上 下
113 / 129

初めての意味

しおりを挟む
 この子は何を言ってるんだ! 初めての方? そんな記憶全くないけど!
 だが俺はないと思っていても、その言葉を聞いたフィーナとリズは違った。

「初めての方!? やっぱり如何わしいことをしていたのね!」
「初めての方とはどういう意味でしょうか?」

 フィーナはその意味がわかっていてリズはわかっていない。
 意外にもフィーナは耳年増で、リズは相変わらず純粋無垢だな。リズはこのまま汚れないで育ってほしい。
 それにしてもこの子はどういうつもりなんだ?
 俺の人間関係を壊すのはやめてほしいぞ。

「ちょっと君はここで待っててくれないかな」
「わかりました」

 これ以上この子が介入するとろくでもないことになる気がしてきた。ここは俺だけで誤解を解いた方が良いだろう。
 俺は女の子を置いてフィーナ達の元へと向かう。
 だが俺が話す前にノアが口を開いた。

「フィーナさん、僕も初めての方の意味がわからなくて。教えてもらえませんか?」

 リズに抱っこされていたノアが、女の子に聞こえないように小さな声で質問をする。
 するとフィーナが顔を赤くして慌て始めた。

「そそ、それは⋯⋯雄しべと雌しべが合わさって⋯⋯」
「花は今関係ないですよね」

 ノアは知らないとはいえ、フィーナの遠回しの言葉をバッサリと切る。

「だからその⋯⋯子供が寝た後の時間におせっせするとコウノトリがきて」

 間違ってはいないけど、恥ずかしがって説明するフィーナの姿は少し萌えるな。もしかして俺にはドSの属性があったのか?

「よくわかりません。おせっせってなんでしょうか?」

 ノアの鋭い質問がフィーナに飛ぶ。
 これは俺もなんて答えるか興味あるな。

「わ、私知らないから! ユートが答えなさい」
「ええっ!」

 フィーナはさらに顔を真っ赤にさせながらキラーパスを出してきた。
 嫌な役をこっちに回さないでほしい。

「ユート様、私もおせっせの意味が知りたいです。教えて下さい」

 美少女に卑猥な言葉を言わせると、何だか凄く悪いことをした気分になるな。それが純粋無垢なリズなら尚更だ。
 だけど何て答えればいいのだろうか。正直に言う訳にはいかないし。
 俺はどうすればいいのか迷っていると、待ちきれなかったのか助けた女の子がこちらに来た。

「もういいですか?」

 よくないけど、女の子が来たことでおせっせのことを有耶無耶に出来るかも。ここは女の子の正体について話を変えてしまおう。

「え~と⋯⋯君は前に盗賊から助けた子だよね?」

 そう。この声は以前帝国で、盗賊に襲われていた女の子と同じだ。

「えっ?」
「盗賊から?」
「はい。その通りです。初めて盗賊に襲われて、初めて私を助けてくれた人です。ユートさんは」

 そういう意味だったの? 紛らわしい言い方をするなあ。

「わ、私は初めからわかっていたわよ」
「初めてとはそういう意味だったのですね」

 フィーナが白々しいことを口にする。さっきまでまるで俺を性犯罪者のような目で見ていたよな?
 このことは忘れないぞ。

「ルルレーニャ・フォン・ニューフィールドさんだよね。公爵令嬢の」
「一度しか名乗っていないのに、控え目な私の名前を覚えてくれているとは思わなかったです」
「そ、そうだね」

 控え目? この子は何を言ってるんだ? 明らかに騒がしい系だろう。でも確かに初めて会った時は、こんなにお喋りではなかったように感じたけど⋯⋯

「ルルレーニャ様は何故このような所にいらっしゃったのですか?」

 リズの疑問は最もだ。公爵令嬢が他国で、しかもこのような何もない平原にいるなんて信じられない。
 言っちゃ悪いけど、もし俺達が見つけなかったら餓死していたか、魔物の餌になっていたぞ。

「まず初めに一つだけ⋯⋯私のことはルルでいいですよ。ルルレーニャなんて長くて言いづらいですよね。フランクに話してくれて大丈夫です」
「わかりました」
「それで私がここにいる理由ですけど⋯⋯」

 ルルが口にした内容は、俺の因縁の相手が関係しているとは、話を聞くまでは思いもしなかった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...