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初の実戦
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鋭い一撃がザインの首を襲う。
「ちっ!」
ザインは舌打ちしながら腰に差した剣を抜き、見事鎌を受け止める。
だが鎌の攻撃が予想以上の威力だったのか、後方へと吹き飛ばされて地面を転がる。
「どどど、どういうことだよ! 骸骨女じゃねえか!」
そう。目の前にいた魔物は後ろ姿だけ見ると、長い綺麗な髪をした女性に見える。
だが顔を見ると肉は腐って削ぎ落とされ、骨しかないのだ。
この魔物は腰に差した笛を使って死霊を操るアンデット⋯⋯ネクロマンサーだ。だがただのネクロマンサーじゃない。全てのネクロマンサーの頂点に立つネクロマンサーエンプレスと呼ばれる存在だ。
「俺は別に女の子が待っていると言っただけで、誰が待っているとは口にしていないぞ」
「男心を弄ぶなんて酷くね?」
「それは悪かったな」
申し訳ないけどザインはこれからの戦いに必要な人材だ。これから経験値を積んで強くなってもらわなくちゃ困る。
それにしてもさすがだな。
さっきのネクロマンサーエンプレスの攻撃だが、俺は離れた位置からだったから何とか見えた。しかしザインは至近距離から防いでみせたのだ。
やはり見切りに関しては俺より上だな。
悔しいけどネクロマンサーエンプレスと初めて会った時、俺は何もすることが出来ず、瀕死の状態にされて逃げ出したのだ。
「どうすんだよこれ! 俺達が敵う相手じゃねえぞ!」
どうやら初撃を防いだザインでも、ネクロマンサーエンプレスを倒すことは出来ないようだ。
だけどネクロマンサーエンプレスの厄介な所は、その強さではない。このまま時間が過ぎれば過ぎる程、こちらは窮地に陥ることになる。
この後ネクロマンサーエンプレスは南に向かい、母さんや村の人達を虐殺する。そして生き残ったのは俺とザインと数名だけだった。
そんな残酷な未来を再び歩ませる訳にはいかない。
そのために俺はこの時間軸に戻ってきた。
「ここは俺に任せてくれ」
「任せろってお前⋯⋯」
危険なのでルルに肩から降りるように命じた後、俺は前に出てネクロマンサーエンプレスと対峙する。
相変わらず凄まじい威圧感を感じるな。
ちなみにこいつを倒したのは今から四年後で、その時は特別な武器を持っていた。
だが今はその武器もなければ、身体能力もかなり劣っている。
しかし俺にはセレスティア様に頂いた新たな力がある。恐れることはない。
「おい! 武器も持たずにどうするんだ!? まさか魔法で倒すつもりなのか?」
ザインから心配する声が上がるが、今は魔力を集めることに集中する。
この時の俺はいくつかの魔法を使うことが出来ていたが、どれもネクロマンサーエンプレスを倒すには至らないことを、ザインはわかっているんだ。
ネクロマンサーエンプレスが俺を敵とみなしたのか、こちらに接近してくる。
そのスピードは速く、あっという間に目前まで迫ってきた。
大丈夫。女神様から頂いた力の使い方は俺の脳裏に刻まれている。
俺は自分を落ち着かせて左手を前方にかざす。そしてネクロマンサーエンプレスに向かって魔法を解き放った。
「回復魔法」
眩しい白い光がネクロマンサーエンプレスを包みこむ。
俺が使った魔法は本来傷を治したり、体力を回復する魔法だ。
回復魔法を敵にかけて正気かと思われるかもしれないが、アンデットのネクロマンサーエンプレスにとっては、最も苦痛を与える魔法となっている。
回復魔法は生命の力を与える魔法であり、アンデットは死の力を原動とする生物である。そのため相反する力を食らったネクロマンサーエンプレスは、根源を犯されダメージを受けていた。
鎌を持っていない左手で頭を抑え、激しく暴れ始める。
さすがはネクロマンサーの頂点に立つ存在だな。俺の回復魔法《ヒール》を一回食らったくらいでは倒すことは出来ないらしい。
だが最初から一撃で倒すことが出来るなんて考えてはいない。
初撃はネクロマンサーエンプレスからある物を手に入れるために、攻撃したのだ。
俺は右手に掴んだ物をザインに向かって投げる。
「何だこれは?」
「それを持っててくれ!」
「これを持ってればいいのか!?」
ザインは疑問に持ちつつも俺が投げた物をキャッチする。
「ギィギッ!」
その様子を見てか、ネクロマンサーエンプレスは声にならない言葉を吐きながらザインへと迫る。
顔は骸骨などハッキリとしたことはわからないが、激しい怒りを感じた。
だがそれも無理はない。
あれは死霊の笛と呼ばれており、死した者を骸骨や悪霊として操ることが出来るのだ。
前の時間軸でもネクロマンサーエンプレスだけなら、村人達は逃げ切ることが出来た。しかし死霊の笛によって操られた亡者によって、村は囲まれてしまい、結果たくさんの人が殺されることになってしまったのだ。
ここは墓場で死した魂が多くあるため、ネクロマンサーエンプレスに取っては最高の環境であっただろう。
そのためまずは死霊の笛を奪うことを優先したのだ。
ネクロマンサーエンプレスは死霊の笛を奪い返すためか、我を忘れてザインへと迫る。
だがその背中は明らかに隙だらけだ。
「回復魔法」
俺はネクロマンサーエンプレスに向かって回復魔法を唱える。
するとネクロマンサーエンプレスは回復のダメージで地面に倒れ、ひれ伏す。
「回復魔法」
そして俺は再び回復魔法を唱えると、ネクロマンサーエンプレスの身体は徐々に灰のように塵となり、跡形もなく消滅するのであった。
―――――――――――――――
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「ちっ!」
ザインは舌打ちしながら腰に差した剣を抜き、見事鎌を受け止める。
だが鎌の攻撃が予想以上の威力だったのか、後方へと吹き飛ばされて地面を転がる。
「どどど、どういうことだよ! 骸骨女じゃねえか!」
そう。目の前にいた魔物は後ろ姿だけ見ると、長い綺麗な髪をした女性に見える。
だが顔を見ると肉は腐って削ぎ落とされ、骨しかないのだ。
この魔物は腰に差した笛を使って死霊を操るアンデット⋯⋯ネクロマンサーだ。だがただのネクロマンサーじゃない。全てのネクロマンサーの頂点に立つネクロマンサーエンプレスと呼ばれる存在だ。
「俺は別に女の子が待っていると言っただけで、誰が待っているとは口にしていないぞ」
「男心を弄ぶなんて酷くね?」
「それは悪かったな」
申し訳ないけどザインはこれからの戦いに必要な人材だ。これから経験値を積んで強くなってもらわなくちゃ困る。
それにしてもさすがだな。
さっきのネクロマンサーエンプレスの攻撃だが、俺は離れた位置からだったから何とか見えた。しかしザインは至近距離から防いでみせたのだ。
やはり見切りに関しては俺より上だな。
悔しいけどネクロマンサーエンプレスと初めて会った時、俺は何もすることが出来ず、瀕死の状態にされて逃げ出したのだ。
「どうすんだよこれ! 俺達が敵う相手じゃねえぞ!」
どうやら初撃を防いだザインでも、ネクロマンサーエンプレスを倒すことは出来ないようだ。
だけどネクロマンサーエンプレスの厄介な所は、その強さではない。このまま時間が過ぎれば過ぎる程、こちらは窮地に陥ることになる。
この後ネクロマンサーエンプレスは南に向かい、母さんや村の人達を虐殺する。そして生き残ったのは俺とザインと数名だけだった。
そんな残酷な未来を再び歩ませる訳にはいかない。
そのために俺はこの時間軸に戻ってきた。
「ここは俺に任せてくれ」
「任せろってお前⋯⋯」
危険なのでルルに肩から降りるように命じた後、俺は前に出てネクロマンサーエンプレスと対峙する。
相変わらず凄まじい威圧感を感じるな。
ちなみにこいつを倒したのは今から四年後で、その時は特別な武器を持っていた。
だが今はその武器もなければ、身体能力もかなり劣っている。
しかし俺にはセレスティア様に頂いた新たな力がある。恐れることはない。
「おい! 武器も持たずにどうするんだ!? まさか魔法で倒すつもりなのか?」
ザインから心配する声が上がるが、今は魔力を集めることに集中する。
この時の俺はいくつかの魔法を使うことが出来ていたが、どれもネクロマンサーエンプレスを倒すには至らないことを、ザインはわかっているんだ。
ネクロマンサーエンプレスが俺を敵とみなしたのか、こちらに接近してくる。
そのスピードは速く、あっという間に目前まで迫ってきた。
大丈夫。女神様から頂いた力の使い方は俺の脳裏に刻まれている。
俺は自分を落ち着かせて左手を前方にかざす。そしてネクロマンサーエンプレスに向かって魔法を解き放った。
「回復魔法」
眩しい白い光がネクロマンサーエンプレスを包みこむ。
俺が使った魔法は本来傷を治したり、体力を回復する魔法だ。
回復魔法を敵にかけて正気かと思われるかもしれないが、アンデットのネクロマンサーエンプレスにとっては、最も苦痛を与える魔法となっている。
回復魔法は生命の力を与える魔法であり、アンデットは死の力を原動とする生物である。そのため相反する力を食らったネクロマンサーエンプレスは、根源を犯されダメージを受けていた。
鎌を持っていない左手で頭を抑え、激しく暴れ始める。
さすがはネクロマンサーの頂点に立つ存在だな。俺の回復魔法《ヒール》を一回食らったくらいでは倒すことは出来ないらしい。
だが最初から一撃で倒すことが出来るなんて考えてはいない。
初撃はネクロマンサーエンプレスからある物を手に入れるために、攻撃したのだ。
俺は右手に掴んだ物をザインに向かって投げる。
「何だこれは?」
「それを持っててくれ!」
「これを持ってればいいのか!?」
ザインは疑問に持ちつつも俺が投げた物をキャッチする。
「ギィギッ!」
その様子を見てか、ネクロマンサーエンプレスは声にならない言葉を吐きながらザインへと迫る。
顔は骸骨などハッキリとしたことはわからないが、激しい怒りを感じた。
だがそれも無理はない。
あれは死霊の笛と呼ばれており、死した者を骸骨や悪霊として操ることが出来るのだ。
前の時間軸でもネクロマンサーエンプレスだけなら、村人達は逃げ切ることが出来た。しかし死霊の笛によって操られた亡者によって、村は囲まれてしまい、結果たくさんの人が殺されることになってしまったのだ。
ここは墓場で死した魂が多くあるため、ネクロマンサーエンプレスに取っては最高の環境であっただろう。
そのためまずは死霊の笛を奪うことを優先したのだ。
ネクロマンサーエンプレスは死霊の笛を奪い返すためか、我を忘れてザインへと迫る。
だがその背中は明らかに隙だらけだ。
「回復魔法」
俺はネクロマンサーエンプレスに向かって回復魔法を唱える。
するとネクロマンサーエンプレスは回復のダメージで地面に倒れ、ひれ伏す。
「回復魔法」
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