67 / 93
連載
ハウアーの逆襲中編
しおりを挟む
「それならそのパンを食べてみて下さいよ」
「な、なに!」
「あなたが持ってきたパンなら食べられますよね?」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーは俺の指摘にあからさまに狼狽え始める。
もうこの反応だけで黒だと言っているようなものだろ。
「ハウアー、ユートの言っていることは本当なの?」
「も、もちろん嘘だ」
「それなら早く食べなさい」
ここにいる全員がハウアーに対して疑惑の目を向ける。
もういい加減素直に認めてほしいものだ。
だが悪党は往生際が悪い生き物と決まっている。
ハウアーもその類にもれないらしい。
「仮にこのパンに毒が入っていたとしても、私が入れたという証拠はないではないか」
「そ、それは⋯⋯」
「犯人は給仕係じゃないのか? もし私が犯人ではなかった場合、その小僧は不敬罪で死んでもらうぞ」
「えっ?」
不敬罪という言葉にフィーナは怯み、一歩後退る。
だけど俺はその程度の言葉に怯みはしない。何故ならノアから真実を聞かされているからだ。
「好きにしたらいい。だがお前が犯人だった場合、どうなるかわかっているな?」
俺は神剣の柄に手を置く。
お前が犯人だった場合は、斬られる覚悟を持てという意味だ。さすがに俺の言いたいことはわかるだろう。
「い、いいだろう。だが後悔するのはお前の方だ」
しかし後にはもう引けないのか、ハウアーは強気な態度を取ってきた。
やれやれ。年をとったり、権力を持つと素直に謝ることも認めることも出来ないというが、本当だな。前世の世界でもそういう奴はいたけど、残念ながら異世界も同じらしい。
俺は罪を認めないで悪足掻きする奴が大嫌いだ。だからみんなの前で完璧な証拠を突きつけて、言い逃れが出来ないようにしてやる。
「後悔するのはあんたの方だけどな」
「なんだと!」
「じゃあ聞くけど、何か胸の所が膨らんでいないか?」
俺はハウアーの胸を指差す。
すると思い当たることがあるのか、ハウアーの顔が青ざめていく。
「な、何もない。訳のわからない言いがかりをつけるのはやめてもらおうか」
「それなら上着の内ポケットに入っているものを全部出してくれ。そこに何もなければあなたの無実は証明される」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーはうつむき黙ってしまう。まさかこのまま時間が過ぎれば何とかなると思っているわけじゃないよな。
「ハウアーよ。ユートの言うとおり、上着の中を見せてみよ」
「やましいことがないなら出来るはずよ」
エルウッドさんとフィーナの追及を受けても、ハウアーは動く様子はない。
このままだと埒が明かないな。
俺は悪事を暴くために、強引な手段に出る。
ハウアーの上着に手をかけ、無理矢理脱がせ始める。
「何をする! 無礼な!」
ハウアーは抵抗するが、残念ながら俺の力に敵う訳がなく、簡単に上着を脱がすことに成功した。
「フィーナ」
そして俺は奪い取った上着をフィーナへと投げた。するとフィーナは見事ハウアーの上着をキャッチする。
「上着の中を調べればいいのね」
「や、やめろ! そこに手を入れるな!」
ハウアーがフィーナの行動を阻止しようと襲いかかる。
だがそうはさせない。
俺は背後からハウアーの首を羽交い締めにし、拘束した。
「くっ! 離せ! 汚れた人族ごときが私に触れるな!」
「俺が汚れた存在なら、国王陛下を殺そうとしたお前はなんだ? 下衆野郎か? ウジ虫か? クズ野郎か? 言ってみろ」
「黙れ黙れ黙れ!」
本当のことを指摘したら逆ギレか。ハウアーは本当にどうしようもない奴だな。こんな大人にはなりたくないものだ。
フィーナは上着の内ポケットに手に入れる。
「えっ! これって⋯⋯」
そして驚きながら内ポケットの中の物を取り出し、白日の元へと晒すのであった。
