猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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いざ、帝都へ

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 ルルが召喚士と判明した翌日。
 俺とフィーナ、ヨーゼフさん、マシロにノア、そしてリズは、帝国に向かうため王城の正門前にいた。
 やはりというかムーンガーデン王国の使者はリズだった。
 ガーディアンフォレスト側が王女を出しているから、それに合わせたのだろうか。
 俺としては気心が知れているリズが同行してくれるのは嬉しい。
 だけど見送りに来ている人達の中で、一人だけ不服そうな人物がいた。

「くっ! リズを行かせることは不安だ。やはりここは私が⋯⋯」
「あなたは何を言ってるの? ガーディアンフォレスト王国はフィーナ王女を帯同させているのよ。リズにお願いするって決めたじゃない」
「それはわかっているが⋯⋯」

 やれやれ。娘が心配な気持ちはわからないでもないが、ゲオルクさんはいつまでも子離れが出来てないな。
 リズも大変だ。
 俺は他人事のように眺めていると突然ゲオルクさんが俺の肩に手を置いてきた。

「ユート⋯⋯わかっているな?」

 痛い痛い! 肩の骨が折れる!
 ゲオルクさんの手から憎しみの感情をひしひしと感じるぞ。
 これは暗に、リズに手を出したら許さないと言っているのだろう。

「何か一つでも以前と違うリズになっていたら、私は何をするかわからない」
「え~とそれはどういう意味でしょうか」
「察しが悪いな。リズが大人の階段⋯⋯ぐはっ!」

 アリーセさんがゲオルクさんの後頭部を素手ではたく。
 するとゲオルクさんはその場に崩れ落ちた。

「す、すごい音がしたけど大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。これくらいで死ぬことはないわ」

 アリーセさんは何事もなかったかのように答える。
 ゲオルクさんが大ダメージを受けたのに、満面の笑みを浮かべていることが怖い。

「ア、アリーセよ。突然何を⋯⋯」

 ゲオルクさんは後頭部を素手で抑えながら立ち上がった。
 アリーセさんの言うとおり、本当に大丈夫だったな。まさか叩かれることに慣れているのだろうか。

「あなたが気持ち悪いことを言うからです。そんなことを言っているとリズに嫌われますよ」
「そ、それは困る!」

 後頭部を強打されたはずのゲオルクさんは立ち上がり、完全に復活してリズに詰め寄る。
 あの一撃を食らってなんともないとは⋯⋯ゲオルクさんはかなり打たれ強いな。

「お父様を嫌う? そのようなことはありえません」
「おお! リズ!」

 娘に好かれていることがわかって、ゲオルクさんの表情が本当に嬉しそうだ。
 だけどたぶんリズは、大人の階段の意味を理解していない気がする。もしリズが真相を知ったらどう思うか。
 まあよその家庭を壊すようなことをわざわざ口にするつもりはないけど。

「私はユートくんがいるから何の心配もしていないわよ」

 アリーセさんがにこやかに笑みを浮かべこちらに近づき、さらに小声でとんでもないことを呟いてきた。

「旅から戻ってきた時、おばあちゃんになっていても怒らないわよ」
「なっ!」

 何を言ってるんだこの人は!
 そんなことをしたら、ゲオルクさんに何を言われるか。
 ゲオルクさんとは違って、アリーセさんから信頼され過ぎてるのもちょっと怖いな。

「ふふ⋯⋯冗談よ。ユートくんは私の言葉に反応してくれるから楽しいわ」
「からかわないで下さいよ」
「ごめんなさいね。それだけ私はあなたのことを気に入っているのよ」

 いたずらっ子のような笑みで謝られてもなあ。
 それにしてもとても子供がいる親には見えないな。その姿は少女のように可愛らしく、リズのお姉さんと言われても疑わないだろう。

「何だかアリーセとユートの仲が良くないか」
「少し嫉妬してしまいます」

 ゲオルクさんとリズがジト目でこっちを見てきているが、気にしないでおこう。

「はいはい。もう時間ですよ。そろそろ出発しましょう」

 いつの間にか現れたルルによって、この場の空気が変わる。
 そう、帝国に行くということで公爵令嬢であるルルもついてくることになったのだ。
 やはり勝手知ったる者がいた方がいいということになり、ルルに白羽の矢が立った。
 本人は帝国に戻りたくなさそうだったけど、ゲオルクさんとアリーセさんから頼まれては断れなかったようだ。

「ではお父様、お母様⋯⋯行ってきます」
「いってらっしゃい」
「気をつけてね」

 ゲオルクさんとアリーセさん、それに兵士達に見送られながら、俺達は西にある帝都へと足を進めるのであった。
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