23 / 49
宝探し?
しおりを挟む
(嫌です! 誰か助け⋯⋯えっ?)
暴れていたルルが、突然驚きの声を上げる。
(こ、これはどういうことですか?)
「ユート様⋯⋯霧がなくなって」
リリシアの言う通り、目の前の霧が消えていく。正確には俺達を避けるように霧が晴れていく。
「どうして私達が通る場所には、霧がないのでしょうか?」
「実は一度切りだけど、俺達の周囲の霧がなくなるアイテムを使ったんだ」
「なるほど。ユート様は予め迷いの森を進まれる準備をされていたのですね」
「そうなんだ。だけど効力が二時間程で切れてしまうから、早く行こう」
「わかりました」
俺達は森に入る。
森と言えば生き物の宝庫だが、ここからは何の気配も感じられない。動物はおろか虫の一匹もいないのだ。
そして十分程進んでいくと地面が舗装されている場所に出たため、容易に進んでいくことが出来た。
(少しよろしいですか?)
森の中心部へと向かっている途中、突然ルルが頭の中で話しかけてきた。
(どうした?)
(どうしたもこうしたもありません。あなた⋯⋯嘘をついてますね)
(嘘? 何が?)
(何もかもです)
なるべく考えないようにしていたが、さすがにルルにはバレていたか。
(霧が晴れるアイテムなんて持っていないですよね? そのようなアイテムを使った形跡はありませんでしたから)
(確かにルルの言うとおりだ。そんなアイテムがあったら見てみたい)
(でしたら霧が晴れる理由はなんですか? それとこの霧は普通の霧ではないですよね? 何故か懐かしい感じがします)
(そこまで見破るとはさすがだな)
(バカにしているのですか? 早く私の問いに答えて下さい。その自分だけ知っているような言い方は腹が立ちますね)
(やれやれ。怒るなよ。霧が晴れた一端はルルにもあるんだぞ)
(バカですか? あなたの言っている意味が理解できません)
バカ言われたよ。ひどくね? さっきリリシアに抱きしめられていたルルの方が慌てふためいていて、俺からすれぱバカっぽかったけど。
(何かいいましたか?)
(言ってません)
これ以上怒らせるとどんな報復を受けるかわからないので、余計なことを考えないようにしておく。
(だけどさっきも言ったように、霧が晴れたのはルルのお陰でもあるんだぞ)
(それはどういう⋯⋯)
(ほら、目的地に着いたぞ)
(えっ? ここは⋯⋯)
辺りが開けている場所に出ると、そこには大きな建物があり、そして入口には女性を司る銅像が見えた。
「このような森の中に⋯⋯もしかして女神セレスティア様の神殿ですか?」
「俺も初めて来るけどそうみたいだ」
「何故ここに神殿が⋯⋯誰かいるのでしょうか」
リリシアは神殿の中へ入っていく。
(そういうことですか。ここは王女が言うようにセレスティア様の神殿で間違いありません。森を覆っていた霧は、招かれざる客を神殿に入れないための処置だったようですね)
(その通り)
(そして霧が晴れた理由は、私達がセレスティア様の加護を受けているからですか?)
(さすがルルだ。俺は異世界転生でセレスティア様の加護を受けているし、ルルもセレスティア様の神獣だから加護を受けている。だから俺達はこの神殿に入ることが出来たんだ)
(そうですか。ですが何故この神殿を訪れたのですか? 崇高なセレスティア様に対して感謝の気持ちが足りないあなたが、お祈りに来たとは思えません)
(まあ確かにお祈りに来た訳じゃないけど)
(そこは嘘でもセレスティア様に全財産捧げるために来ましたと言ってください)
(嫌だよ。それに嘘をついてもルルにばれるじゃないか)
この猫は暗に破産して路頭に迷えと言いたいのだろうか。そんなことになったらルルに魚を買ってあげられなくなるぞ。
(今の話はなしでお願いします)
どうやら俺の考えを読んだみたいだ。自分の食事に影響が出るのは嫌なのかよ。
(とにかく目的の物を回収しに行ってくる)
(ちょっと待ってください。私も行きます)
そしてルルは定位置になりつつある俺の肩に乗って来たので、リリシアを追って神殿の中へと入るのであった。
暴れていたルルが、突然驚きの声を上げる。
(こ、これはどういうことですか?)