「な、なに!」
「あなたが持ってきたパンなら食べられますよね?」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーは俺の指摘にあからさまに狼狽え始める。
もうこの反応だけで黒だと言っているようなものだろ。
「ハウアー、ユートの言っていることは本当なの?」
「も、もちろん嘘だ」
「それなら早く食べなさい」
ここにいる全員がハウアーに対して疑惑の目を向ける。
もういい加減素直に認めてほしいものだ。
だが悪党は往生際が悪い生き物と決まっている。
ハウアーもその類にもれないらしい。
「仮にこのパンに毒が入っていたとしても、私が入れたという証拠はないではないか」
「そ、それは⋯⋯」
「犯人は給仕係じゃないのか? もし私が犯人ではなかった場合、その小僧は不敬罪で死んでもらうぞ」
「えっ?」
不敬罪という言葉にフィーナは怯み、一歩後退る。
だけど俺はその程度の言葉に怯みはしない。何故ならノアから真実を聞かされているからだ。
「好きにしたらいい。だがお前が犯人だった場合、どうなるかわかっているな?」
俺は神剣の柄に手を置く。
お前が犯人だった場合は、斬られる覚悟を持てという意味だ。さすがに俺の言いたいことはわかるだろう。
「い、いいだろう。だが後悔するのはお前の方だ」
しかし後にはもう引けないのか、ハウアーは強気な態度を取ってきた。
やれやれ。年をとったり、権力を持つと素直に謝ることも認めることも出来ないというが、本当だな。前世の世界でもそういう奴はいたけど、残念ながら異世界も同じらしい。
俺は罪を認めないで悪足掻きする奴が大嫌いだ。だからみんなの前で完璧な証拠を突きつけて、言い逃れが出来ないようにしてやる。
「後悔するのはあんたの方だけどな」
「なんだと!」
「じゃあ聞くけど、何か胸の所が膨らんでいないか?」
俺はハウアーの胸を指差す。
すると思い当たることがあるのか、ハウアーの顔が青ざめていく。
「な、何もない。訳のわからない言いがかりをつけるのはやめてもらおうか」
「それなら上着の内ポケットに入っているものを全部出してくれ。そこに何もなければあなたの無実は証明される」
「そ、それは⋯⋯」
ハウアーはうつむき黙ってしまう。まさかこのまま時間が過ぎれば何とかなると思っているわけじゃないよな。
「ハウアーよ。ユートの言うとおり、上着の中を見せてみよ」
「やましいことがないなら出来るはずよ」
エルウッドさんとフィーナの追及を受けても、ハウアーは動く様子はない。
このままだと埒が明かないな。
俺は悪事を暴くために、強引な手段に出る。
ハウアーの上着に手をかけ、無理矢理脱がせ始める。
「何をする! 無礼な!」
ハウアーは抵抗するが、残念ながら俺の力に敵う訳がなく、簡単に上着を脱がすことに成功した。
「フィーナ」
そして俺は奪い取った上着をフィーナへと投げた。するとフィーナは見事ハウアーの上着をキャッチする。
「上着の中を調べればいいのね」
「や、やめろ! そこに手を入れるな!」
ハウアーがフィーナの行動を阻止しようと襲いかかる。
だがそうはさせない。
俺は背後からハウアーの首を羽交い締めにし、拘束した。
「くっ! 離せ! 汚れた人族ごときが私に触れるな!」
「俺が汚れた存在なら、国王陛下を殺そうとしたお前はなんだ? 下衆野郎か? ウジ虫か? クズ野郎か? 言ってみろ」
「黙れ黙れ黙れ!」
本当のことを指摘したら逆ギレか。ハウアーは本当にどうしようもない奴だな。こんな大人にはなりたくないものだ。
フィーナは上着の内ポケットに手に入れる。
「えっ! これって⋯⋯」
そして驚きながら内ポケットの中の物を取り出し、白日の元へと晒すのであった。
321
お気に入りに追加
3,107
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。