猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
92 / 93
連載

出航

しおりを挟む
 夕焼けの光が射し込む頃、俺達はマーレポルトの港街に到着することが出来た。

「お父様が船を手配して下さっています。皆様こちらへ」

 俺達はリズの案内で海がある方へと向かう。そして港に到着すると、そこには大きな船が停泊していた。ここで俺達は、思いもよらぬ人物と再会することとなる。 

「よく来たな! 俺がこの船の船長だ!」

 船の先端で仁王立ちしている男が声を上げたので視線を向けると、そこには俺達が知った顔の男がいた。

「「オゼアさん!」」

 予想していなかった人物に俺とリズは思わず声を上げてしまう。
 何でここにオゼアさんが! いや、元々帝国とムーンガーデン王国を繋ぐ船の船長をしていたんだ。ここにいてもおかしくないよな。

「ユ、ユートさん⋯⋯海賊がいますよ。悪さをする前に早く捕まえて下さい」
「違うからから。失礼だぞ」

 ルルが少し怯えた表情で右腕に抱きついてくる。
 オゼアさんを見て海賊と言うのもわからないでもない。目付きが悪く、海賊帽を被っており、真っ当な人間に見えないからな。

「ふっ!」

 オゼアさんは船から飛び降り、俺達の前で着地する。

「嬢ちゃんは初めて見る顔だな」

 鋭い目付きを向けられ、ルルは俺の後ろに隠れてしまう。

「俺のことを海賊だと?」

 どうやらルルが話していた内容が聞こえていたみたいだ。

「ごめんなさ⋯⋯」
「強ち間違いじゃねえけどな」

 ルルが謝罪の言葉を口にしようとした時、オゼアさんはとんでもないことを話し始める。

「えっ? それってどういう」
「前職は海賊だった。だがゲオルクのおっさんに説得されてな」
「お父様が⋯⋯」
「ああ⋯⋯王族なんて糞やろうしかいないと思っていたが、あの人は俺達みたいなクズともしっかり向き合ってくれたからな」

 ゲオルク国王は民からの評判はいいと言われていたけど、海賊を改心させるなんて凄いな。

「クーデターが起きたと聞いた時はびっくりしたぜ。俺もすぐにゲオルクのおっさんの元に駆けつけたかった⋯⋯」

 オゼアさんが神妙な顔をする。その表情を見て、オゼアさんのゲオルクさんに対する想いが相当高いことがわかる。

「だが俺にはおっさんから頼まれていたことがあった。もしムーンガーデンに禍が起きた時、民を他国へ逃がす手助けをしてほしいと」
「お父様がそのようなことを⋯⋯私が城から逃げる時に、お父様はマーレポルトの港で船に乗るよう仰っていましたが、そういう理由だったのですね」
「禍をもたらすのは漆黒の牙シュヴァルツファングだと思ったんだが。まさか弟にクーデターを起こされるとはな。まあ結果として姫さんを見つけることが出来て良かったぜ。無事にレッケの所に行くことが出来たようだしな」
「えっ? それって⋯⋯」

 オゼアさんはレッケさんとも繋がっていたってことか。それってもしかして⋯⋯
 俺はある結論にたどり着いたその時、マシロが俺の肩に乗り小さな声で呟いた。

「そういえば港から降りた後、私達の後をつける者がいましたね。その者がレッケにリズの居場所を知らせたのではないですか?」

 ニナさんを助けてグラザムから逃げた後、タイミングよくレッケさんが現れた。オゼアさんの部下がリズの居場所を知らせていた可能が高いな。
 それにしても⋯⋯

「何でその時に言ってくれなかったんだ?」
「誰が来ようと蹴散らしてやるつもりでした。それに私達が走って村を離れた後は、追いつくことが出来なかったようですし」

 蹴散らすってマシロらしいな。

「今度俺達をつけている奴がいたら教えてくれよ」
「仕方ないですね。新鮮な魚二匹で手を打ちましょう」

 相変わらず食い意地の張ったネコだな。
 でもそれで追手がわかるなら安いものだ。

「おい、こそこそ何を話しているんだ?」
「何でもないです。それよりオゼアさんがここにいると言うことは」
「もちろん俺がこの船で帝国へと連れていってやるぜ。今回はゲオルクのおっさんからの正式な依頼だからな。乗客もお前達だけだ」

 貸し切りということか。それはありがたいな。

「出航の準備は出来ている。後はお前達が乗るだけだ」
「ありがとうございます」

 俺達はオゼアさんの後に続き船に乗り込む。

「野郎共! 出港だ!」
「アイアイサー!!」

 オゼアさんと船員達の威勢のいい掛け声が聞こえると、夕陽の光を受けながら、船はバルトフェル帝国へと動き始めるのであった。

――――――

この度【狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・】改め【猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る】が、アルファポリス様より1月21日に書籍化されることが決定しました!
これも日頃より読者の皆様が応援して下さったおかげです。
書籍化によりマシロやノア、リズの可愛らしい絵が入り、小説の内容もより素敵なものになっております。
書店等で見かけた時、手に取って頂けると幸いです。
今後とも【猫を拾ったら・・・】をよろしくお願い致します。













しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。