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1巻
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「そうなんだ。それにしてもルナさんは俺と同じ年なのに、商会の代表をしているなんてすごいね」
「父が亡くなって母が病気になってしまったので、継ぐのが私しかいなかっただけです」
「でも他の人に譲ることもできたでしょ? でもルナさんはそれをしなかった。だからよっぽど月の雫商会が好きなんだね」
「そうですね……私も父みたいに便利な道具やおいしい食べものを仕入れ、そしてそれを街の人に提供して笑顔になってほしかった……そのような商会を作るのが夢でした」
今の話を聞いて、ルナさんのお父さんと月の雫商会に対する愛情は、かなり深いことがわかる。
だが大切なものだからこそ、何をしなくてはならないか、本質を見誤ってはならない。
「俺もルナさんのお父さんに会ってみたかったな。どんな人だったの?」
「父ですか? 商売に関しては厳しい人でしたが、私に対しては甘かったですね」
まあどこの家も父親は娘には甘いものだろう。しかもルナさんみたいな可愛らしい人なら尚更だ。
「厳しいってどんなところが?」
「接客だったり、礼儀作法だったり……私も昔はしょっちゅう怒られました。品物を売るより、まずはお客様や仕事をする仲間に対する礼儀を身につけろと。商売はお客様、生産者、そして私達商人がいて初めて成り立つものだから、そのことを忘れるなって」
「なるほど……お客さんのことを考え、一人じゃなくて皆と力を合わせてやれってことかな」
「一人じゃなく……皆で……」
抱きしめていたルナさんの身体が強張る。
「俺にはそういう人がいないけど、ルナさんはこの街にたくさんの仲間がいるから羨ましいよ」
「そんなことありません!」
ルナさんが突然大声を出し、上目遣いで俺を見上げる。
「私は……私はリックさんの仲間であり、友人だと思っています」
俺もそうだったらいいなと思っていたけど、ルナさんの口からその言葉が聞けてすごく嬉しい。
「それと……私は父の言葉を……まったく理解していなかったようです」
「どうして?」
「塩について……一人でドルドランドへ行って買いつけ、盗賊に襲われ、そして結局今売れ残って、在庫になってしまいました」
ルナさんはポツリと現状を語ってくれた。
「それでこれからどうするの?」
「もう手遅れかもしれないですけど、皆さんに頭を下げて、何かいい方法がないか一緒に考えようと思います」
多少誘導してしまったけど、ルナさんは仲間を頼る決断をしてくれた。
「それなら俺も手伝うよ」
「ですがリックさんは商会の方でもないですし……」
俺はルナさんの唇に人差し指を置いて言葉を遮る。
「俺はルナさんの仲間で友人でしょ? 手伝う理由は十分だと思うけど」
俺だって商会や街の人達と同じように、ルナさんの力になりたい。だから受け入れてほしい。
「私はリックさんにたくさん助けられています……これ以上……これ以上頼ってもいいのでしょうか……」
ルナさんはうつむき、弱々しい声でそう言った。
「ルナさんの素直な気持ちを聞かせてくれると嬉しい」
そして数秒後、ルナさんは泣き濡れた顔を上げた。
「父が……お父さんが作った商会を……守りたいです。リックさん……私に力を貸してください」
やっとルナさんから本音と思われる言葉が出てきた。それなら俺の答えはもう決まっている。
「ああ、もちろんだ」
ウェールズ商会……色々汚い手を使ってくれたな。
そして何より、ルナさんの命を狙ったことが許せない。必ずその報いを受けてもらう。
さあ、ここからは反撃の時間だ。
だがこれからウェールズ商会に反撃するのはいいけど、俺達の距離がとても近いことに気づいてしまった。俺はルナさんを見下ろし、ルナさんは俺を見上げる。顔と顔の距離は二十センチ程だ。
ルナさんの鼻筋はスッと通っており、瞳は大きくてクリッとしていて吸い込まれそうな感じがする。それに顔のパーツは均整が取れているため、本当に可愛らしいという言葉が似合う人だ。
さっきは思わず泣いているルナさんを抱きしめてしまったが、今考えると恋人でもないのにやりすぎだよな。
このまま離れるのはもったいない気がするけど……
今はここにある塩をなんとかしなくちゃならないので、名残惜しいけどルナさんから離れる。
「ま、まずは皆さんに謝る前に、やっておきたいことがあるけどいいかな?」
「な、何かいい方法があるのですか?」
なんとなく俺もルナさんも照れ臭くて、前のように話すことはできないけど、今はこの状態に慣れていくしかない。
「その前にルナさんにお願いがあるんだ」
「どんなことでしょうか? リックさんの言うことならなんでもします」
なんでも!
