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決意
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少年に剣が迫る。
このままだのコンマ数秒後、辺りに血が舞うはずだった。
しかし少年に剣は届かない。何故ならノノちゃんが男の顔面に向かって飛び蹴りを放ち、吹き飛ばしたからだ。
えっ? 今の蹴りってエミリアそっくりじゃないか?
まさか泉で俺が蹴られたのを見て、真似したんじゃないだろうな。
頼むからノノちゃんは、エミリアのドSな所は見習わないでくれよ。
「このくそガキ!」
「いきなりなにしやがる!」
蹴られた男の仲間達が怒声を上げて、ノノちゃんへと向かってくる。
だがその接近を許すつもりはない。俺は男達の胸部目掛けて拳を放った。
「がっ!」
「ぐえっ!」
「ぎゃっ!」
すると残りの男達は重力を無視したかのように、ゴミ溜めへと吹き飛ぶ。
「俺の可愛い妹に何をするつもりだ?」
「お兄ちゃん♥️」
だが男達は既に気絶しているのか、俺の声が届いていないようだ。
「えっ⋯⋯あっ⋯⋯」
そして少年達は突然の出来事で何が起きたのかわからず、混乱しているように見えた。
「大丈夫?」
ノノちゃんが少年達に声をかけるとハッとなり、現実に戻ったような顔をしていた。
「あ、ありがとう」
「おかげでクトが無事だったよ」
子供達は危機が去ったことでホッと一息ついて、その場に座り込んでしまう。
たがクトという少年は殴られたのか、頬が腫れている。
俺は魔力を右手に溜めてクトに魔法を使う。
「クラス3・回復魔法」
するとクトの身体が光、腫れた頬が治っていく。
「これは⋯⋯魔法か」
「お兄ちゃんの魔法はすごいからすぐに痛くなくなるよ」
ノノちゃんは座り込んだクトに笑顔を向けながら手を差し伸べる。
だがこの後、クトが取った行動は俺には看過できないものであった。
「さわるな!」
なんとクトはノノちゃんの手をパンッ! と音がなるくらい強く払ったのだ。
これはいくら子供だからといって許される行動じゃない。ここは大人としてキッチリと落とし前を⋯⋯いや、指導してやらないとな。
「お前はこっち側の人間じゃない! どうせ俺達を見下して憐れんで、良いことをしたって浸ってる偽善者だろ!」
「そんなことないよ⋯⋯ノノ
は⋯⋯」
「お前ら行くぞ!」
「「「うん⋯⋯」」」
クト達は立ち上がるとこちらのことは見向きもせず、貧民街の中へと消えていった。
「行っちゃった⋯⋯」
ノノちゃんの手が払われた時は怒りでカッとなってしまったが、あのクトという少年の荒んだ行動は、貧民街では珍しいことではない。
格差から普通に生活している人に対して、自分とは相容れない存在だと思っているのだろう。そしてどうして自分は毎日食べ物がない、ちゃんとした服も着れない、ゆっくりと寝ることも出来ないんだと、憎しみの感情を抱いている者が大半なのだ。
「ノノも⋯⋯ううん。ノノは今お兄ちゃんと一緒に暮らせて幸せだから、その気持ちがわかるなんて言えないね」
「ノノちゃん⋯⋯」
ノノちゃんは伏し目がちで悲しい顔をしていた。
「お兄ちゃん⋯⋯みんなが幸せになる方法ってないのかな?」
「それは⋯⋯」
子供に夢を見させるならあると答えるべきだろう。だけど現実はそう上手くはいかない。全てのことがとは言わないが、誰かが幸せになっていれば誰かが不幸になるのが摂理だ。
それに幸せの形を人によって違うため、その目標は一生叶うことはない。だけど⋯⋯
「ないよ」
「そっか⋯⋯」
「でも幸せになる人を多くすることは出来る」
少なくとも誰もが毎日お腹いっぱいに食べれる生活が送れれば、今より幸せになれる人は増えるだろう。
「そのためにはどうすればいいのかな? ノノ⋯⋯もう自分だけ逃げたくないよ」
逃げたくないか⋯⋯もしかしたら今でもノノちゃんは、自分だけナルキスの屋敷から逃げたことを気に病んでいるのかもしれない。
ノノちゃんだってまだ貧民街から抜け出したばかりなのに、他人のことが考えられるなんて。本当にこの妹は優しい子だ。
そしてルナさんも街の代表になって、皆を幸せにはしようと頑張っている。
それに比べて俺は⋯⋯
「ノノちゃんが今することは勉強して身体を動かして、いっぱい遊ぶことだよ」
「でも⋯⋯ノノも何か――」
ノノちゃんは不服そうな顔で声をあげるが、俺はそれを遮る。
「それとこれから俺がすることを手伝って欲しいな。後は俺に任せてくれ」
「うん。ノノ、お兄ちゃんのために何でもするよ」
こうして俺はあることを決意し、ノノちゃんと共に貧民街を後にするのであった。
このままだのコンマ数秒後、辺りに血が舞うはずだった。
しかし少年に剣は届かない。何故ならノノちゃんが男の顔面に向かって飛び蹴りを放ち、吹き飛ばしたからだ。
えっ? 今の蹴りってエミリアそっくりじゃないか?
まさか泉で俺が蹴られたのを見て、真似したんじゃないだろうな。
頼むからノノちゃんは、エミリアのドSな所は見習わないでくれよ。
「このくそガキ!」
「いきなりなにしやがる!」
蹴られた男の仲間達が怒声を上げて、ノノちゃんへと向かってくる。
だがその接近を許すつもりはない。俺は男達の胸部目掛けて拳を放った。
「がっ!」
「ぐえっ!」
「ぎゃっ!」
すると残りの男達は重力を無視したかのように、ゴミ溜めへと吹き飛ぶ。
「俺の可愛い妹に何をするつもりだ?」
「お兄ちゃん♥️」
だが男達は既に気絶しているのか、俺の声が届いていないようだ。
「えっ⋯⋯あっ⋯⋯」
そして少年達は突然の出来事で何が起きたのかわからず、混乱しているように見えた。
「大丈夫?」
ノノちゃんが少年達に声をかけるとハッとなり、現実に戻ったような顔をしていた。
「あ、ありがとう」
「おかげでクトが無事だったよ」
子供達は危機が去ったことでホッと一息ついて、その場に座り込んでしまう。
たがクトという少年は殴られたのか、頬が腫れている。
俺は魔力を右手に溜めてクトに魔法を使う。
「クラス3・回復魔法」
するとクトの身体が光、腫れた頬が治っていく。
「これは⋯⋯魔法か」
「お兄ちゃんの魔法はすごいからすぐに痛くなくなるよ」
ノノちゃんは座り込んだクトに笑顔を向けながら手を差し伸べる。
だがこの後、クトが取った行動は俺には看過できないものであった。
「さわるな!」
なんとクトはノノちゃんの手をパンッ! と音がなるくらい強く払ったのだ。
これはいくら子供だからといって許される行動じゃない。ここは大人としてキッチリと落とし前を⋯⋯いや、指導してやらないとな。
「お前はこっち側の人間じゃない! どうせ俺達を見下して憐れんで、良いことをしたって浸ってる偽善者だろ!」
「そんなことないよ⋯⋯ノノ
は⋯⋯」
「お前ら行くぞ!」
「「「うん⋯⋯」」」
クト達は立ち上がるとこちらのことは見向きもせず、貧民街の中へと消えていった。
「行っちゃった⋯⋯」
ノノちゃんの手が払われた時は怒りでカッとなってしまったが、あのクトという少年の荒んだ行動は、貧民街では珍しいことではない。
格差から普通に生活している人に対して、自分とは相容れない存在だと思っているのだろう。そしてどうして自分は毎日食べ物がない、ちゃんとした服も着れない、ゆっくりと寝ることも出来ないんだと、憎しみの感情を抱いている者が大半なのだ。
「ノノも⋯⋯ううん。ノノは今お兄ちゃんと一緒に暮らせて幸せだから、その気持ちがわかるなんて言えないね」
「ノノちゃん⋯⋯」
ノノちゃんは伏し目がちで悲しい顔をしていた。
「お兄ちゃん⋯⋯みんなが幸せになる方法ってないのかな?」
「それは⋯⋯」
子供に夢を見させるならあると答えるべきだろう。だけど現実はそう上手くはいかない。全てのことがとは言わないが、誰かが幸せになっていれば誰かが不幸になるのが摂理だ。
それに幸せの形を人によって違うため、その目標は一生叶うことはない。だけど⋯⋯
「ないよ」
「そっか⋯⋯」
「でも幸せになる人を多くすることは出来る」
少なくとも誰もが毎日お腹いっぱいに食べれる生活が送れれば、今より幸せになれる人は増えるだろう。
「そのためにはどうすればいいのかな? ノノ⋯⋯もう自分だけ逃げたくないよ」
逃げたくないか⋯⋯もしかしたら今でもノノちゃんは、自分だけナルキスの屋敷から逃げたことを気に病んでいるのかもしれない。
ノノちゃんだってまだ貧民街から抜け出したばかりなのに、他人のことが考えられるなんて。本当にこの妹は優しい子だ。
そしてルナさんも街の代表になって、皆を幸せにはしようと頑張っている。
それに比べて俺は⋯⋯
「ノノちゃんが今することは勉強して身体を動かして、いっぱい遊ぶことだよ」
「でも⋯⋯ノノも何か――」
ノノちゃんは不服そうな顔で声をあげるが、俺はそれを遮る。
「それとこれから俺がすることを手伝って欲しいな。後は俺に任せてくれ」
「うん。ノノ、お兄ちゃんのために何でもするよ」
こうして俺はあることを決意し、ノノちゃんと共に貧民街を後にするのであった。
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