上 下
55 / 142

勝つためには全員の力が必要だ

しおりを挟む
そして封鎖サッカーの後半戦のため、自陣でウォーミングアップをしながら都筑とCクラスのメンバーを確認する。

「完全に一致している⋯⋯だと⋯⋯」

 後半ベンチに退いたメンバーは全て俺の予測通りだったため、都筑は悔しいのかワナワナと震えているが、約束は約束なので従ってもらう。

「指示通りに頼むぞ」
「くっ! しかたねえな。しかしこんなの作戦と言えるのか?」
「負けたら愚策だが、勝てばどんな案であろうと作戦になるんだよ」

 今は俺を信じて行動してもらうしかない。
 クラスメート達は先程俺がCクラスの後半戦のメンバーを当てたためか、死んだ魚の目から瀕死の魚くらいには戻ってきた。
 ちなみにCクラスは前半に男子を14人出場させたため、後半は引き続き沢尻、井沢、田中、熊谷と男子6名、そして控えに回っていた藤田が高見の代わりにキーパーを勤め、残り9名は女子となっている。
 対するAクラスはサッカー部の4人と比較的運動が得意な男子4人、ちひろ、神奈さんは引き続き出場させ、俺と同じ前半出場していなかった夜脇よわきくんと女子8名となっている。
 ポジションはサッカー部で唯一重りのついていない柳瀬とちひろ、神奈さんを前線に持っていき、残りは守備というフォーメーションだ。
残りのサッカー部の三人は重りがついているが、一般の生徒よりは動けるということで、そのまま出場となった。

 そして審判のフエが鳴り、試合はCクラスのボールから始まる。

「さて、次に俺のシュートを食らいたい奴は誰かな」

 沢尻は獲物を狙う狩人のようにAクラスを物色し始める。

「お前のようなくそみたいなシュートで俺を倒せるわけねえだろ」
「重い鎖に繋がれた犬がよく吠える。次は左脚を封じてやろうか?」

 沢尻は都筑の挑発に対して挑発し返す。
 そしてやはり勝ち気な沢尻はこの後も攻めることを選択したようだ。
 ちなみにこの時、Cクラスに攻めさせるため、都筑に沢尻を挑発するように頼んでおいていた。
 唯一懸念していたことは、Cクラスが全員で守ることだったが、どうやら俺の思惑通りになりそうだ。

「いくぜ!」

 Cクラスは前半と同じように沢尻、井沢、田中、熊谷の四人でパスを回しながら攻めこんでくる。

「ん? 何か動きが変わったか?」

 沢尻はAクラスの守備を見て何か違和感を感じたのか、思わず口にする。

 どうやら皆、俺の指示通りに動いてくれているようだな。
 まずに守り関しては当たり前のことだが、ボールを持った奴との距離を詰めた方が、強烈なシュートを打つ助走ができないことを伝えた。
 沢尻のシュートで織田と越智がやられたことによって皆に恐怖心が宿り、逆に距離を取ってしまっていたので、前半Cクラスとしては攻めるのが容易かっただろう。
 そしてもうひとつ⋯⋯もしその沢尻、井沢、田中の三人にシュートを打たれそうになったら無理にブロックせず、打たせていいことを。

「オラオラどけどけ!」

 沢尻を中心にした攻撃陣は既にペナルティエリア付近まで来ていた。

「やべえ! 打たれる!」

 都筑は必死にディフェンスをしようと沢尻に詰め寄るが、右足の重りによってうまく動けず、悲痛の叫び声を上げる。

「お前はそこで四点目が入るところを見ていな!」

 そして沢尻は右足を振り抜くと鋭いシュートがゴール左隅に放たれる。

「やべえ!」
「リウト!」

 シュートのコース、威力から、この時試合を見ていたほぼ全ての者が、四点目が入ったと確信していた。

 だが⋯⋯。

「と、止めた⋯⋯だと⋯⋯」

 俺は沢尻のシュートを真正面でキャッチした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

処理中です...