猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
66 / 93
連載

ハウアーの逆襲前編

しおりを挟む
「ハウアー⋯⋯あなたが何故この部屋にいるの」

 部屋にはハウアーとベッドで横たわるエルウッドさんとトリーシャさん。そして二人に抱きしめられているノアとマシロの姿があった。

 ん? 護衛の兵士達がいないな? どこにいったんだ?
 俺は昼間に来た時にはいた、兵士二人がいないことに違和感を感じた。

 フィーナが強い目線でハウアーを射抜き、睨み付ける。
 普通ならエルウッド国王の弟であるハウアーがここにいても問題はない。
 だがハウアーは国王になりたいのか、エルウッドさんにいなくなってほしいという発言をしていた。
 そのため、フィーナが不快感を露にするのは当然である。

「もう一度言うわ。何故あなたがここにいるのかしら」
「弟が兄の見舞いに来ておかしなことなどあるまい」
「おかしいから指摘しているのよ」

 フィーナはハウアーに対して一歩も引く気はない。
 まあ付き合いがない俺から見ても、ハウアーがエルウッドさんを心配して見舞いに来るなんてあり得ないと思っているからな。

「それよりなんだその犬は。突然吠えてうるさくてかなわないぞ。これだから躾がなっていない犬は嫌いだ」
「あら? あなたの目は節穴かしら? ノアさんは優秀なボディーガードよ。怪しい人物がいたら吠えるのは当然だから」
「それは暗に私のことを言っているのか?」
「さあ? 思い至ることがあるのかしら」

 二人の間に一触即発の空気が流れる。
 そのような中、ノアがこちらにやって来て俺の肩に乗る。
 すると小さな声でとんでもないことを囁いてきた。

「あのパンには毒が入っています。それと――」

 毒⋯⋯だと?
 ハウアーの手にはエルウッドさん達の夕食なのか、トレイのような物が持たれていた。そしてその上にはパンやスープ、サラダが乗っている。

 やはりというか、ハウアーはフィーナの両親を殺害しようとしていたのか。まあ一発逆転を狙うにはそれしか方法がないと思っていたけど、本当に実行するとは。
 念のために、マシロとノアをこの部屋に待機させておいて良かった。

 それにしても今のノアの言葉がフィーナに聞こえてなくて助かった。もし聞こえていたら激昂してハウアーに襲いかかっていたかもしれない。
 ハウアーを問い詰めるなら、大勢の前で言い逃れが出来ない状態にしてからだ。
 そして俺の望んだ通り、ノアの遠吠えを聞いて兵士達が続々とこの場に集まり始めた。

「国王陛下! 御無事ですか!」
「今の遠吠えは何だ!」
「国王陛下と王妃様をお護りしろ!」

 これでこの部屋には多くの証人が集まったことになる。
 さあ、これからは俺達のターンだ。

「とりあえず遠吠えについては置いといて⋯⋯ハウアーさん、その手に持っているものは何ですか?」

 俺はハウアーが持っているトレイを指差す。

「こ、これは部屋に行くついでにと、給仕からもらっただけだ」

 今の言葉を聞いて兵士達がざわめき始める。

「ハウアー様は日頃から給仕など底辺の仕事だ。高貴な私がやることではないとか言ってなかったか?」
「そのような、人に使われる仕事しか出来ないなんて哀れだとも言っていたぞ」

 本当にこいつはろくでもないな。どのような仕事でもやってくれる人がいるから世界が回るんだ。職種によって差別するなど許されることじゃない。

「きょ、今日は兄上の食事だから持っていっただけだ。特に他意はない」

 声がどもり、明らかに動揺しているように見えるな。やはりノアの言っていることは間違っていないようだ。

「そういえばハウアー様。国王陛下との大事なお話はもう終わったのですか? 私達に席を外すよう言われてましたけど」
「大事な話だと? いや、まだ何も聞いていないが」

 一人の兵士の言葉にエルウッドさんが答える。
 なるほど。護衛の兵士がいなかったのはそういうことか。毒入りパンを食べた後、すぐに治療出来ないように兵士を遠ざけたのだろう。

「こ、これからするつもりだったのだ。それより犬の遠吠えごときでわざわざ集まるな。とっとと散れ!」

 ハウアーの言葉で兵士達は元いた場所へと戻っていく。
 だがそれを俺が許さない。

「待って下さい。兵士の方達がここにいると都合が悪いことでもあるんですか?」
「そのようなことはない」
「そうですか⋯⋯ではその毒入りパンを国王陛下に食べさせようとした訳じゃないんですね?」
「ななな、なんだと!」

 確信を持った言葉で伝えると、ハウアーは明らかに狼狽え始める。

「ハウアー⋯⋯今の話は本当なのか!」

 エルウッドさんが激昂し、ハウアーを問い詰める。
 無理もない。もしノアとマシロがいなかったら殺されていたのだから。

「ち、違う! 言いがかりだ! 兄上は人族の言うことを聞くつもりなか!」

 やはりというか、ハウアーは素直に自分の罪を認めることはしない。
 それならばと俺は、言い逃れが出来ない言葉をハウアーに突き付けるのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。