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エメラルドユニコーン

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「私達があなたの願いを一つ聞いて上げる。それでいいでしょ?」

 よくないだろ。金貨500枚を頼み事一つでなしにしようとするなんて。しかも私達って、さりげなく俺まで一緒に入れたな。

「金貨500枚を? なかなか無茶なことを言うお嬢さんだ」
「この私があなたの願いを聞くのよ。それくらいの価値があるわ」

 ここまで言えるのはエミリアだけだろう。その堂々とした立ち振舞いから、自分が金貨500枚以上の価値があるということを微塵も疑っていないように見える。

「大きく出たましたね。それならこちらとしては相応の願いを聞いてもらいますがいいですか?」
「リックに何をさせるつもりなの!」

 あれ? いつの間にか俺一人でやることになっているぞ!

「ちょっと待ってくれ! エミリアがやるんだろ?」
「そんな些細なことはどうでもいいわ。今は店主の話を聞くことが先決よ」

 聞く耳持たないってやつか。エミリアを連れてきたことに激しく後悔してきぞ。
 全然納得していないが、ここは店主の願いを聞くしかないのか。

「実はここだけの話ですが、ドルドランドから南に馬車で二時間くらい行った森の中に、小さな泉があります。地図にもか書かれてない、穴場ってやつです」
「それで?」
「まあ焦らないで下さい。これは秘密の情報なんです」

 店主は話を聞かれたくないのか、店の中に人がいないか辺りを見渡す。

「いいから早く言いなさい。私は暇じゃないのよ」

 エミリアの態度を見るとどっちが悪いことをしたのかわからなくなるな。

「⋯⋯お兄さんも大変だな」
「はい⋯⋯」

 店主が小声で俺にだけ聞こえるように語りかけてきた。

「何を話してるの? 早く教えなさい」
「え、ええ⋯⋯申し訳ないです。え~とその泉の側でエメラルドユニコーンが出たんです」
「「エメラルドユニコーン?」」

 初めて聞く言葉だな。ユニコーンというと前の世界にも伝説上の生物としていた。しかしエメラルドがついた名前は知らないな。
 エミリアも俺と同じ様に頭にはてなを浮かべているので、どうやら思い当たらないようだ。

「知らないんですか? 馬の姿をした一角獣で、その角はエメラルドに輝いていて、とても美しいと言われています」
「そんなの知らないわ。で? そのエメラルドユニコーンを始末してくればいいの?」
「それはやめてください! 角だけを取ってくれれば大丈夫です! 角はまたいずれ生えて来ますから」
「簡単なことだわ。リックに任せておきなさい」

 やはり俺がやるんだな。

「そう簡単にはいきませんよ? エメラルドユニコーンは感知能力が高いため、スキルや魔法、殺気などを感じるとすぐに逃げてしまいます」
「そう。でも大丈夫よ。大船に乗ったつもりで待ってなさい。リック、後はよろしくね」

 そう言ってエミリアは店を出ていってしまった。
 あれ? 武器を買いにきたんじゃないのか?
 やれやれ、相変わらず気まぐれなお嬢様だな。

「お兄さん、すごい子と一緒にいますね」
「ハハ」

 俺は店主の問いに苦笑いするしかなかった。

「でもよかったです。あのお嬢さんがいると、エメラルドユニコーンはたぶん捕まえることは出来なかったと思います」
「えっ? どういうことですか?」

 スキルがなくてもエミリアの身体能力は優れている。少なくとも邪魔にはならないと思うが。

「実はエメラルドユニコーンは――」

 店主がエメラルドユニコーンについて詳しく語る。
 俺はその言葉を聞いて、先程の店主の言うことは正しいと心の中で頷くのであった。


「さて、俺一人でエメラルドユニコーンから角を取るのは無理そうだな」

 店主の話を聞いた後、俺は一度領主館に戻ることにした。
 まだドルドランドの問題を解決していないから、武器屋の件はなるべく早く解決したい。
 幸いなことに泉まで馬車で二時間という話だったから、強化魔法をかけて走れば、数十分で到着するだろう。

 そして領主館へと戻り、今俺は南門へと向かっている。

「ごめんね。急にお願いしちゃって」
「ううん⋯⋯ノノ、お兄ちゃんの力になれるのすごく嬉しい。えへへ」

 俺はエメラルドユニコーンの角を取るため、ノノちゃんに協力を申し出た。
 するとノノちゃんは、俺のお願いを快く受けてくれたのだ。
 本当にノノちゃんは良い子だな。だからこそ
 ちなみにリリのことはサーシャに任せてきた。そしてエミリアは⋯⋯領主館にいなかった。まだ帰って来てないのか、それとも一度帰ってまた出掛けたのかわからない。
 まあエミリアなら荒くれ者達に手を出されても、倍返しで返り討ちにするから大丈夫だろう。むしろさっきみたいに問題を起こさないかが心配だ。
 ん? まさかとは思うが、さっきエミリアの胸を小さいと言った男達を始末するために出掛けたのか!
 この広いドルドランドで人を探すのは大変だが、エミリアの執念ならやりかねない。
 勘弁してくれ。頼むからこれ以上厄介事を起こさないでほしいぞ。

 そしてドルドランドの南門にたどり着いたが、俺はエミリアのことが心配になって探知スキルを使おうとしたその時。突如背後から声をかけられるのであった。
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