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ハウアーの逆襲中編
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「それならそのパンを食べてみて下さいよ」
「な、なに!」
「あなたが持ってきたパンなら食べられますよね?」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーは俺の指摘にあからさまに狼狽え始める。
もうこの反応だけで黒だと言っているようなものだろ。
「ハウアー、ユートの言っていることは本当なの?」
「も、もちろん嘘だ」
「それなら早く食べなさい」
ここにいる全員がハウアーに対して疑惑の目を向ける。
もういい加減素直に認めてほしいものだ。
だが悪党は往生際が悪い生き物と決まっている。
ハウアーもその類にもれないらしい。
「仮にこのパンに毒が入っていたとしても、私が入れたという証拠はないではないか」
「そ、それは⋯⋯」
「犯人は給仕係じゃないのか? もし私が犯人ではなかった場合、その小僧は不敬罪で死んでもらうぞ」
「えっ?」
不敬罪という言葉にフィーナは怯み、一歩後退る。
だけど俺はその程度の言葉に怯みはしない。何故ならノアから真実を聞かされているからだ。
「好きにしたらいい。だがお前が犯人だった場合、どうなるかわかっているな?」
俺は神剣の柄に手を置く。
お前が犯人だった場合は、斬られる覚悟を持てという意味だ。さすがに俺の言いたいことはわかるだろう。
「い、いいだろう。だが後悔するのはお前の方だ」
しかし後にはもう引けないのか、ハウアーは強気な態度を取ってきた。
やれやれ。年をとったり、権力を持つと素直に謝ることも認めることも出来ないというが、本当だな。前世の世界でもそういう奴はいたけど、残念ながら異世界も同じらしい。
俺は罪を認めないで悪足掻きする奴が大嫌いだ。だからみんなの前で完璧な証拠を突きつけて、言い逃れが出来ないようにしてやる。
「後悔するのはあんたの方だけどな」
「なんだと!」
「じゃあ聞くけど、何か胸の所が膨らんでいないか?」
俺はハウアーの胸を指差す。
すると思い当たることがあるのか、ハウアーの顔が青ざめていく。
「な、何もない。訳のわからない言いがかりをつけるのはやめてもらおうか」
「それなら上着の内ポケットに入っているものを全部出してくれ。そこに何もなければあなたの無実は証明される」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーはうつむき黙ってしまう。まさかこのまま時間が過ぎれば何とかなると思っているわけじゃないよな。
「ハウアーよ。ユートの言うとおり、上着の中を見せてみよ」
「やましいことがないなら出来るはずよ」
エルウッドさんとフィーナの追及を受けても、ハウアーは動く様子はない。
このままだと埒が明かないな。
俺は悪事を暴くために、強引な手段に出る。
ハウアーの上着に手をかけ、無理矢理脱がせ始める。
「何をする! 無礼な!」
ハウアーは抵抗するが、残念ながら俺の力に敵う訳がなく、簡単に上着を脱がすことに成功した。
「フィーナ」
そして俺は奪い取った上着をフィーナへと投げた。するとフィーナは見事ハウアーの上着をキャッチする。
「上着の中を調べればいいのね」
「や、やめろ! そこに手を入れるな!」
ハウアーがフィーナの行動を阻止しようと襲いかかる。
だがそうはさせない。
俺は背後からハウアーの首を羽交い締めにし、拘束した。
「くっ! 離せ! 汚れた人族ごときが私に触れるな!」
「俺が汚れた存在なら、国王陛下を殺そうとしたお前はなんだ? 下衆野郎か? ウジ虫か? クズ野郎か? 言ってみろ」
「黙れ黙れ黙れ!」
本当のことを指摘したら逆ギレか。ハウアーは本当にどうしようもない奴だな。こんな大人にはなりたくないものだ。
フィーナは上着の内ポケットに手に入れる。
「えっ! これって⋯⋯」
