姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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過去の遺恨は早めに解消した方がいい

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2年A組⋯⋯ここがこれから一年間世話になるクラスか。

 俺は教室のドアを開けて中に入ると何人かの姿があり、既に幾つかのグループが出来ていた。3、4人のグループが3つ、そして後は1人で座っている者が数人といった所か。

 とりあえず俺は教室を入ってすぐの1番前の席に荷物をおく。
 まだ席は決まっていないと思うが、どうせ初めは名前順の席だろう。
 俺は天城だから1番前、もしくは2番目のことが多い。席を移動するのもめんどくさいからここ座ることにした。

「じゃあ私はここにする」

 そう言ってちひろは俺の後ろの席に座りはじめる。

「わざわざ俺に付き合って前から2番目の席に座らなくていいんだぞ」
「私もリウトと同じで名前順だとここの席になると思うから」

 ちひろは上野だから確かに1列目の2番目になる確率が高い。本当は1番後ろの席がいいがこればっかりはお互いに変えようがない出来事だ。
 毎回思うけど、とりあえず席替えをすぐにしてほしいが、これは担任の先生によって考え方が違う。
 初めのオリエンテーションで席替えをする先生もいれば、一学期中はこのままの席でと言う先生もいる。
 とりあえず今はその担任の先生を待つだけだが、その時間はもったいないので俺は席を立つ。

「ちひろ、クラスメート達に挨拶しに行くけどどうする?」
「私は⋯⋯」

 ちひろが口を開きかけた時、何やら廊下からざわざわした声が聞こえてきた。俺は教室の外に視線を向けると、そこには1人の少女がいた。

「おはようございます」

 長い髪をなびかせ挨拶をしながら教室に入ってくる様はどこかの芸能人のようで、明らかにその場だけ空気が違うことが誰の目にわかる程だった。

「おはよう~」
「おはようございます」
「お、おはよう」

 女子は気軽に挨拶を返しているが、男子はその容姿に見とれてしまったのか、ソワソワしている奴が多い。

 教室に入ってきた者の名前は神奈かみな ゆい。容姿端麗、スポーツも勉強も得意、ため、一年の頃から羽ヶ鷺のヒロインと呼ばれている。

 そしてそんな神奈さんが俺の前を通り過ぎようとしたため、挨拶をする。

「神奈さんおはよう」

 しかしこのヒロインは何も聞こえていないかのように、俺の前を通り過ぎる。やはりというか神奈さんからの返答はなかった。
 まあそれには理由があり、小学生の頃、神奈さんが美術コンクールで大賞を取った作品を俺が地面に落とし壊してしまったからだ。その時は今の神奈さんからは考えられない程激昂され、その後無視されるようになった。
 あの時以来俺は神奈さんとはまともに会話をしたことがない。

「神奈っちおはよう~」
「おはようございます。上野さん」

 その証拠にちひろが挨拶をすると、天使の笑みを浮かべて挨拶を返していた。
 一瞬俺の方に視線を向けてきたが、その目は天使の笑みとは対称的に人を殺せるんじゃないかと思う程冷たいものだった。そして神奈さんは俺から最も離れている、窓側の一番後ろの席に座る。

「いや~嫌われてるねえ」
「仕方ないさ。でもまさか同じクラスになるとはな」
「小学校からの腐れ縁だっけ?」
「ああ、けど中学からは同じクラスになったことはなかったんだが」

 まさか高校2年で一緒になるとは。

「けど前にリウトから神奈っちが怒っている理由を聞いたけど、実は他にもあるんじゃない?」
「た、確かにそうだな。俺が言うのも何だがけど神奈さんが一度の過ちであそこまで怒るとは思えない」

 俺が知る中で神奈さんがこんなに冷たい態度を取るのは俺だけだ。何だか自分で言っていて悲しくなる台詞だな。
 しかし神奈さんの作品を壊すまでは特に接点もなかったし、やはり原因は⋯⋯。

「まさか小学校の時、神奈っちのスクール水着を盗んだとか?」
「そんなことするか! 今ならまだしもさすがに小学生の時にそんな性癖はない」

 俺が言葉を言い終えるとちひろは目を細め、冷たい視線でこちらを見てきた。
 やばい⋯⋯つい正直な気持ちが。
 いや、男なら神奈さんのスク水姿を見て何も感じない奴がいるか! もしいたとしたらそいつは女性に興味がないだけだろう。

「リウトが犯罪者になったら私がテレビで弁明してあげるから。いつかやると思っていましたってね」
「それは弁明と言わん!」

 例え濡れ衣でもちひろなら俺を陥れるために本当に言いかねない。俺は酷い友人を持ったものだ。
 とりあえず今はちひろのことは放って置いて、クラスメート達との交流をしに行くとするか。

 しかしちひろから離れようとした時、教室の前の扉から、スーツ姿の目がキリッとした女性が現れたため、再び席に戻ることにする。

「席に座れ! 私が今日から2年A組の担任をする氷室ひむろ 雪那せつなだ! まずは自己紹介も兼ねたホームルームを始める前にエクセプション試験を行う」

 氷室先生の突然の言葉に教室内がざわめき始める。おそらく今日は2年になって初日のため授業すらないと思っていたのだろう。
    エクセプション⋯⋯例外や特例という意味を持つ言葉だ。
 羽ヶ鷺学園ではこのように突発的に試験が始まることがある。だが大抵は五教科などの筆記テストではなく、今までの経験や対応力が求められるものがほとんどだ。

「静かにしろ。試験といっても知識を試すようなものではない。お前達がクラスメートとコミュニケーションをしっかりと取っていれば難しい問題ではないぞ。まずは二人一組のペアを作れ」

 氷室先生の言葉でクラスメート達は慌ててペアを作り始める。急がないと自分が溢れてしまうと考えているのだろう。
  。

「リウト⋯⋯私とペアでいいよね?」
「ああ、よろしく頼む」

 そして俺は仕組まれたかのようにちひろとペアを組む。

「全員二人一組のペアを組んだな? ではこれから2年最初のエクセプション試験を行う」

 氷室先生がそう宣言すると、全員に一枚の用紙を配り始めるのであった。
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