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快気
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「お父さん! お母さん!」
フィーナが国王様と王妃様の元に駆け寄り手を握る。
「おお⋯⋯フィーナよ。しばらく見なかったから心配したぞ」
「でも助かったわ。まさかレーベンの実を手に入れるなんて」
二人はフィーナに向かって優しい笑顔を向けている。
まだ会ったばかりだけど、二人がフィーナを大切にしていることがすぐにわかった。
そしてこの姿に感動したリズが、目に涙を浮かべている。
「良かったです⋯⋯本当に良かったです⋯⋯」
リズは本当に良い子だな。
他人のために泣ける人なんて、この世界でもそう多くない。
「お父さんお母さん身体は大丈夫? 辛くない?」
「少しダルいが大丈夫だ。身体の具合が徐々に良くなって行くのがわかるよ」
「まだ歩くのは難しいけど、治療薬を飲む前と比べたらすごく調子がいいわ」
二人から身体の状態についての話が聞けて安心する。これでフォラン病については大丈夫と考えてもいいかな。
「それにしてもレーベンの実を取って来たと言うことは、漆黒の牙を倒したということか」
「そうよ」
「長い年月平原に君臨していた漆黒の牙を倒すとは⋯⋯もしや後ろにいる人族が関係しているのか?」
「え、ええ⋯⋯」
フィーナが少し言い淀む。
「お父さん、ユートとリズは人族だけどとても良い人達よ。私も何度救われたかわからないわ。だからその⋯⋯」
もしかしてフィーナは俺達のことを庇っているのか? エルフにとって人族は憎むべき存在と言ってもいいくらいだ。
現に俺達は、エルフ達に心無い言葉を浴びせられたりもした。
エルフの王であるフィーナのお父さんは、俺達に嫌悪感を持っていてもおかしくない。
ここを出ていけと、罵倒される可能性もある。
「ユートとリズと言うのか、ベッドからすまないが私はエルウッドで、横にいるのは妻のトリーシャだ。娘を⋯⋯エルフの里を助けてくれてありがとう」
エルウッドさんとトリーシャさんは俺達に頭を下げてきた。
人族の俺達に対して思うところはあるだろう。だけどそれでも恩人に対してはちゃんと頭を下げる。立派な人だな。
「もしかしてユートさんが背負っている物って神剣かしら」
「そうよ。ユートが神剣を抜いて漆黒の牙を倒したの」
フィーナが自分のことのように胸を張り、嬉しそうな顔をしている。
「いえ、俺だけの力じゃないです。みんながいたから漆黒の牙に勝つことが出来ました」
「そうか。君は謙虚な男だな」
「事実ですから」
「神剣を持っているということは、長老達にも認められているということか。ならば私からは感謝の言葉しか言うことはないよ」
「フィーナも心を許しているしね」
「べ、別に私はユートに心を許しているつもりはないわ」
トリーシャさんの指摘が恥ずかしかったのか、ツンデレ言葉を発する。
「あら? 私は一言もユートさんとは言ってないわよ。やっぱりフィーナはユートさんに心を許しているのね」
「ユートのことなんて好きじゃないから! 勘違いしないでよね!」
「はいはい。そういうことにしておきますね」
何だかフィーナの扱いが慣れているように見えるな。さすがは母親といった所か。
「ユートさん⋯⋯いえ、ユートくん。そしてリズちゃん。これからもフィーナのことをよろしくお願いしますね」
トリーシャさんが真剣な表情で頭を下げてくる。これは王妃ではなく、母親としての願いということかな。
だけどどちらにせよ、俺達の言葉は決まっている。
「フィーナは大事な仲間です」
「フィーナさんは私の大切な友達です」
「「こちらこそよろしくお願いします」」
最後はリズと言葉が被ったな。考えることは同じということか。
「二人共ありがとう」
「お母さん恥ずかしいわ」
フィーナの顔が真っ赤だな。けどどこか嬉しそうにも見える。
「それともう一つ気になったことがあるけど聞いていい? フィーナは何でいつものようにパパ、ママって呼んでくれないの?」
「なっ!」
「パパって呼ばないとお父さんは泣いちゃうわよ」
「いや、泣きはしないがパパって呼んでくれた方が嬉しいな」
「マ、ママやめて! 恥ずかしいよう」
フィーナの顔がさらに真っ赤になってしまった。トリーシャさんに指摘されたことが、相当恥ずかしいということがわかる。
だけど普段見ないフィーナの少し子供っぽい姿が、何だか微笑ましいな。
「ユートもニヤニヤしない! 私、パパとママと話をしなくちゃいけないからもう出てって!」
フィーナが怒った顔でジロリと睨んできた。
ここは言う通りにしないと、また短剣を投げて来そうだ。
