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酒好きにはたまらない飲み物
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「う、旨い! この喉が焼けるような感じ⋯⋯エールとはアルコールの強さがまるで違う!」
よし! 上手く出来たようだ。
この世界には蒸留酒という物がない。
醸造酒を一度熱して、気体化させたアルコールの蒸気を冷やす。そして再び液体に戻すことで、強いアルコール度数の酒を作ることができる。
酒好きになら必ず受け入れられる味だと思っていた。
「はあ⋯⋯はあ⋯⋯わ、私にもその酒を飲ませなさいよ」
「リ、リック様⋯⋯ど、どうか私にご慈悲を」
エミリアとサーシャは息が荒く、目が血走っていて怖い。
まさかとは思うが、二人はアルコール中毒じゃないよな?
もしそうだとしたらこの酒を飲ませる訳にはいかない。
「リック様、コップの半分程でしたらお二人とも酔うことはないかと」
「ほ、本当ですか」
「はい。ですが半分以上飲まれると⋯⋯その時は覚悟をお決め下さい」
覚悟を決めろってどういうことだ! まさか暴れるんじゃないだろうな。
この二人を止めるなんて俺には無理だぞ。
「わかりました。じゃあ二人ともコップの半分だけ」
「は、早くしなさい」
「よ、ヨダレが⋯⋯リック様の前でなんてはしたないことを」
今にも俺に襲いかかりそうな雰囲気を感じたので、素早く酒をコップに注ぎ、二人に渡す。
「セバスが絶賛するなんて余程のことよ」
「この匂い⋯⋯飲む前から美味しいと確信できます」
二人は酒の香りを堪能し、勢いよく口に流し込む。
一気飲みかよ! エールとはアルコール度数が全然違うんだぞ!
水割りかロックで渡せば良かったと後悔した。
「初めて体験する深く濃厚な円熟した香り、優雅で滑らかな味が口の中に広がっていくわ」
「口に入れただけで深いコクが舌を支配していきます。心地よい味がいつまでも続いて⋯⋯」
二人が恍惚な表情をし始めたぞ。まさか創造魔法を使った際にヤバい薬でも入れてしまったのか?
「コップ半分じゃ全然足りないわ」
「後一口⋯⋯後一口だけ下さい」
まずい。このままでは酒を守ることが出来ない。ここは争いの種になるものを隠してしまおう。
「もう終わりだ」
俺は二人がこれ以上酒を求めないように、樽を異空間に収納する。
「あっ! 待ちなさい」
「そんなあ」
目の前には公爵家の令嬢達が床に膝をつき、肩を落としている。
そんなに酒が飲みたかったのか? 俺が造った酒は想像以上の味のようだ。
「まさか私がお酒でここまで取り乱すなんて⋯⋯」
「は、恥ずかしいです。それにしても何故エールがそのように美味しいお酒に」
三人の視線が俺へと注がれる。
「これは魔法でエールをウイスキーという新しい物に造り変えたんだ」
俺は今まで隠していたことを口にする。
甘い考えかもしれないけど二人ならきっと秘密を守ってくれるだろう。
「物を造り変える? そんな魔法聞いたことないわ」
「リック様がお使いになる魔法は補助魔法ですよね? 補助魔法でこのような奇跡が起こせるとは到底思えません」
補助魔法は人が使う魔法の中では最下層に位置する。サーシャが疑問に思うことは当然のことだ。
「俺が使ったのは補助魔法じゃないよ」
「それなら神聖魔法?」
俺はエミリアの問いに首を横に振る。
「後は人が使える魔法は精霊魔法しかありませんが⋯⋯精霊魔法には物を造り変える魔法はありません」
サーシャは自分でも精霊魔法を使うため、ないと断言する。
「まさかリックは魔族で、暗黒魔法が使えるなんて言わないでしょうね」
「はは、まさか。俺は人間だよ」
