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スキルに頼りすぎると痛い目をみる

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 こ、これはどうすればいいんだ。

 とにかく美少女三人にすり寄られている状態だから、良からぬことをことを妄想してしまいそうだ。
 だがここで手を出したら、三人の信頼を失ってしまう。
 俺はすぐ様冷静沈着のスキルを使い、賢者タイムに入ろうとするが⋯⋯

 あれ? スキルを使っても邪な感情が収まらない⋯⋯だと⋯⋯
 まさかとは思うが三人の魅力が強すぎて、冷静沈着のスキル能力を上回っているのか!

 どどど、どうしよう!
 まさかスキルが効かないなんて考えもしなかったぞ!
 スキルがあるから大丈夫と高を括っていたから、今の俺はものすごく動揺してしまっている。
 まず気になるのが俺の両腕だ。
 エミリアとサーシャが俺の両腕に抱きついているため、どうしても胸の感触に集中してしまう。
 だが俺はこの時悲しい事実に気づいてしまった。
 左腕は、大きく柔らかいマシュマロに包まれているが、右腕は柔らかいものに包まれていないことを。

 あれ? おかしいな。何だか涙が出てきたぞ。

 だが例え大きさはなくとも、エミリアという美少女に抱きしめられているだけで、俺の脳は正常な判断が出来なくなっている。

 それにノノちゃん⋯⋯君は何故そんな場所にいるんだ。
 頼むから動いて刺激しないでくれよ。

 とにかくスキルも無効化されるし、ここから脱出することが先決だな。
 もし三人が目を覚ましてしまったら【夜這い】とか【性欲の塊】とか【エロ子爵】など不名誉な称号が増えてしまいそうだ。

 俺は名残惜しいが、まずはサーシャに抱きしめられている左腕から抜く。
 そして今度は右腕の脱出を試みるが、強い力で抱きしめられており、抜くことが出来ない。

 おいおい、何て力だ。
 押しても引いても動かすことが出来ないぞ。
 これはエミリアが抱き枕に飽きるのを待つしかないのか。
 いや、その前に起きる可能性もあるため、ここは多少強引でも腕を引き抜いた方がいいな。

 でもどうする?
 かなり強く引っ張っても抜け出すことが出来なかったんだぞ。

 そうだ! 確かエミリアはくすぐられることに弱かったはず。
 ここは横腹をくすぐって、力が緩んだ時に腕を引き抜こう。
 しかし女性経験が少ない俺に取っては、寝てるエミリアの横腹に触るのはハードルが高い。だけどやるしかない。
 俺は空いた左手を使って、エミリアの細くて折れてしまいそうなウエストに手を伸ばす。

 細! なにこれ? 人間? 
 俺はエミリアの細すぎるウエストに驚愕する。
 だが今は驚いている場合じゃない。俺は意を決してエミリアの横腹をくすぐる。

「ふふ⋯⋯ふふふ⋯⋯」

 するとエミリアは笑みを浮かべ、俺を抱きしめていた腕が緩まる。

 今だ!

 そして俺はその隙をつき腕を引き抜くと、見事にエミリアの手から脱出することに成功した。

 ふう⋯⋯とりあえず何とかなった。
 エミリアは起きていないよな?
 笑い声は聞こえたが瞳は閉じたままだ。
 後はノノちゃんにどいてもらうだけだが⋯⋯

「ふふ⋯⋯リックたらまたそんな所を触って⋯⋯エッチなんだから」

 突如エミリアが声を出したので、俺は思わず視線を向ける。
 だがエミリアの目は変わらず閉じられたままだ。

 突然話し始めたからびっくりしたぞ。
 夢でも見ていたのか?
 それにしてもエッチって⋯⋯夢の中の俺はエミリアのどこを触ってしまったんだ!
 しかもまたってなんだ! またって!

 とても気になる内容ではあったが、今はここから脱出することを優先する。
 後はノノちゃんを股からずらして、エミリアとサーシャの間から抜け出すだけだ。

 ノノちゃんは俺が触れてないと悪夢を見てしまうから、俺と一緒にベッドの端へと移動しよう。
 そして俺はノノちゃんをお姫様抱っこで持ち上げる。
 するとベッドの上で動きがあった。
 なんと俺という抱き枕がなくなったことで、エミリアとサーシャが抱き合う形になってしまったのだ。

 仲の悪い二人がこのような体勢を取るなんて。
 ここは引き剥がした方がいいか? 
 だけどそれで目を覚ましたら嫌だなあ。
 とりあえずこのままでいいか。
 せめて夢の中でくらい、二人には仲良くしてもらおう。
 俺は二人をこのまま放置することにした。

 そして朝方、俺とノノちゃんは甲高い声で目を覚ますことになる。
 何故ならエミリアとサーシャは同時に目を覚ますと、嫌いな相手の顔が至近距離にあったからだ。


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