47 / 49
偽りの正体
しおりを挟む 貴族達が立ち上がれないのも理解できる。それほど大きな殺気をアガレスは放っているのだ。
現状立っているのは俺とリリシア、それと皇帝陛下だけ。
アルドリックやデレック、周りの貴族達に手を出されると困るので、ここは俺にヘイトを集めるか。
「戦うのはその姿でいいのか?」
「どういうことだ?」
「どういうことも何も、本物のデュケル宰相は既に死んでいるのだろ?」
「⋯⋯⋯⋯」
アガレスから答えが返ってこない。それは暗に俺の言葉を認めているようなものだ。
「宰相が死んでる⋯⋯だと⋯⋯」
「はい。既に殺されています」
アガレスの殺気や強さも恐ろしいが、本当に恐ろしい能力は別にある。
それは⋯⋯
「いつまで変身しているんだと言っている」
そう。アガレスは姿を自在に変えられるのだ。そのため、味方に変身されたら厄介このうえない。前の時間軸ではアガレスのせいで、何千と人が殺されたのだ。だから今後のことも考えて、こいつは必ずここで仕留める。
「ふっふっふ⋯⋯まさか変身のことも知っているとはな。お前が何者か興味が湧いてきたぞ」
アガレスがデュケル宰相の姿から別の者へと変化していく。
その様子を見て皇帝陛下が怒りの声を上げた。
「貴様⋯⋯余に化けるとは良い度胸だ」
アガレスは皇帝陛下そっくりに変身したのだ。
さすがの変身能力だ。少なくとも俺はどちらが本物の皇帝陛下か見分けがつかない。
もしシャッフルでもされたら大変だ。
「こんなことも出来るぞ」
そして再びアガレスは姿を変えると、今度は可愛らしい女の子になった。
「あ、あれは私です!」
リリシアが驚くのも無理はない。
アガレスは先程まで威圧感のある中年男性だったか、今度は十代の女の子に変身してみせたのだ。
性別まで変えられる能力には驚きしかない。
だけどリリシアの姿だと戦いにくいな。本物のリリシアではないとわかっていても躊躇してしまう。
「確か本当の姿は老人じゃなかったか?」
「その通りだ」
俺が真実の姿を指摘すると、アガレスは小綺麗な老人へと変化した。
これでいい。リリシアの姿じゃなければ全力で戦える。
「例えどのような姿でもお前達を殺すことは造作もないことだ」
「やはり貴様がルドルフを操っていたのか」
「操るなど人聞きの悪い。私はただ、思考能力を奪う魔法を使い、ルドルフ皇子に起こりうる最悪の事態を語っただけだ」
「何だと!」
「ルドルフ皇子をそそのかし、帝国を破壊してやるつもりだったが、残念ながら失敗してしまった」
「貴様ぁぁっ! よくもそのようのことを!」
皇帝陛下は真実を知り、激昂しながらアガレスに斬りかかる。
その鋭い斬撃は右手首を切り落とすことに成功した。
だがアガレスは右手首を失ったにも関わらず、何事もなかったかのように平然としていた。
「人間ごときがこの私を傷つけることなど出来ぬ」
アガレスは地面に落ちた右手首を拾う。そして切断された面に押しつけると、右手首は元通りに治ってしまうのだった。
「どういうことだ! 確かに余は手首を切り落としたはずだ」
「わからないか? 人間ごときが私を傷つけることなど出来ないということだ」
ダメージを当てることが出来ないなんて、チートでしかない。
アガレスはネクロマンサーエンプレスと同じで、特別な魔物である。
硬度もネクロマンサーエンプレスの六より高い七だ。
それに硬度七以上の魔物は今のアガレスと同じで、普通に斬った所でダメージを与えることは出来ない。
だが⋯⋯
「傷をつけることが出来ない? それなら胸の傷も治したらどうだ?」
「そういえばお前に貫かれていたな。このような傷直ぐにでも⋯⋯ぐはっ!」
アガレスは突如胸を抑え、口から血を吐き出すのであった。
現状立っているのは俺とリリシア、それと皇帝陛下だけ。
アルドリックやデレック、周りの貴族達に手を出されると困るので、ここは俺にヘイトを集めるか。
「戦うのはその姿でいいのか?」
「どういうことだ?」
「どういうことも何も、本物のデュケル宰相は既に死んでいるのだろ?」
「⋯⋯⋯⋯」
アガレスから答えが返ってこない。それは暗に俺の言葉を認めているようなものだ。
「宰相が死んでる⋯⋯だと⋯⋯」
「はい。既に殺されています」
アガレスの殺気や強さも恐ろしいが、本当に恐ろしい能力は別にある。
それは⋯⋯
「いつまで変身しているんだと言っている」
そう。アガレスは姿を自在に変えられるのだ。そのため、味方に変身されたら厄介このうえない。前の時間軸ではアガレスのせいで、何千と人が殺されたのだ。だから今後のことも考えて、こいつは必ずここで仕留める。
「ふっふっふ⋯⋯まさか変身のことも知っているとはな。お前が何者か興味が湧いてきたぞ」
アガレスがデュケル宰相の姿から別の者へと変化していく。
その様子を見て皇帝陛下が怒りの声を上げた。
「貴様⋯⋯余に化けるとは良い度胸だ」
アガレスは皇帝陛下そっくりに変身したのだ。
さすがの変身能力だ。少なくとも俺はどちらが本物の皇帝陛下か見分けがつかない。
もしシャッフルでもされたら大変だ。
「こんなことも出来るぞ」
そして再びアガレスは姿を変えると、今度は可愛らしい女の子になった。
「あ、あれは私です!」
リリシアが驚くのも無理はない。
アガレスは先程まで威圧感のある中年男性だったか、今度は十代の女の子に変身してみせたのだ。
性別まで変えられる能力には驚きしかない。
だけどリリシアの姿だと戦いにくいな。本物のリリシアではないとわかっていても躊躇してしまう。
「確か本当の姿は老人じゃなかったか?」
「その通りだ」
俺が真実の姿を指摘すると、アガレスは小綺麗な老人へと変化した。
これでいい。リリシアの姿じゃなければ全力で戦える。
「例えどのような姿でもお前達を殺すことは造作もないことだ」
「やはり貴様がルドルフを操っていたのか」
「操るなど人聞きの悪い。私はただ、思考能力を奪う魔法を使い、ルドルフ皇子に起こりうる最悪の事態を語っただけだ」
「何だと!」
「ルドルフ皇子をそそのかし、帝国を破壊してやるつもりだったが、残念ながら失敗してしまった」
「貴様ぁぁっ! よくもそのようのことを!」
皇帝陛下は真実を知り、激昂しながらアガレスに斬りかかる。
その鋭い斬撃は右手首を切り落とすことに成功した。
だがアガレスは右手首を失ったにも関わらず、何事もなかったかのように平然としていた。
「人間ごときがこの私を傷つけることなど出来ぬ」
アガレスは地面に落ちた右手首を拾う。そして切断された面に押しつけると、右手首は元通りに治ってしまうのだった。
「どういうことだ! 確かに余は手首を切り落としたはずだ」
「わからないか? 人間ごときが私を傷つけることなど出来ないということだ」
ダメージを当てることが出来ないなんて、チートでしかない。
アガレスはネクロマンサーエンプレスと同じで、特別な魔物である。
硬度もネクロマンサーエンプレスの六より高い七だ。
それに硬度七以上の魔物は今のアガレスと同じで、普通に斬った所でダメージを与えることは出来ない。
だが⋯⋯
「傷をつけることが出来ない? それなら胸の傷も治したらどうだ?」
「そういえばお前に貫かれていたな。このような傷直ぐにでも⋯⋯ぐはっ!」
アガレスは突如胸を抑え、口から血を吐き出すのであった。
10
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる