猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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ラブラブパンケーキセット

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「いらっしゃいませ~」

 店に入るとウェイトレスさんが迎えてくれた。
 ウェイトレスさんはチェックの短いスカートで、なかなか男心を擽る格好をしている。

「お二人ですか?」
「はい。カップルで~す」

 ルルは恋人をアピールするためなのか、腕を組んできた。
 これでもう逃げることは出来ないな。
 仕方ない。ルルの設定というやつに付き合ってやるか。

「ふふ⋯⋯仲が良いですね。ではこちらにご案内致します」

 ウェイトレスさんは微笑みながら、窓側の席に案内してくれた。

「こちらがメニューになります。ご注文が決まりましたらお呼び下さい」
「あっ! 注文は決まっています。このラブラブパンケーキセットでお願いします」
「ラブラブパンケーキセットですね? 承知しました」

 最初にアピールしたせいか特にカップルかどうか問われることがなかった。
 後は食べて帰るだけだ。
 それにしてもラブラブパンケーキセットか⋯⋯俺だったら恥ずかしくて頼めないな。
 躊躇なく注文したルルを尊敬してしまう。
 いや、よく見るとルルの頬は少し紅潮していた。実は本人も少し恥ずかしいようだ。でもラブラブパンケーキセットを食べるために、演技をしているといった所か、

「楽しみですね」
「俺はルルが食べれなかったら食べるよ」
「そうですか。でもセットだからアイスティーが二人分ついてくるんですよ。それはユートさんも飲んで下さいね」
「わかった」
「絶対ですよ」
「ああ」

 アイスティーを飲むくらい問題ない。それなのに何故ルルは言質を取るような真似をするのか、この時の俺は深く考えていなかった。
 だがウェイトレスさんがラブラブパンケーキセットを持ってきた時に、その理由がわかった。

「お待たせしました。こちらがラブラブパンケーキセットになります」

 ウェイトレスさんは注文した物をテーブルに置いていく。

「デカ!」

 皿に乗ったパンケーキは通常の大きさの五倍はあり、これはリズが食べる物なんじゃないかと疑ってしまう程だ。
 だがこれ以上に驚いたの飲み物だ。
 グラスは一つしかなく、そこにストローが二本刺さっていた。

「うわあ! これ二人で吸うとハートが出来るやつですよ」
「はい。こちらの飲み物は必ず二人一緒に飲んで下さい。それがカップルの証明になりますので」
「わかりました」

 わかりましたじゃないよ! これめっちゃ恥ずかしいやつじゃん!
 知り合いに見られたら、一生ネタで言われるよ。
 だが幸いなことに、ローレリアには知り合いはほとんどいない。
 がんばれば飲めなくはないが⋯⋯

「これ、本当に飲むの?」

 俺はウェイトレスさんが去った後、小声でルルに問いかける。

「もちろんですよ。私に喉が渇いて死ねっていうんですか? 砂漠の中で水を飲むなって言っているようなものですよ」
「いや、パンケーキ食べた後にアイスティー飲まなかったくらいで死なないだろ」
「それよりパンケーキですよパンケーキ♪」
  
 もう俺の話より、パンケーキに目を奪われている。まあこれが食べたかったからこの店に入ったんだ。仕方ないか。

 ルルはさっそくナイフとフォークを取り、パンケーキを口に運んでいく。

「う~ん美味しいです。ほら、ユートさんも食べて下さい」

 目の前にパンケーキが刺さったフォークが出される。
 俺はそれを反射的に食べてしまった。

「どうですか? 美味しいですよね?」
「た、確かに旨いな。ルルが食べたがっていたのも頷ける」

 パンケーキは想像より美味しかった。だけどそれより他のことに気づいてしまった。
 思わず食べてしまったけど、これって間接キスだよな。
 そう認識すると途端に恥ずかしくなってきた。
 でもルルは別に気にしていないようだ。それなのに俺だけが気にしているのも何だかカッコ悪いな。
 ここは平常心で行こう。

「どうしました? 私との間接キスに感激しちゃいましたか?」

 不意に目が合うと、ルルは小悪魔のような笑みを浮かべてきた。

「べ、別にこれくらい大したことないね。ルルこそ顔が赤くなってないか?」
「ふ~ん⋯⋯ユートさんはこれくらいじゃ動じないと」
「当たり前だろ」
「でしたら私は喉が渇きました。アイスティーを一緒に飲みましょ」
「えっ?」

 やっぱり飲むの!
 だけど年上としての威厳を保つために、強気の発言をしてしまったので、今さら嫌だとは言えない。

「わ、わかった」
「ほら、ユートさんももっと顔を近づけて」

 ルルに促され、ストローに口を近づける。するとルルの顔が間近にあり、恥ずかしくなってきた。
 ん? でもよく見るとルルの顔も凄く赤くなってないか? 
 どうやら恥ずかしいのは俺だけじゃないようだ。

「そ、それじゃあ飲みますよ」
「あ、ああ⋯⋯」

 周りは俺達のことを見ていないよな?
 こうなったら早く飲んで終わらせてしまおう。
 俺はストローに口をつけて、アイスティーを飲む。
 すると恥ずかしくて暑くなった身体を冷やしてくれる。
 そしてある程度飲んだ所で、ストローから口を離した。

 これを後何回かやらなきゃいけないのか。恥ずかしすぎる。
 俺はルルがどうなっているのか視線を送る。
 するとルルは恥ずかしいのかうつむき、俺と目を合わせてくれない。

 そんなに恥ずかしいなら、この店に来なきゃいいのに。
 けど残すのはもったいないから、とりあえず目の前のパンケーキとアイスティーは何とかしないとな。
 俺はルルに食べるよう促そうとしたが、口にすることが出来なかった。何故なら突如俺達のテーブルの席に座る者がいたからだ。
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