猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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予想外の才能

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「こやつは召喚士の才能があるようじゃ」
「召喚士? それって⋯⋯」

あのゲームとかで何かを呼び出すジョブのことだろうか?
あれ? そういえば以前マシロは、ルルは動物を使役するテイマーの才能があるって言ってたよな。
どっちが本当なんだ?

「フェリちゃん。召喚士とはどういう力を持っているのですか?」
「うむ。それは実際に見た方が早いじゃろ。マシロとノノ、こっちに来てくれんか」
「わかりました」
「⋯⋯」

ノノは素直に頷き、フェリの元へ向かったが、マシロは返事することなく、訝しげな表情をしていた。

「ほれ、何をしておる。ムズムズの正体を知りたくないのか?」
「わかりました。今回だけはあなたに従ってあげます」

自分の身体の状態が気になるのか、仕方なくといった感じでマシロもフェリの元へと向かった。

「三人共、少し痛いぞ」

フェリは突然何を思ったのか、マシロとノア、ルルの掌を風魔法で切り裂いた。

「いたっ!」

ルルの声が辺りに響く。
そして三人の掌からうっすらと血が滲んでいた。
ん? ルルは両手の掌で、マシロとノアは片手の掌だけだ。これに何か意味があるのか?

「何をするんですか!」
「まあまあ落ち着くのじゃ。皮膚の皮を一枚切っただけじゃろ」

マシロが怒るのも無理はない。事情があるとはいえ、いきなり掌を切られたのだ。
それにしてもフェリは何をするつもりなんだ? 全くわからないぞ。

「二人は血が出ている掌をルルの掌に合わせるのじゃ」

マシロは納得いかないといった表情だが、とりあえずフェリの言葉に従う。

「そしてルルよ。これから我が言うことを復唱するのじゃ」
「は、はい」
「女神セレスティアの名の元にルルが命じる」
「め、女神セレスティア様の名の元にルルが命じる」

ルルはフェリの言う通り、言葉を紡いでいく。
するとルルを中心に魔方陣が現れた。

これはルルが起こした現象なのか?
マシロとノアは驚きの表情を浮かべているが、ルルは集中しているのかさらに言葉を紡ぐ。

「我は汝ら、聖獣と神獣と契約を結びし者なり」

け、契約? 何か不穏な言葉が出たけど大丈夫なのか?

「剣となり、盾となり我の力となれ⋯⋯フェアトラーク!」

ルルが力強く言葉を放つと、魔方陣が光輝き目も開けられなくなる。

「眩しくて目が⋯⋯」

リズが未知の体験に驚き、俺の腕に抱きついてきた。
だが眩しくて周囲の様子を確認することが出来ないため、何が起きているのか俺にもわからない。
俺達は目を閉じて光をやり過ごす。そして数秒経った後、ゆっくりと目を開けるとそこには魔方陣はなく、光も収まっていた。

「今のはいったい⋯⋯」

ルルは困惑した様子でフェリに問いかける。
するとフェリはニコッと笑みを見せて語り始めた。

「今のは契約の儀じゃ。これでお主は好きな時に白虎とフェンリルを呼び出すことが出来るぞ」
「なんてことをさせるんですか!」

フェリの言葉に、マシロが怒りながらツッコミを入れた。
だがその気持ちはわかる。何もわからないうちに契約させられたなんて、詐欺にあったようなものだ。

「安心せい。契約したからと言って主従関係になった訳じゃない。ただどのような状況であろうと、ルルの呼び出しには応じなくてはならぬだけじゃ」
「どこが安心できますか! 勝手に召喚されるなんて冗談じゃありません! 早く契約破棄の方法を教えなさい!」
「それなんじゃが⋯⋯」

フェリはマシロから視線を逸らす。
それだけで何を言うのか察することが出来た。

「残念じゃが契約を取り消すことはできん。じゃが⋯⋯」
「ふざけないで下さい! もし新鮮な魚を食べている時に召喚されたらどうするのですか!」

邪魔されたくないということか。
確かにマシロは美味しい魚を一心不乱に食べていて、この魚は誰にも渡さない的なオーラが出ているよな。

「どうしてこのようなことに⋯⋯」

マシロがその場に崩れ落ちた。
その姿を見て、ルルがマシロに寄り添う。

「なんかごめんなさい」
「いえ、悪いのは全てそこの妖精ですから」
「すまんのう」

まあ何も説明しなかったフェリが悪いよな。しかし当の本人は今回の出来事を気にしてないように見える。

「とにかく無闇に呼び出さないで下さいね」
「⋯⋯もちろんです」
「何故すぐに返事をしなかったんですか? まさか⋯⋯」
「呼びません呼びません。たぶん⋯⋯」

俺はルルの近くにいたから聞こえたぞ。今、小声でたぶんって言ったよな。呼び出す気満々だな。

「う、うらやましいです。私にも召喚士の才能があればマシロちゃんとノアちゃんをいつでも呼び出すことが出来るのに」
「そ、そうだね」

リズが悔しそうな表情で肩を落としている。
その様子を見て、マシロは震えていた。
もしリズに召喚士の才能があったら、四六時中呼ばれそうだからな。
その気持ちはわからないでもない。

こうしてフェリのお陰でマシロとノアの状態変化の原因に気づくことが出来た。だがその代わりに二人はルルの召喚獣となってしまうのだった。

―――――――――――――――――――――

この度【狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・】改め【猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る】が、アルファポリス様より1月21日に書籍化されることが決定しました!
これも日頃より読者の皆様が応援して下さったおかげです。
書籍化によりマシロやノア、リズの可愛らしい絵が入り、小説の内容もより素敵なものになっております。
書店等で見かけた時、手に取って頂けると幸いです。
今後とも【猫を拾ったら・・・】をよろしくお願い致します。
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