猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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勢いでしてしまうことってあるよね

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「ふう⋯⋯何とかなったな」

 漆黒の爪や漆黒の咆哮など予想外のことはあったけど、無事に討伐することが出来た。
 後はレーベンの実を取りに行くだけだ。
 だけどその前にまずは左肩の傷を治さないと。
 かなり深く抉られたな。大量の血が地面に滴り落ちている。
 このままだと出血多量で意識を失ってしまいそうだ。

「ユートォォォッ!」
  
 治療をするため、魔力を集め始めようとしたら、フィーナが猛スピードで駆け寄って来た。

「フィーナ。作戦が上手く⋯⋯」

 俺が言葉を言い終える前に、フィーナはこちらに向かって突進してきた。
 そのため、俺はフィーナを抱き止める。

 ぐはっ!

 勢いが強すぎて傷が⋯⋯

漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すなんて凄いわ!」

 こんなにはしゃいでいるフィーナは初めて見る。それだけ漆黒の牙シュヴァルツファングを倒すことが出来て嬉しいのだろう。
 そのようなフィーナが見れて俺も嬉しい。

「これでレーベンの実を手に入れて、みんなを助けることが出来るわ! ありがとうユート⋯⋯ん⋯⋯」

 突然頬に少し湿った感触が伝わってきた。
 えっ? 今のって⋯⋯キスされた!
 どちらかと言えばクールなフィーナが、頬とはいえキスしてくるなんて驚きだ。

「フィ、フィーナ!」

 俺はその行動に茫然としてしてしまう。

「あっ、いえ、その⋯⋯べべべ、別にただのお礼よ! ふ、深い意味はないんだからね! 勘違いしないでよ!」
「あ~うん⋯⋯わかってるよ」
「そ、そう⋯⋯わかっているならいいのよ。わかっているなら」

 勢いでキスをしてしまったのか、フィーナの顔は真っ赤だ。我に返って恥ずかしくなってきたのか?

「ちょっといくら漆黒の牙シュヴァルツファングを倒したからといってイチャイチャしないでもらえます?」
「イチャイチャなんてしてないわ! マシロは何を言ってるのよ!」
「はいはいそうですね。でもそろそろ抱きつくのやめたらどうですか?」
「「えっ?」」 

 俺とフィーナは至近距離で顔を見合わす。そして抱きついたままだと気づき、慌てて離れる。

「ご、ごめんなさい!」

 フィーナは狼狽えながら頭を下げる。

「嫌だったよね⋯⋯」
「いや、そんなことはないよ」
「そうなの?」

 フィーナのような美少女に抱きつかれて、喜ばない男などいないだろう。
 それに上目遣いで首を傾げているため、その魅力はさらにアップしていた。

「もうラブコメはいいですから」
「ラブコメ何かじゃないわ!」
「それよりさっさとその傷を治したらどうですか?」
「あっ! ごめんなさい!」

 真っ赤な顔をしていたフィーナだったが、マシロの指摘で申し訳なさそうな顔をする。

「私⋯⋯自分のことばかりで⋯⋯ユートは怪我をしているのに⋯⋯」

 そして終いに目が潤んできて、今にも涙を溢しそうだった。
 そんな顔を見たら男として言うことは一つしかない。

「血がいっぱい出ているように見えるけど、全然痛くないから大丈夫」
「本当に?」
「嘘じゃないよ」

 本当は滅茶苦茶痛いけど、男として女の子を悲しませる訳にいかない。

「それにこんな傷、すぐに俺の魔法で⋯⋯神聖回復魔法セイクリッドヒール

 自分自身に回復魔法をかけると身体が光輝き始め、漆黒の牙シュヴァルツファングにつけられた傷は完全に治った。

「ほら、これで元通り」
「うん⋯⋯でもごめんなさい」

 フィーナに再度謝られたが、さっきよりは表情は明るい。傷が治ったことで少しは罪悪感が消えたかな?

「それにしても全てユートの作戦通りだったわね」
「演技がバレなくて良かったよ」

 そう。俺は漆黒の牙シュヴァルツファングから隙を作るため、あたかも魔素に身体が犯されているように演技をしていたのだ。

「いつから咳をしたり、苦しそうな顔をしてたの?」
「初めて会った時からかな。神聖魔法で倒せるならそれで良かったけど、万が一のことを考えて⋯⋯魔物にしては頭が良さそうに見えたから、もしかしたら演技に引っ掛かってくれるかなあって」
「神聖魔法も凄いけど、先を見据えた戦い方には脱帽だわ」
「ユートさんのことを尊敬してしまいます」

 おいおい。みんな褒め過ぎじゃないか。照れてしまうぞ。

「そうですね。私も最初は騙されました。ユートは他者を騙す天才ですね」
「言い方! それだと俺が凄く悪い奴みたいじゃないか」
「そうですか? 人族の言葉は難しいですね」

 せっかくフィーナとノアが褒めてくれたのに、マシロが台無しにしてくれた。
 まあ褒められ過ぎると少し恥ずかしくなってしまうので、助かったと言えば助かったが。
 だけどこれで俺達を遮るものをはない。
 俺は漆黒の牙シュヴァルツファングの素材を異空間に入れる。そしてレーベンの実を手に入れるために、南西へと足を進めるのであった。
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