そして驚きながら内ポケットの中の物を取り出し、白日の元へと晒すのであった。
「な、なに!」
「あなたが持ってきたパンなら食べられますよね?」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーは俺の指摘にあからさまに狼狽え始める。
もうこの反応だけで黒だと言っているようなものだろ。
「ハウアー、ユートの言っていることは本当なの?」
「も、もちろん嘘だ」
「それなら早く食べなさい」
ここにいる全員がハウアーに対して疑惑の目を向ける。
もういい加減素直に認めてほしいものだ。
だが悪党は往生際が悪い生き物と決まっている。
ハウアーもその類にもれないらしい。
「仮にこのパンに毒が入っていたとしても、私が入れたという証拠はないではないか」
「そ、それは⋯⋯」
「犯人は給仕係じゃないのか? もし私が犯人ではなかった場合、その小僧は不敬罪で死んでもらうぞ」
「えっ?」
不敬罪という言葉にフィーナは怯み、一歩後退る。
だけど俺はその程度の言葉に怯みはしない。何故ならノアから真実を聞かされているからだ。
「好きにしたらいい。だがお前が犯人だった場合、どうなるかわかっているな?」
俺は神剣の柄に手を置く。
お前が犯人だった場合は、斬られる覚悟を持てという意味だ。さすがに俺の言いたいことはわかるだろう。
「い、いいだろう。だが後悔するのはお前の方だ」
しかし後にはもう引けないのか、ハウアーは強気な態度を取ってきた。
やれやれ。年をとったり、権力を持つと素直に謝ることも認めることも出来ないというが、本当だな。前世の世界でもそういう奴はいたけど、残念ながら異世界も同じらしい。
俺は罪を認めないで悪足掻きする奴が大嫌いだ。だからみんなの前で完璧な証拠を突きつけて、言い逃れが出来ないようにしてやる。
「後悔するのはあんたの方だけどな」
「なんだと!」
「じゃあ聞くけど、何か胸の所が膨らんでいないか?」
俺はハウアーの胸を指差す。
すると思い当たることがあるのか、ハウアーの顔が青ざめていく。
「な、何もない。訳のわからない言いがかりをつけるのはやめてもらおうか」
「それなら上着の内ポケットに入っているものを全部出してくれ。そこに何もなければあなたの無実は証明される」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーはうつむき黙ってしまう。まさかこのまま時間が過ぎれば何とかなると思っているわけじゃないよな。
「ハウアーよ。ユートの言うとおり、上着の中を見せてみよ」
「やましいことがないなら出来るはずよ」
エルウッドさんとフィーナの追及を受けても、ハウアーは動く様子はない。
このままだと埒が明かないな。
俺は悪事を暴くために、強引な手段に出る。
ハウアーの上着に手をかけ、無理矢理脱がせ始める。
「何をする! 無礼な!」
ハウアーは抵抗するが、残念ながら俺の力に敵う訳がなく、簡単に上着を脱がすことに成功した。
「フィーナ」
そして俺は奪い取った上着をフィーナへと投げた。するとフィーナは見事ハウアーの上着をキャッチする。
「上着の中を調べればいいのね」
「や、やめろ! そこに手を入れるな!」
ハウアーがフィーナの行動を阻止しようと襲いかかる。
だがそうはさせない。
俺は背後からハウアーの首を羽交い締めにし、拘束した。
「くっ! 離せ! 汚れた人族ごときが私に触れるな!」
「俺が汚れた存在なら、国王陛下を殺そうとしたお前はなんだ? 下衆野郎か? ウジ虫か? クズ野郎か? 言ってみろ」
「黙れ黙れ黙れ!」
本当のことを指摘したら逆ギレか。ハウアーは本当にどうしようもない奴だな。こんな大人にはなりたくないものだ。
フィーナは上着の内ポケットに手に入れる。
「えっ! これって⋯⋯」
そして驚きながら内ポケットの中の物を取り出し、白日の元へと晒すのであった。
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