「だったらリックの使った魔法は何なのよ。そういえば皇帝陛下との戦いでも精霊魔法みたいな魔法を使っていたけど、まさかそれも?」
「ああ⋯⋯そのとおりだ。俺が使った魔法は補助魔法でも神聖魔法でも精霊魔法でもない⋯⋯⋯⋯創聖魔法だ」
「「創聖魔法?」」
「聞いたことがないわ」
「私もです」
「セバスは聞いたことある?」
「いえ、初めて耳にする魔法です」
公爵令嬢の二人やセバスさんでも知らない魔法か。やはり創聖魔法は特別な魔法のようだ。
「簡単に言うと、他には既存の魔法を創聖魔法として使えたり、新しいスキルや魔法を造ったりすることができるんだ。いろいろな条件はあるけどね」
「「えっ!」」
創聖魔法について説明すると、二人は驚きの表情を浮かべ固まっていた。
「後はMPの消費も激しくて⋯⋯」
「ちょちょ、ちょっと待ちなさい!」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃないわよ! 今何て言ったの!」
エミリアは慌てた様子で問いかけてくる。
「既存の魔法を創聖魔法で使えたり⋯⋯」
「違うわ! その後よ!」
「いろいろな条件があるけど」
「そこじゃない!」
「新しいスキルや魔法を造ったりすることができるんだって所か」
「そうよ! な、何なのそのデタラメな魔法は」
やっぱり創聖魔法はこの世界の者が聞いても普通じゃないようだ。
傍若無人なエミリアが、めちゃくちゃ取り乱しているし。
「創聖魔法⋯⋯人が使える範疇を超えています。まるで神の⋯⋯」
二人は俺の話を聞くと呆然と立ち尽くし、放心状態になっていた。
武や魔法に長けた二人なら、創聖魔法がいかにありない存在なのか理解出来ているのだろう。
もしかしたら二人の俺を見る目が変わってしまうかもしれない。
願わくは二人には今まで通り友人でいて欲しいが⋯⋯
俺はこの時、二人との関係について心配していた。だが俺の考えとは裏腹に、エミリアとサーシャは全く別のことを思い描いているのだった。
よし! 上手く出来たようだ。
この世界には蒸留酒という物がない。
醸造酒を一度熱して、気体化させたアルコールの蒸気を冷やす。そして再び液体に戻すことで、強いアルコール度数の酒を作ることができる。
酒好きになら必ず受け入れられる味だと思っていた。
「はあ⋯⋯はあ⋯⋯わ、私にもその酒を飲ませなさいよ」
「リ、リック様⋯⋯ど、どうか私にご慈悲を」
エミリアとサーシャは息が荒く、目が血走っていて怖い。
まさかとは思うが、二人はアルコール中毒じゃないよな?
もしそうだとしたらこの酒を飲ませる訳にはいかない。
「リック様、コップの半分程でしたらお二人とも酔うことはないかと」
「ほ、本当ですか」
「はい。ですが半分以上飲まれると⋯⋯その時は覚悟をお決め下さい」
覚悟を決めろってどういうことだ! まさか暴れるんじゃないだろうな。
この二人を止めるなんて俺には無理だぞ。
「わかりました。じゃあ二人ともコップの半分だけ」
「は、早くしなさい」
「よ、ヨダレが⋯⋯リック様の前でなんてはしたないことを」
今にも俺に襲いかかりそうな雰囲気を感じたので、素早く酒をコップに注ぎ、二人に渡す。
「セバスが絶賛するなんて余程のことよ」
「この匂い⋯⋯飲む前から美味しいと確信できます」
二人は酒の香りを堪能し、勢いよく口に流し込む。
一気飲みかよ! エールとはアルコール度数が全然違うんだぞ!
水割りかロックで渡せば良かったと後悔した。
「初めて体験する深く濃厚な円熟した香り、優雅で滑らかな味が口の中に広がっていくわ」
「口に入れただけで深いコクが舌を支配していきます。心地よい味がいつまでも続いて⋯⋯」
二人が恍惚な表情をし始めたぞ。まさか創造魔法を使った際にヤバい薬でも入れてしまったのか?
「コップ半分じゃ全然足りないわ」
「後一口⋯⋯後一口だけ下さい」
まずい。このままでは酒を守ることが出来ない。ここは争いの種になるものを隠してしまおう。
「もう終わりだ」
俺は二人がこれ以上酒を求めないように、樽を異空間に収納する。
「あっ! 待ちなさい」
「そんなあ」
目の前には公爵家の令嬢達が床に膝をつき、肩を落としている。
そんなに酒が飲みたかったのか? 俺が造った酒は想像以上の味のようだ。
「まさか私がお酒でここまで取り乱すなんて⋯⋯」
「は、恥ずかしいです。それにしても何故エールがそのように美味しいお酒に」
三人の視線が俺へと注がれる。
「これは魔法でエールをウイスキーという新しい物に造り変えたんだ」
俺は今まで隠していたことを口にする。
甘い考えかもしれないけど二人ならきっと秘密を守ってくれるだろう。
「物を造り変える? そんな魔法聞いたことないわ」
「リック様がお使いになる魔法は補助魔法ですよね? 補助魔法でこのような奇跡が起こせるとは到底思えません」
補助魔法は人が使う魔法の中では最下層に位置する。サーシャが疑問に思うことは当然のことだ。
「俺が使ったのは補助魔法じゃないよ」
「それなら神聖魔法?」
俺はエミリアの問いに首を横に振る。
「後は人が使える魔法は精霊魔法しかありませんが⋯⋯精霊魔法には物を造り変える魔法はありません」
サーシャは自分でも精霊魔法を使うため、ないと断言する。
「まさかリックは魔族で、暗黒魔法が使えるなんて言わないでしょうね」
「はは、まさか。俺は人間だよ」
「だったらリックの使った魔法は何なのよ。そういえば皇帝陛下との戦いでも精霊魔法みたいな魔法を使っていたけど、まさかそれも?」
「ああ⋯⋯そのとおりだ。俺が使った魔法は補助魔法でも神聖魔法でも精霊魔法でもない⋯⋯⋯⋯創聖魔法だ」
「「創聖魔法?」」
「聞いたことがないわ」
「私もです」
「セバスは聞いたことある?」
「いえ、初めて耳にする魔法です」
公爵令嬢の二人やセバスさんでも知らない魔法か。やはり創聖魔法は特別な魔法のようだ。
「簡単に言うと、他には既存の魔法を創聖魔法として使えたり、新しいスキルや魔法を造ったりすることができるんだ。いろいろな条件はあるけどね」
「「えっ!」」
創聖魔法について説明すると、二人は驚きの表情を浮かべ固まっていた。
「後はMPの消費も激しくて⋯⋯」
「ちょちょ、ちょっと待ちなさい!」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃないわよ! 今何て言ったの!」
エミリアは慌てた様子で問いかけてくる。
「既存の魔法を創聖魔法で使えたり⋯⋯」
「違うわ! その後よ!」
「いろいろな条件があるけど」
「そこじゃない!」
「新しいスキルや魔法を造ったりすることができるんだって所か」
「そうよ! な、何なのそのデタラメな魔法は」
やっぱり創聖魔法はこの世界の者が聞いても普通じゃないようだ。
傍若無人なエミリアが、めちゃくちゃ取り乱しているし。
「創聖魔法⋯⋯人が使える範疇を超えています。まるで神の⋯⋯」
二人は俺の話を聞くと呆然と立ち尽くし、放心状態になっていた。
武や魔法に長けた二人なら、創聖魔法がいかにありない存在なのか理解出来ているのだろう。
もしかしたら二人の俺を見る目が変わってしまうかもしれない。
願わくは二人には今まで通り友人でいて欲しいが⋯⋯
俺はこの時、二人との関係について心配していた。だが俺の考えとは裏腹に、エミリアとサーシャは全く別のことを思い描いているのだった。
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