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エミリアVSリック

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「リック⋯⋯いつから見てたの? 怒らないから正直に言いなさい」

 エミリアは笑顔だが、殺気は変わっていない。
 この状態で怒らないと言われて信じる奴は皆無だろう。

「いやあ、今来たばかりだから何んのことかわからないなあ」
「ふ~ん⋯⋯そう」

 どうやら俺のアカデミー賞ものの演技を、とりあえず信じてくれたようだ。
 だがこれ以上質問されたらボロを出してしまうかもしれない。

「それじゃあ俺はこれで」

 俺は急ぎ、この場を離れるため踵を返す。
 よし。これで俺はエミリアから逃れることが出来るだろう。
 もし猫語を話している所を見たなんてバレた日には、抹殺されるかもされないからな。
 とにかく今は距離をおくことがベストだ。
 俺は冷静を装ってこの場から離れようとするが⋯⋯

「あっ、猫がいるわ」

 俺はエミリアの言葉に思わず振り返ってしまう。
 どうやらさっきの白猫が戻ってきて、少し離れた位置でこちらを警戒しているようだ。

 まさかまた来てくれるとは。
 今度こそ触ってみたいが、白猫は一歩も動かず、こちらの様子を窺っている。

「餌でもあればいいんだけど。どうすればこっちに来るのかしら」
「そうだなあ。エミリアがさっきみたいに猫語で呼び寄せればいいんじゃないか」
「やっぱり見てたんじゃない! しかも最初から!」

 突然エミリアが大声を上げてしまったため、白猫は逃げてしまう。

 ああ⋯⋯白猫さんが⋯⋯

 だが今はガッカリしている暇はない。
 白猫を触るために本音を口にしてしまい、嘘をついたことがバレてしまった。

「別に気にすることはないと思うぞ。猫語で話すエミリア⋯⋯可愛かったぞ」
「か、かわっ!!!」

 つい思っていたことをそのまま口にしてしまった。
 エミリアは怒り? で顔が赤くなっており、ワナワナと震えている。

「フ、フフフ⋯⋯フフフ⋯⋯私、今は鍛練の時間なの」
「そ、そうなんだ。エミリアは強いのに努力していて偉いな」
「べ、別に努力なんかしてないわよ! 暇潰しよ暇潰し!」

 さっき自分で鍛練って言ってたよな。だけど今のエミリアは恐ろしい殺気を纏っているため、指摘出来ない。

「と、とにかくリック! あんたも付き合いなさい」
「それくらいなら」

 それで猫語を話しているエミリアを見たのが許されるなら付き合おう。

「模擬戦をするわよ」
「わかった。それじゃあ木剣で⋯⋯」
「何を言ってるの? そんなものを使っていたら決闘にならないでしょ」
「決闘!? 模擬戦よりレベルアップしてない!」

 まさかとは思うが決闘と称して、エミリアの猫語を見た俺を始末するつもりなのか!
 許されていると思っていたが全然許されてなかった。
 エミリアは腰に差した剣を抜く。
 えっ? 本当に真剣でやるの?

「仕方ないから武器は使わせて上げるわ」
「丸腰でやらせるつもりだったのか!」

 もうそれはただの殺戮だ。
 このままだと本当に口封じで殺される。
 俺は慌てて異空間からカゼナギの剣を取った。

「死になさい! ミーティアスラスト」

 エミリアが放った突きは剣が無数に分かれて、こちらに襲いかかってくる。
 いきなりスキルを使って攻撃してきた。
 しかも死になさいって俺を殺す気満々じゃないか!

「や、やらせるか」

 俺はミーティアスラストをカゼナギの剣を使って防ぎ、防ぎ切れなかった剣は体術を使ってかわす。

 あ、危なかった。もし今、ミーティアスラストの手数が後一手多ければ、殺られていたぞ。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! これは模擬戦だろ? 少しくらい手加減してくれ」
「命をかけた戦いに手加減なんか必要ないわ」

 ダ、ダメだ。エミリアの目が本気だ。このまま何もしなかったら確実に殺られる。

 とりあえず今のままだとこちらが不利だ。
 剣の腕で俺はエミリアには勝てない。
 俺は身体能力を強化するため、左手に魔力を集める。

「させないわ!」

 エミリアはこちらの意図を読んだのか、高速の剣を繰り出してくる。

「これじゃあ魔力を集める暇がない!」

 エミリアは付かず離れずの距離を保ち、魔法を使わせてくれない。
 それにエミリアの攻撃を防ぐのに精一杯で、これ以上はもう⋯⋯

「しまった!」

 エミリアの剣を無理な体勢で防いだため、俺は地面に尻餅をついてしまう。

「終わりよリック!」

 エミリア上空へと飛び上がる。

「まさかこれは!」
「そう⋯⋯皇帝陛下を倒したスキルよ! ミーティアレイン!」

 エミリアの剣がまるで宇宙そらから落ちてくる流星のように輝き、そして瞬く間にこちらへ落下してきた。

 避けるにしても体勢が悪い。
 魔力を集める時間もない。
 ここは防ぐしかないのか。
 だけど俺にあの輝く剣を止めることができるのか?
 だが迷ってる暇はない。

 俺はカゼナギの剣をエミリアの剣に合わせる。

 キィン!

 剣と剣がぶつかり合い、甲高い音が鳴り響く。

 すごい威力だ! このままだと俺は押し負けてしまう!

 そして剣はスキルの威力に耐えられなかったのか、無惨にも砕け散ってしまうのであった。
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