一瞬思春期の男として、邪な考えが浮かんだけど、なんとか頭から振り払う。
「これから行うことは他言しないでほしい」
「わかりました。この命にかけて」
「いや、命がかかっていたら話してもいいから」
真面目なルナさんらしい答えが返ってきて、思わず苦笑いしてしまう。
俺はドルドランド産の塩を一瓶手に取り、魔法を使った。
イメージは海水を塩田に引き込み、太陽と風によって乾燥させる天日塩製法。
苦味を失くすためにマグネシウムの量は少なめで。
俺の両手の中で塩の瓶が光り、やがてその輝きが消えていく。
すると瓶の中の塩は、粒が大きくザラザラしたものから、粒が小さいサラサラしたものに変化した。
「えっ? リックさん今何を」
ルナさんは目を見開き、塩の瓶の中身を凝視している。
「とりあえずこの塩の味を見てくれないか」
見た目も多少変わったが、まずはどんな味になったか確認してもらった方がいい。
ルナさんは瓶の蓋を開け、人差し指で塩を掬うと口に持っていく。
「これは! 塩辛いですけど苦味がありません! こんなにおいしい塩を食べたの初めてです!」
よかった! どうやらこの世界の人にも、受け入れられる味のようだ。
エールドラドの塩はマグネシウムの含有量が多く、苦味が強い。
これは自然にできた塩の結晶を、そのまま使っているからだ。
だから俺は海水から作る天日塩製法をイメージし、さらにマグネシウムの含有量を減らして、創聖魔法で塩を作ってみた。触媒としてドルドランド産の塩があったため、少量のMPで事足りたようだ。この分なら、おそらく残りの二百九十九本の塩を作ることも可能だ。
「これも使って食べてほしい」
俺は異空間から取り出した緑の野菜に塩をかけて、ルナさんに渡す。
「これってキュウリですか?」
「ああ……キュウリにさっきの塩を振っただけの料理なんだけど、食べてみて」
ルナさんは俺の言葉に従い、恐る恐るキュウリを口に運ぶ。
この世界でも通用する味なのか? 今の俺は料理マンガの主人公のような気分だ。
ルナさんは可愛らしく口をモグモグさせると、次第に笑顔になる。
「おいしい! 私、こんなにおいしいものは食べたことがありません!」
「よし!」
俺は思わずガッツポーズをした。
「いきなり新しい塩ですって売り出すより、このキュウリを試食してもらってから、塩を売り出せば買ってくれると思うけど……どうかな?」
「すごい! すごいです! 塩を変化させる魔法もそうですが、実績がないこの塩を、料理を食べてもらってから販売する発想が素敵です」
ルナさんはまるで子供のようにはしゃぎ、塩の販売方法に賛同してくれた。
試食品を食べてもらい買う気にさせる。前の世界のやり方を真似しただけなんだけどね。
「後は残りの塩にも魔法をかければ……」
「申しわけありません。結局リックさんに押しつけてしまって……私はなんの役にも立ってないですよね」
ルナさんは自分の力不足を嘆いて落ち込んでしまった。
「そんなことはないよ。今回俺が使った魔法は触媒となるものがなければ、膨大なMPが必要になるんだ。ルナさんがドルドランドの塩を用意してくれなかったら、新しい塩を作るのに数日かかってたよ」
「そう……ですか……リックさんのお役に立てたなら嬉しいです」
「それにルナさんは、この後販売する方を頑張ってもらわないと」
「はい、頑張ります」
残りの瓶にも魔法をかけ、一時間程で全ての塩を新しいものに変えることができた。
そして俺達はルナさんが用意してくれた台車に塩の小瓶を載せ、月の雫商会を出る。
これからルナさんと一緒に、先程月の雫商会に来てくれた人達の店に行き、この塩を販売してもらえないかお願いをしに向かう。
ルナさんの理想であるお父さんのように、便利な道具やおいしい食べものを仕入れ、そしてそれを街の人に提供して皆を笑顔にしたい。その夢を叶えるためには一人じゃなくて、仲間がいなくちゃダメだ。
今、ルナさんはその一歩を踏み出そうとしている。
「先程は嘘をついてしまったのですが、今さらこんなお願いをして大丈夫でしょうか……」
一度決意したはずのルナさんは、自信なさげな表情をしている。
だから俺はハッキリと断言した。
「心配ないと思うよ」
先程の様子を見る限り、ルナさんはあの人達から慕われているように思えたからだ。
「ルナさんって自己評価が低そうだね」
「だ、だって……父の後を継いでから何一つうまくいっていないから……皆さんがこんな私を見限ってもおかしくないですよ」
仕事だけできればいいってわけじゃないと思うけどね。
衛兵達も言っていたように、皆はルナさんの頑張っている姿を見て、応援したいと思っているはずだ。
だからルナさんがお願いすれば、きっと街の人達は協力してくれると思う。
「大丈夫、ルナさんの気持ちはきっと皆にも伝わるよ」
「そう……ですか。なんだかリックさんに言われると、なんでもできるような気がしてきました」
そう言ってルナさんは笑顔を見せてくれた。
これって……
その時のルナさんの笑顔を見て、俺は前にも同じような光景を目にしたことがあるのを思い出した。
あれは確か中学の文化祭だった。
文化祭の実行委員を誰もやらないのを見かねて、一人の女の子が立候補してリーダーとして頑張ろうとしていた。しかし、クラスメイト達は部活の方の出しものを優先していたな。
そして女の子は自分は帰宅部だから大丈夫と、クラスの出しものを一手に引き受けてしまったのだ。その時は俺も手伝ったが、結局俺達だけでは時間が足りなかった。その後、部活の出しものをやっている連中に、クラスの出しものも手伝うように、お願いをしに行ったことがあったな。
詳しい背景も、その女の子の名前や顔もはっきりとは思い出せないが、なんとなくその子はルナさんに似ていたような気がした。
もしかしてルナさんは前世の俺の知り合いで、転生者なのか?