まあフィーナの恥ずかしい気持ちもわかるので、ここは素直に従い、俺は部屋を出ていくのであった。
フィーナが国王様と王妃様の元に駆け寄り手を握る。
「おお⋯⋯フィーナよ。しばらく見なかったから心配したぞ」
「でも助かったわ。まさかレーベンの実を手に入れるなんて」
二人はフィーナに向かって優しい笑顔を向けている。
まだ会ったばかりだけど、二人がフィーナを大切にしていることがすぐにわかった。
そしてこの姿に感動したリズが、目に涙を浮かべている。
「良かったです⋯⋯本当に良かったです⋯⋯」
リズは本当に良い子だな。
他人のために泣ける人なんて、この世界でもそう多くない。
「お父さんお母さん身体は大丈夫? 辛くない?」
「少しダルいが大丈夫だ。身体の具合が徐々に良くなって行くのがわかるよ」
「まだ歩くのは難しいけど、治療薬を飲む前と比べたらすごく調子がいいわ」
二人から身体の状態についての話が聞けて安心する。これでフォラン病については大丈夫と考えてもいいかな。
「それにしてもレーベンの実を取って来たと言うことは、漆黒の牙を倒したということか」
「そうよ」
「長い年月平原に君臨していた漆黒の牙を倒すとは⋯⋯もしや後ろにいる人族が関係しているのか?」
「え、ええ⋯⋯」
フィーナが少し言い淀む。
「お父さん、ユートとリズは人族だけどとても良い人達よ。私も何度救われたかわからないわ。だからその⋯⋯」
もしかしてフィーナは俺達のことを庇っているのか? エルフにとって人族は憎むべき存在と言ってもいいくらいだ。
現に俺達は、エルフ達に心無い言葉を浴びせられたりもした。
エルフの王であるフィーナのお父さんは、俺達に嫌悪感を持っていてもおかしくない。
ここを出ていけと、罵倒される可能性もある。
「ユートとリズと言うのか、ベッドからすまないが私はエルウッドで、横にいるのは妻のトリーシャだ。娘を⋯⋯エルフの里を助けてくれてありがとう」
エルウッドさんとトリーシャさんは俺達に頭を下げてきた。
人族の俺達に対して思うところはあるだろう。だけどそれでも恩人に対してはちゃんと頭を下げる。立派な人だな。
「もしかしてユートさんが背負っている物って神剣かしら」
「そうよ。ユートが神剣を抜いて漆黒の牙を倒したの」
フィーナが自分のことのように胸を張り、嬉しそうな顔をしている。
「いえ、俺だけの力じゃないです。みんながいたから漆黒の牙に勝つことが出来ました」
「そうか。君は謙虚な男だな」
「事実ですから」
「神剣を持っているということは、長老達にも認められているということか。ならば私からは感謝の言葉しか言うことはないよ」
「フィーナも心を許しているしね」
「べ、別に私はユートに心を許しているつもりはないわ」
トリーシャさんの指摘が恥ずかしかったのか、ツンデレ言葉を発する。
「あら? 私は一言もユートさんとは言ってないわよ。やっぱりフィーナはユートさんに心を許しているのね」
「ユートのことなんて好きじゃないから! 勘違いしないでよね!」
「はいはい。そういうことにしておきますね」
何だかフィーナの扱いが慣れているように見えるな。さすがは母親といった所か。
「ユートさん⋯⋯いえ、ユートくん。そしてリズちゃん。これからもフィーナのことをよろしくお願いしますね」
トリーシャさんが真剣な表情で頭を下げてくる。これは王妃ではなく、母親としての願いということかな。
だけどどちらにせよ、俺達の言葉は決まっている。
「フィーナは大事な仲間です」
「フィーナさんは私の大切な友達です」
「「こちらこそよろしくお願いします」」
最後はリズと言葉が被ったな。考えることは同じということか。
「二人共ありがとう」
「お母さん恥ずかしいわ」
フィーナの顔が真っ赤だな。けどどこか嬉しそうにも見える。
「それともう一つ気になったことがあるけど聞いていい? フィーナは何でいつものようにパパ、ママって呼んでくれないの?」
「なっ!」
「パパって呼ばないとお父さんは泣いちゃうわよ」
「いや、泣きはしないがパパって呼んでくれた方が嬉しいな」
「マ、ママやめて! 恥ずかしいよう」
フィーナの顔がさらに真っ赤になってしまった。トリーシャさんに指摘されたことが、相当恥ずかしいということがわかる。
だけど普段見ないフィーナの少し子供っぽい姿が、何だか微笑ましいな。
「ユートもニヤニヤしない! 私、パパとママと話をしなくちゃいけないからもう出てって!」
フィーナが怒った顔でジロリと睨んできた。
ここは言う通りにしないと、また短剣を投げて来そうだ。
まあフィーナの恥ずかしい気持ちもわかるので、ここは素直に従い、俺は部屋を出ていくのであった。
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