「ユート様⋯⋯霧がなくなって」
リリシアの言う通り、目の前の霧が消えていく。正確には俺達を避けるように霧が晴れていく。
「どうして私達が通る場所には、霧がないのでしょうか?」
「実は一度切りだけど、俺達の周囲の霧がなくなるアイテムを使ったんだ」
「なるほど。ユート様は予め迷いの森を進まれる準備をされていたのですね」
「そうなんだ。だけど効力が二時間程で切れてしまうから、早く行こう」
「わかりました」
俺達は森に入る。
森と言えば生き物の宝庫だが、ここからは何の気配も感じられない。動物はおろか虫の一匹もいないのだ。
そして十分程進んでいくと地面が舗装されている場所に出たため、容易に進んでいくことが出来た。
(少しよろしいですか?)
森の中心部へと向かっている途中、突然ルルが頭の中で話しかけてきた。
(どうした?)
(どうしたもこうしたもありません。あなた⋯⋯嘘をついてますね)
(嘘? 何が?)
(何もかもです)
なるべく考えないようにしていたが、さすがにルルにはバレていたか。
(霧が晴れるアイテムなんて持っていないですよね? そのようなアイテムを使った形跡はありませんでしたから)
(確かにルルの言うとおりだ。そんなアイテムがあったら見てみたい)
(でしたら霧が晴れる理由はなんですか? それとこの霧は普通の霧ではないですよね? 何故か懐かしい感じがします)
(そこまで見破るとはさすがだな)
(バカにしているのですか? 早く私の問いに答えて下さい。その自分だけ知っているような言い方は腹が立ちますね)
(やれやれ。怒るなよ。霧が晴れた一端はルルにもあるんだぞ)
(バカですか? あなたの言っている意味が理解できません)
バカ言われたよ。ひどくね? さっきリリシアに抱きしめられていたルルの方が慌てふためいていて、俺からすれぱバカっぽかったけど。
(何かいいましたか?)
(言ってません)
これ以上怒らせるとどんな報復を受けるかわからないので、余計なことを考えないようにしておく。
(だけどさっきも言ったように、霧が晴れたのはルルのお陰でもあるんだぞ)
(それはどういう⋯⋯)
(ほら、目的地に着いたぞ)
(えっ? ここは⋯⋯)
辺りが開けている場所に出ると、そこには大きな建物があり、そして入口には女性を司る銅像が見えた。
「このような森の中に⋯⋯もしかして女神セレスティア様の神殿ですか?」
「俺も初めて来るけどそうみたいだ」
「何故ここに神殿が⋯⋯誰かいるのでしょうか」
リリシアは神殿の中へ入っていく。
(そういうことですか。ここは王女が言うようにセレスティア様の神殿で間違いありません。森を覆っていた霧は、招かれざる客を神殿に入れないための処置だったようですね)
(その通り)
(そして霧が晴れた理由は、私達がセレスティア様の加護を受けているからですか?)
(さすがルルだ。俺は異世界転生でセレスティア様の加護を受けているし、ルルもセレスティア様の神獣だから加護を受けている。だから俺達はこの神殿に入ることが出来たんだ)
(そうですか。ですが何故この神殿を訪れたのですか? 崇高なセレスティア様に対して感謝の気持ちが足りないあなたが、お祈りに来たとは思えません)
(まあ確かにお祈りに来た訳じゃないけど)
(そこは嘘でもセレスティア様に全財産捧げるために来ましたと言ってください)
(嫌だよ。それに嘘をついてもルルにばれるじゃないか)
この猫は暗に破産して路頭に迷えと言いたいのだろうか。そんなことになったらルルに魚を買ってあげられなくなるぞ。
(今の話はなしでお願いします)
どうやら俺の考えを読んだみたいだ。自分の食事に影響が出るのは嫌なのかよ。
(とにかく目的の物を回収しに行ってくる)
(ちょっと待ってください。私も行きます)
そしてルルは定位置になりつつある俺の肩に乗って来たので、リリシアを追って神殿の中へと入るのであった。
10
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。


追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる