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酒は飲んでも呑まれるな
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「もしそいつらが暴動を起こしたら、私が蹴散らしてあげるわ」
「一斉に行動を起こしたらどうするつもりですか。いくらあなたでも一人で立ち向かうのは不可能ですよ」
サーシャの言うとおり街は広い。いくらエミリアが実力者だからといって、何人いるかわからない相手に一人で立ち回るのは無謀だ。
「だったら私が衛兵達を上手く使ってあげるわ」
「エミリアは何もわかっていませわね。今ドルドランドの街に、衛兵が何人いるか把握していますか?」
「知らないわよ。この街の規模なら百人くらいじゃないの?」
サーシャはエミリアの回答にため息をつく。
違うのか? 確か以前はそれに近いくらいの衛兵がいたはずだけど。
「ゴルド元子爵とデイドさんが、給金を払うのが無駄だと言って、衛兵の方々を首にしています。今このドルドランドには33名しかいません」
「あいつはなんてことをしてくれたの!」
「復職して頂けるよう、元衛兵の方々のリストアップはすでに済んでいますが⋯⋯」
さすがサーシャだな。行動が早くて助かる。
「すぐに手配してくれ」
「承知致しました。ですがすぐに戻って頂けるかはわかりません」
本当にあの二人は余計なことをしてくれるな。ドルドランドからいなくなっても迷惑をかけてくるとは。
だけど衛兵達が足りないなら、やはり手を打っておいて良かった。手に入れたあれが役に立ちそうだ。
だがその前に⋯⋯
「三人にお願いがあるんだ。これから俺がやることを誰にも言わないでほしい」
「リックが私に頼み事? 生意気ね」
「それならエミリアは部屋を出て行けばよろしいのでは? 私はリック様のお言葉に従います」
「別にきかないとは言ってないでしょ! ふ、ふん! 仕方ないわね。今回だけはあなたのお願いをきいてあげるわ」
とりあえずサーシャとエミリアは頷いてくれた。後は⋯⋯
「私もお聞きしてよろしいのですか?」
「はい。大丈夫です」
セバスさんは常にエミリアの側にいるから、ここでバレなくてもいずれバレる可能性がある。それならこちらから話した方がいいだろう。
「説明するより実際に目で、舌で味わってもらった方がわかりやすいので、まずはこのエールを飲んでほしい」
俺は執務室に置かれた樽からエールを取り出し、ガラスのコップに注いでいく。
「これを飲めってこと? エールは嫌いじゃないから喜んで飲んであげるわ」
「以前エミリアが飲み過ぎて大変なことになったのを忘れたのですか?」
「⋯⋯覚えてないわよ。そういうサーシャこそ酔っぱらってこっちは大変な目にあったわ」
「⋯⋯お二人ともほどほどでお願い致します」
セバスさんは今まで常に冷静沈着、無表情で淡々と仕事をこなしていたが、初めて困った顔を見せた。
それだけ二人は酒癖が悪いということか、ここは二人に飲ませない方がいいな。
「それじゃあ今回はセバスさんだけに⋯⋯」
「まあまあね。ホップも感じるけど、あまり強すぎず、麦芽とのバランスが悪くないわ」
「特産とされているだけはありますね。口触りがサラッとしているので、料理と一緒に味わっても邪魔をすることはなさそうです」
しかし既にエミリアとサーシャはエールを口にしていた。しかも感想がプロっぽい。この二人がかなりの酒好きであることは間違いなさそうだ。
とりあえずエールを一杯飲んだだけで酔っぱらうとかはやめてくれよ。
「それで? このエールが何なの?」
「美味しいですが、リック様が秘密にしてほしいこととどういう関係が⋯⋯」
良かった。どうやら二人ともまだ酔っぱらっていないようだ。