はは……まさかな。
頭ではありえないと思っていても、俺はルナさんの顔をジーッと見つめてしまう。
「リックさん……そんなに見つめられるとはずかしいです」
ルナさんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「ご、ごめん!」
俺はすぐにルナさんに謝ったが、なんだかむず痒い空気になり、そのまま無言で月の雫商会に協力してくれている人達のところへ向かった。
まず訪れたのは、昨日ウェールズ商会から嫌がらせを受けた八百屋だ。
「す~は~」
ルナさんは緊張しているのか、大きな胸を上下させて深呼吸している。
「大丈夫、ちゃんとお願いすればきっと協力してくれるよ」
「はい」
八百屋の店の中を見渡すと、店主が野菜を並べている姿が見えた。
「すみません」
ルナさんは意を決して店主に話しかける。
「おお! ルナさんどうしたんだい? 何か俺に用事があるのかい?」
店主はルナさんに気づくと笑顔で出迎えてくれた。
「その……先程は申しわけありませんでした。塩を売る伝手があるなんて嘘をついてしまいました」
ルナさんと俺は、八百屋の店主に深々と頭を下げる。
「やはりな。月の雫商会を出た後、皆でルナさんが無理していないか心配していたんだ」
「すみません」
「でも今こうしてここに来て、本当のことを話してくれたということは、何か吹っ切れたんだろ? それで俺は何をすればいい?」
八百屋の店主はこちらからお願いする前に、協力すると言ってくれた。
やっぱりルナさんは街の皆に慕われているなあ。
「ありがとうございます。この塩を銀貨十枚でもう一度販売してくださいませんか?」
「塩……か……」
店主は塩と聞いて顔を険しくする。
それもそうだ。塩が売れなかったから月の雫商会に返品したのだ。
「いいえ、これは確かに塩ですが、以前までのものとは比べものにならない程おいしいです」
「なるほど。見た目はさらさらだな。それで肝心の味は……」
八百屋の店主は、蓋を開けて掌に塩を振り、舌で舐める。
「こ、これは! 苦味がまったくない! こんなにおいしい塩を食べたのは初めてだぞ!」
八百屋の店主は目を見開き、俺の創った塩に最大の賛辞をくれた。
「これなら野菜と一緒に食べてもうまいんじゃ……」
さすがは八百屋の店主。すぐさま自分のところの野菜と合うかを考え始めている。
「そう思いまして、こちらがこの塩に漬けて作ったキュウリの漬けものです」
異空間から出しておいたキュウリの塩漬けを八百屋の店主に渡すと、店主は早速味を確かめ始める。
「う、うまい! うまいぞぉぉ!」
八百屋の店主はとてつもなく興奮して、キュウリの味を称賛した。
「この塩を銀貨十枚でいいのか? 二十枚でも買う奴がいると思うぞ」
価格については予めルナさんと話し合い、前と同じ銀貨十枚と決めていた。
ただでさえ塩は高価なものなのに、これ以上高くしたら、本当に一部の人間しか使うことができなくなってしまうからだ。
それではルナさんの夢である、おいしいものを街の皆に食べてもらうという理念に反することになってしまう。
「ええ、銀貨十枚でお願いします」
「わかった。是非ともこの塩をうちに置かせてくれ!」
「「ありがとうございます」」
八百屋の店主の言葉に、俺とルナさんは声をシンクロさせ、お礼を述べる。
「はは、いいってことよ。こんなにうまい塩を置けるなんて、店の格が上がるってもんだ。それにしてもこんなすげえ塩をどこで手に入れたんだ。ひょっとしてそっちの兄ちゃんが?」
「は、はい! リックさんが持ってきてくださいました」
「そうか……兄ちゃんありがとよ。ルナさんを助けてくれて」
「いえ、たまたまこの塩を持っていただけです」
「ルナさんにも頼れる人ができたんだな。今日はお祝いだ! かあちゃんにも知らせねえと!」
八百屋の店主が、親戚のおじさんみたいなことを言い出した。
「けどそうなると街の若い奴らが……この兄ちゃん殺されるかもしれないな」
そして何か不穏なことを言ってないか⁉ 殺されるってなんだよ!
「えっと……それはどういう意味でしょうか……」
「いやなんでもねえ。ほら、二人は他の店にも塩を配りに行くんだろ? 早く行った行った」
いや、滅茶苦茶気になるんですけど!
しかし八百屋の店主は、俺とルナさんを店から追い出すように背中を押してきたので、結局殺される理由については教えてもらえなかった。
その後俺達は、他の店にも塩の販売をお願いしに向かい、どの店も快く塩を置くことに賛同してくれた。しかしその際に店のおばちゃん達からも八百屋の店主と同じようなことを言われ、ルナさんはその度に顔を真っ赤にしていた。
「ルナちゃんに頼れる人ができてよかったよ。今度馴れ初めを教えてちょうだいな」
「こちらの彼はルナちゃんを盗賊から助けてくれた人じゃない。二人は運命的な出会いをしたのね」
「あとは跡取りができれば月の雫商会も安泰だわ」
さすがに最後のおばちゃんの話には、俺の顔も赤くなってしまう。
……いかんいかん! 今は月の雫商会に協力してくれる店に頭を下げに行っているんだ! こんな浮ついた気持ちじゃダメだろ!
だがこの後、比較的若い男が店主をやっている店に行くと、状況が一変してしまった。
ルナさんが見ているところでは「君! ルナさんに協力してくれてありがとう!」と握手をしてきたりするくせに、ルナさんがいなくなると……
「調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「てめえ、街の男達を敵に回したからな!」
「月のない夜には気をつけな」
などと散々恨み節を言われた。
一応勘違いをしている人達全員に、ルナさんとは恋人ではないと説明はした。
だけど、皆あまり俺の言うことを信じてくれない。
「ルナさんはこの男が好きなんですか?」
「す、好きってど、どういう意味ですか?」
「もちろん恋人としてです」
「す、す、好きじゃないですよ!」
いや、確かに恋人じゃないけどさ。そこまで大きな声で否定されるとへこむぞ。
「あ、いえ……友人として、仲間として好きですよ。こ、今後好きの内容は変わっていくかもしれませんけど」
ルナさんは頬を赤らめながら、若い男の店主に聞き逃せないことを言っている。
えっ? それってどういうこと? 男女の友情的な感じでもっと好きになるってことですか? それとも恋人として好きになるっていうこと!?
そんな顔を真っ赤にして言われると、期待しちゃうんですけど!
そして魚屋の女将さんには……
「ルナちゃんにいい人ができて安心したわ」
「ち、違います! 私なんかとリックさんは釣り合いません」
「あら? 釣り合う釣り合わないの話がなければ、リックくんと付き合うのはオッケーってことね」
「そ、それは……」
えっ? オッケーなの!
それとも否定して、俺が傷つかないように配慮してくれているのか?
「ほら! これでも食べて夜の生活も頑張りな!」
そう言って女将さんはウナギを二尾俺達に渡してきた。
ウナギを食べて精力をつけろと。
ベタなことをするな、と思わず苦笑してしまう。
しかしウナギを受け取ったルナさんは、頭にはてなを浮かべていた。
「ルナちゃんはうぶなんだね。こういうことだよ」
女将さんがルナさんの耳元で何かを囁くと、ルナさんの顔はたちまち真っ赤になった。
「そ、そんなことはまだできません!」
そして大きな声で拒絶していた。
「まだってことはいつか……」
「女将さぁぁん!」
すると恥ずかしがっているルナさんの叫び声が、魚屋の店内に響き渡る。
そしてそろそろ次へ行こうという時、ルナさんが女将さんに話があると言って、また魚屋に戻ってしまった。ここからだと二人の姿は見えるが声は聞こえない。
俺はルナさんが何を話すのか気になってしまい、つい聴覚強化のスキルを使ったのだが。
「あ、あの……先程の……夜の生活の話ですけど……今度詳しく教えていただけませんか?」
女将さんはルナさんの言葉を聞いてニヤリと笑う。
「いいよ……落ち着いたらうちに来な! ルナちゃんにこんなに想ってもらえるとは果報者だねえ」
「べ、別にリックさんのために覚えるわけでは!」
「あら? 私は誰とは言ってないけど」
「女将さぁぁん!」
えっ? 俺のため?
いや勘違いするな! ルナさんは俺のためとは一言も言ってない。
勘違いして暴走し振られるなんて話は、マンガではよくあるパターンだ。誤解するなよ俺。
そして戻ってきたルナさんと俺は、なんとなくぎこちない感じで塩配りを再開した。
だがどの店に行ってもこのような感じで、俺達が恋人同士だと思われてしまい、ルナさんはその都度真っ赤になるのであった。
「父が亡くなって母が病気になってしまったので、継ぐのが私しかいなかっただけです」
「でも他の人に譲ることもできたでしょ? でもルナさんはそれをしなかった。だからよっぽど月の雫商会が好きなんだね」
「そうですね……私も父みたいに便利な道具やおいしい食べものを仕入れ、そしてそれを街の人に提供して笑顔になってほしかった……そのような商会を作るのが夢でした」
今の話を聞いて、ルナさんのお父さんと月の雫商会に対する愛情は、かなり深いことがわかる。
だが大切なものだからこそ、何をしなくてはならないか、本質を見誤ってはならない。
「俺もルナさんのお父さんに会ってみたかったな。どんな人だったの?」
「父ですか? 商売に関しては厳しい人でしたが、私に対しては甘かったですね」
まあどこの家も父親は娘には甘いものだろう。しかもルナさんみたいな可愛らしい人なら尚更だ。
「厳しいってどんなところが?」
「接客だったり、礼儀作法だったり……私も昔はしょっちゅう怒られました。品物を売るより、まずはお客様や仕事をする仲間に対する礼儀を身につけろと。商売はお客様、生産者、そして私達商人がいて初めて成り立つものだから、そのことを忘れるなって」
「なるほど……お客さんのことを考え、一人じゃなくて皆と力を合わせてやれってことかな」
「一人じゃなく……皆で……」
抱きしめていたルナさんの身体が強張る。
「俺にはそういう人がいないけど、ルナさんはこの街にたくさんの仲間がいるから羨ましいよ」
「そんなことありません!」
ルナさんが突然大声を出し、上目遣いで俺を見上げる。
「私は……私はリックさんの仲間であり、友人だと思っています」
俺もそうだったらいいなと思っていたけど、ルナさんの口からその言葉が聞けてすごく嬉しい。
「それと……私は父の言葉を……まったく理解していなかったようです」
「どうして?」
「塩について……一人でドルドランドへ行って買いつけ、盗賊に襲われ、そして結局今売れ残って、在庫になってしまいました」
ルナさんはポツリと現状を語ってくれた。
「それでこれからどうするの?」
「もう手遅れかもしれないですけど、皆さんに頭を下げて、何かいい方法がないか一緒に考えようと思います」
多少誘導してしまったけど、ルナさんは仲間を頼る決断をしてくれた。
「それなら俺も手伝うよ」
「ですがリックさんは商会の方でもないですし……」
俺はルナさんの唇に人差し指を置いて言葉を遮る。
「俺はルナさんの仲間で友人でしょ? 手伝う理由は十分だと思うけど」
俺だって商会や街の人達と同じように、ルナさんの力になりたい。だから受け入れてほしい。
「私はリックさんにたくさん助けられています……これ以上……これ以上頼ってもいいのでしょうか……」
ルナさんはうつむき、弱々しい声でそう言った。
「ルナさんの素直な気持ちを聞かせてくれると嬉しい」
そして数秒後、ルナさんは泣き濡れた顔を上げた。
「父が……お父さんが作った商会を……守りたいです。リックさん……私に力を貸してください」
やっとルナさんから本音と思われる言葉が出てきた。それなら俺の答えはもう決まっている。
「ああ、もちろんだ」
ウェールズ商会……色々汚い手を使ってくれたな。
そして何より、ルナさんの命を狙ったことが許せない。必ずその報いを受けてもらう。
さあ、ここからは反撃の時間だ。
だがこれからウェールズ商会に反撃するのはいいけど、俺達の距離がとても近いことに気づいてしまった。俺はルナさんを見下ろし、ルナさんは俺を見上げる。顔と顔の距離は二十センチ程だ。
ルナさんの鼻筋はスッと通っており、瞳は大きくてクリッとしていて吸い込まれそうな感じがする。それに顔のパーツは均整が取れているため、本当に可愛らしいという言葉が似合う人だ。
さっきは思わず泣いているルナさんを抱きしめてしまったが、今考えると恋人でもないのにやりすぎだよな。
このまま離れるのはもったいない気がするけど……
今はここにある塩をなんとかしなくちゃならないので、名残惜しいけどルナさんから離れる。
「ま、まずは皆さんに謝る前に、やっておきたいことがあるけどいいかな?」
「な、何かいい方法があるのですか?」
なんとなく俺もルナさんも照れ臭くて、前のように話すことはできないけど、今はこの状態に慣れていくしかない。
「その前にルナさんにお願いがあるんだ」
「どんなことでしょうか? リックさんの言うことならなんでもします」
なんでも!
