猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
75 / 93
連載

友好

しおりを挟む
「あなた、親書には何が書かれていたの?」

 王妃様が国王陛下の様子を心配し、問いかける。
 今の驚き方からして、とんでもないことが書かれていたのは間違いないな。
 エルウッドさんは親書に何を書いたんだ?
 その疑問はすぐに国王陛下が口にしてくれた。

「エルフの王が私と会談したいと言ってきたのだ」
「それは本当ですか?」
「ああ⋯⋯場所は我が国でもエルフの国でもどちらでもよいと書いてある。今まで最低限の交流しかなかったのに信じられん」

 エルフの国は人間に対する考えを変えてくれたのだろうか? もしそうだとしたら俺とリズを見て、そう判断してくれたってことだよな? それって凄く嬉しいな。
  
「父は国王陛下だけでなく、王妃様にもお会いしたいと言ってました」
「ふふ⋯⋯それはとても嬉しいですね。私もエルフの国に行ってみたいわ」

 どうやらフィーナは最初から会談のことを知っていたようだ。
 なるほど。フィーナが何故ムーンガーデン王国まで付いてきたのか、その理由がわかった。王女であるフィーナがここにいることで、ガーディアンフォレスト王国側はムーンガーデン王国に対して誠意を見せているのだ。
 今まで人間の国に来ることがなかったエルフの、しかも王女が来たのだ。その効果は絶大だろう。

「会談については了解した。ただ我が国で行うか、ガーディアンフォレスト王国で行うか決めるのに少し時間がほしい。明日の午前は⋯⋯人と会う約束があるので、夕方にはお伝えする」
「承知しました」
「今日は部屋を用意するので、ゆっくりと休んでくれ」
「ありがとうございます。人族の街を堪能させて頂きますわ」

 どうやらムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国とのコンタクトは和やかに終わったようだ。そして国王陛下は今度は俺の方へと視線を向けてきた。

「ユートよ。これまでの働き、誠に見事である。すぐにでも褒賞を与えたい」 

 ガーディアンフォレスト王国もそうだが、俺はどれくらいの褒賞をもらうのだろうか。帝国の山奥に住んでいた時には考えられないな。

「だがあまりにも功績が多過ぎて、しばらく時間をくれないか」
「俺はいつでも大丈夫です」
「そう言ってもらえると助かる⋯⋯それとそこにいるのはもしやニューフィールド家の令嬢ではないか?」

 国王陛下は俺達の背後にいるルルに視線を向けた。
 二人は面識があるのか? 他国とはいえ、王族と貴族⋯⋯知り合いでもおかしくないということか。

「ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。お久しぶりです、国王陛下」
「やはりルルで間違いなかったか。二年程前に帝国で会った時より大きくなったな。見違えたぞ」
「少しは素敵なレディに近づけましたでしょうか」
「そうだな。もう子供扱いは出来ないな」
「ありがとうございます」

 おお⋯⋯ルルが貴族っぽい。
 今の姿だけなら公爵令嬢といっても信じられるぞ。

「それで、ルルは何故ムーンガーデン王国にいるのだ? 正直今、我が国と帝国の関係は良くない」

 国王陛下の言うとおり、皇帝は関係ないとはいえ、帝国はムーンガーデン王国を乗っ取ろうとしていた。不用意に上級貴族がムーンガーデン王国に来ない方がいいと言っているのだろう。

「実は私はユートさんとはただならぬ関係でして。帝国から追いかけて来ました」

 その言い方何だか嫌だなあ。さっきまでの公爵令嬢モードのルルはどこかに行ってしまったようだ。

「何! まさか婚約者なのか!」
「それはご想像にお任せします」

 そう言ってルルはうつむきお腹を擦る。
 いや、その言動だと子供が出来たから俺を追いかけてきたと思われない?

「やはりユートはすけこましであったか!」
「違います! ルルは帝国にいた時、盗賊から助けただけの関係です!」
  
 ここは火種が大きくなる前に、すぐに弁明しておこう。それにしてもすけこましってひどくね? 国王陛下は俺のことをそんな風に思っていたのか。

「何! そうなのか? だが今腹部を⋯⋯」
「これは国王陛下の前で緊張してしまい、お腹が痛くなってきたので擦っただけですわ」
「そ、そうなのか?」
「はい。そうですわ」

 笑顔で自分は騙すつもりはなかったとアピールする。

「わ、わかった。とりあえずフィーナ王女もルルもゆっくりしてくれ」
「「ありがとうございます」」

 そして国王陛下は少し疲れた様子で、玉座の間を後にするのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。