猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
64 / 93
連載

快気

しおりを挟む
「お父さん! お母さん!」

 フィーナが国王様と王妃様の元に駆け寄り手を握る。

「おお⋯⋯フィーナよ。しばらく見なかったから心配したぞ」
「でも助かったわ。まさかレーベンの実を手に入れるなんて」

 二人はフィーナに向かって優しい笑顔を向けている。
 まだ会ったばかりだけど、二人がフィーナを大切にしていることがすぐにわかった。
 そしてこの姿に感動したリズが、目に涙を浮かべている。

「良かったです⋯⋯本当に良かったです⋯⋯」

 リズは本当に良い子だな。
 他人のために泣ける人なんて、この世界でもそう多くない。

「お父さんお母さん身体は大丈夫? 辛くない?」
「少しダルいが大丈夫だ。身体の具合が徐々に良くなって行くのがわかるよ」
「まだ歩くのは難しいけど、治療薬を飲む前と比べたらすごく調子がいいわ」

 二人から身体の状態についての話が聞けて安心する。これでフォラン病については大丈夫と考えてもいいかな。

「それにしてもレーベンの実を取って来たと言うことは、漆黒の牙シュヴァルツファングを倒したということか」
「そうよ」
「長い年月平原に君臨していた漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すとは⋯⋯もしや後ろにいる人族が関係しているのか?」
「え、ええ⋯⋯」

 フィーナが少し言い淀む。

「お父さん、ユートとリズは人族だけどとても良い人達よ。私も何度救われたかわからないわ。だからその⋯⋯」

 もしかしてフィーナは俺達のことを庇っているのか? エルフにとって人族は憎むべき存在と言ってもいいくらいだ。
 現に俺達は、エルフ達に心無い言葉を浴びせられたりもした。
 エルフの王であるフィーナのお父さんは、俺達に嫌悪感を持っていてもおかしくない。
 ここを出ていけと、罵倒される可能性もある。

「ユートとリズと言うのか、ベッドからすまないが私はエルウッドで、横にいるのは妻のトリーシャだ。娘を⋯⋯エルフの里を助けてくれてありがとう」

 エルウッドさんとトリーシャさんは俺達に頭を下げてきた。
 人族の俺達に対して思うところはあるだろう。だけどそれでも恩人に対してはちゃんと頭を下げる。立派な人だな。

「もしかしてユートさんが背負っている物って神剣かしら」
「そうよ。ユートが神剣を抜いて漆黒の牙シュヴァルツファングを倒したの」

 フィーナが自分のことのように胸を張り、嬉しそうな顔をしている。

「いえ、俺だけの力じゃないです。みんながいたから漆黒の牙シュヴァルツファングに勝つことが出来ました」
「そうか。君は謙虚な男だな」
「事実ですから」
「神剣を持っているということは、長老達にも認められているということか。ならば私からは感謝の言葉しか言うことはないよ」
「フィーナも心を許しているしね」
「べ、別に私はユートに心を許しているつもりはないわ」

 トリーシャさんの指摘が恥ずかしかったのか、ツンデレ言葉を発する。

「あら? 私は一言もユートさんとは言ってないわよ。やっぱりフィーナはユートさんに心を許しているのね」
「ユートのことなんて好きじゃないから! 勘違いしないでよね!」
「はいはい。そういうことにしておきますね」

 何だかフィーナの扱いが慣れているように見えるな。さすがは母親といった所か。

「ユートさん⋯⋯いえ、ユートくん。そしてリズちゃん。これからもフィーナのことをよろしくお願いしますね」

 トリーシャさんが真剣な表情で頭を下げてくる。これは王妃ではなく、母親としての願いということかな。
 だけどどちらにせよ、俺達の言葉は決まっている。

「フィーナは大事な仲間です」
「フィーナさんは私の大切な友達です」
「「こちらこそよろしくお願いします」」

 最後はリズと言葉が被ったな。考えることは同じということか。

「二人共ありがとう」
「お母さん恥ずかしいわ」

 フィーナの顔が真っ赤だな。けどどこか嬉しそうにも見える。

「それともう一つ気になったことがあるけど聞いていい? フィーナは何でいつものようにパパ、ママって呼んでくれないの?」
「なっ!」
「パパって呼ばないとお父さんは泣いちゃうわよ」
「いや、泣きはしないがパパって呼んでくれた方が嬉しいな」
「マ、ママやめて! 恥ずかしいよう」

 フィーナの顔がさらに真っ赤になってしまった。トリーシャさんに指摘されたことが、相当恥ずかしいということがわかる。
 だけど普段見ないフィーナの少し子供っぽい姿が、何だか微笑ましいな。

「ユートもニヤニヤしない! 私、パパとママと話をしなくちゃいけないからもう出てって!」

 フィーナが怒った顔でジロリと睨んできた。
 ここは言う通りにしないと、また短剣を投げて来そうだ。
 まあフィーナの恥ずかしい気持ちもわかるので、ここは素直に従い、俺は部屋を出ていくのであった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。