猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
上 下
59 / 98
連載

大地の恵み

しおりを挟む
「大地の恵みは祈りの力と聞いておる。本人が意図していなくても、その時の状態によって影響があるとのことじゃ」
「それって気分が沈んでいたり、嫌なことがあると効果がないってこと?」
「その通りじゃ。あやつに恋人が出来た時など、周りに花が咲き乱れておったのう。懐かしい思い出じゃ」

 そうなると以前聞いた森に元気がないってやつは、フィーナの影響なのか?
 両親がフォラン病にかかったり、傾国の姫と蔑まされていたから、落ち込んでいてもおかしくない。
 森が大地の恵みの恩恵を受けることが出来なかったのだろう。
 本当にジグベルトは余計なことをしてくれたな。

「わかったわ。祈ればいいのね」

 フィーナは目を閉じて両手を組む。そして地面に膝をつけて、いわゆる祈りのポーズをする。
 美少女がすると絵になるな。天から光が降りて来そうだ。
 俺達はただその美しき光景を見守る。

 フィーナが祈り初めてから十五分程経った。
 だが未だにレーベンの木には変化はない。
 これってどのくらい祈ればいいんだ?
 まさか一日とか長い時間かかるんじゃないだろうな。
 フェリに聞いてみたい所だけど、フィーナが真剣に祈っているのに邪魔をする訳にはいかない。とにかく今は見守るとしよう。

 そしてさらに十五分が経った。しかし先程と同様にレーベンの木に変化はない。
 だけど頑張っているフィーナを見守ると決めたんだ。
 ただ待つことくらい出来なくてどうする。

「ちょ、ちょっと待って⋯⋯少し休憩してもいい?」

 フィーナは祈りを止めて、目を開ける。
 三十分近く祈りを捧げていたため、疲れてしまったようだ。
 まあ何かの信者じゃない限り、長時間祈りを捧げることなどしないから、その気持ちはわかる。

「何か大地の恵みを上手く使う方法って知らないの?」
「我も詳しいことはわからん。じゃが初代女王は楽しいことを考えて祈ると話しておった。確か友人や恋人のことを考えて祈ると言っていたような」
「そ、そうなの? でも私、友達や恋人との思い出なんてないわよ⋯⋯⋯⋯⋯⋯どっちもいないから」

 人のことは言えないが、フィーナの言葉に涙が出てきた。しかも寂しそうな顔をしているし。
 だが過去のフィーナには友人はいないが、今は俺達がいるじゃないか。
 俺はリズと視線を合わせる。するとリズは頷いたので、俺達はフィーナの肩に手を置いた。

「私はフィーナさんのお友達ですよ。これから楽しい思い出をいっぱいいっぱい作っていきましょうね」
「フォラン病の人達を治せるのはフィーナだけだ。俺達はフィーナなら出来るって信じてるぞ」
「二人とも⋯⋯」

 フィーナは目を潤ませていた。
 そしてこの時、足元に気配を感じた。

「フィーナは私の世話係三号ですから、この程度のことを失敗したら困ります」
「僕もフィーナさんのこと応援してます。頑張って下さい」

 マシロとノアもフィーナを激励する。
 俺達にはレーベンの木に、実を宿らせることは出来ない。だからせめてフィーナが力を発揮しやすいように応援する。

「みんな⋯⋯ありがとう。私、絶対に成功させてみせるわ」

 フィーナは再び目を閉じて祈り始めた。
 その姿は先程と同じ様に見える。しかし大地の恵みについて何も知らない俺でも何かが違うことがわかった。
 心地よい空間がこの場を支配して、まるで全ての生物に祝福を与えているように感じた。
 そしてフィーナの身体から放射状に光が広がると、周囲に異変が起きる。
 先程まで葉しかなかったレーベンの木に、いくつもの実が生り始めたのだ。

「フィーナさん⋯⋯すごいです」

 リズが⋯⋯いや、ここにいる全員が目の前の奇跡から目を話せないでいた。
 大地の恵みとは凄い力だな。まるで女神様の所業だと言っても信じてしまいそうだ。
 そしてフィーナは祈りを解除すると、レーベンの木には数え切れない程の実が生るのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。