一瞬思春期の男として、邪な考えが浮かんだけど、なんとか頭から振り払う。
「これから行うことは他言しないでほしい」
「わかりました。この命にかけて」
「いや、命がかかっていたら話してもいいから」
真面目なルナさんらしい答えが返ってきて、思わず苦笑いしてしまう。
俺はドルドランド産の塩を一瓶手に取り、魔法を使った。
イメージは海水を塩田に引き込み、太陽と風によって乾燥させる天日塩製法。
苦味を失くすためにマグネシウムの量は少なめで。
俺の両手の中で塩の瓶が光り、やがてその輝きが消えていく。
すると瓶の中の塩は、粒が大きくザラザラしたものから、粒が小さいサラサラしたものに変化した。
「えっ? リックさん今何を」
ルナさんは目を見開き、塩の瓶の中身を凝視している。
「とりあえずこの塩の味を見てくれないか」
見た目も多少変わったが、まずはどんな味になったか確認してもらった方がいい。
ルナさんは瓶の蓋を開け、人差し指で塩を掬うと口に持っていく。
「これは! 塩辛いですけど苦味がありません! こんなにおいしい塩を食べたの初めてです!」
よかった! どうやらこの世界の人にも、受け入れられる味のようだ。
エールドラドの塩はマグネシウムの含有量が多く、苦味が強い。
これは自然にできた塩の結晶を、そのまま使っているからだ。
だから俺は海水から作る天日塩製法をイメージし、さらにマグネシウムの含有量を減らして、創聖魔法で塩を作ってみた。触媒としてドルドランド産の塩があったため、少量のMPで事足りたようだ。この分なら、おそらく残りの二百九十九本の塩を作ることも可能だ。
「これも使って食べてほしい」
俺は異空間から取り出した緑の野菜に塩をかけて、ルナさんに渡す。
「これってキュウリですか?」
「ああ……キュウリにさっきの塩を振っただけの料理なんだけど、食べてみて」
ルナさんは俺の言葉に従い、恐る恐るキュウリを口に運ぶ。
この世界でも通用する味なのか? 今の俺は料理マンガの主人公のような気分だ。
ルナさんは可愛らしく口をモグモグさせると、次第に笑顔になる。
「おいしい! 私、こんなにおいしいものは食べたことがありません!」
「よし!」
俺は思わずガッツポーズをした。
「いきなり新しい塩ですって売り出すより、このキュウリを試食してもらってから、塩を売り出せば買ってくれると思うけど……どうかな?」
「すごい! すごいです! 塩を変化させる魔法もそうですが、実績がないこの塩を、料理を食べてもらってから販売する発想が素敵です」
ルナさんはまるで子供のようにはしゃぎ、塩の販売方法に賛同してくれた。
試食品を食べてもらい買う気にさせる。前の世界のやり方を真似しただけなんだけどね。
「後は残りの塩にも魔法をかければ……」
「申しわけありません。結局リックさんに押しつけてしまって……私はなんの役にも立ってないですよね」
ルナさんは自分の力不足を嘆いて落ち込んでしまった。
「そんなことはないよ。今回俺が使った魔法は触媒となるものがなければ、膨大なMPが必要になるんだ。ルナさんがドルドランドの塩を用意してくれなかったら、新しい塩を作るのに数日かかってたよ」
「そう……ですか……リックさんのお役に立てたなら嬉しいです」
「それにルナさんは、この後販売する方を頑張ってもらわないと」
「はい、頑張ります」
残りの瓶にも魔法をかけ、一時間程で全ての塩を新しいものに変えることができた。
そして俺達はルナさんが用意してくれた台車に塩の小瓶を載せ、月の雫商会を出る。
これからルナさんと一緒に、先程月の雫商会に来てくれた人達の店に行き、この塩を販売してもらえないかお願いをしに向かう。
ルナさんの理想であるお父さんのように、便利な道具やおいしい食べものを仕入れ、そしてそれを街の人に提供して皆を笑顔にしたい。その夢を叶えるためには一人じゃなくて、仲間がいなくちゃダメだ。
今、ルナさんはその一歩を踏み出そうとしている。
「先程は嘘をついてしまったのですが、今さらこんなお願いをして大丈夫でしょうか……」
一度決意したはずのルナさんは、自信なさげな表情をしている。
だから俺はハッキリと断言した。
「心配ないと思うよ」
先程の様子を見る限り、ルナさんはあの人達から慕われているように思えたからだ。
「ルナさんって自己評価が低そうだね」
「だ、だって……父の後を継いでから何一つうまくいっていないから……皆さんがこんな私を見限ってもおかしくないですよ」
仕事だけできればいいってわけじゃないと思うけどね。
衛兵達も言っていたように、皆はルナさんの頑張っている姿を見て、応援したいと思っているはずだ。
だからルナさんがお願いすれば、きっと街の人達は協力してくれると思う。
「大丈夫、ルナさんの気持ちはきっと皆にも伝わるよ」
「そう……ですか。なんだかリックさんに言われると、なんでもできるような気がしてきました」
そう言ってルナさんは笑顔を見せてくれた。
これって……
その時のルナさんの笑顔を見て、俺は前にも同じような光景を目にしたことがあるのを思い出した。
あれは確か中学の文化祭だった。
文化祭の実行委員を誰もやらないのを見かねて、一人の女の子が立候補してリーダーとして頑張ろうとしていた。しかし、クラスメイト達は部活の方の出しものを優先していたな。
そして女の子は自分は帰宅部だから大丈夫と、クラスの出しものを一手に引き受けてしまったのだ。その時は俺も手伝ったが、結局俺達だけでは時間が足りなかった。その後、部活の出しものをやっている連中に、クラスの出しものも手伝うように、お願いをしに行ったことがあったな。
詳しい背景も、その女の子の名前や顔もはっきりとは思い出せないが、なんとなくその子はルナさんに似ていたような気がした。
もしかしてルナさんは前世の俺の知り合いで、転生者なのか?
はは……まさかな。
頭ではありえないと思っていても、俺はルナさんの顔をジーッと見つめてしまう。
「リックさん……そんなに見つめられるとはずかしいです」
ルナさんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「ご、ごめん!」
俺はすぐにルナさんに謝ったが、なんだかむず痒い空気になり、そのまま無言で月の雫商会に協力してくれている人達のところへ向かった。
まず訪れたのは、昨日ウェールズ商会から嫌がらせを受けた八百屋だ。
「す~は~」
ルナさんは緊張しているのか、大きな胸を上下させて深呼吸している。
「大丈夫、ちゃんとお願いすればきっと協力してくれるよ」
「はい」
八百屋の店の中を見渡すと、店主が野菜を並べている姿が見えた。
「すみません」
ルナさんは意を決して店主に話しかける。
「おお! ルナさんどうしたんだい? 何か俺に用事があるのかい?」
店主はルナさんに気づくと笑顔で出迎えてくれた。
「その……先程は申しわけありませんでした。塩を売る伝手があるなんて嘘をついてしまいました」
ルナさんと俺は、八百屋の店主に深々と頭を下げる。
「やはりな。月の雫商会を出た後、皆でルナさんが無理していないか心配していたんだ」
「すみません」
「でも今こうしてここに来て、本当のことを話してくれたということは、何か吹っ切れたんだろ? それで俺は何をすればいい?」
八百屋の店主はこちらからお願いする前に、協力すると言ってくれた。
やっぱりルナさんは街の皆に慕われているなあ。
「ありがとうございます。この塩を銀貨十枚でもう一度販売してくださいませんか?」
「塩……か……」
店主は塩と聞いて顔を険しくする。
それもそうだ。塩が売れなかったから月の雫商会に返品したのだ。
「いいえ、これは確かに塩ですが、以前までのものとは比べものにならない程おいしいです」
「なるほど。見た目はさらさらだな。それで肝心の味は……」
八百屋の店主は、蓋を開けて掌に塩を振り、舌で舐める。
「こ、これは! 苦味がまったくない! こんなにおいしい塩を食べたのは初めてだぞ!」
八百屋の店主は目を見開き、俺の創った塩に最大の賛辞をくれた。
「これなら野菜と一緒に食べてもうまいんじゃ……」
さすがは八百屋の店主。すぐさま自分のところの野菜と合うかを考え始めている。
「そう思いまして、こちらがこの塩に漬けて作ったキュウリの漬けものです」
異空間から出しておいたキュウリの塩漬けを八百屋の店主に渡すと、店主は早速味を確かめ始める。
「う、うまい! うまいぞぉぉ!」
八百屋の店主はとてつもなく興奮して、キュウリの味を称賛した。
「この塩を銀貨十枚でいいのか? 二十枚でも買う奴がいると思うぞ」
価格については予めルナさんと話し合い、前と同じ銀貨十枚と決めていた。
ただでさえ塩は高価なものなのに、これ以上高くしたら、本当に一部の人間しか使うことができなくなってしまうからだ。
それではルナさんの夢である、おいしいものを街の皆に食べてもらうという理念に反することになってしまう。
「ええ、銀貨十枚でお願いします」
「わかった。是非ともこの塩をうちに置かせてくれ!」
「「ありがとうございます」」
八百屋の店主の言葉に、俺とルナさんは声をシンクロさせ、お礼を述べる。
「はは、いいってことよ。こんなにうまい塩を置けるなんて、店の格が上がるってもんだ。それにしてもこんなすげえ塩をどこで手に入れたんだ。ひょっとしてそっちの兄ちゃんが?」
「は、はい! リックさんが持ってきてくださいました」
「そうか……兄ちゃんありがとよ。ルナさんを助けてくれて」
「いえ、たまたまこの塩を持っていただけです」
「ルナさんにも頼れる人ができたんだな。今日はお祝いだ! かあちゃんにも知らせねえと!」
八百屋の店主が、親戚のおじさんみたいなことを言い出した。
「けどそうなると街の若い奴らが……この兄ちゃん殺されるかもしれないな」
そして何か不穏なことを言ってないか⁉ 殺されるってなんだよ!
「えっと……それはどういう意味でしょうか……」
「いやなんでもねえ。ほら、二人は他の店にも塩を配りに行くんだろ? 早く行った行った」
いや、滅茶苦茶気になるんですけど!
しかし八百屋の店主は、俺とルナさんを店から追い出すように背中を押してきたので、結局殺される理由については教えてもらえなかった。
その後俺達は、他の店にも塩の販売をお願いしに向かい、どの店も快く塩を置くことに賛同してくれた。しかしその際に店のおばちゃん達からも八百屋の店主と同じようなことを言われ、ルナさんはその度に顔を真っ赤にしていた。
「ルナちゃんに頼れる人ができてよかったよ。今度馴れ初めを教えてちょうだいな」
「こちらの彼はルナちゃんを盗賊から助けてくれた人じゃない。二人は運命的な出会いをしたのね」
「あとは跡取りができれば月の雫商会も安泰だわ」
さすがに最後のおばちゃんの話には、俺の顔も赤くなってしまう。
……いかんいかん! 今は月の雫商会に協力してくれる店に頭を下げに行っているんだ! こんな浮ついた気持ちじゃダメだろ!
だがこの後、比較的若い男が店主をやっている店に行くと、状況が一変してしまった。
ルナさんが見ているところでは「君! ルナさんに協力してくれてありがとう!」と握手をしてきたりするくせに、ルナさんがいなくなると……
「調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「てめえ、街の男達を敵に回したからな!」
「月のない夜には気をつけな」
などと散々恨み節を言われた。
一応勘違いをしている人達全員に、ルナさんとは恋人ではないと説明はした。
だけど、皆あまり俺の言うことを信じてくれない。
「ルナさんはこの男が好きなんですか?」
「す、好きってど、どういう意味ですか?」
「もちろん恋人としてです」
「す、す、好きじゃないですよ!」
いや、確かに恋人じゃないけどさ。そこまで大きな声で否定されるとへこむぞ。
「あ、いえ……友人として、仲間として好きですよ。こ、今後好きの内容は変わっていくかもしれませんけど」
ルナさんは頬を赤らめながら、若い男の店主に聞き逃せないことを言っている。
えっ? それってどういうこと? 男女の友情的な感じでもっと好きになるってことですか? それとも恋人として好きになるっていうこと!?
そんな顔を真っ赤にして言われると、期待しちゃうんですけど!
そして魚屋の女将さんには……
「ルナちゃんにいい人ができて安心したわ」
「ち、違います! 私なんかとリックさんは釣り合いません」
「あら? 釣り合う釣り合わないの話がなければ、リックくんと付き合うのはオッケーってことね」
「そ、それは……」
えっ? オッケーなの!
それとも否定して、俺が傷つかないように配慮してくれているのか?
「ほら! これでも食べて夜の生活も頑張りな!」
そう言って女将さんはウナギを二尾俺達に渡してきた。
ウナギを食べて精力をつけろと。
ベタなことをするな、と思わず苦笑してしまう。
しかしウナギを受け取ったルナさんは、頭にはてなを浮かべていた。
「ルナちゃんはうぶなんだね。こういうことだよ」
女将さんがルナさんの耳元で何かを囁くと、ルナさんの顔はたちまち真っ赤になった。
「そ、そんなことはまだできません!」
そして大きな声で拒絶していた。
「まだってことはいつか……」
「女将さぁぁん!」
すると恥ずかしがっているルナさんの叫び声が、魚屋の店内に響き渡る。
そしてそろそろ次へ行こうという時、ルナさんが女将さんに話があると言って、また魚屋に戻ってしまった。ここからだと二人の姿は見えるが声は聞こえない。
俺はルナさんが何を話すのか気になってしまい、つい聴覚強化のスキルを使ったのだが。
「あ、あの……先程の……夜の生活の話ですけど……今度詳しく教えていただけませんか?」
女将さんはルナさんの言葉を聞いてニヤリと笑う。
「いいよ……落ち着いたらうちに来な! ルナちゃんにこんなに想ってもらえるとは果報者だねえ」
「べ、別にリックさんのために覚えるわけでは!」
「あら? 私は誰とは言ってないけど」
「女将さぁぁん!」
えっ? 俺のため?
いや勘違いするな! ルナさんは俺のためとは一言も言ってない。
勘違いして暴走し振られるなんて話は、マンガではよくあるパターンだ。誤解するなよ俺。
そして戻ってきたルナさんと俺は、なんとなくぎこちない感じで塩配りを再開した。
だがどの店に行ってもこのような感じで、俺達が恋人同士だと思われてしまい、ルナさんはその都度真っ赤になるのであった。
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