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遊び人
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「グラフト地方の酒を頼むなんて、景気がいいねえ」
「こう見えて酒は好きなんですよ」
「奇遇だな。俺も酒は飲める口でね」
「それなら一緒に飲みますか? 帝都は初めてだから知り合いが一人もいなくて」
「いいぜ。俺はアーノルドだ」
「俺はユート。よろしく」
話しかけて来たのは、両手に女の子をはべらしていた金髪の青年だ。酒好きであるがゆえに、俺がグラフト地方の酒を頼んだことで気になったようだ。
「アーノルド様、席を移動したらダメですよ」
「ユートが良いって言ったんだ。固いことを言うなよ。ほら、お前達もこっちにくればグラフト地方の酒が飲めるぞ。いいよな?」
「構わないよ。みんなで一緒に飲もう」
「本当ですか?」
「グラフト地方のお酒が飲めるなんて嬉しいわ」
アーノルドとメイドの店員さん二人がこちらの席に来て、一気に華やかになる。
「お待たせしました」
そしてタイミングよく、フローラさんがお酒を持ってきた。
「あら? 二人共どうしたの?」
「こちらのお客様が私達も御一緒していいと仰って」
「そうですか。ではお客様、私がおつぎ致しますね」
フローラさんがお酒をグラスに入れていく。
「ではユート。乾杯の音頭を頼む」
「この出会いに⋯⋯乾杯」
乾杯の合図を出すと、それぞれグラスを合わせ酒を飲む。
むっ! やはり高い酒だけはあって旨いな。まろやかで飲みやすく、いくらでも入りそうだ。
「ユートは帝都は初めてだって言ってたな。何か用事でもあったのか?」
「ああ。実は仕事で⋯⋯」
「いや! ちょっとまて。俺が当てて見せる」
「それは面白そうだ。ぜひ当てて見てくれ」
アーノルドが俺の頭の先から足の先まで、じっくりと視線を送ってくる。
「アーノルド様の観察眼はすごいのよ」
「私が知る限りでは、一度も外したことがないわ」
アリッサさんとダリアさんが、ワクワクした様子で教えてくれる。
知ってるよ。前の時間軸で会った時も当てられたからな。
「掌でも見せようか?」
「よく俺の考えていることがわかったな」
俺は指摘される前に掌を見せる。
「アーノルド様どうですか?」
「わかりましたか?」
「難しいな。だいたいのことはわかったが、肝心なことがわからない」
「わかっていることだけでも教えてくれないか」
この反応は前の時と違うな。この青年と出会うのは二年後だから今はまだ成長途中なのかもしれない。
「高い酒を頼んでいることから貴族かと思ったが、そのわりには掌がおかしい。相当鍛練を積んでいる手だ。ただの貴族がここまで鍛練をするとは考えられない」
「ということは冒険者とか兵士さんですか?」
「いや、冒険者ならランクを示す首飾りを持っているはずだが、ユートはしてない。それに兵士から感じる規律の匂いが感じられない。兵士だけは腐る程見てきたから、俺の勘に間違いはないはずだ」
「驚いたよ。確かに俺は貴族でも冒険者でも兵士でもない。帝都に来たのは、ある人の護衛を頼まれたからだ。それと高い酒を頼んでいるのは賭け馬で当てたからだ」
「賭け馬だと!? 少し前にとんでもない倍率を当てた奴がいると聞いたが。まさかお前はフリーデン王国の人間か?」
他国の情報も仕入れているとはさすがだな。
この青年はぱっと見た所いい加減な奴に見えるが、観察眼や勘が優れており、広い情報網を持っている。そして決断力もあるため、この青年が最も力を発揮できる立場は⋯⋯
「兄貴に会いにリリシア王女が来ていたな。その護衛という訳か」
「その通りです。俺もあなたと話していてわかりましたよ」
「何がわかったんだ? 教えてくれないか?」
「あなたは帝国の第三皇子⋯⋯アルドリック様ですね」
「どうしてそう思う。帝国の第三皇子は遊び人だからか?」
「確かにそれも判断材料の一つです。それとアルドリック様の勘が鋭いことは有名ですから」
「遊び人で勘が鋭い、そんな奴この世に五万といるぞ」
「もう一つ気になることを仰っていたので。兵士だけは腐る程見てきたと。幼少の頃から城で過ごしていれば、兵士を日常的に見ていることは当然かと」
「まあ⋯⋯隠すことじゃないからな。ユートの指摘通り、俺はアルドリックだ。正体を見破った褒美を取らせればいいのか?」
「そのようなものはいりません。ただ俺はわかっていて指摘しないのは騙すような気がして⋯⋯」
「なるほど。お前少し変わってるな」
「普通だと自分は思っています」
「これまで会ってきた奴等は俺が皇族とわかったら媚びへつらったり、恐れる奴しかいなかった。それなのにユートからはどちらの感情も感じられない」
アルドリックには、正直に話した方が好感度が高くなることはわかっていたからな。前の時間軸だとその役割はザインだった。ザインは思ったことを口にするタイプで、アルドリックと同じ遊び人ということもあり、二人は馬が合ったのだ。
「とりあえず今ここにいるのはただのアーノルドだ。敬語は必要ない」
「わかった」
ちなみにメイドさん達は、アルドリックが皇族と明かしても驚いた様子はない。おそらく最初から知っていたのだろう。
「グラフトの酒を頼むということは、ユートはいける口だろ?」
「まあね。そんじょそこらの人には負けないと自負してるよ」
「ほう⋯⋯それは俺への挑戦と受け取ってもいいか?」
「負けたら何でも言うことを聞くよ」
「いいだろう。俺も負けたら何でも言うことを聞いてやる」
賭け事に簡単に乗ってくる所は変わらないな。だが悪いが今回はそれを利用させてもらうぞ。
こうして負けたら何でも言うことを聞くということを賭けて、俺とアルドリックは酒飲みの勝負をするのであった。
「こう見えて酒は好きなんですよ」
「奇遇だな。俺も酒は飲める口でね」
「それなら一緒に飲みますか? 帝都は初めてだから知り合いが一人もいなくて」
「いいぜ。俺はアーノルドだ」
「俺はユート。よろしく」
話しかけて来たのは、両手に女の子をはべらしていた金髪の青年だ。酒好きであるがゆえに、俺がグラフト地方の酒を頼んだことで気になったようだ。
「アーノルド様、席を移動したらダメですよ」
「ユートが良いって言ったんだ。固いことを言うなよ。ほら、お前達もこっちにくればグラフト地方の酒が飲めるぞ。いいよな?」
「構わないよ。みんなで一緒に飲もう」
「本当ですか?」
「グラフト地方のお酒が飲めるなんて嬉しいわ」
アーノルドとメイドの店員さん二人がこちらの席に来て、一気に華やかになる。
「お待たせしました」
そしてタイミングよく、フローラさんがお酒を持ってきた。
「あら? 二人共どうしたの?」
「こちらのお客様が私達も御一緒していいと仰って」
「そうですか。ではお客様、私がおつぎ致しますね」
フローラさんがお酒をグラスに入れていく。
「ではユート。乾杯の音頭を頼む」
「この出会いに⋯⋯乾杯」
乾杯の合図を出すと、それぞれグラスを合わせ酒を飲む。
むっ! やはり高い酒だけはあって旨いな。まろやかで飲みやすく、いくらでも入りそうだ。
「ユートは帝都は初めてだって言ってたな。何か用事でもあったのか?」
「ああ。実は仕事で⋯⋯」
「いや! ちょっとまて。俺が当てて見せる」
「それは面白そうだ。ぜひ当てて見てくれ」
アーノルドが俺の頭の先から足の先まで、じっくりと視線を送ってくる。
「アーノルド様の観察眼はすごいのよ」
「私が知る限りでは、一度も外したことがないわ」
アリッサさんとダリアさんが、ワクワクした様子で教えてくれる。
知ってるよ。前の時間軸で会った時も当てられたからな。
「掌でも見せようか?」
「よく俺の考えていることがわかったな」
俺は指摘される前に掌を見せる。
「アーノルド様どうですか?」
「わかりましたか?」
「難しいな。だいたいのことはわかったが、肝心なことがわからない」
「わかっていることだけでも教えてくれないか」
この反応は前の時と違うな。この青年と出会うのは二年後だから今はまだ成長途中なのかもしれない。
「高い酒を頼んでいることから貴族かと思ったが、そのわりには掌がおかしい。相当鍛練を積んでいる手だ。ただの貴族がここまで鍛練をするとは考えられない」
「ということは冒険者とか兵士さんですか?」
「いや、冒険者ならランクを示す首飾りを持っているはずだが、ユートはしてない。それに兵士から感じる規律の匂いが感じられない。兵士だけは腐る程見てきたから、俺の勘に間違いはないはずだ」
「驚いたよ。確かに俺は貴族でも冒険者でも兵士でもない。帝都に来たのは、ある人の護衛を頼まれたからだ。それと高い酒を頼んでいるのは賭け馬で当てたからだ」
「賭け馬だと!? 少し前にとんでもない倍率を当てた奴がいると聞いたが。まさかお前はフリーデン王国の人間か?」
他国の情報も仕入れているとはさすがだな。
この青年はぱっと見た所いい加減な奴に見えるが、観察眼や勘が優れており、広い情報網を持っている。そして決断力もあるため、この青年が最も力を発揮できる立場は⋯⋯
「兄貴に会いにリリシア王女が来ていたな。その護衛という訳か」
「その通りです。俺もあなたと話していてわかりましたよ」
「何がわかったんだ? 教えてくれないか?」
「あなたは帝国の第三皇子⋯⋯アルドリック様ですね」
「どうしてそう思う。帝国の第三皇子は遊び人だからか?」
「確かにそれも判断材料の一つです。それとアルドリック様の勘が鋭いことは有名ですから」
「遊び人で勘が鋭い、そんな奴この世に五万といるぞ」
「もう一つ気になることを仰っていたので。兵士だけは腐る程見てきたと。幼少の頃から城で過ごしていれば、兵士を日常的に見ていることは当然かと」
「まあ⋯⋯隠すことじゃないからな。ユートの指摘通り、俺はアルドリックだ。正体を見破った褒美を取らせればいいのか?」
「そのようなものはいりません。ただ俺はわかっていて指摘しないのは騙すような気がして⋯⋯」
「なるほど。お前少し変わってるな」
「普通だと自分は思っています」
「これまで会ってきた奴等は俺が皇族とわかったら媚びへつらったり、恐れる奴しかいなかった。それなのにユートからはどちらの感情も感じられない」
アルドリックには、正直に話した方が好感度が高くなることはわかっていたからな。前の時間軸だとその役割はザインだった。ザインは思ったことを口にするタイプで、アルドリックと同じ遊び人ということもあり、二人は馬が合ったのだ。
「とりあえず今ここにいるのはただのアーノルドだ。敬語は必要ない」
「わかった」
ちなみにメイドさん達は、アルドリックが皇族と明かしても驚いた様子はない。おそらく最初から知っていたのだろう。
「グラフトの酒を頼むということは、ユートはいける口だろ?」
「まあね。そんじょそこらの人には負けないと自負してるよ」
「ほう⋯⋯それは俺への挑戦と受け取ってもいいか?」
「負けたら何でも言うことを聞くよ」
「いいだろう。俺も負けたら何でも言うことを聞いてやる」
賭け事に簡単に乗ってくる所は変わらないな。だが悪いが今回はそれを利用させてもらうぞ。
こうして負けたら何でも言うことを聞くということを賭けて、俺とアルドリックは酒飲みの勝負をするのであった。
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