だがこの後の物はアルコール度数が段違いだから、絶対に二人には飲ませないようにしよう。
「ちょっと待っててくれ。今魔法をかけるから」
「「魔法?」」
俺は樽に両手を置き創造魔法を唱える。
「クラス5・創造創聖魔法」
イメージとして大麦やトウモロコシ、ライ麦、適切なミネラル分がバランスよく含まれた名水を使う。そして発酵させて幾度か蒸留してアルコール度数を高め、熟成させたもの⋯⋯それは。
俺が魔法を使うと樽が光輝く。
「樽に魔法をかけてどういうつもり!?」
「リック様のお考えが私には理解できません」
そして樽から輝きが消えると、俺の望んだ物を造ることが出来た。
だが初回だからかMPの消費が激しい。さすがにクラス2のコンソメとは違うな。だがこれで次からは今の五分の一のMPで造ることが可能だ。
「これを飲んでくれませんか?」
俺はセバスさんだけに、樽から注いだコップを渡す。
「どうしてセバスだけなの!?」
「よろしければ私にも⋯⋯」
「いや、それは⋯⋯」
こんなものを二人に飲ませたら酔うこと間違いなしだ。何としても二人に飲ませるわけにはいかない。だが酒好きの二人がおとなしく引き下がるとは思えないな。
「お嬢様、サーシャ様。ここはまず私が味見をしますので、その後でお召し上がり下さい」
「仕方ないわね。けど絶対に飲ませなさいよ」
「少しの間我慢します」
セバスさんのおかげで少しだけ時間を稼ぐことが出来た。もし二人ががぶ飲みしたら酔っぱらう前に逃げるとしよう。
「それでは飲ませて頂きます。しかし先程のエールと何の違いが⋯⋯むう、これは香りが先程と違いますな」
「リック様が使用した魔法はそういう効果が」
サーシャは勘違いしている。俺は創造魔法で香りだけじゃなく、エールその物を別の飲み物に変えたのだ。
そしてセバスさんが一気にコップの中の物を口に含むと⋯⋯
「な、なんだこれは! こんな酒は飲んだことがない!」
普段冷静沈着なセバスさんが大きく取り乱すのであった。
「一斉に行動を起こしたらどうするつもりですか。いくらあなたでも一人で立ち向かうのは不可能ですよ」
サーシャの言うとおり街は広い。いくらエミリアが実力者だからといって、何人いるかわからない相手に一人で立ち回るのは無謀だ。
「だったら私が衛兵達を上手く使ってあげるわ」
「エミリアは何もわかっていませわね。今ドルドランドの街に、衛兵が何人いるか把握していますか?」
「知らないわよ。この街の規模なら百人くらいじゃないの?」
サーシャはエミリアの回答にため息をつく。
違うのか? 確か以前はそれに近いくらいの衛兵がいたはずだけど。
「ゴルド元子爵とデイドさんが、給金を払うのが無駄だと言って、衛兵の方々を首にしています。今このドルドランドには33名しかいません」
「あいつはなんてことをしてくれたの!」
「復職して頂けるよう、元衛兵の方々のリストアップはすでに済んでいますが⋯⋯」
さすがサーシャだな。行動が早くて助かる。
「すぐに手配してくれ」
「承知致しました。ですがすぐに戻って頂けるかはわかりません」
本当にあの二人は余計なことをしてくれるな。ドルドランドからいなくなっても迷惑をかけてくるとは。
だけど衛兵達が足りないなら、やはり手を打っておいて良かった。手に入れたあれが役に立ちそうだ。
だがその前に⋯⋯
「三人にお願いがあるんだ。これから俺がやることを誰にも言わないでほしい」
「リックが私に頼み事? 生意気ね」
「それならエミリアは部屋を出て行けばよろしいのでは? 私はリック様のお言葉に従います」
「別にきかないとは言ってないでしょ! ふ、ふん! 仕方ないわね。今回だけはあなたのお願いをきいてあげるわ」
とりあえずサーシャとエミリアは頷いてくれた。後は⋯⋯
「私もお聞きしてよろしいのですか?」
「はい。大丈夫です」
セバスさんは常にエミリアの側にいるから、ここでバレなくてもいずれバレる可能性がある。それならこちらから話した方がいいだろう。
「説明するより実際に目で、舌で味わってもらった方がわかりやすいので、まずはこのエールを飲んでほしい」
俺は執務室に置かれた樽からエールを取り出し、ガラスのコップに注いでいく。
「これを飲めってこと? エールは嫌いじゃないから喜んで飲んであげるわ」
「以前エミリアが飲み過ぎて大変なことになったのを忘れたのですか?」
「⋯⋯覚えてないわよ。そういうサーシャこそ酔っぱらってこっちは大変な目にあったわ」
「⋯⋯お二人ともほどほどでお願い致します」
セバスさんは今まで常に冷静沈着、無表情で淡々と仕事をこなしていたが、初めて困った顔を見せた。
それだけ二人は酒癖が悪いということか、ここは二人に飲ませない方がいいな。
「それじゃあ今回はセバスさんだけに⋯⋯」
「まあまあね。ホップも感じるけど、あまり強すぎず、麦芽とのバランスが悪くないわ」
「特産とされているだけはありますね。口触りがサラッとしているので、料理と一緒に味わっても邪魔をすることはなさそうです」
しかし既にエミリアとサーシャはエールを口にしていた。しかも感想がプロっぽい。この二人がかなりの酒好きであることは間違いなさそうだ。
とりあえずエールを一杯飲んだだけで酔っぱらうとかはやめてくれよ。
「それで? このエールが何なの?」
「美味しいですが、リック様が秘密にしてほしいこととどういう関係が⋯⋯」
良かった。どうやら二人ともまだ酔っぱらっていないようだ。
だがこの後の物はアルコール度数が段違いだから、絶対に二人には飲ませないようにしよう。
「ちょっと待っててくれ。今魔法をかけるから」
「「魔法?」」
俺は樽に両手を置き創造魔法を唱える。
「クラス5・創造創聖魔法」
イメージとして大麦やトウモロコシ、ライ麦、適切なミネラル分がバランスよく含まれた名水を使う。そして発酵させて幾度か蒸留してアルコール度数を高め、熟成させたもの⋯⋯それは。
俺が魔法を使うと樽が光輝く。
「樽に魔法をかけてどういうつもり!?」
「リック様のお考えが私には理解できません」
そして樽から輝きが消えると、俺の望んだ物を造ることが出来た。
だが初回だからかMPの消費が激しい。さすがにクラス2のコンソメとは違うな。だがこれで次からは今の五分の一のMPで造ることが可能だ。
「これを飲んでくれませんか?」
俺はセバスさんだけに、樽から注いだコップを渡す。
「どうしてセバスだけなの!?」
「よろしければ私にも⋯⋯」
「いや、それは⋯⋯」
こんなものを二人に飲ませたら酔うこと間違いなしだ。何としても二人に飲ませるわけにはいかない。だが酒好きの二人がおとなしく引き下がるとは思えないな。
「お嬢様、サーシャ様。ここはまず私が味見をしますので、その後でお召し上がり下さい」
「仕方ないわね。けど絶対に飲ませなさいよ」
「少しの間我慢します」
セバスさんのおかげで少しだけ時間を稼ぐことが出来た。もし二人ががぶ飲みしたら酔っぱらう前に逃げるとしよう。
「それでは飲ませて頂きます。しかし先程のエールと何の違いが⋯⋯むう、これは香りが先程と違いますな」
「リック様が使用した魔法はそういう効果が」
サーシャは勘違いしている。俺は創造魔法で香りだけじゃなく、エールその物を別の飲み物に変えたのだ。
そしてセバスさんが一気にコップの中の物を口に含むと⋯⋯
「な、なんだこれは! こんな酒は飲んだことがない!」
普段冷静沈着なセバスさんが大きく取り乱すのであった。
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