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前もって予測することは大切だ
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エルウッドさんの部屋を出る前に、懸念していたことがあったので、俺はマシロとノアに一つお願い事をする。
「面倒くさいですが、あり得そうな話ですね」
「わかりました。ユートさんの頼みなら、僕は何だってしますよ」
二人は了承してくれたので、俺とリズだけ部屋を出た。
そして廊下で待つこと十五分。
フィーナが笑顔で部屋から出てきた。
だが、廊下で待っている俺達と目が合うとクールな表情に戻ってしまう。
「コホンッ! 待っててくれたの?」
「ああ。親子の対面は堪能出来たか?」
「うるさいわね。それより今日はお城に泊まるけどいい?」
「本当に? ちょうど俺も城に泊まりたいと思っていたんだ」
「そう? それならちょうど良かったわ。そういえばお父さんとお母さんが、マシロさんとノアさんのことが気にいったみたいで、まだ部屋の中にいるけどいいの?」
「血は争えないというわけか」
「何か言った?」
「いや、何も」
こわっ! 殺気が凄くて一瞬身構えてしまったぞ。
フィーナに動物ネタをするなら、命をかけるくらいの覚悟がないとダメだな。
「二人のご飯は国王様の部屋に運んであげてくれ」
「わかったわ。でもユート、私に何か隠しているでしょ? もう騙されないわよ」
「人を詐欺師みたいに言わないでくれよ」
「もう何度弄ばれたかわからないわ」
「その言い方も嫌だなあ」
俺はジト目で見てくるフィーナに対して、考えていたことを話す。
「確かにあり得そうな話しね」
「杞憂で終わってくれれば一番いいけどな」
「そうね。でもとりあえず昼食にしましょうか。そろそろリズのお腹が限界でしょ?」
「そんな! 私を腹ペコ怪獣みたいに言わないで下さい!」
いや、腹ペコ怪獣だろ。
おそらく⋯⋯いや、間違いなくフィーナも俺と同じ考えだろう。
「そ、そうね。リズごめんなさい」
「私は他の人より、ほんの少しだけ多く食べるだけですから」
五人前をほんの少しと言える所で、既に俺達とは違うということに気づいてほしい。
「とにかく私は⋯⋯グゥ~」
そしてタイミング良く、リズのお腹が鳴ってしまった。どうやらフィーナの指摘は間違っていなかったようだ。
「急いでご飯を作るように頼んでくるわ」
「⋯⋯お願いします」
リズはお腹が鳴ってしまったことが恥ずかしかったのか、うつむきながら昼食の催促をするのであった。
そして昼食をとった後、俺達は国王様の部屋の隣にあるフィーナの部屋に集まっていた。
「わあ~これがフィーナさんの部屋ですか! とても可愛らしいです!」
ベッドには動物のぬいぐるみがたくさん置いてあり、リズが嬉しそうに眺めている。
「ふ、ふん! 子供っぽいって言いたいんでしょ」
「そんなことないです。私の部屋にもたくさんのぬいぐるみがありますよ」
「そうなの?」
「今度私の部屋にも遊びに来て下さい」
「わかったわ。楽しみにしている」
何だかガールズトークが始まってしまったな。話に入りづらい。
だけどそれぞれの国の王女が仲良くすることは良いことだ。もしかしたら二人を介して、人族とエルフ族の仲が改善するかもしれないからな。
だからここは会話には入らないでおこう。
王女同士のガールズトークという尊いものを、特等席で眺めさせてもらいますか。
俺は気配を消して二人の様子を見守ることにする。
だが人生というものは思いどうりに行かないものだ。
「ワオォォォン!」
突如犬の遠吠えのようなものが城の中に響き渡る。
「えっ! 何?」
「これはもしかして⋯⋯」
「近いな」
声の大きさからして、少なくとも今俺達がいる部屋からそう遠くはないだろう。
「二人とも行くぞ」
「ええ」
「承知しました」
しかし俺達は突然の遠吠えに対して、全く動じていなかった。何故ならこのことを予測していたからだ。
そして俺達は遠吠えが発せられたと思われる、国王様の部屋に向かいドアを開ける。
すると部屋の中には、もう二度と会いたくない奴がいた。
「面倒くさいですが、あり得そうな話ですね」
「わかりました。ユートさんの頼みなら、僕は何だってしますよ」
二人は了承してくれたので、俺とリズだけ部屋を出た。
そして廊下で待つこと十五分。
フィーナが笑顔で部屋から出てきた。
だが、廊下で待っている俺達と目が合うとクールな表情に戻ってしまう。
「コホンッ! 待っててくれたの?」
「ああ。親子の対面は堪能出来たか?」
「うるさいわね。それより今日はお城に泊まるけどいい?」
「本当に? ちょうど俺も城に泊まりたいと思っていたんだ」
「そう? それならちょうど良かったわ。そういえばお父さんとお母さんが、マシロさんとノアさんのことが気にいったみたいで、まだ部屋の中にいるけどいいの?」
「血は争えないというわけか」
「何か言った?」
「いや、何も」
こわっ! 殺気が凄くて一瞬身構えてしまったぞ。
フィーナに動物ネタをするなら、命をかけるくらいの覚悟がないとダメだな。
「二人のご飯は国王様の部屋に運んであげてくれ」
「わかったわ。でもユート、私に何か隠しているでしょ? もう騙されないわよ」
「人を詐欺師みたいに言わないでくれよ」
「もう何度弄ばれたかわからないわ」
「その言い方も嫌だなあ」
俺はジト目で見てくるフィーナに対して、考えていたことを話す。
「確かにあり得そうな話しね」
「杞憂で終わってくれれば一番いいけどな」
「そうね。でもとりあえず昼食にしましょうか。そろそろリズのお腹が限界でしょ?」
「そんな! 私を腹ペコ怪獣みたいに言わないで下さい!」
いや、腹ペコ怪獣だろ。
おそらく⋯⋯いや、間違いなくフィーナも俺と同じ考えだろう。
「そ、そうね。リズごめんなさい」
「私は他の人より、ほんの少しだけ多く食べるだけですから」
五人前をほんの少しと言える所で、既に俺達とは違うということに気づいてほしい。
「とにかく私は⋯⋯グゥ~」
そしてタイミング良く、リズのお腹が鳴ってしまった。どうやらフィーナの指摘は間違っていなかったようだ。
「急いでご飯を作るように頼んでくるわ」
「⋯⋯お願いします」
リズはお腹が鳴ってしまったことが恥ずかしかったのか、うつむきながら昼食の催促をするのであった。
そして昼食をとった後、俺達は国王様の部屋の隣にあるフィーナの部屋に集まっていた。
「わあ~これがフィーナさんの部屋ですか! とても可愛らしいです!」
ベッドには動物のぬいぐるみがたくさん置いてあり、リズが嬉しそうに眺めている。
「ふ、ふん! 子供っぽいって言いたいんでしょ」
「そんなことないです。私の部屋にもたくさんのぬいぐるみがありますよ」
「そうなの?」
「今度私の部屋にも遊びに来て下さい」
「わかったわ。楽しみにしている」
何だかガールズトークが始まってしまったな。話に入りづらい。
だけどそれぞれの国の王女が仲良くすることは良いことだ。もしかしたら二人を介して、人族とエルフ族の仲が改善するかもしれないからな。
だからここは会話には入らないでおこう。
王女同士のガールズトークという尊いものを、特等席で眺めさせてもらいますか。
俺は気配を消して二人の様子を見守ることにする。
だが人生というものは思いどうりに行かないものだ。
「ワオォォォン!」
突如犬の遠吠えのようなものが城の中に響き渡る。
「えっ! 何?」
「これはもしかして⋯⋯」
「近いな」
声の大きさからして、少なくとも今俺達がいる部屋からそう遠くはないだろう。
「二人とも行くぞ」
「ええ」
「承知しました」
しかし俺達は突然の遠吠えに対して、全く動じていなかった。何故ならこのことを予測していたからだ。
そして俺達は遠吠えが発せられたと思われる、国王様の部屋に向かいドアを開ける。
すると部屋の中には、もう二度と会いたくない奴がいた。
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