猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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お告げ再び

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 帝国へ向かうにしても、まずはゲオルクさんやアリーセさんを無事にムーンガーデン王国に送り届けるのが先だ。
 俺とノアは、正門でみんなが来るのを待っていた。

 そういえば昨日聞くのを忘れていたけど、各国を回る時の同行者って誰になるんだ?
 まさか俺一人で行く訳じゃないよな?
 だがその疑問はすぐに解けた。何故なら旅支度を済ませたフィーナとヨーゼフさんがこちらに向かってきたからだ。

「ユート、各国に向かう交渉者として私が選ばれたの。新しい国を作るために協力してあげるから、感謝しなさい」
「⋯⋯自分から立候補した者のセリフとは思えませんな」
「う、うるさい! 余計なことを言わなくていいから!」

 どうやらフィーナのツンデレが発動したようだ。
 やれやれ。素直になれないのも大変だな。

「ありがとう。フィーナが来るなら俺も心強いよ」
「ふ、ふん! ありがたく思いなさい」
「本当に感謝してる」
「うぅぅ⋯⋯」

 俺は思っていることを口にすると、何故かフィーナは顔を赤くし、狼狽え始めた。
 はは⋯⋯素直にお礼を言われたから恥ずかしいのか?
 ツンデレというのも大変だな。

「そ、それより早く行くわよ」
「いや、まだゲオルクさん達が来てないから」
「そうなの! ま、まあわかっていたけど」

 絶対にわかっていなかったな。やれやれだぜ。
 そして数分後に全員揃い、俺たちはエルウッドさんやトリーシャさんに見送られながら、ムーンガーデン王国へと出発する。
 帰り道も魔物に遭遇することがあったが難なく倒すことができ、無事にムーンガーデン王国に戻ることが出来た。
 そして城の城門前に到着すると⋯⋯

「ユート様!」

 突然声をかけられたので視線を向けると、そこにはリズの姿があった。
 そしてリズはこちらに向かって走ってきた。

「ただい⋯⋯うわっ!」

 リズは走ってきた勢いのまま、俺の胸に飛び込んで来たので受け止める。
 久しぶりの再会をそこまで喜んでくれるなんて。
 俺もリズに会えて嬉しいよ。

「あらあら、親との再会よりユートくんとの再会を優先するなんて。リズも大人になったわね」
「ぐぬぬぬ!」

 アリーセさんはニヤニヤと笑みを浮かべながら、ゲオルクさんは鬼の形相でこちらを見ていた。
 リズとの再会をもっと堪能したい所だけど、ゲオルクさんが今にも人を殺しそうな殺気を向けてきている。残念だけどリズと離れた方がいいだろう。
 俺はリズの肩に手を置き、優しく引き剥がそうとするが⋯⋯離れない。

「リ、リズ?」
「女神セレスティア様は仰いました。久しぶりの再会を抱きしめあって喜びを分かち合いなさいと」
「えっ?」

 またセレスティア様?
 ガーディアンフォレストに行く時も同じようなことがあったよな。
 本当にセレスティア様はそんなことを言ったのか?
 もしまた天界に行ける機会があったら、聞いてみることにしよう。

「は、早くお願いします」

 俺はリズに目を向けると、あることに気づいてしまった。
 リズの頬がすごく赤くなっていることに。
 セレスティア様のお告げだから俺に抱きついているだけで、リズも恥ずかしいのか?
 やはりお告げというのは本当かもしれない。
 それなら少しでも早くお告げを実行させてあげた方がいいな。
 俺は恥ずかしいのを我慢してリズを抱きしめる。

「ただいまリズ」
「ユート様、おかえりなさい」

 お告げの内容を終えた後、俺はリズから離れる。
 するとリズは、先程より頬が赤くなっているのがわかった。

「何ですかこれは」
「知らないわよ」

 ルルとフィーナは、何故か怒った様子でこちらを見ていた。
 セレスティア様のお告げなんだから、そんな顔をこっちに向けないでほしい。

「まあ私はユートさんにおんぶしてもらったからいいけど」
「えっ? なによそれ」
「フィーナ様も抱きしめてもらったらどうですか?」
「な、なんで私が! べ、別に私はユートに抱きしめてほしいだなんて思ってないから」
「おやおや、私はリズリット様に抱きしめてもらったらと思っていましたが」
「ヨーゼフ!」

 ルルとフィーナとヨーゼフさんがこそこそ話をしているけど、何だか嫌な予感がするから無視しておこう。

「アリーセよ。何だかユートに対してさらに殺意が沸いてきた気がするが、気のせいか?」
「気のせいです」

 リズから離れたというのに、またゲオルクさんがこっちを睨んでいるよ。なるべくそっちは見ないようにしよう。
 ともかくこれでゲオルクさん達を無事にローレリアに送り届ける任務は終わった。
 次は帝都か。
 二度と行くことはないと思っていたけど、人生何が起きるかわからないものだ。
 出来ればこれ以上のトラブルは起きないといいなと思う俺であった。

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