ったエミリアにそんなことを言う勇気はない。
「それじゃ俺は行くけど最後に後一つだけ」
「何?」
「猫と会話している時に言っていた、エミリアの触りたい人って誰なんだ?」
「ニャッ!」
ニャッ?
「リ、リック! 話すなって行った先から口にするなんて良い度胸ね」
「いや、これはエミリア本人だからいいのかなって⋯⋯」
ひぃっ! エミリアが滅茶苦茶怒っている。
少し気になったから聞いてみたが、やぶ蛇だったようだ。
「やっぱり人って痛い目をみないとわからないようね」
「そ、そんなことはない。人には対話という素晴らしい文化があるじゃないか」
エミリアはジリジリと距離を詰めてきており、このままだと俺がひどい目に遇うことは確実だ。
もうエミリアの歩みは止められない。
エミリアは俺より足が速い。普通に逃げたら追いつかれるのは目に見えている。
こうなったら実力行使で!
俺は左手に魔力を集める。
「クラス4闇霧創聖魔法」
そして創聖魔法を唱えると黒い霧が一瞬で周囲に広がり、目の前が暗闇に包まれて視界が悪くなる。
「こ、これは皇帝陛下と戦っていた時に使った魔法!?」
「それじゃあ俺は用があるんで!」
周囲は黒い霧に包まれているので、エミリアは迂闊に走ることは出来ないはずだ。
俺は数年間この領主館で過ごしていた経験から、どこに何があるか覚えている。そしてカゼナギの剣を使って俺の周囲に軽く風を起こし、視界を確保した。
「リック待ちなさい! 絶対に許さないわよ!」
「待てと言われて待つバカはいない」
「バカ? この私のことをバカって言ったわね!」
益々エミリアが怒ってしまった。これはもう絶対に捕まるわけにはいかない。
「確かこっちの方から気配が⋯⋯」
やばいやばい。エミリアは一流の剣士だ。
霧が辺りを覆っている間に、この場から退散しないと。
俺はエミリアから逃げるため、この後気配を消して領主館の外へと逃げるのであった。
そして領主館の入口にて。
「おお、リック殿」
俺はエミリアの怒りが収まるまで、街に退避しようと考えていた所をウィスキー侯爵に話かけられた。
朝早い時間だけど、ウィスキー侯爵にはドルドランドでの滞在中は、この領主館で過ごしてもらっているから、おかしな話ではない。
「そろそろ領地に戻ろうと思って探していた。今日にでも荒くれ者達を引き取るために、帝都から人が来るしな」
さすがに千を越える犯罪者達を、いつまでもドルドランドで面倒を見るわけにはいかない。そのためこの荒くれ者達は、大人数を閉じ込めておける帝都へと輸送されることになった。
「すみません。色々お手数をおかけしてしまって」
「いやいや。最近鉱山で働く犯罪者達が少なくなったと聞いていたので、ちょうど良かった」
「そう言って頂けると助かります」
この国の刑罰は、軽い罪なら鉱山でしばらく無償で働くのが主流となっている。そしてもちろん重い罰を犯した者は死罪だ。
おそらくクーソやその一族は打ち首を免れないだろう。
「それで領地に戻る前に、どうしてもリック殿と話がしたくてな」
「それはどのようなご用件でしょうか」
「実はリック殿に頼みたいことが――」
そしてウィスキー侯爵は少し興奮した様子で、口を開くのであった。
ミーティアレインに耐えることが出来なかったのか、エミリアの剣が砕けた。
そういえば元々エミリアの剣はボロボロになっていたな。
もしあの時新しい武器を買っていたら⋯⋯考えたくもない。
「運が良かったわね。もしここで見たことを誰かに話したらどうなるか⋯⋯わかってるわね」
俺は激しく首を縦に振る。
エミリアの可愛い姿を見れたが、それは触れてはいけない秘密だったようだ。
「良い心がけね。少しでも迷った素振りを見せたら、何をするかわからなかったわ」
こわっ!
とても昨日のドMだったエミリアと同じ人物だとは思えないぞ。
そうだ。エミリアは昨日のことは覚えてないのか?
見た限りだといつもと変わらない様子だけど⋯⋯
「一つだけ聞いてもいいかな」
「何よ。猫のことは喋らないわよ」
「いや、昨日の宴会のことだけど」
「宴会のこと? 何かあったの? 残念だけどお酒を飲んだ後から記憶がないのよね」
「そ、そうなんだ」
出たよ。サーシャと同じ覚えていないパターンだ。
酒を飲むと記憶がなくなるなら、飲まないでくれと言いたい所だけど、今の殺気立ったエミリアにそんなことを言う勇気はない。
「それじゃ俺は行くけど最後に後一つだけ」
「何?」
「猫と会話している時に言っていた、エミリアの触りたい人って誰なんだ?」
「ニャッ!」
ニャッ?
「リ、リック! 話すなって行った先から口にするなんて良い度胸ね」
「いや、これはエミリア本人だからいいのかなって⋯⋯」
ひぃっ! エミリアが滅茶苦茶怒っている。
少し気になったから聞いてみたが、やぶ蛇だったようだ。
「やっぱり人って痛い目をみないとわからないようね」
「そ、そんなことはない。人には対話という素晴らしい文化があるじゃないか」
エミリアはジリジリと距離を詰めてきており、このままだと俺がひどい目に遇うことは確実だ。
もうエミリアの歩みは止められない。
エミリアは俺より足が速い。普通に逃げたら追いつかれるのは目に見えている。
こうなったら実力行使で!
俺は左手に魔力を集める。
「クラス4闇霧創聖魔法」
そして創聖魔法を唱えると黒い霧が一瞬で周囲に広がり、目の前が暗闇に包まれて視界が悪くなる。
「こ、これは皇帝陛下と戦っていた時に使った魔法!?」
「それじゃあ俺は用があるんで!」
周囲は黒い霧に包まれているので、エミリアは迂闊に走ることは出来ないはずだ。
俺は数年間この領主館で過ごしていた経験から、どこに何があるか覚えている。そしてカゼナギの剣を使って俺の周囲に軽く風を起こし、視界を確保した。
「リック待ちなさい! 絶対に許さないわよ!」
「待てと言われて待つバカはいない」
「バカ? この私のことをバカって言ったわね!」
益々エミリアが怒ってしまった。これはもう絶対に捕まるわけにはいかない。
「確かこっちの方から気配が⋯⋯」
やばいやばい。エミリアは一流の剣士だ。
霧が辺りを覆っている間に、この場から退散しないと。
俺はエミリアから逃げるため、この後気配を消して領主館の外へと逃げるのであった。
そして領主館の入口にて。
「おお、リック殿」
俺はエミリアの怒りが収まるまで、街に退避しようと考えていた所をウィスキー侯爵に話かけられた。
朝早い時間だけど、ウィスキー侯爵にはドルドランドでの滞在中は、この領主館で過ごしてもらっているから、おかしな話ではない。
「そろそろ領地に戻ろうと思って探していた。今日にでも荒くれ者達を引き取るために、帝都から人が来るしな」
さすがに千を越える犯罪者達を、いつまでもドルドランドで面倒を見るわけにはいかない。そのためこの荒くれ者達は、大人数を閉じ込めておける帝都へと輸送されることになった。
「すみません。色々お手数をおかけしてしまって」
「いやいや。最近鉱山で働く犯罪者達が少なくなったと聞いていたので、ちょうど良かった」
「そう言って頂けると助かります」
この国の刑罰は、軽い罪なら鉱山でしばらく無償で働くのが主流となっている。そしてもちろん重い罰を犯した者は死罪だ。
おそらくクーソやその一族は打ち首を免れないだろう。
「それで領地に戻る前に、どうしてもリック殿と話がしたくてな」
「それはどのようなご用件でしょうか」
「実はリック殿に頼みたいことが――」
そしてウィスキー侯爵は少し興奮した様子で、口を開くのであった。
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