20 / 49
リリシアの結末
しおりを挟む
「結果から言うと、フリーデン王国は帝国によって滅ぼされる」
「どうして? あの王女と婚姻を結んで、友好国になるんじゃなかったのですか?」
争いがあった国の王女と皇子の結婚。両国の民は平和な世の中がくると誰もが思っただろう。しかし結果は⋯⋯
「リリシアが帝国に行ってからすぐに皇帝が死んだ」
「それってまさか⋯⋯」
「ああ⋯⋯殺されたんだ。そしてその場で生きていたのがリリシアしかいなくて、皇帝殺しの犯人にされたんだ」
剣の技術が優れていることが災いとなったのだろう。
実際皇帝の護衛二人も死んでいたことから、余程の手練れでなければ犯行は不可能だということになり、リリシアが殺したということになった。
これが日本だったら、現場検証をされて濡れ衣を晴らせたかもしれない。いや、敵国であった犯行だ。司法の決定権は相手にある。フリーデン王国を陥れるために、自分達の都合の良いように結果を動かすに違いない。
「単身で敵国の皇帝を殺すなんて、なかなかやりますね」
「物騒なことを言うな。それが本当にリリシアの犯行だったらそうかもしれないけど、犯人はリリシアが結婚するはずの相手だったスロバスト帝国の第一皇子であるルドルフだからな」
「えっ? それでは婚姻事態が嘘で、あの王女は嵌められたってことですか?」
「そういうことだ。そしてリリシアは帝国の兵に追われる中、何とか王国にたどり着いたんだが⋯⋯」
「なるほど。それで両国が戦争をすることになったのですか」
「いや、すぐには戦争にはならなかった。だけど王国に戻ったら、今度は王国の兵から追われることになったんだ」
「どうしてですか? 自国の王女が戻ったのなら受け入れるのが普通ですよね?」
「帝国が王国に圧力をかけたんだ。もしリリシアをかくまったりすれば王国に攻めこむと。世間的に見ればリリシアは皇帝を殺した大罪人、現状帝国は王国の倍程の戦力を持っていることもあり、民のためを考えるならその条件を飲むしかなかったという訳だ。結果、リリシアは敵からも味方からも追われることとなった」
「そう⋯⋯ですか。それはなかなか重い人生になってしまいましたね」
ルルがリリシアの未来を聞いてしおらしくなってしまった。苦手な相手でも、悲劇的な結末を迎えることに同情したのだろうか。
「安心してくれ。そうならないために俺が過去に戻ってきたんだ」
「べ、別に心配などしていません。人間がどうなろうと私には関係ありませんから」
ルルは憎まれ口を叩いているが、リリシアを心配している気持ちが俺の頭の中に入ってくる。
この猫はツンデレか! とツッコミたくなってきた。
「す、少し散歩に行ってきます」
頭の中を読まれたことが恥ずかしいのか、ルルは急いで部屋から出ていってしまった。
こういう時、考えが読まれるのは確かに恥ずかしいな。
けどどちらかというと、俺の考えの方が読まれているからおあいこか。
そしてこの日、ルルは俺の部屋に戻ってくることはなかった。
時は流れ、夕食時。リリシアは笑みを浮かべながら鼻歌を歌っていた。
「何だか機嫌がいいね。何かいいことでもあった?」
「わかりますか? 実はユート様と手合わせをした後、ルルちゃんが私の部屋を訪ねてきてくれました」
「そうなの?」
「はい。一緒にいれてとても幸せな気持ちになれました。あっ、でも⋯⋯ユート様のお部屋にお返しした方がよろしいでしょうか」
「いや、ルルに任せるよ。リリシアの部屋から出ていかないなら、そのままお願いしてもいいかな」
「わかりました。とても嬉しいです」
どこにもいないと思っていたらリリシアの所にいたのか。もしかしてさっきの話を聞いて、リリシアの所に行ってくれたのかな?
