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初代女王
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「無理じゃ。神樹のことならともかく、他の植物に影響を与えることなど我にはできん」
「そんな⋯⋯」
フィーナは絶望からか、地面に膝をついてしまう。
万事休すだ。最後の望みだったフェリと最長老様で無理なら、もうどうにも出来ない。
このままエルフ達がフォラン病で亡くなる所を黙って見ていることしか出来ないのか。
この場に重苦しい空気が流れる。
「せめてガーディアンフォレストを建国した初代女王がおればな」
「えっ?」
俺はフェリが呟いた言葉に反応して声を上げる。
「どういうことですか?」
今は僅かでも希望があるなら聞いておきたい。
俺は前のめりでフェリに問いかけた。
「初代女王は変わった者じゃった。実はエルフの種族じゃが、風と土の精霊魔法を使うことが出来なかったのじゃ」
エルフはどちらかの精霊魔法が使えると言っていたな。ただこの時代にもそれに当てはまらない者がいる。
俺はチラリとフィーナに視線を送る。
フィーナはフェリの話が気になるのか、真剣に聞いているように見えた。
「その異端とも呼べる方が、何故ガーディアンフォレスト王国の初代女王様になれたの?」
フィーナの疑問は最もだ。閉鎖的なエルフが風と土の精霊魔法が使えない者を認めるとは思えない。現に同じ条件のフィーナは、ジグベルトが噂を流したとはいえ、エルフ達に蔑まされていた。
「それは初代女王には唯一無二の能力があったからじゃ」
「唯一無二の能力? それはいったいなに?」
「木や植物や花を元気にする能力じゃ。蕾だった花を咲かせ、枯れて朽ち果てた植物を蘇らせ、葉しかない木に実を宿らせることも出来た」
それってまさに今俺達が欲している力だ。
だがそのような奇跡を使える者が、そういるものではない。
もしいたらそれこそ初代女王様のように、この国のトップに祭り上げられてもおかしくないだろう。
「確か⋯⋯大地の恵みとかいうスキルじゃったな」
ん? 大地の恵み?
「そのスキル⋯⋯どこかで見たことがあるような⋯⋯」
「それはどこ! どこで見たの!」
ポツリと呟いた言葉にフィーナが反応し、問い詰めてきた。
近い近い!
フィーナの顔と俺の顔との距離が二十センチくらいしかないぞ!
もし誰かに後ろから押されたらキスをしてしまいそうだ。
「ユート思い出して!」
「ちょっと待ってくれ。今記憶の整理をするから」
「確かこういう時は、頭の後ろを鈍器でおもいっきり叩けがいいってどこかで聞いたことがあるような」
フィーナが物騒なことを言い始めた。早く思い出さないと殺されてしまいそうだ。
「フィーナよ。それでは逆に記憶を失ってしまうぞ」
「そ、そうね。確かにフェリの言うとおりだわ。少し冷静さを失ってたみたい」
「こういう時は何かショックを与えると思い出すと聞いたことがある。例えば接吻とかしてみたらどうじゃ」
「キキキ、キスゥ!」
フェリがとんでもないことを言い出したぞ。そんな記憶回復方法など聞いたことがない。まさか真に受ける者などいないと思うが。
「わかりました。では私がユート様とキスをしましょう」
王族育ちのリズがフェリの言葉を信じて、俺の前に来て目を閉じる。
リズは少し常識がないから、簡単に騙されてしまった。何だかリズの将来がすごく心配になってきたぞ。
「これでユート様の記憶が戻るなら⋯⋯」
「ちょちょっと待って! これはエルフ族の問題よ。ここはケルベロスに噛まれたと思って私がするわ」
ケルベロスってひどくね。
フィーナは俺のことをそんな風に思っていたのか。
「ほ、ほら早くして⋯⋯でも優しくしてね」
フィーナもリズと同じ様に目を閉じる。
これはどんな状況だよ。何でこんなことに⋯⋯
俺は現況となったフェリをジロリと睨む。
「ほんの冗談じゃ。じゃがこれでリラックス出来たじゃろ? こういうのは思い出そうとすればする程、思い出せないものじゃ」
「確かにそうかもしれないけど⋯⋯」
でも結果として思い出していな⋯⋯
「あっ!」
この時、ふと突然大地の恵みについての記憶が戻り、思わず声を上げてしまう。
「えっ? 何? 思い出したの? 大地の恵みのスキルを持つのは誰か教えて!」
俺は興奮気味のフィーナを抑えるため、肩に手を置く。
そして俺は、大地の恵みのスキルを持つ者の名前を口にするのであった。
「そんな⋯⋯」
フィーナは絶望からか、地面に膝をついてしまう。
万事休すだ。最後の望みだったフェリと最長老様で無理なら、もうどうにも出来ない。
このままエルフ達がフォラン病で亡くなる所を黙って見ていることしか出来ないのか。
この場に重苦しい空気が流れる。
「せめてガーディアンフォレストを建国した初代女王がおればな」
「えっ?」
俺はフェリが呟いた言葉に反応して声を上げる。
「どういうことですか?」
今は僅かでも希望があるなら聞いておきたい。
俺は前のめりでフェリに問いかけた。
「初代女王は変わった者じゃった。実はエルフの種族じゃが、風と土の精霊魔法を使うことが出来なかったのじゃ」
エルフはどちらかの精霊魔法が使えると言っていたな。ただこの時代にもそれに当てはまらない者がいる。
俺はチラリとフィーナに視線を送る。
フィーナはフェリの話が気になるのか、真剣に聞いているように見えた。
「その異端とも呼べる方が、何故ガーディアンフォレスト王国の初代女王様になれたの?」
フィーナの疑問は最もだ。閉鎖的なエルフが風と土の精霊魔法が使えない者を認めるとは思えない。現に同じ条件のフィーナは、ジグベルトが噂を流したとはいえ、エルフ達に蔑まされていた。
「それは初代女王には唯一無二の能力があったからじゃ」
「唯一無二の能力? それはいったいなに?」
「木や植物や花を元気にする能力じゃ。蕾だった花を咲かせ、枯れて朽ち果てた植物を蘇らせ、葉しかない木に実を宿らせることも出来た」
それってまさに今俺達が欲している力だ。
だがそのような奇跡を使える者が、そういるものではない。
もしいたらそれこそ初代女王様のように、この国のトップに祭り上げられてもおかしくないだろう。
「確か⋯⋯大地の恵みとかいうスキルじゃったな」
ん? 大地の恵み?
「そのスキル⋯⋯どこかで見たことがあるような⋯⋯」
「それはどこ! どこで見たの!」
ポツリと呟いた言葉にフィーナが反応し、問い詰めてきた。
近い近い!
フィーナの顔と俺の顔との距離が二十センチくらいしかないぞ!
もし誰かに後ろから押されたらキスをしてしまいそうだ。
「ユート思い出して!」
「ちょっと待ってくれ。今記憶の整理をするから」
「確かこういう時は、頭の後ろを鈍器でおもいっきり叩けがいいってどこかで聞いたことがあるような」
フィーナが物騒なことを言い始めた。早く思い出さないと殺されてしまいそうだ。
「フィーナよ。それでは逆に記憶を失ってしまうぞ」
「そ、そうね。確かにフェリの言うとおりだわ。少し冷静さを失ってたみたい」
「こういう時は何かショックを与えると思い出すと聞いたことがある。例えば接吻とかしてみたらどうじゃ」
「キキキ、キスゥ!」
フェリがとんでもないことを言い出したぞ。そんな記憶回復方法など聞いたことがない。まさか真に受ける者などいないと思うが。
「わかりました。では私がユート様とキスをしましょう」
王族育ちのリズがフェリの言葉を信じて、俺の前に来て目を閉じる。
リズは少し常識がないから、簡単に騙されてしまった。何だかリズの将来がすごく心配になってきたぞ。
「これでユート様の記憶が戻るなら⋯⋯」
「ちょちょっと待って! これはエルフ族の問題よ。ここはケルベロスに噛まれたと思って私がするわ」
ケルベロスってひどくね。
フィーナは俺のことをそんな風に思っていたのか。
「ほ、ほら早くして⋯⋯でも優しくしてね」
フィーナもリズと同じ様に目を閉じる。
これはどんな状況だよ。何でこんなことに⋯⋯
俺は現況となったフェリをジロリと睨む。
「ほんの冗談じゃ。じゃがこれでリラックス出来たじゃろ? こういうのは思い出そうとすればする程、思い出せないものじゃ」
「確かにそうかもしれないけど⋯⋯」
でも結果として思い出していな⋯⋯
「あっ!」
この時、ふと突然大地の恵みについての記憶が戻り、思わず声を上げてしまう。
「えっ? 何? 思い出したの? 大地の恵みのスキルを持つのは誰か教えて!」
俺は興奮気味のフィーナを抑えるため、肩に手を置く。
そして俺は、大地の恵みのスキルを持つ者の名前を口にするのであった。
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