姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

文字の大きさ
2 / 147

天城姉妹の日常

しおりを挟む
 時は遡り、新学期初日。

 ここは都会でも田舎でもない、子育てがしやすい街と言われている羽ヶ鷺市。

 朝陽が昇り街が動き始めた頃

 小鳥の囀ずりと暖かい日の光と布団の温もり? を感じながら俺は目が覚める。 

「今日から新学期か」

 新しい日常の始まりを期待して、思わず声に出してしまう。

「初日から遅刻するわけにはいかないから、そろそろ起きるか」

 俺は身体を起こそうとするが、何か腹部の辺りに違和感を感じたため布団を捲ると⋯⋯そこには制服姿で俺に抱きついて寝ているコト姉がいた。

「ちょちょっとコト姉何してるんだ!」

 朝から何をしているだこの姉は!
 今ベッドで寝ているのは俺の1つ年上の姉天城琴音。成績優秀、品行方正、運動神経もよく、そして容姿も悪くない。天は二物も三物も与えた存在だが、重度のブラコンだという欠点がある。
 いくら姉弟だからと言って、男の布団の中に入ってくるなんてありえないだろ。確かに小さい頃から一緒に寝ることがあったが、高校生になってもそんなことをしてくるなんて普通じゃない。

「やめてリウトちゃん⋯⋯いつからそんなエッチになったの⋯⋯でもお姉ちゃんは⋯⋯」

 しかも事もあろうに、この姉はどんな夢を見ているのか。俺は脳内ピンクのコト姉のオデコに向かって、デコピンを繰り出す。

「痛ったあいっ!」

 コト姉はオデコを押さえながら、悪夢から目が覚めたようだ。

「リウトちゃん何するの!」
「それはこっちのセリフだ、変な寝言を口にして」
「寝言? お姉ちゃん何か言ってた? けど幸せな夢を見ていたような気がするけど⋯⋯」

 弟とエロいことをするのが幸せな夢って⋯⋯我が姉ながら将来が心配になってくる。

「それで何で朝からベッドにいるの?」
「弟いる所に姉ありだよ」

 訳がわからないことを言い出したので、俺はもう一度デコピンをするために、右手をコト姉のオデコに近づける。

「やめて~、本当はリウトちゃんを起こそうと思っていたけど寝てたからつい私もベッドに⋯⋯」
「ついじゃないだろ!」
「そんなことより、お姉ちゃんは可愛い女の子がベッドに寝ているのに何もしないなんて、リウトちゃんの正気を疑うよ」
「いや、むしろ正気だから実の姉に手を出さないんだが⋯⋯」

 このようにコト姉はたまに脳内お花畑状態になるため、話が噛み合わないことがあるから大変だ。

「たあ」

 コト姉はベッドから立ち上がり、そして気の抜けた声を出して床に飛び降りた。

 あっ! 見えた!

 悲しいかな、俺の優れた動体視力がつい捲れるスカートに視線が行き、純白の何かが見えてしまった。

「着替え用意しておいたから⋯⋯早くしないと遅刻しちゃうぞ」

 そう言ってコト姉はスカートを翻して部屋か出ていく。

「やれやれ⋯⋯コト姉にも困ったもんだ」

 俺はコト姉の行動にため息をつきながら、パジャマを脱ぎ制服に着替えるのであった。

 そして俺は2階にある自室を出て1階にあるリビングへと移動すると、既にテーブルには朝食が並べられており、コト姉と妹の柚葉ことユズ、父親の強斎きょうさいが席についていた。

「おはよう」
「おはよ~リウトちゃん」
「兄さんおはようございます」

 俺が挨拶をかわすと、コト姉とユズからは挨拶が返ってきたが、機嫌が悪いのか親父は腕を組んで仏頂面をしている。
 まあどうしてそんな顔をしているのか簡単に想像できるが⋯⋯。

「リウト⋯⋯お前は今日も琴音に起こしてもらったのか?」

 やはりコト姉のことか。

「いや、自分で起きたぞ」
「ほう⋯⋯そうか。いつまでの姉に起こしてもらう軟弱者だと思っていたが、少しは成長したようだな」
「むしろコト姉が俺のベッドで寝ていたから逆に起こしたけどな」
「えへへ⋯⋯リウトちゃんを起こしに行ったら、ベッドが気持ちよさそうだったから一緒に寝ちゃった」

 コト姉はそう言うと舌を出して可愛らしく笑っていた。

「なん⋯⋯だと⋯⋯」

 だがコト姉が俺のベッドで寝ていたことが気に入らなかったのか、親父は驚きの声を上げると同時に、テーブルの上にあった箸を俺の両目を狙って突き刺してくる。

「ふっ!」

 だが甘い。攻撃してくることは読んでいたので、俺はバックステップをして親父の攻撃を回避する。

「貴様! 年頃の娘と一緒に寝るというこの世で1番幸せな時間を過ごしたというのか!」

 親父は激昂しながら手に持った箸を俺の顔面に向かって投擲しようとするが⋯⋯。
 俺はキッチンから聞こえてくる声に救われる。

「あら? あなたに取って1番幸せな時間は私と一緒に寝ている時かと思っていたけど違ったようね。今日からは別々の部屋で寝ましょ」
「か、母さん! 今のは言葉の綾と言うか何と言うか⋯⋯俺にとっては母さんが1番だからそんなこと言わないでくれ!」

 先程までの威勢はどこにいったのやら、親父は母さんの一言であっさりと意見を覆す。
 その様子を苦笑いで見ているコト姉⋯⋯そして⋯⋯。

「兄さんは朝からお盛んですね⋯⋯お父さんの言う通りもう子供じゃないから自分で起きたらどうですか? 夜遅くまで動画の配信を見ているからですよ」

 冷ややかな目で俺に毒舌を繰り出してくるユズ。
 反論したい所だがほぼ正解のために何も言えない。

「ほら、みんな朝から仲が良いのはわかるけど早く食べないと遅刻するしちゃうわよ」

 そう言って母さんはテーブルの上に今日の朝食である焼き魚、サラダ、ご飯、豆腐の味噌汁を並べていき全て揃った所で⋯⋯。

「「「「「いただきます」」」」」

 家族全員で挨拶をして朝食を食べるのであった。

 そして朝食が終わると俺はバックを取りに行くため、1度自室へと戻る。
 やれやれ⋯⋯親父はコト姉とユズを溺愛しているからたまに暴走するけど、母さんには頭が上がらないから助かる。一応親父はああ見えてボディーガードの仕事をしているから色々な格闘技を習得しており、油断すると怪我をしかねない。まあお陰でそこそこの格闘技と攻撃をかわす技術は身に付いたけどな。

「あぁぁっ⋯⋯私はなんてことを言ってしまったの⋯⋯」

 突然右側の壁越しに悲壮感漂う声が聞こえてくる。
 始まったな。
 俺の左隣の部屋はコト姉⋯⋯そして右隣は⋯⋯。

「本当は私が兄さんを起こしたいのに⋯⋯」

 ユズだ。普段は感情を制御しているように見えるがたまにこうして自室で反省する所が現れる。
 通常なら余程大きな声を出さない限り隣の部屋まで声は聞こえないはずだが、おそらくユズは俺の部屋側にある押し入れで語っているのだろう。

「それにお盛んなんていうハレンチな言葉を使ってしまいました。兄さんは私のことエッチな子だと思ってないかな」

 思ってないぞ⋯⋯安心しろ。

「はあ⋯⋯私はどうしてこんなに素直になれないのかな」

 それは俺が聞きたい⋯⋯昔はここまでこじらせた子ではなかったはずなのだが。

「やっぱり⋯⋯」

 やっぱり何なのか小声で聞こえなかったが、俺はもう登校しなくてはならない時間が来たため、部屋を後にする。そして一階に降りて玄関で靴を履いていると、ユズが後ろから現れ何か差し出してきた。

「これ⋯⋯また感想聞かせて。料理に関しては兄さんのこと尊敬していますから」

 だけを物凄く強調された気がするが気のせいか?

「お、おう⋯⋯ありがとう」
「遅刻しないうちに早く行こ」

 ユズは素っ気なく口にすると玄関から外へと出ていく。そして俺も後に続くとコト姉が外で俺達を待っていてくれた。

「さあ今日から新学期だよ。がんばっていこう」

 そしてコト姉は満面の笑顔で、俺とユズの間に入り腕を組んでくる。

「もう⋯⋯お姉ちゃんったら」
「狭いぞ」

 仕方ないなという感じで姉を見るユズと俺。
 多少窮屈ではあるが俺達は3人揃って羽ヶ鷺学園へと向かうのであった。

 娘を溺愛する父親、天城家のカースト上位の母親、面倒見が良い姉、部屋デレしている妹に囲まれていつまでも平穏な日々? が続くと考えていたが、まさかこの日常が壊れるとは今の俺には想像も出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

処理中です...