良いところもあるじゃないか。
ルルのことを見直したぞ。少し人間嫌いかなと思ったけどそんなことないのかもしれない。
今度新鮮な魚を用意してあげるか。
食事は終わり自分の部屋に戻ったが、やはりルルはこの日俺の所に帰ってくることはなかった。
そして夜が明けた。
―――――――――――――――
【読者の皆様へお願い】
作品を読んで少しでも『面白い、面白くなりそう』と思われた方は、作品フォロー、応援等もして頂けると更新の励みになります。
「どうして? あの王女と婚姻を結んで、友好国になるんじゃなかったのですか?」
争いがあった国の王女と皇子の結婚。両国の民は平和な世の中がくると誰もが思っただろう。しかし結果は⋯⋯
「リリシアが帝国に行ってからすぐに皇帝が死んだ」
「それってまさか⋯⋯」
「ああ⋯⋯殺されたんだ。そしてその場で生きていたのがリリシアしかいなくて、皇帝殺しの犯人にされたんだ」
剣の技術が優れていることが災いとなったのだろう。
実際皇帝の護衛二人も死んでいたことから、余程の手練れでなければ犯行は不可能だということになり、リリシアが殺したということになった。
これが日本だったら、現場検証をされて濡れ衣を晴らせたかもしれない。いや、敵国であった犯行だ。司法の決定権は相手にある。フリーデン王国を陥れるために、自分達の都合の良いように結果を動かすに違いない。
「単身で敵国の皇帝を殺すなんて、なかなかやりますね」
「物騒なことを言うな。それが本当にリリシアの犯行だったらそうかもしれないけど、犯人はリリシアが結婚するはずの相手だったスロバスト帝国の第一皇子であるルドルフだからな」
「えっ? それでは婚姻事態が嘘で、あの王女は嵌められたってことですか?」
「そういうことだ。そしてリリシアは帝国の兵に追われる中、何とか王国にたどり着いたんだが⋯⋯」
「なるほど。それで両国が戦争をすることになったのですか」
「いや、すぐには戦争にはならなかった。だけど王国に戻ったら、今度は王国の兵から追われることになったんだ」
「どうしてですか? 自国の王女が戻ったのなら受け入れるのが普通ですよね?」
「帝国が王国に圧力をかけたんだ。もしリリシアをかくまったりすれば王国に攻めこむと。世間的に見ればリリシアは皇帝を殺した大罪人、現状帝国は王国の倍程の戦力を持っていることもあり、民のためを考えるならその条件を飲むしかなかったという訳だ。結果、リリシアは敵からも味方からも追われることとなった」
「そう⋯⋯ですか。それはなかなか重い人生になってしまいましたね」
ルルがリリシアの未来を聞いてしおらしくなってしまった。苦手な相手でも、悲劇的な結末を迎えることに同情したのだろうか。
「安心してくれ。そうならないために俺が過去に戻ってきたんだ」
「べ、別に心配などしていません。人間がどうなろうと私には関係ありませんから」
ルルは憎まれ口を叩いているが、リリシアを心配している気持ちが俺の頭の中に入ってくる。
この猫はツンデレか! とツッコミたくなってきた。
「す、少し散歩に行ってきます」
頭の中を読まれたことが恥ずかしいのか、ルルは急いで部屋から出ていってしまった。
こういう時、考えが読まれるのは確かに恥ずかしいな。
けどどちらかというと、俺の考えの方が読まれているからおあいこか。
そしてこの日、ルルは俺の部屋に戻ってくることはなかった。
時は流れ、夕食時。リリシアは笑みを浮かべながら鼻歌を歌っていた。
「何だか機嫌がいいね。何かいいことでもあった?」
「わかりますか? 実はユート様と手合わせをした後、ルルちゃんが私の部屋を訪ねてきてくれました」
「そうなの?」
「はい。一緒にいれてとても幸せな気持ちになれました。あっ、でも⋯⋯ユート様のお部屋にお返しした方がよろしいでしょうか」
「いや、ルルに任せるよ。リリシアの部屋から出ていかないなら、そのままお願いしてもいいかな」
「わかりました。とても嬉しいです」
どこにもいないと思っていたらリリシアの所にいたのか。もしかしてさっきの話を聞いて、リリシアの所に行ってくれたのかな?
良いところもあるじゃないか。
ルルのことを見直したぞ。少し人間嫌いかなと思ったけどそんなことないのかもしれない。
今度新鮮な魚を用意してあげるか。
食事は終わり自分の部屋に戻ったが、やはりルルはこの日俺の所に帰ってくることはなかった。
そして夜が明けた。
―――――――――――――――
【読者の皆様へお願い】
作品を読んで少しでも『面白い、面白くなりそう』と思われた方は、作品フォロー、応援等もして頂けると更新の励みになります。
10
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる