猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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無意識の行動を抑制することは出来ない

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 ゲオルクさん達と別れた後、俺とノアはリズと共に城の中へと向かった。

「そういえばマシロはどこにいるんだ?」
「マシロちゃんですか? マシロちゃんは私の部屋で日向ぼっこをしています。お会いになりますか?」

 日向ぼっこか。益々ネコっぽいことをしているな。白虎と言うのも本当なのかと疑いたくなってきた。

「そうだ⋯⋯」

 俺はリズの問いに答えようとするが、予想外の所から声が上がった。

「そうじゃな。白虎に会いに行くとしよう」

 俺は驚きのあまり見る。
 するとそこには宙に浮いているフェリの姿があった。

「エルフの里にはいなかったし、いったいどこに行ってたんだ」
「すまんのう。少し野暮用があってな」
「それより神樹から離れられないんじゃなかったのか?」
「神樹と神剣は一心同体じゃからな。神樹から離れていても、神剣が近くにあれば移動することが出来るのじゃ」

 つまりは神剣の持ち主である俺から離れられないということか。

「フェリちゃんお久しぶりです」
「おお! リズよ。息災であったか。また会えて嬉しいぞ」
「ふふ⋯⋯エルフの里で別れてから、そんなに時間は経っていませんよ。ですが私もフェリちゃんとまた会えて嬉しいです」

 二人は再会を喜び、抱きしめ合う。

「それではリズの部屋に案内してくれるか。それと腹が減ったから食事の準備も頼む」
「わかりました」

 フェリはもしかしてお腹が空いたから出てきたのか?
 初めて会った時も食に飢えているように見えたので、強ち間違いじゃないように思えてきた。
 でも五千年も自由に動けなかったんだ。しばらくは好き勝手生きても罰は当たらないだろう。
 でも食事の前に聞いておきたいことがある。
 それはマシロとノアの状態についてだ。

「フェリ、食事の前に少しいいか?」
「どうしたのじゃ?」
「最近ノアとマシロの背中がムズムズするみたいで、悪い感じじゃないみたいだけど、何か知ってるかな?」
「なんじゃそれは? 我は医者ではないからさっぱりわからないぞ」
「そうか⋯⋯わかった。ありがとう」

 どうやら二人の症状について、フェリはわからないようだ。
 まあ確かに漠然とした内容でもあるから、難しいよな。

「ユートさん、聞いていただきありがとうございます」
「いや、ごめん。何の力にもなれなくて」
「いえ。以前も言ったように悪い感じではないので、もう少し様子を見てみます」

 ノアは申し訳ないといった表情で頭を下げてきた。
 悪い感じじゃなくても何かあってからでは遅い。二人の様子をよく見ていた方が良さそうだな。
 そして俺達はリズの後に続くと一室の前にたどり着いた。

「あら♥️」
「これはこれは」

 そしてリズとフェリが部屋の中に入ると、何故か二人が笑みを浮かべていた。

「ん? 何かあったの?」

 俺も部屋の中に入ると、窓際の絨毯の上にいるマシロの姿が見えた。しかし今まで見たことがない体勢でいたので少し驚いてしまう。
 お腹を見せて、いわゆるへそ天と言うやつだ。
 確かネコは、信頼している相手にしかお腹を見せないと聞くけど。それとも寝ているから無意識にやっているのか?
 ともかくこんなマシロは初めて見た。これはこのまま見ていてもいいものなのか?
 俺は部屋から出るか迷っていると、気配を感じたのか突然マシロが目を覚ました。

「ふにゃ!」

 一瞬変な声を出していたが、すぐに俺達に気づき佇まいを直す。

「帰ってきたんですね」

 そして何事もなかったかのように、いつもどおりの澄ました顔をしていた。
 いや、よく見ると目が泳いでいるな。醜態を晒してしまったとわかっているのだろう。

「それは無理があるじゃろ」
「な、何がですか?」
「あの白虎が人族の家でへそ天とは。随分心を許したものじゃな」
「何のことですか? 私にはわかりませんが」

 先程の行動からわかるように、やはりマシロは全てをなかったことにするようだ。
 しかしそんなことは許さないとばかりにリズが指摘する。

「マシロちゃん可愛いです! つい私にデレてくれたんですね!」

 リズはへそ天に感激してマシロに抱きついた。

「鬱陶しいです! 離れなさい!」
「そんなあ!」

 いつも通りの日常に帰って来たっていう感覚になるな。
 ん? 帰って来た? 
 長い期間ローレリアにいた訳じゃないけど、いつの間にかそんな風に思うようになったんだな。
 それだけこの仲間といることが心地好いということなのか。
 まあ少なくとも嬉しいことだよな。

「それより何をしに来たのですか!」
「リズの部屋で食事をしようと思ってな」
「それなら食堂で食べて下さい」

 トントン

 フェリとマシロが言い争っていると、突然部屋のドアがノックされる。

「おお! お待ちかねの食事じゃ!」
「え~と⋯⋯申し訳ありません。まだ食事は頼んでいないので違うと思います」
「ガーンじゃ」

 トントン

「どうぞ」

 そして再度ドアがノックされた後、部屋に入ってきたのは⋯⋯ルルだった。

「ほう⋯⋯これは⋯⋯」

 フェリがルルに視線を送ると、感嘆の声をあげた。
 えっ? 何今の? 意味深過ぎて滅茶苦茶気になるんですけど。

「リズさんに聞きたいことが⋯⋯って、見慣れぬ人? がいますね」
「我はフェリじゃ。お主は誰じゃ」
「私はルルです。空を飛んでる⋯⋯まるで本のおとぎ話に出てくる妖精さんですね」
「うむ。我は神剣を管理していた妖精じゃ」

 ルルはフェリを見ても全く動じてないな。
 妖精の存在を知っていたからなのか?
 よくよく考えてみると、初めて会った時のルルは深窓の令嬢と言った感じで、本を読むことが似合っているように見えた。
 だが実際にちゃんと話してみると、体力はないが行動力はあり、親しみがあって冗談好きで、とても深窓の令嬢には見えない。
 ネコを被っていたということだろうか?

「そういえば、さっきユートが申していたことの疑問がわかったぞ」
「疑問?」
「そうじゃ。マシロとノアについてじゃ」
「ほ、本当か!」

 一度はわからないと言っていたのに。何故このタイミングでわかったのだろうか。
 そしてこの後、フェリが口にした言葉は予想外の内容であった。


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