100 / 142
姉はいつも俺より一枚上手
しおりを挟む
新入生歓迎会当日の早朝
俺はスマートフォンのアラームで5時30分に起きると、昨日降っていた雨はすっかりと上がっていた。
晴れて良かったよ。
昨日は風も強かったため、もしこれが今日の日中だったら、新入生歓迎会が中止になっていたかもしれない。
俺は制服に着替えて一階に降りると、朝食の用意をしているコト姉の姿が目に入った。
「おはよ~」
「リウトちゃんおはよう~」
俺はコト姉と挨拶をかわし、辺りを見渡す。
あれ? おかしい。ユズがいないぞ。確か今日は早起きして朝から学園でケーキを作るって言っていたのに。
「ユズはまだ起きてないの?」
「ううん、起きてるよ。何かどこからか連絡があったみたいで、朝御飯も食べずに学園へ行っちゃった。あっ、リウトちゃんは目玉焼きとソーセージ、サラダ、豆腐とワカメの味噌汁、鮭の塩焼き、とろろ、納豆、味付け海苔、ポテトサラダ、ご飯でいい? すぐ作るから待っててね」
コト姉は俺を肥らせて、どこかへ出荷するつもりなのかと疑いたくなるオカズの量だな。
「いや、朝からそんなに食べれません。目玉焼きとソーセージ、ポテトサラダ、後味噌汁とご飯でお願いします」
「わかった~。すぐ作るからちょっと待っててね」
そしてコト姉はキッチンへと向かい、朝食を作るため電気コンロの火をつけた。
それにしても、ユズは朝早くから出かけるなんて何かあったのだろうか? 少し心配だな。学園に着いたら一度ユズの所へ行ってみるか。
「はい、どうぞ」
俺がコト姉に朝御飯をリクエストして、2分も経たない内に朝食が出てきた。
「えっ? 作るの早くない?」
「ふふ⋯⋯実は全部作ってあったから後は火を通すだけだったの」
「そ、そうなんだ。ありがとう」
「今日は新入生歓迎会があるからいっぱい食べておかないとね」
「朝早くから準備するのたいへんだったんじゃない?」
「そんなことないよ~、リウトちゃんに愛情がいっぱいこもったご飯を食べてもらえるなら、お姉ちゃんは全然苦じゃないよ」
今は早朝の5時35分。コト姉はいったい何時から朝御飯を作っていたんだ。しかもこれだけの量を。
嬉しい⋯⋯嬉しいけど⋯⋯。
あ、姉の愛が重すぎる⋯⋯。
これは本当に彼女でも作ろうものなら、コト姉がどんな行動に出るか想像がつかないな。
もしかしたら包丁を持って殺⋯⋯いや、今は考えるのを止めよう。今日は楽しい楽しい新入生歓迎会なのだから。
そして俺はコト姉が作ってくれた朝食を食べ、6時10分頃自宅を出ると⋯⋯。
「待ってリウトちゃん。お姉ちゃんも一緒に行く」
リビングからコト姉が追いかけて来たので、並んで俺達は家を出る。
自宅を出ると朝日が俺達に注いでくるが、まだこの時期の早朝は少し肌寒い。
「寒いね~」
「まだ朝早いからな」
「ねえ、手を繋ごうよ。お姉ちゃん凍えて死んじゃうよ~」
この姉は急に何を言い出すんだ。
「いやいや、こんな往来の道路で手を繋ぐなんてできないよ」
「でもでも、朝早いから誰もいないよ」
「いるから。俺達みたいに新入生歓迎会の準備で早起きしているやつがいっぱい」
周囲を見渡すと、俺達と同じ学生服を着た生徒がちらほらと見える。
「ぶう⋯⋯リウトちゃんのイケズ~」
「頬を膨らませてもダメだぞ」
たまにコト姉は子供っぽくなる時があり、本当に年上なのか疑いたくなる。
「だったら代わりに今日の新入生歓迎会一緒に回ろうよ」
「午前中は当番だから午後だったら⋯⋯」
「お姉ちゃんも午前中は生徒会で見回りしないといけないから一緒に回れそうだね。じゃあリウトちゃんの時間が空いたら連絡ちょうだいね~」
そう言ってコト姉は、ニコニコと笑顔で1人学園へと走り去ってしまった。
まだ学園まで10分程あるんだが。
もしかしたら、コト姉は生徒会の仕事があるのに、俺と新入生歓迎会を回る話をするために待っていたのか? 聡明なコト姉なら手を繋ぐのを断られることを読んで、この話を持ってきた気がする。
まあ新入生歓迎会に回ろうなんて、誰からも誘われてないからいいんだけどさ。
そんな虚しい気持ちを抱えながら、俺は1人学園へと向かった。
羽ヶ鷺学園に到着しAクラスへ向かうと、時刻は6時28分というとても早い時間だったが、多くの人がいた。
「ちひろ、早いな」
「ええ。まあ暇してるし、何か手伝えることがないかなって⋯⋯」
中々殊勝な考えである。だがちひろはこの案件に俺を巻き込んだので、存分に働いてもらいたいものだ。
教室には女子を中心に⋯⋯というか女子10人程と男は俺しかいないな。その中には接客担当の神奈さんもいて、水瀬さんと何やら談笑している。
悟がいたらハーレムだとか言いそうだが⋯⋯悪くないなこの状況。
ラブコメやエロゲの主人公だとラッキースケベ的な展開になるが⋯⋯高望みはしない方がいいな。とにかく今はこの状況を楽しむことにしよう。
「皆さん朝早くお集まり頂きありがとうございます。それでは移動しましょう」
水瀬さんの指示で俺達は調理室へと移動し、部屋の中に入るが、何やら人垣が出来ており、周囲は異様な空気に包まれていた。
「何かあったのかな?」
好奇心旺盛なちひろは人垣を掻き分けて、状況を確認しに行ってしまう。
「そういえばユズはどこにいるんだ?」
コト姉の話だと俺達より早く学園へ向かったとのことだが⋯⋯。
周囲を見渡してもユズの姿は見つからなかったので、俺はちひろを追って人垣が出来ている場所へ向かう。
すると人垣の中心部分に、探していたユズと瑠璃の姿を見つけることが出来た。
なんだ? まさかユズ達に何かあったのか?
俺は人垣の中心に駆け寄ると、瑠璃は泣きそうな表情をしており、ユズの目には光るものが見えた。
「瑠璃、何かあったのか?」
ユズが泣くなんてただ事じゃない。俺は状況を聞くため、まだ喋ることが出来そうな瑠璃に話しかけた。
俺はスマートフォンのアラームで5時30分に起きると、昨日降っていた雨はすっかりと上がっていた。
晴れて良かったよ。
昨日は風も強かったため、もしこれが今日の日中だったら、新入生歓迎会が中止になっていたかもしれない。
俺は制服に着替えて一階に降りると、朝食の用意をしているコト姉の姿が目に入った。
「おはよ~」
「リウトちゃんおはよう~」
俺はコト姉と挨拶をかわし、辺りを見渡す。
あれ? おかしい。ユズがいないぞ。確か今日は早起きして朝から学園でケーキを作るって言っていたのに。
「ユズはまだ起きてないの?」
「ううん、起きてるよ。何かどこからか連絡があったみたいで、朝御飯も食べずに学園へ行っちゃった。あっ、リウトちゃんは目玉焼きとソーセージ、サラダ、豆腐とワカメの味噌汁、鮭の塩焼き、とろろ、納豆、味付け海苔、ポテトサラダ、ご飯でいい? すぐ作るから待っててね」
コト姉は俺を肥らせて、どこかへ出荷するつもりなのかと疑いたくなるオカズの量だな。
「いや、朝からそんなに食べれません。目玉焼きとソーセージ、ポテトサラダ、後味噌汁とご飯でお願いします」
「わかった~。すぐ作るからちょっと待っててね」
そしてコト姉はキッチンへと向かい、朝食を作るため電気コンロの火をつけた。
それにしても、ユズは朝早くから出かけるなんて何かあったのだろうか? 少し心配だな。学園に着いたら一度ユズの所へ行ってみるか。
「はい、どうぞ」
俺がコト姉に朝御飯をリクエストして、2分も経たない内に朝食が出てきた。
「えっ? 作るの早くない?」
「ふふ⋯⋯実は全部作ってあったから後は火を通すだけだったの」
「そ、そうなんだ。ありがとう」
「今日は新入生歓迎会があるからいっぱい食べておかないとね」
「朝早くから準備するのたいへんだったんじゃない?」
「そんなことないよ~、リウトちゃんに愛情がいっぱいこもったご飯を食べてもらえるなら、お姉ちゃんは全然苦じゃないよ」
今は早朝の5時35分。コト姉はいったい何時から朝御飯を作っていたんだ。しかもこれだけの量を。
嬉しい⋯⋯嬉しいけど⋯⋯。
あ、姉の愛が重すぎる⋯⋯。
これは本当に彼女でも作ろうものなら、コト姉がどんな行動に出るか想像がつかないな。
もしかしたら包丁を持って殺⋯⋯いや、今は考えるのを止めよう。今日は楽しい楽しい新入生歓迎会なのだから。
そして俺はコト姉が作ってくれた朝食を食べ、6時10分頃自宅を出ると⋯⋯。
「待ってリウトちゃん。お姉ちゃんも一緒に行く」
リビングからコト姉が追いかけて来たので、並んで俺達は家を出る。
自宅を出ると朝日が俺達に注いでくるが、まだこの時期の早朝は少し肌寒い。
「寒いね~」
「まだ朝早いからな」
「ねえ、手を繋ごうよ。お姉ちゃん凍えて死んじゃうよ~」
この姉は急に何を言い出すんだ。
「いやいや、こんな往来の道路で手を繋ぐなんてできないよ」
「でもでも、朝早いから誰もいないよ」
「いるから。俺達みたいに新入生歓迎会の準備で早起きしているやつがいっぱい」
周囲を見渡すと、俺達と同じ学生服を着た生徒がちらほらと見える。
「ぶう⋯⋯リウトちゃんのイケズ~」
「頬を膨らませてもダメだぞ」
たまにコト姉は子供っぽくなる時があり、本当に年上なのか疑いたくなる。
「だったら代わりに今日の新入生歓迎会一緒に回ろうよ」
「午前中は当番だから午後だったら⋯⋯」
「お姉ちゃんも午前中は生徒会で見回りしないといけないから一緒に回れそうだね。じゃあリウトちゃんの時間が空いたら連絡ちょうだいね~」
そう言ってコト姉は、ニコニコと笑顔で1人学園へと走り去ってしまった。
まだ学園まで10分程あるんだが。
もしかしたら、コト姉は生徒会の仕事があるのに、俺と新入生歓迎会を回る話をするために待っていたのか? 聡明なコト姉なら手を繋ぐのを断られることを読んで、この話を持ってきた気がする。
まあ新入生歓迎会に回ろうなんて、誰からも誘われてないからいいんだけどさ。
そんな虚しい気持ちを抱えながら、俺は1人学園へと向かった。
羽ヶ鷺学園に到着しAクラスへ向かうと、時刻は6時28分というとても早い時間だったが、多くの人がいた。
「ちひろ、早いな」
「ええ。まあ暇してるし、何か手伝えることがないかなって⋯⋯」
中々殊勝な考えである。だがちひろはこの案件に俺を巻き込んだので、存分に働いてもらいたいものだ。
教室には女子を中心に⋯⋯というか女子10人程と男は俺しかいないな。その中には接客担当の神奈さんもいて、水瀬さんと何やら談笑している。
悟がいたらハーレムだとか言いそうだが⋯⋯悪くないなこの状況。
ラブコメやエロゲの主人公だとラッキースケベ的な展開になるが⋯⋯高望みはしない方がいいな。とにかく今はこの状況を楽しむことにしよう。
「皆さん朝早くお集まり頂きありがとうございます。それでは移動しましょう」
水瀬さんの指示で俺達は調理室へと移動し、部屋の中に入るが、何やら人垣が出来ており、周囲は異様な空気に包まれていた。
「何かあったのかな?」
好奇心旺盛なちひろは人垣を掻き分けて、状況を確認しに行ってしまう。
「そういえばユズはどこにいるんだ?」
コト姉の話だと俺達より早く学園へ向かったとのことだが⋯⋯。
周囲を見渡してもユズの姿は見つからなかったので、俺はちひろを追って人垣が出来ている場所へ向かう。
すると人垣の中心部分に、探していたユズと瑠璃の姿を見つけることが出来た。
なんだ? まさかユズ達に何かあったのか?
俺は人垣の中心に駆け寄ると、瑠璃は泣きそうな表情をしており、ユズの目には光るものが見えた。
「瑠璃、何かあったのか?」
ユズが泣くなんてただ事じゃない。俺は状況を聞くため、まだ喋ることが出来そうな瑠璃に話しかけた。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる