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発言には責任を持ってほしい
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「ただいま」
俺は神奈さんと紬ちゃんを家まで送って自宅に戻ってくると、既に時間は20時を越えていた。
この時間だとだいたいコト姉かユズが風呂に入っている。俺は部屋に戻って少し休んでから風呂に入るか。
そして俺は部屋に戻りベッドに横になっていると、先程リビングであった、親父の神奈さんへの対応を思い浮かべていた。
親父は借りにもボディーガードを生業としている。家族に対しては感情を露にするが、他では冷静沈着だ。しかし今日の親父は違った。
神奈姉妹と初めて会った時、どこか動揺していたよな?
まさか知り合いだったとか? だが初対面じゃなかったとしたら何故隠す。まさかコト姉の言うとおり本当に神奈さんの容姿に見とれていたとか?
さすがにそれはないか。もしそんな事態になれば母さんが⋯⋯。
そういえばあの時、母さんは何も言わなかったな。いつもなら「へえ、お父さんは私以外の、しかも女子高生に見とれるんですか」っと殺気を見せてもおかしくないのに。
コンコン
俺はリビングでの出来事を思い返していると、不意にドアがノックされる。
コト姉かユズが風呂が終わったから呼びに来てくれたのかな?
しかし部屋の外にいるのは俺の予想だにしない人物だった。
「リウト、入るけどいいか?」
お、親父!
中学くらいから俺の部屋など来たことがなかったのに。いったいなんの用だ。
「ああ、大丈夫だ」
とりあえず俺は親父に部屋の中に入るよう促す。
ドアを開け、親父が部屋に入ってくると神妙な顔をしており、どこかいつもと雰囲気が違っていた。
「どうしたんだ? 部屋に来るなんて何年ぶりだよ」
「たまには親子の会話ってやつをしてもいいだろ」
そう言うと親父はベッドに腰をおろす。
「親父が親子の会話をしたいのはコト姉とユズだけだろ?」
「まあそういうな。たまには男同士の話も良いものだろ?」
やはり今日の親父はおかしい。これは神奈さんと会ったことが関係しているのだろうか。
いつもなら「当たり前だ! 息子と話をして何が楽しい」と言ってきそうなものだ。
「何か親父の様子がおかしくないか?」
「そんなことはない。それより⋯⋯どうだ、高校生活は?」
「コト姉とユズのせいで嫉妬されることはあるけど楽しくやっているよ」
「そうか⋯⋯何度も言っているが自分の⋯⋯」
「わかってる」
親父は勉強や運動など教育のことはほとんど口出ししてこなかったが、このことだけは幼い頃から何回も言われていた。
「自分の行動には責任を持て⋯⋯だろ」
この時俺は無意識に左腕を抑えてしまう。俺が自分の実力を理解せず、先走った結果を。
「痛むのか」
「たまに痺れる程度だよ」
「そうか⋯⋯」
親父は俺の左腕を見て、何とも言えない表情をしていた。
俺の左腕の肘の部分には大きな傷がある。これは忘れもしない6年前の夏、家族で遠出した先の川で、俺は溺れている女の子を助けたからだ。だが俺は女の子が流されて岩にぶつかりそうになったところをかばったため、左腕と後頭部を損傷することになった。そして頭の方の傷は大したことはなかったが、左腕は手術をすることになり、以前と同じ様に動かすことが出来なくなってしまったのだ。
「リウト⋯⋯お前その女の子のことを恨んでいるのか?」
「そりゃあ当時は恨んでいないと言ったら嘘になるけど⋯⋯自分が取った行動の結果だから今は気にしてないよ」
俺は怪我のせいで、幼い頃からやっていた野球をやめることになった。そして塞ぎこんでいた時期があったが、家族のお陰で立ち直ることができ、今の俺がある。それに後で親父に聞いた話だが、その助けた女の子も頭を打ったが無事だったので、今はその結果を受け入れることが出来ている。
「それならいい」
親父はそう一言残すと、ベッドから立ち上がり部屋を出ていく。
「えっ? それだけ?」
「ああ、誰が好き好んでこの部屋にいるか」
「俺も親父と話すことなどない。とっとと出てけ」
親父はいったい何が言いたかったんだ? 神奈さんと会った時の反応といい謎は深まるだけだった。しかし考えても仕方ないので、俺は風呂に入るため一階へと降りることにした。
翌日の放課後
本日は土曜日⋯⋯授業が終わると翌日が日曜日で休みのためか、クラスメートからはどこか普段より笑顔が見られるような気がする。
それは俺も同じで、新学年になってから初めての休みで少しワクワクしているが、今日はどうしてもやらなきゃならないことがあった。
「先輩先輩せんぱ~い!」
突如教室のドアが開くと、血相をかいた瑠璃が叫びながら俺の所にやってきた。
そしてこの後、こともあろうにクラスメート達を騒然とさせる言葉を放つのだった。
「先輩! 早く私の部屋で一心同体になりましょう」
俺は神奈さんと紬ちゃんを家まで送って自宅に戻ってくると、既に時間は20時を越えていた。
この時間だとだいたいコト姉かユズが風呂に入っている。俺は部屋に戻って少し休んでから風呂に入るか。
そして俺は部屋に戻りベッドに横になっていると、先程リビングであった、親父の神奈さんへの対応を思い浮かべていた。
親父は借りにもボディーガードを生業としている。家族に対しては感情を露にするが、他では冷静沈着だ。しかし今日の親父は違った。
神奈姉妹と初めて会った時、どこか動揺していたよな?
まさか知り合いだったとか? だが初対面じゃなかったとしたら何故隠す。まさかコト姉の言うとおり本当に神奈さんの容姿に見とれていたとか?
さすがにそれはないか。もしそんな事態になれば母さんが⋯⋯。
そういえばあの時、母さんは何も言わなかったな。いつもなら「へえ、お父さんは私以外の、しかも女子高生に見とれるんですか」っと殺気を見せてもおかしくないのに。
コンコン
俺はリビングでの出来事を思い返していると、不意にドアがノックされる。
コト姉かユズが風呂が終わったから呼びに来てくれたのかな?
しかし部屋の外にいるのは俺の予想だにしない人物だった。
「リウト、入るけどいいか?」
お、親父!
中学くらいから俺の部屋など来たことがなかったのに。いったいなんの用だ。
「ああ、大丈夫だ」
とりあえず俺は親父に部屋の中に入るよう促す。
ドアを開け、親父が部屋に入ってくると神妙な顔をしており、どこかいつもと雰囲気が違っていた。
「どうしたんだ? 部屋に来るなんて何年ぶりだよ」
「たまには親子の会話ってやつをしてもいいだろ」
そう言うと親父はベッドに腰をおろす。
「親父が親子の会話をしたいのはコト姉とユズだけだろ?」
「まあそういうな。たまには男同士の話も良いものだろ?」
やはり今日の親父はおかしい。これは神奈さんと会ったことが関係しているのだろうか。
いつもなら「当たり前だ! 息子と話をして何が楽しい」と言ってきそうなものだ。
「何か親父の様子がおかしくないか?」
「そんなことはない。それより⋯⋯どうだ、高校生活は?」
「コト姉とユズのせいで嫉妬されることはあるけど楽しくやっているよ」
「そうか⋯⋯何度も言っているが自分の⋯⋯」
「わかってる」
親父は勉強や運動など教育のことはほとんど口出ししてこなかったが、このことだけは幼い頃から何回も言われていた。
「自分の行動には責任を持て⋯⋯だろ」
この時俺は無意識に左腕を抑えてしまう。俺が自分の実力を理解せず、先走った結果を。
「痛むのか」
「たまに痺れる程度だよ」
「そうか⋯⋯」
親父は俺の左腕を見て、何とも言えない表情をしていた。
俺の左腕の肘の部分には大きな傷がある。これは忘れもしない6年前の夏、家族で遠出した先の川で、俺は溺れている女の子を助けたからだ。だが俺は女の子が流されて岩にぶつかりそうになったところをかばったため、左腕と後頭部を損傷することになった。そして頭の方の傷は大したことはなかったが、左腕は手術をすることになり、以前と同じ様に動かすことが出来なくなってしまったのだ。
「リウト⋯⋯お前その女の子のことを恨んでいるのか?」
「そりゃあ当時は恨んでいないと言ったら嘘になるけど⋯⋯自分が取った行動の結果だから今は気にしてないよ」
俺は怪我のせいで、幼い頃からやっていた野球をやめることになった。そして塞ぎこんでいた時期があったが、家族のお陰で立ち直ることができ、今の俺がある。それに後で親父に聞いた話だが、その助けた女の子も頭を打ったが無事だったので、今はその結果を受け入れることが出来ている。
「それならいい」
親父はそう一言残すと、ベッドから立ち上がり部屋を出ていく。
「えっ? それだけ?」
「ああ、誰が好き好んでこの部屋にいるか」
「俺も親父と話すことなどない。とっとと出てけ」
親父はいったい何が言いたかったんだ? 神奈さんと会った時の反応といい謎は深まるだけだった。しかし考えても仕方ないので、俺は風呂に入るため一階へと降りることにした。
翌日の放課後
本日は土曜日⋯⋯授業が終わると翌日が日曜日で休みのためか、クラスメートからはどこか普段より笑顔が見られるような気がする。
それは俺も同じで、新学年になってから初めての休みで少しワクワクしているが、今日はどうしてもやらなきゃならないことがあった。
「先輩先輩せんぱ~い!」
突如教室のドアが開くと、血相をかいた瑠璃が叫びながら俺の所にやってきた。
そしてこの後、こともあろうにクラスメート達を騒然とさせる言葉を放つのだった。
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