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アガレスの最後
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アガレスは翼をはためかせ天窓へと向かう。
もうジャンプして届く距離ではない。
俺とリリシアはアガレスを見上げて、追いかけるのを諦めた。
「倒すことが出来ませんでした⋯⋯」
リリシアが顔を歪ませ、悔しそうな表情をしている。
アガレスの手によって、間接的に皇帝殺しの犯人にされる所だったんだ。自分の手で決着をつけたいという思いがあったのだろう。
しかしアガレスの命運は既に尽きている。
「俺達が倒せなくてもあいつが倒してくれるさ」
俺とリリシアは逃げたアガレスに視線を向ける。
すると地面にはアガレスとは別に、もう一つの影が現れた。
「ここまでくれば奴等も追ってくることは出来まい。あのユートと言う男について、主様に報告せねばなるまいな。まずは本体と合流して⋯⋯」
この時アガレスは完全に油断していた。
何故なら人間は地を這う生き物で、空を飛ぶことが出来ないと決めつけていたからだ。
割れた天窓から、一人の男がアガレスに向かって飛び降りた。
「なっ!」
誰もいないと高を括っていたアガレスは驚きの声を上げるが、既に遅かった。
男は一刀両断で、アガレスの身体を頭から真っ二つに斬り分けたからだ。
「やれやれ。地震に翼を使っての逃走⋯⋯ユートの先読みには恐れ入るぜ」
そう呟いた人物はザインだ。
アガレスが逃げることを予め予測していたので、玉座の間の屋根で待機させていた。
前の時間軸でも玉座の間でアガレスと戦ったことがあるが、さっきの方法で逃げられてしまったのだ。
だが今度は逃がさなかった。
もしここで逃げられたら、次は誰に化けたかわからなくなる恐れがあったので、仕留められて良かった。
俺は安堵のため息をつく。
「よっ!」
そしてザインが華麗に着地を決め、俺達は二つに分かれたアガレスに向かって剣を向ける。
「これで終わりだな」
そろそろ本体がフィアブリッツのダメージを食らっているはずだ。
もう抵抗する力はないと思うが⋯⋯
「そうだな。私はやがて灰となり消えるだろう」
「諦めがいいな」
「運命を変えることは出来ないとわかっているからな。だが最後に、何故私が宰相に化けていることがわかった。冥土の土産に教えてくれないか」
アガレスが言っていることに嘘はないだろう。死を前に謎を知りたいだけと思われる。
それなら三途の川の渡し賃がわりに、表向きの理由を教えてやるか。
「ルドルフ皇子がデュケル宰相と共にいることが多くなったと、アルドリック皇子が言っていた。もしかしたらルドルフ皇子が変わってしまったのは、デュケル宰相に化けたアガレスのせいではないかと疑ったんだ。それで昨日皇帝陛下にお願いしてデュケルの家を調べてもらったら、誰かが住んでいる気配がなかった」
元々デュケル宰相は家族がおらず一人で暮らしていたようだ。そのため変身してもバレにくい環境であったため、アガレスの標的になったのだろう。
「そして決定的だったのが、骨となった死体があったことだ。これが本物のデュケル宰相だったんだろ?」
人間に化けて悪事をそそのかす魔物がいる。だから褒賞を受けとる際にデュケル宰相を仕留めるなんて言っても反対されただろう。だから信じてもらうために家を調べて貰ったのだ。
「死体の処理をすべきだったな。他にも聞きたいことがあるが、もう時間が来たようだ」
アガレスがそう口にすると、身体が徐々に灰となり朽ち果てていく。
「このように消滅する魔物は初めて見ます」
「確かネクロマンサーエンプレスもこんな死に方だったな」
アガレスもネクロマンサーエンプレスも特別な魔物だからな。
「私はしょせん硬度七の魔物だ。九以上の魔物はそう簡単には倒せんぞ」
「ご忠告どうも」
わかっている。硬度九以上の魔物には何人も仲間が殺されているからな。今の俺達が戦ったら百パーセント負けるだろう。
そのためにはまだ力が足りないし準備が必要だ。
そしてアガレスは完全に灰になると、その場にはキラリと光る物が残されるのであった。
もうジャンプして届く距離ではない。
俺とリリシアはアガレスを見上げて、追いかけるのを諦めた。
「倒すことが出来ませんでした⋯⋯」
リリシアが顔を歪ませ、悔しそうな表情をしている。
アガレスの手によって、間接的に皇帝殺しの犯人にされる所だったんだ。自分の手で決着をつけたいという思いがあったのだろう。
しかしアガレスの命運は既に尽きている。
「俺達が倒せなくてもあいつが倒してくれるさ」
俺とリリシアは逃げたアガレスに視線を向ける。
すると地面にはアガレスとは別に、もう一つの影が現れた。
「ここまでくれば奴等も追ってくることは出来まい。あのユートと言う男について、主様に報告せねばなるまいな。まずは本体と合流して⋯⋯」
この時アガレスは完全に油断していた。
何故なら人間は地を這う生き物で、空を飛ぶことが出来ないと決めつけていたからだ。
割れた天窓から、一人の男がアガレスに向かって飛び降りた。
「なっ!」
誰もいないと高を括っていたアガレスは驚きの声を上げるが、既に遅かった。
男は一刀両断で、アガレスの身体を頭から真っ二つに斬り分けたからだ。
「やれやれ。地震に翼を使っての逃走⋯⋯ユートの先読みには恐れ入るぜ」
そう呟いた人物はザインだ。
アガレスが逃げることを予め予測していたので、玉座の間の屋根で待機させていた。
前の時間軸でも玉座の間でアガレスと戦ったことがあるが、さっきの方法で逃げられてしまったのだ。
だが今度は逃がさなかった。
もしここで逃げられたら、次は誰に化けたかわからなくなる恐れがあったので、仕留められて良かった。
俺は安堵のため息をつく。
「よっ!」
そしてザインが華麗に着地を決め、俺達は二つに分かれたアガレスに向かって剣を向ける。
「これで終わりだな」
そろそろ本体がフィアブリッツのダメージを食らっているはずだ。
もう抵抗する力はないと思うが⋯⋯
「そうだな。私はやがて灰となり消えるだろう」
「諦めがいいな」
「運命を変えることは出来ないとわかっているからな。だが最後に、何故私が宰相に化けていることがわかった。冥土の土産に教えてくれないか」
アガレスが言っていることに嘘はないだろう。死を前に謎を知りたいだけと思われる。
それなら三途の川の渡し賃がわりに、表向きの理由を教えてやるか。
「ルドルフ皇子がデュケル宰相と共にいることが多くなったと、アルドリック皇子が言っていた。もしかしたらルドルフ皇子が変わってしまったのは、デュケル宰相に化けたアガレスのせいではないかと疑ったんだ。それで昨日皇帝陛下にお願いしてデュケルの家を調べてもらったら、誰かが住んでいる気配がなかった」
元々デュケル宰相は家族がおらず一人で暮らしていたようだ。そのため変身してもバレにくい環境であったため、アガレスの標的になったのだろう。
「そして決定的だったのが、骨となった死体があったことだ。これが本物のデュケル宰相だったんだろ?」
人間に化けて悪事をそそのかす魔物がいる。だから褒賞を受けとる際にデュケル宰相を仕留めるなんて言っても反対されただろう。だから信じてもらうために家を調べて貰ったのだ。
「死体の処理をすべきだったな。他にも聞きたいことがあるが、もう時間が来たようだ」
アガレスがそう口にすると、身体が徐々に灰となり朽ち果てていく。
「このように消滅する魔物は初めて見ます」
「確かネクロマンサーエンプレスもこんな死に方だったな」
アガレスもネクロマンサーエンプレスも特別な魔物だからな。
「私はしょせん硬度七の魔物だ。九以上の魔物はそう簡単には倒せんぞ」
「ご忠告どうも」
わかっている。硬度九以上の魔物には何人も仲間が殺されているからな。今の俺達が戦ったら百パーセント負けるだろう。
そのためにはまだ力が足りないし準備が必要だ。
そしてアガレスは完全に灰になると、その場にはキラリと光る物が残されるのであった。
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